線型代数学/ベクトル

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複素数の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。

目次

[編集] ベクトル

定義0.1.1

n個のKの元を縦に並べたものをn次列ベクトルとよび、次のように括弧でかこんだ中にn個の縦に並べたKの元を書く。

\bold a=
\begin{pmatrix}
 a_1\\
 a_2\\
 \vdots\\
 a_n\\
\end{pmatrix}

また、n個のKの元を横に並べたものをn次行ベクトルとよび、次のように括弧でかこんだ中にn個の横に並べたKの元を書く。

\bold a= \begin{pmatrix} a_1 && a_2 && \cdots && a_n  \end{pmatrix}

a1, a2, …, anをベクトルa成分(element)と呼び、特にakaの第k成分と呼ぶ。

定義0.1.2

成分がすべて実数のベクトルを特に実ベクトルと言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に複素ベクトルと言う。また、成分が全て0のベクトルを零ベクトルといい、oと書く。

定義0.1.3

Kを成分とするn次列ベクトル全体の集合を\bold K^nで表す。

\bold K^n = \left\{ \begin{pmatrix} a_1\\ a_2\\ \vdots\\ a_n\\ \end{pmatrix} \Bigg| a_1, a_2, \cdots, a_n \in \bold K \right\}

\bold K = \Rのとき\R^nは実数を成分とするn次列ベクトル全体の集合であり、\bold K = \Cのとき\C^nは複素数を成分とするn次列ベクトル全体の集合である。

[編集] 相等関係

定義0.1.4

2つのn次列ベクトル\bold a, \bold b \in \bold K^nが「等しい」とは、2つのベクトルの各成分が全て等しいことをいう。すなわち、

\bold a , \bold b \in \bold K^n , \bold a = \begin{pmatrix} a_1 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix}, \bold b = \begin{pmatrix} b_1 \\ \vdots \\ b_n \end{pmatrix} のとき
\bold a = \bold b \iff \forall i \in \{1,2,\cdots,n\}, a_i = b_i

なお、2つのn次行ベクトルについても同様に定義される。

[編集] ベクトルの演算

2つのn次列ベクトル \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a_1\\
 a_2\\
 \vdots\\
 a_n\\
\end{pmatrix}
,\ 
\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 b_1\\
 b_2\\
 \vdots\\
 b_n\\
\end{pmatrix} \in \bold K^n
について、ベクトルの和 \bold a + \bold bを次のように定義する。

定義0.1.5

\mathbf{a}+\mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 a_1+b_1\\
 a_2+b_2\\
 \vdots\\
 a_n+b_n\\
\end{pmatrix}

ベクトルの和に関して、次が成り立つ。ここで、\bold a, \bold b, \bold c \in \bold K^nであり、\bold o \in \bold K^nは零ベクトルである。

定理0.1.6
  • 交換則: a+b=b+a
  • 結合則: (a+b)+c=a+(b+c)
  • 零元の存在: a+o=a

証明は、簡単なので読者に任せたい。

またn次列ベクトル \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a_1\\
 a_2\\
 \vdots\\
 a_n\\
\end{pmatrix} \in \bold K^n
と定数\lambda \in \bold Kについて、ベクトルの定数倍 \lambda \bold aを次のように定義する。

定義0.1.7

\lambda\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 \lambda a_1\\
 \lambda a_2\\
 \vdots\\
 \lambda a_n\\
\end{pmatrix}

ベクトルの定数倍に関して、次が成り立つ。ここで、\bold a, \bold b \in \bold K^n, \lambda, \mu \in \bold Kである。

定理0.1.8
  • \lambda(\bold a+\bold b)=\lambda \bold a + \lambda \bold b
  • (\lambda +\mu ) \bold a = \lambda \bold a + \mu \bold a
  • (\lambda\mu)\bold a= \lambda(\mu\bold a)

[編集] 助変数表示

[編集] 平面上の直線

以後、特に空間ベクトルについて議論する。

まずは、二次元空間上の直線を、助変数を用いて現すことを考える。

\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
\end{pmatrix},
\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
\end{pmatrix},
\mathbf{x}_0=
\begin{pmatrix}
 x_0\\
 x_0\\
\end{pmatrix}

とすると、一般の直線は下の式で表される。

  • x=at+x0

成分を用いて書けば、 
\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
\end{pmatrix}t
+
\begin{pmatrix}
 x_0\\
 y_0\\
\end{pmatrix} である。 成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。

