中学校理科 第2分野/細胞と体の仕組み

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

細胞[編集]

細胞のしくみ[編集]

細胞とは[編集]

ロバート・フックによるコルクの細胞のスケッチ

動物と植物に共通して、すべての生物は細胞(さいぼう、cell)から成り立っている。細胞は、生物の基本的な単位である。いくつかの動植物では、細胞だけを取り出しても、培養液(ばいようえき)などを与えると生きていける。細胞よりも細かく分割すると、たとえ培養液を与えようが生きていけない。

ヒトの体は約37兆個の細胞からできている。生物の種類によって,体をつくる細胞の個数は異なる。

細胞1個の大きさは生物の種類にもよるが、だいたい 0.01 mm ~ 0.05 mm である。この大きさは、肉眼では観察できないが、顕微鏡でなら観察できる大きさである。

タマネギの表皮細胞が、このような通常の大きさの細胞の例である。

例外として、細菌類の細胞は小さく、0.0002mm ~ 0.0010mm 程度であり、逆に鳥類の卵細胞(らんさいぼう)は特に大きく、ダチョウの卵は一個の細胞であって直径9cmもある。ニワトリの卵黄も3cmほどもある大きい細胞である。

細胞の発見[編集]

細胞の発見は、1665年、イギリスのロバート・フックによってコルクの薄片を顕微鏡で観察したことで発見された。 彼は、自作の顕微鏡を用いて観察したところ、多数の中空の構造があることを知った。それを修道院の小部屋(cell、セル)にみたて、細胞(cell)と呼んだ。彼が観察したのは、死んだ植物細胞の細胞壁(さいぼうへき)であった。

細胞のしくみ[編集]

典型的な動物細胞の模式図: (1) (1) 核小体、(2) 核、(3) リボソーム、(4) 小胞体、(5) 粗面小胞体、(6) ゴルジ体、(7) 細胞骨格、(8) 滑面小胞体、(9) ミトコンドリア、(10) 液胞、(11)細胞質基質、(12) リソソーム、(13) 中心体
典型的な植物細胞の模式図: a. 原形質連絡 b. 細胞膜 c. 細胞壁
1. 葉緑体 d. チラコイド膜 e. デンプン粒
2. 液胞 f. 液胞 g. 液胞膜 h. ミトコンドリア i. ペルオキシソーム j. 細胞質 k. 小さな膜小胞 l. 粗面小胞体
3. 核 m. 核膜孔 n. 核膜 o. 核小体 p. リボソーム q. 滑面小胞体 r. ゴルジ小胞 s. ゴルジ体 t. 繊維状の細胞骨格

動物・植物の細胞に共通する構造[編集]

細胞の見た目や働きはさまざまに異なるが、基本的な機能や構造は同じである。 動物細胞・植物細胞とも、すべての細胞は(かく、nucleus)と細胞質(さいぼうしつ、cytoplasm)、それを囲む細胞膜(さいぼうまく、cell membrane)からなる。細胞質とは、細胞のうち、細胞膜の内側から核をのぞいた部分の総称のこと。そのため細胞質には多くの構造をふくむ。

核は、細胞の分裂増殖中をのぞけば、ふつうは1つの細胞につき、1つの核だけである。

顕微鏡での核の観察は、 酢酸カーミン(さくさんカーミン、acetocarmine) や 酢酸オルセイン酢酸ダーリアで、染められる。酢酸カーミン、酢酸オルセインで核は赤く染まる。酢酸ダーリアで核は青く(紫)染まる。 プレパラートとカバーガラスを用いる、通常の顕微鏡の観察法で、染色した核を観察できる。

核の内部には染色体(せんしょくたい)があり、染色体が遺伝子(いでんし)の正体である。より詳しく言うと、染色体の内部にあるDNA(ディーエヌエー、デオキシリボ核酸)という物質が遺伝子の正体である。

