不動産登記法第7条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法不動産登記法コンメンタール不動産登記法

条文[編集]

(事務の委任)

第7条

法務大臣は、一の登記所の管轄に属する事務を他の登記所に委任することができる。

解説[編集]

趣旨等[編集]

本条は、ある登記所の事務を他の登記所に委任することが可能である旨を規定したものである。

例えば、天災により事務を長期にわたり停止することは、取引の円滑をうたった不動産登記法第1条に反することになるから、本条より速やかに委任すべきである。

現実の委任は登記事務委任規則により具現化されている。

委任の手続き[編集]

概要[編集]

ある登記所の事務を他の登記所に委任した場合、不動産登記規則第32条の管轄転属が生じ、委任した登記所の登記官は、当該不動産の登記記録(共同担保目録及び信託目録を含む)並びに地図等及び登記簿の附属書類(電磁的記録に記録されている地図等及び登記簿の附属書類を含む)を受任した登記所に移送するものとされている(同規則第32条第1項)。そして、委任した登記所の登記官は、移送した登記記録等並びに電磁的記録に記録されている地図等及び土地所在図等を閉鎖することとされている(同規則第32条第2項)。

また、登記所が共同担保目録・信託目録・地役権図面の移送を受けたときは、受任した登記所の登記官は必要に応じて、当該共同担保目録の記号及び目録番号・信託目録の目録番号・地役権図面の番号を改め、かつ移送を受けた登記記録の、乙区の従前の共同担保目録の記号及び目録番号・相当区の従前の信託目録の目録番号・乙区の従前の地役権図面の番号を、新たに付した記号及び目録番号・目録番号・番号に変更することされている(同規則第33条第1項ないし第3項)。

この管轄転属の具体的な手続きについては、不動産登記事務取扱手続準則(2005年(平成17年)2月25日民二第456号通達。以下「同準則」という。)第10条が準用する第8条及び第9条に規定がある。

移送[編集]

移送をする場合には、委任した登記所の登記官は、同準則別記第7号様式による移送書2通(目録5通を含む)を添えてすることとされている(同準則第8条第3項)。移送を受けた登記所の登記官は、遅滞なく移送された登記記録等を移送書と照合して点検し、同準則別記第8号様式による受領書(目録2通を含む。この目録は移送書に添付されたものを用いる。)を委任した登記所の登記官に交付し又は送付し、受領書の写しを作成して保管することとされている(同準則第8条第4項)。以上の移送書及び受領書の様式は以下のとおりである。

管轄転属があった場合の移送書
管轄転属に係る書類等の受領書

移送書又は受領書を受け取った登記官は、同準則別記第9号様式による報告書に移送書又は受領書(いずれも目録1通を含む)を添えて、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に、登記記録等の引継ぎを完了した旨を報告することとされている(同準則第8条第5項前段)。ただし、委任した登記所と受任した登記所が同一の法務局又は地方法務局の管内にあるときは、連署をした報告書でよいとされている(同準則第8条第5項後段)。この報告書の様式は以下のとおりである。

管轄転属完了の報告書

地番等の変更[編集]

受任した登記所の登記官が登記記録の移送を受けた場合で、管轄転属に係る不動産について地番又は家屋番号を変更しなければならないとき(例えば重複した場合が考えられる)は、職権でその変更の登記をしなければならない(同準則第9条第1項)。

受任した登記所の登記官が、共同担保目録・信託目録・地役権図面の移送を受けた場合において、共同担保目録の記号及び目録番号・信託目録の目録番号・地役権図面の番号(以下「記号等」と総称する)を改めるときは、従前の記号等を抹消する記号を記録して、同準則第114項同準則第115条第2項不動産登記規則第86条第2項の規定により新たに付した記号等を記録しなければならない(同準則第9条第2項)。

参照条文[編集]

判例[編集]

参考文献[編集]

  • 香川保一 「不動産登記法逐条解説(6)」『登記研究』618号、テイハン、1999年、6頁-10頁
  • 香川保一 「新不動産登記法逐条解説(88)」『登記研究』716号、テイハン、2007年、65・66頁

前条:
不動産登記法第6条
(登記所)
不動産登記法
第2章 登記所及び登記官
次条:
不動産登記法第8条
(事務の停止)


このページ「不動産登記法第7条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。