上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。また、aをこの直線の方向ベクトルという。 方向ベクトルはこの直線と平行なベクトルである。 もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、方向ベクトルはノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。

例題

  • 3x+2y=5

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
y={{5-3t}\over 2} = {5\over 2 }- {3\over 2} t
よって、
\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 -{3\over 2}\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 0\\
 {5\over 2}\\
\end{pmatrix}

演習

ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ

1.6x-3y=9.5

2.x=a

3.\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 -1\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 2\\
 1\\
\end{pmatrix}

4.\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
 -1\\
 -2\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 1\\
 0\\
\end{pmatrix}

[編集] 空間内の直線

平面内の直線は

ax + by + c = 0

という式で表された。しかし、空間において

ax + by + cz + d = 0

という式の表す図形は平面である。直線は2つの平行でない平面の共通部分として表される。式で書けば、

\left\{ \begin{matrix} a_1x+b_1y+c_1z=d_1 \\ a_2x+b_2y+c_2z=d_2 \end{matrix}\right.

となる。この式が表す直線をベクトル表示することを考えよう。連立方程式を解く要領で

\left\{\begin{matrix} y=\alpha_1x+x_1 \\ z=\alpha_2x+x_2 \end{matrix}\right.

(但し,α12,x1,x2は定数) と書けることはすぐわかる。この式は、形式的にはxをtと置き換えることで、下のように書ける。

\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_1

これが空間内の直線の助変数表示である。

例題

\left\{ \begin{matrix} x+2y+3z=4 \\ 5x+6y+7z=8 \end{matrix}\right.

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
2y+3z=-t+4
6y+7z=-5t+8

これを解いて、

\left\{ \begin{matrix}y=-2t-1\\z=t+2\end{matrix}\right.

よって、

\mathbf{x}(=
\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
 z\\
\end{pmatrix})=
\begin{pmatrix}
 1\\
 -2\\
 1\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 0\\
 -1\\
 2\\
\end{pmatrix}

演習

1.

\left\{\begin{matrix}x+2y+3z=1\\3x+2y+z=-1\end{matrix}\right.

を助変数表示にせよ

[編集] 空間内の平面

前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。今度は2つの助変数s,tを導入することで、同様にして

\mathbf{x}=
\mathbf{a}t+
\mathbf{b}s+
\mathbf{c}

と表せる。これを平面の助変数表示という。

例題

  • 2a+b+3c=5を助変数表示にせよ。
a=t,b=sとすると、
3c=5-2t-s⇔c={5\over 3}-{2\over 3}t-{1\over 3}s
よって、
\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 0\\
 -{2\over 3}\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 0\\
 1\\
 -{1\over 3}\\
\end{pmatrix}s+
\begin{pmatrix}
 0\\
 0\\
 {5\over 3}\\
\end{pmatrix}

演習

1.2x-y+3z=1を助変数表示にせよ

2.


\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
 z\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
 1\\
 2\\
 -3\\
\end{pmatrix}t+
\begin{pmatrix}
 5\\
 4\\
 2.3\\
\end{pmatrix}s+
\begin{pmatrix}
 -2\\
 -1\\
 -3\\
\end{pmatrix}

を、直交座標表示で表せ。

[編集] まとめ

1.平面上の直線のベクトル表示

\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_0

2.空間内の直線のベクトル表示

\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_0

3.空間内の平面のベクトル表示

\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{b}s+\mathbf{c}

演習

1.

二点P,Qの位置ベクトルをp,qとすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
t1p+t2q, t1+t2=1, t1,t2≧0
の形で表される。これを証明せよ。

2.

三点の位置ベクトルをx1,x2,x3とすると、
この三点が構成する三角形内の任意の点は、
t1x1+t2x2+t3x3, t1+t2+t3=1, t1,t2,t3≧0