なお、核と細胞質を合わせて原形質(げんけいしつ、protoplasm)とも呼ぶ。

  • 発展: 核を取り除いた細胞
アメーバの切断実験。核がないとアメーバは死ぬ。核があるほうは増殖できる。
アメーバの切断実験。核だけでも死ぬ。核と細胞質の両方が生存に必要である。

核がない細胞は、増殖できない。また、核がない細胞は、早く死んでしまう。

なお、ヒトの赤血球も核がない。このため赤血球は増殖できず、100日くらいで死んでしまう。

(発展、おわり)


なお、核の中には、染色体のほかにも、核小体(かくしょうたい)という球形のものがある。また、核の表面には、核膜孔(かくまくこう)という小さな無数の穴があり、核への物質の出入りに関わっている。(※ 核小体と核膜孔は高校の範囲である。とりあえず中学の段階では、核小体と核膜孔は知らなくても問題ない。
まとめると、動物・植物に共通するつくりは、

  • 細胞質
  • 細胞膜

である。

さらに、酸素呼吸を行っている多くの動物・植物では、細胞質中にミトコンドリアを持つ。ミトコンドリアによって酸素呼吸を行っている。(植物も酸素呼吸を行っている。) 細胞質の分類では、ミトコンドリアを細胞質に含める場合が多い。

小胞体とリボソームという構造が、動物・植物の両方の細胞に共通である。

リボソームはタンパク質を合成している。植物にもタンパク質はある。 小胞体は物質の輸送(ゆそう)に関わる。

細胞質には、このように、さまざまな小さな器官があり、これを核とともに細胞小器官(さいぼうしょうきかん、 organelle)と呼ぶ。細胞小器官どうしの間は、水・タンパク質などで満たされており、これを細胞質基質(さいぼうしつきしつ、cytoplasmic matrix)と呼ぶ。

植物の細胞にある構造[編集]

植物の細胞にのみ、ある作りとしては、細胞壁(さいぼうへき)、葉緑体(ようりょくたい)、液胞(えきほう)がある。

細胞壁(さいぼうへき、cell wall)・・・ 細胞の外側にあり、丈夫であり、植物細胞の形を支えている。主成分はセルロースという物質である。
葉緑体(ようりょくたい、英: Chloroplast)・・・ 光合成を行う部分。光合成によって、二酸化炭素と水と光エネルギーから、ブドウ糖をつくる。
液胞(えきほう、英: vacuole)・・・ 液でみたされた袋。植物細胞の中には、大きな液胞が観察できる植物もある。植物によっては、液胞が見られない場合もある。主な役割として、ブドウ糖のような代謝産物の貯蔵、無機塩類のようなイオンを用いた浸透圧の調節・リゾチームを初めとした分解酵素による不用物の細胞内消化、不用物の貯蔵がある。

動物細胞では、液胞はとても小さく、通常の顕微鏡では観察できないので、中学レベルでは、動物細胞には液胞が無いとして扱う。

「液胞」(えきほう)の「胞」(ほう)の字は、部首が「にくづき」の「胞」である。「細胞」(さいぼう)の「胞」(ぼう)の字と同じである。まちがって「泡」(あわ、ほう)を書かないように。


動物の細胞にある構造[編集]

ゴルジ体(ゴルジたい)・・・細胞内で合成された物質の濃縮に関わる。

おもに動物細胞のゴルジ体が大きく観察しやすい。じつは、植物細胞にも、すごく小さいが、ゴルジ体がある。ただし植物細胞のゴルジ体は小さすぎるので光学顕微鏡では観察できない。電子顕微鏡などで観察できる。


単細胞生物と多細胞生物[編集]

生物には、体が一つの細胞だけからなる単細胞生物(たんさいぼう せいぶつ、英: unicellular organism)と、体がいくつもの細胞からなる多細胞生物(たさいぼう せいぶつ、英: multicellular organism)がある。