と表される。これを証明せよ。

[編集] 法線ベクトル

平面上の直線

ax+by=c

を考える。この直線の方向ベクトルは

\mathbf{v}=\begin{pmatrix}
 b\\
 -a\\
\end{pmatrix}

である。ここで、

\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
\end{pmatrix}

というベクトルを考えると、

(\mathbf{a},\mathbf{v})=0

なので、aとこの直線は直交する。このaをこの直線の法線ベクトルという。

例5.1

l:x=at+x1

という直線を考える。平面内の1点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。この垂線の長さを求めよう。

pをPの位置ベクトル、x0をP'の位置ベクトルとすると、垂線の長さは

||p-x0||

で与えられる。

まずはx0を他のベクトルを用いて表そう。P'はl上の点なので、x=x0をlの式に代入すると

x0=at+x1
p-x0=p-at-x1

となる。このベクトルがaと直交するので

(a,p-x0)=(a,p)-(a,a)t-(a,x1)=0
t=\frac{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)}{(\mathbf{a},\mathbf{a})}

これを代入して

\mathbf{x}_0=\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}+\mathbf{x}_1
p-\mathbf{x}_0=p-\mathbf{a}{(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)\over (\mathbf{a},\mathbf{a})}-\mathbf{x}_1

をえる。

あとは自分自身との内積を計算するだけである。落ち着いて計算すれば

||\mathbf{p}-\mathbf{x}_0||={{\sqrt{||\mathbf{a}||^2 ||\mathbf{p}-\mathbf{x}_1||^2-(\mathbf{a},\mathbf{p}-\mathbf{x}_1)^2}}\over {||\mathbf{a}||}}

と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。

演習 1.

空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
F:ax+by+cz=d
を平行移動し、原点を通る平面
F0:ax+by+cz=0
\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
 c\\
\end{pmatrix} \mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
 x\\
 y\\
 z\\
\end{pmatrix}とすれば、
F:(a,x)=d
F0:(a,x)=0
であるから、aはF0故にFと垂直である。この時aをF0の法線ベクトルと言う。
さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
とするとき、||x0-x'0||を求めよ。

2.

平面Fの法線ベクトルaと平面F'の法線ベクトルa'の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
F:x+2y+2z=3
F':3x+3y=1
の交角を求めよ。

[編集] 外積

[編集] 二次の行列式

定義(7.1)

A=\begin{pmatrix}
 a & b\\
 c & d\\
\end{pmatrix},  \mathbf{a}=\begin{pmatrix}
 a\\
 c\\
\end{pmatrix},  \mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 b\\
 d\\
\end{pmatrix} の時、

|A|=
\begin{vmatrix}
 a & b\\
 c & d
\end{vmatrix}=\det A=\det(\mathbf{a},\mathbf{b})
=ad-bcをAの行列式という。

次の性質は簡単に証明できる。

a,bが線形独立⇔det(a,b)≠0

det(a,b)=-det(b,a)

det(a+b,c)=det(a,c)+det(b,c)

det(ca,b)=det(a,cb)=cdet(a,b)

|AB|=|A||B|

ここで、a,bが線形独立とは、a,bが平行でないことを表す。

[編集] 平行四辺形の面積

関係ないと思うかもしれないが、外積の定義に必要な情報である。

abの張る平行四辺形の面積を求める。二ベクトルの交角をθとする。

bを底辺においたとき、高さは||a||sinθなので、求める面積Sは

S=||a||||b||sinθ

⇔S2=||a||2||b||2 -||a||2||b||2cos2θ

       =||a||2||b||2-(a,b)2

よって、

S=\sqrt {||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2}      (7.1)

演習

\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
\end{pmatrix},  \mathbf{a}'=\begin{pmatrix}
 a'\\
 b'\\
\end{pmatrix}

とすれば、S=|\begin{vmatrix}
 a & a'\\
 b & b'\\
\end{vmatrix}|.

これを証明せよ。

[編集] 外積

内積が有るなら外積もあるのでは?と思った読者待望の部ではないだろうか。(余談)

定義(7.2)

cは次の4条件を満たすとき、a,bの外積、或はベクトル積と呼ばれ,a×b=cと表記される。

 (i)a,bと直交する。

 (ii)a,bは線形独立

 (iii)a,b,cは右手系をなす。

 (iv)||c||が平行四辺形の面積

ここで、右手系とは、R3の単位ベクトルe1〜3が各々右手の親指、人差指、中指の上にある三次元座標系のことである。


定理(7.3)

 右手座標系で、

 \mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
 a\\
 b\\
 c\\
\end{pmatrix},  \mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 a'\\
 b'\\
 c'\\
\end{pmatrix}