私たちヒト(人間のこと)は、多細胞生物である。ヒトの体は約60兆個の細胞からできている。生物の種類によって,体をつくる細胞の個数は異なる。

  • 多細胞生物
タマネギ、ヒト、ウシ、ウマ、ミジンコ は多細胞生物である。

肉眼で見ることの出来る生物は、ふつう、多細胞生物である。 ミジンコは多細胞生物であることに注意。小さいからといって、必ずしも単細胞生物とは限らない。

  • 単細胞生物
ゾウリムシ、アメーバ、ミカヅキモ、ケイソウ、クロレラ など。

単細胞生物は、一つの細胞に、生きるのに必要なすべての機能が備わっている。

ゾウリムシのつくり[編集]

ゾウリムシの図. 1) 液胞 2) 小核 3) 細胞口 4) 食道 5) 肛門の毛穴 6) 収縮胞 7) 大核 8) せん毛(せんもう、繊毛).
ゾウリムシなど、一部の生物では、核に大核(だいかく)・小核(しょうかく)という2種類の核を持つ。
せん毛(せんもう)
微生物の体表にある毛のこと。この毛を動かすことで泳いで移動する。
細胞口'英
cytostome)
食物を取り入れる場所。
食胞(しょくほう)
食物を消化・吸収する。
収縮胞(しゅうしゅくほう)
不用物を排出する場所。周期的に縮む。

多細胞生物のつくり[編集]

  • 組織(そしき)

形や働きがよく似た細胞の集まりのことを組織(そしき、tissue)と言う。

植物 ・・・ 表皮組織、葉肉組織 など
動物 ・・・ 上皮組織、表皮組織、筋組織、神経組織 など
  • 器官(きかん)

いくつかの種類の組織が集まり、一つのまとまりになった物であり、ある決まった働きをしている物を器官(きかん、organ)という。

植物 ・・・ 根・茎・葉・花 など
動物 ・・・ 口、心臓、肺、胃、小腸、目、耳 など
  • 個体(こたい)

私たち人間一人一人は、それぞれ1個の個体である。一つの動物は1個の個体である。 1本の木も、1個の個体である。

個体は、器官が集まって、つくられる。

動物のからだ[編集]

動物の体のしくみについて学習します。

食物の消化・吸収[編集]

消化[編集]

表のような対照実験(たいしょう じっけん)により、だ液によってデンプンが分解される事が分かります。

ヨウ素液の反応 ベネジクト液の反応
だ液+デンプン の溶液 変化なし 赤褐色の沈殿
水+デンプン の溶液 青紫色 変化なし

なお、ベネジクト液は麦芽糖(ばくがとう)に反応します。よって、表の結果により、だ液によってデンプンが分解され、麦芽糖が出来ている事が分かります。


消化(しょうか、英: digestion)

ヒトの消化器

食べ物は、消化器官で、分子の細かい、水に溶けやすい物質に変化されます。分子が大きいままでは、体内に吸収できません。

あなたたち、人間は、口の中が、「つば」という液体で、しめっていますよね。 口の中から出る「つば」を、 だ液(だえき,saliva) といいます。

デンプンは、ブドウ糖分子がいくつも(何十個や何百個というほど多い)つながったものである。

だ液のアミラーゼは、このデンプンを分解し、デンプンを、麦芽糖(ばくがとう、英:maltose、malt sugar) に変える働きがある麦芽糖とは、ブドウ糖分子が2つ、つながったものである。(※ 検定教科書の範囲。東京書籍の図中に「麦芽糖」がある)。


食べ物を、体に吸収しやすいように、体内で変えることを 消化(しょうか) と言います。

※注意 「消化」の2文字目は「化ける」(ばける)の「化」(か、ばけ)です。火を消すほうの「しょうか」は「消火」(二文字目が火)ですので、まちがえないでください。


だ液によって、デンプンが麦芽糖に変わることも、消化にふくまれます。 また、消化をすることができる液体を 消化液(しょうかえき) と言います。だ液も消化液です。 だ液の中には、 アミラーゼ という物質があって、このアミラーゼがデンプンを麦芽糖に消化していることが分かっています。 またアミラーゼのように、消化液にふくまれており、消化を行っている物質を 消化酵素(しょうかこうそ) といいます。


アミラーゼはデンプン以外のものは、分解しません。タンパク質や脂肪を、アミラーゼは分解できません。アミラーゼが分解できるのは、デンプンだけです。

だ液が出てくる場所をだ液せん(だえきせん、唾液腺、salivary gland)と言います。


これら、消化酵素は、消化の前後で変化しません。化学でならった「触媒」(しょくばい)と似ていますが、ちがいもあります。(※ 発展 :)消化酵素は、熱を加えると、働きをうしなってしまい、冷ましても、消化の能力は、もどりません(※ 大日本図書の検定教科書で、発展コラムの扱い。詳しくは高校で習います)。

(※ 範囲外 :)消化酵素の、よく働く温度は、30℃~40℃くらいであり、これは動物の体温に近いです。


タンパク質の消化

タンパク質は、胃で胃液の中にふくまれる消化酵素(ペプシン)によって分解され、さらに小腸で すい液の消化酵素(トリプシン)および小腸の中にある消化酵素によって分解され、最終的に、(タンパク質は)より小さな分子であるアミノ酸になります。


脂肪の消化

脂肪は、すい液中の消化酵素(リパーゼ)のはたらきで、脂肪酸とモノグリセリドに分解されます。


まとめ

アミラーゼは、デンプンを分解する能力をもつが、タンパク質や脂肪は分解しない。

同様に、ペプシンはタンパク質を分解するが、デンプンや脂肪を分解しない。

リパーゼも、脂肪を分解するが、デンプンやタンパク質を分解しない。


このように、消化酵素は、控訴ごとに働く分子の対象が決まっている。


解剖学的な話題

さて、食べ物は、口から食道(しょくどう)を通って、つぎに胃(い)に降りてきて、胃で消化液(しょうかえき)によって細かく分解(ぶんかい)され、つぎに腸(ちょう)で栄養(えいよう)を吸収され、最後に肛門(こうもん)で糞(「ふん」。ウンチのこと。大便とも言う。)として排出されます。

口 → 食道 → 胃 → 小腸 → 大腸 → 肛門


食べ物が通るこれらの管を、 消化管(しょうかかん、gastrointestinal tract) と言います これら、消化に関わる身体の各部を 消化器(しょうかき、digestive organ) と言います。

画像説明 1.食道。 2.胃。 3.十二指腸。 4.小腸。 5.盲腸。 6.虫垂。 7.大腸。 8.直腸。 9.肛門。

吸収[編集]

  • 消化後の吸収

消化によって、デンプンやタンパク質が小さい分子に分解される理由は、小腸で吸収しやすくするためです。(デンプンなどの分子は、大きいので、そのままでは小腸の壁を通ることができないからです。)


食べ物は、胃の次には、小腸に行きます。 小腸では、栄養が吸収されます。また、小腸でも、食べ物の消化は行われます。なお、小腸の壁には、消化酵素があります。

  • 柔毛(じゅうもう)
※ 適した画像が無いので、教科書や外部サイトなどで、画像をお探しください。

小腸の内壁には、おおくのヒダがあり、さらにヒダには 柔毛(じゅうもう) という、小さな突起(とっき)が、いくつもある。(※ 範囲外 :)なお柔毛は、 「柔突起」(じゅうとっき) とも言う。

養分は、この柔毛から吸収される。柔毛の中には、毛細血管(もうさいけっかん)と リンパ管(リンパかん) があり、養分は、これらの管によって、運ばれる。

柔毛のおかげで小腸の表面積が大きくなり、栄養の吸収にも効率がよい。柔毛の長さは約1mmと短いが、小腸の表面積は約200m2にも、およぶ。200m2は、テニスコート1面分もの広さだ。