とすると、

\mathbf{c}=\mathbf{a} \times \mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 \begin{vmatrix}
  b & b'\\
  c & c'
 \end{vmatrix}\\
 \begin{vmatrix}
  a & a'\\
  c & c'
 \end{vmatrix}\\
 \begin{vmatrix}
  a & a'\\
  b & b'
 \end{vmatrix}\\
\end{pmatrix}     (7.2)

(証明)

三段構成でいく。

(i)cと、abと直交することを示す。要するに、 (c,b)=0且(c,a)=0を示す。

(ii)||c||が平行四辺形の面積Sであることをを証明。

(iii)c,a,bが、右手座標系であることを証明。


(i)は計算するだけなので演習とする。

(ii)

   ||c||2=(bc'-b'c)2+(ac'-a'c)2+(bc'-b'c)2

                 =(a2+b2+c2)(a'2+b'2+c'2)-(a a'+bb'+cc')2=||a||^2||b||^2-(a,b)^2

   ||c||≧0より、式(7.1)から、

   ||\mathbf{c}||=\sqrt {||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2}=S

(iii)

   a=e1, b=e2ならば、式(7.2)は両辺ともe3である。e,e2を、線形独立性を崩さずに移すと、 a,b,cは右手系のまま移る。もし、左手系なら、その瞬間||c||=0となり、(中間値の定理)abは平行になるから、線形独立が崩れたことになる。           #


外積に関して、次の性質が成り立つ。

a×b=-b×a  c(a×b)=ca×b=a×cb

a×(b1+b2)= 'a×b1+a'b2

(a1+a2b= 'a1×b+a2'b

[編集] 三次の行列式

定義(7.4)

A=\begin{pmatrix}
 a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3}\\
 a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3}\\
 a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3}\\
\end{pmatrix},  \mathbf{a}=\begin{pmatrix}
 a_{1,1}\\
 a_{1,2}\\
 a_{1,3}\\
\end{pmatrix},  \mathbf{b}=
\begin{pmatrix}
 a_{2,1}\\
 a_{2,2}\\
 a_{2,3}\\
\end{pmatrix} \mathbf{c}=
\begin{pmatrix}
 a_{3,1}\\
 a_{3,2}\\
 a_{3,3}\\
\end{pmatrix} の時、

|A|=
\begin{vmatrix}
 a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3}\\
 a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3}\\
 a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3}\\
\end{vmatrix}=\det A=\det(\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{c})
=(\mathbf{a} \times \mathbf{b},\mathbf{c}) をAの行列式という。

二次の時と同様、

  • a,b,cが線形独立⇔det(a,b,c)≠0
  • a,b,cのどれか二つの順序を交換すればdet(a,b,c)の符号は変わる。絶対値は変わらない。
  • det(a+a',b,c)=det(a,b,c)+det(a,b,c)

b,cに関しても同様

  • det(ca,b)=cdet(a,b)

b,cに関しても同様

  • |AB|=|A||B|

一番下は、大変面倒だが、確かめられる。

例題

次の二直線は捩れの位置(同一平面上にない関係)にある。この二直線に共通法線が一本のみあることをしめし、 最短距離も求めよ

l:x=at+x1

l':x=bs+x2

l.l'上の点P,Qの位置ベクトルを

p=at+x1

q=bs+x2とすると、

PQ⊥l,l'⇔(a,p-q)=(b,p-q)=0

これを式変形して、

(a,p-q)= (a,at+x1-bs-x2)

      =(a,a)t-(a,b)s+ (a,x1-x2)=0

⇔(a,a)t-(a,b)s=(a,x2-x1     (7.3)

同様に、

(b,a)t-(b,b)s=(b,x2-x1     (7.4)

(7.3),(7.4)をt,sに関する連立一次方程式だと考えると、この方程式は、ちょうど一つの解の組(t0,s0)が存在する。

a//b(a,bは平行、の意味)a,boより、

\begin{vmatrix}
 (\mathbf{a},\mathbf{a}) & -(\mathbf{a},\mathbf{b})\\
 (\mathbf{b},\mathbf{a}) & -(\mathbf{b},\mathbf{b})\\
\end{vmatrix}=-[||\mathbf{a}||^2||\mathbf{b}||^2-(\mathbf{a},\mathbf{b})^2]≠0


あとは後述する、連立二次方程式の解の公式による。(演習1)

at0+x1,bs0+x2を位置ベクトルとする点をP0,Q0とおけば、P0Q0が、唯一の共通法線である。 この線分P0Q0の長さは、l,l'間の最短距離である。そこで、