水分は、主に小腸で吸収されるが、一部の水分は大腸で吸収される。


なお、消化されなかった食物の繊維などは、便(べん)として肛門(こうもん)から排出される。

貯蔵[編集]

  • 養分の貯蔵(ちょぞう)

小腸で吸収されたブドウ糖の一部は、肝臓(かんぞう)でグリコーゲン という炭水化物にかえられる。 グリコーゲンになることで体内で保存がしやすくなる。体のエネルギーが不足する時など必要に応じてグリコーゲンがブドウ糖に分解されてエネルギー源になる。(※ 備考: ) グリコ-ゲンとして貯蔵できる量には限りがあるので多すぎる糖分を摂取すると体内では脂肪として合成される(※ 東京書籍の検定教科書に傍注あり)。

体内に吸収されたアミノ酸の一部は、肝臓でタンパク質に合成されて全身に運ばれ体をつくる材料としてのタンパク質として活用される。

体内に吸収された脂肪酸とモノグリセリドは、ふたたび脂肪になって貯蔵されエネルギー源として利用される。

肝臓の働き(検定教科書で習う範囲内)

肝臓は、ヒトの大人では 1000g~1500g もの質量のある大きな臓器です。

肝臓の働きは、

  • 小腸で吸収された、ブドウ糖やアミノ酸を、貯蔵しやすい物質に合成する。
  • 胆汁()たんじゅう)を作る。
  • アルコールを分解する。
  • アンモニアを尿素に変える。

お酒にはエタノールが含まれますが、肝臓でエタノールが分解されます。

また、細胞中のタンパク質の分解などでアニモニアが出来ますが、アンモニアは人体に有害なので肝臓はアンモニアを(人体に無害な)尿素(にょうそ)に変えます。そして、尿素は、尿(にょう)に含まれる物質として対外に排出されます。

このような仕組みで、ヒトは体内にアンモニアがたまらないようにしています。

肝臓には、脂肪の消化を助ける胆汁をつくる働きもあり胆汁は胆のう(たんのう)に送られます。なお、胆のうは、肝臓とは別の臓器です。最終的に胆汁は、胆のうにたくわえられたあと腸に送り出されます。


肝臓の働き(検定教科書の範囲外)
胃から小腸へつながる、小腸の最初の部分は 十二指腸(じゅうに しちょう) と言います。

そして 肝臓(かんぞう) から出る たん汁(たんじゅう、胆汁) と、 すい臓(すいぞう、膵臓) から出るすい液が、小腸の消化液です。たん液とすい液とが、十二指腸に流れこんで、食べ物とまざり、消化液の混ざった食べ物が、小腸の中を進みます。

; すい液(pancreatic juice)

すい液は多くの消化酵素を含んでいます。
アミラーゼ
デンプンを麦芽糖まで分解します。
トリプシン
ペプトンをします。
リパーゼ
脂肪を、脂肪酸とモノグリセリドに分解します。
ヌクレアーゼ
核酸分解酵素の総称です。
たん汁(bile)
たん汁には消化酵素はふくまれていません。たん汁は脂肪を水と混ざりやすくさせます。たん汁によって脂肪が水と混ざることで脂肪はリパーゼなどで消化をされやすくなります。
膜消化(まくしょうか)
また、小腸の膜にも消化酵素があるので、それによっても消化が行われます。この小腸の膜による消化を、膜消化(まくしょうか)と言います。
なお、(※ 範囲外 :)消化酵素は、マルターゼや、スクラーゼやラクターゼなどです。

消化器では、最終的には、炭水化物は ブドウ糖(ブドウとう) まで分解されます。タンパク質は アミノ酸(アミノさん) まで分解されます。脂肪の消化は、 脂肪酸(しぼうさん) と モノグリセリド まで分解されます。柔毛で体内に吸収された脂肪酸やモノグリセリドは体内でふたたび脂肪に合成されリンパ管に吸収されてやがて血液に運ばれます。

大腸(だいちょう、英: large intestine)
大腸では消化は行われません。大腸は食物の水分を吸収します。大腸では栄養は吸収されません。


排出[編集]