\mathbf{c}=\overrightarrow{P_0Q_0}(第一章「ベクトル」参照)

P1:x1を位置ベクトルとする点 Q1:x2の位置ベクトルとする点

とすれば、

\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1=(\overrightarrow{P_1Q_1})
=(\overrightarrow{P_1P_0})+(\overrightarrow{P_0Q_0})+(\overrightarrow{Q_0Q_1})

          =([x1+t0a]-[x1])


”P0の位置ベクトル↑     ↑P1の位置ベクトル”


         +c+["x1"-"(x1+t0a)"]


”Q1の位置ベクトル↑   ↑Q0の位置ベクトル”


=c+t0a-s0b

よって、

(c,x2-'x1)=(c,c)+t0(c,a)-s0(c,b)

a,bcが垂直なので、(b,c)=(a,c)=0.

すなわち、(c,x2-x1)=(c,c)

c=k(a×b) (k≠0)

coより、求める距離||c||は、

||\mathbf{c}||={||\mathbf{c}||^2\over ||\mathbf{c}||}={|(\mathbf{c},\mathbf{c})|\over ||\mathbf{c}||}={|(\mathbf{c},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)|\over {|k|||\mathbf{a}\times {\mathbf{b}}||}}

={{|(\mathbf{a}\times \mathbf{b},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)|}\over {||k|||\mathbf{a}\times \mathbf{b}||}}={|\det (\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{x}_2-\mathbf{x}_1)| \over ||\mathbf{a}\times \mathbf{b}||}

演習

1.

二元一次連立方程式
\begin{vmatrix}
 a & b\\
 c & d\\
\end{vmatrix}≠0の時、
\begin{cases}
 ax+by=c\\
 dx+ey=f\\
\end{cases}
の一般解が、
x={\begin{vmatrix}
 e & b\\
 f & d\\
\end{vmatrix}\over \begin{vmatrix}
 a & b\\
 c & d\\
\end{vmatrix}}, 

y={\begin{vmatrix}
 a & e\\
 c & f\\
\end{vmatrix}\over \begin{vmatrix}
 a & b\\
 c & d\\
\end{vmatrix}} である事を示せ

2.

多面体Pの二頂点を結ぶ線分上の全ての点がやはりPに含まれる時、Pは凸多面体と呼ばれる。
Pのk個の頂点Pi(i=1,2,...,k;k(∈N)>3)の位置ベクトルをviとすると、P内の任意の点の位置ベクトルvが、下の式で表せることを証明せよ。


\mathbf{v}=\sum_{j=1}^k t_i\mathbf{x}_i, ti≧0, \sum_{j=1}^k t_i=1
このようなvのことを、xiの凸結合と言う

3.

P1(x1,y1),P2(x2,y2)を通る直線の式は、
\begin{vmatrix}
 1 & 1 & 1\\
 x & x_1 & x_2\\
 y & y_1 & y_2\\
\end{vmatrix}=0と表せる。

これを示せ。

4.

:空間において、(a,x)=0への折り返しの変換に対応する行列を求めよ

5.

:\begin{vmatrix}
 (\mathbf{a},\mathbf{a}) & (\mathbf{a},\mathbf{b}) & (\mathbf{a},\mathbf{c})\\
 (\mathbf{b},\mathbf{a}) & (\mathbf{b},\mathbf{b}) & (\mathbf{b},\mathbf{c})\\
 (\mathbf{c},\mathbf{a}) & (\mathbf{c},\mathbf{b}) & (\mathbf{c},\mathbf{c})\\
\end{vmatrix}=\det (\mathbf{a},\mathbf{b},\mathbf{c})
を示せ。

6.

:||x||=||y||=||z||=1の時、det(a,b,c)の最大最小を求めよ。

7.

(1)
(a×bc=-(b,c)a+(a,c)b
(2)
(a×bc+(b×ca+(c×ab=o
を、R3について証明せよ。


このページで述べるベクトルの代数学的説明はここまでである。このまま、代数学の学習を続けたい読者は次に、行列を読まれる事を勧める。今までの内容と、密接に関係している。もし、ベクトルの解析的扱いについて学習したい場合は、このページの次の章に進まれるとよい。参考文献:東京大学出版会 『基礎数学1 線型代数入門』齊藤正彦著

[編集] ベクトル関数

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