ひにょう器系。
KIDNEY(キドニー)が腎臓(じんぞう)のこと。
BLADDER(ブラッダー)が ぼうこう のこと。


すでに説明したかもしれませんが(wikiでは版によって説明の状態が異なる)、食物中の消化しきれなかった繊維は、肛門から便(べん)として排出されます。


この他にも、いったん体内に吸収された物質でも、最終的に使い終わって不要になったら、対外に排出されます。

呼吸も排出である
※ 大日本図書では、「呼吸」も排出の単元にも分類しています。

体内に吸収された養分が消費される際などに、肺から吸収した酸素を消費して、二酸化炭素が発生します。そして、二酸化炭素は人体には不要なので、血液によって肺に二酸化炭素は送られ、呼吸のさいに肺から二酸化炭素は排出されます。

※ 詳しくは「呼吸」の単元で習います。


アニモニアと尿素の排出

タンパク質は分子中に窒素(元素記号 N )を含む。タンパク質やアミノ酸が分解されると、そのままではアンモニア( 化学式:NH3 )という有毒な物質ができてしまう。(※ 大日本図書の教科書に「NH3」の文字あり。)

タンパク質の分解で出るアンモニアは、人体に有害なので、肝臓によって人体に無害な尿素(にょうそ)に変えられたあと、血液によって腎臓(じんぞう)に尿素は送られ、さらに ぼうこう などに送られ、水分とともに尿(にょう)として排出されます。

便は、未消化で吸収されなかったものですが、しかし尿のもとになるアンモニアや尿素は吸収されたタンパク質から作られたものです。

なお、尿の約96%は水分です(※ 学校図書)。

その他

じん臓(じんぞう、腎臓)の位置は、体内の背中側の、横隔膜(おうかくまく)の下の、腰(こし)のあたりにある。 じん臓は、血液から、不要な物を、こしとって、血液をきれいにする働きをしている。 尿素も、じん臓で、こしとられる。 こしとられた尿素や不要物は、余分な水分といっしょに、 ぼうこう (膀胱、urinary bladder) へと、送られる。このようにして、ぼうこうで、 尿 (にょう、Urine ユレン) が、たまる。

ちなみに、腎臓で こしとられて つくられる尿の量は、最終的には、1日で1リットルくらいの尿として排出する。じん臓では、いったん、1日あたり、なんと160リットル近くも、尿を作る。だが、べつに、この水量のほとんどは排出されず(もし、そんなに多くの水分を体外へ排出したら、死んでしまう)、尿の中にある水分や、ブドウ糖やミネラルなどの栄養を再吸収して、あらためて不要なものだけを排出するので、最終的に、体外へは1日あたり1リットルくらいの尿として排出する。

なお、腎臓でいったん作られる、160リットル近い尿のことを、 原尿(げんにょう) と言う。


呼吸[編集]

私たち人間は、空気を吸っています。 空気をすって、空気中の酸素を体に取り入れて、二酸化炭素を、はき出しています。 このように、酸素をすって、二酸化炭素を吐くことを 呼吸(こきゅう) と言います。

吐き出す空気に二酸化炭素がふくまれていることを確認するには、石灰水にストローなどを使って息を吹き込めば、白くにごることから分かります。もしくは、石灰水を入れたふくろに息を吹き込めば、石灰水が白くにごります。

人間は、体内の肺(はい)という部分で、酸素を体内に吸収し、二酸化炭素を体外に出して、呼吸をしています。

肺(はい)。

肺は、左右に1個ずつあります。肺は、左右を合わせれば2個あります。

空気は、のど や鼻から、肺へと向かって吸い込まれます。 のどや鼻を通って、 気管(きかん) を通り、気管の先が2本に分かれていて、この気管が2本に分かれている部分を 気管支(きかんし) といいます。

そして、気管支の先には、肺が、ついています。 この肺で、酸素が体の中に吸収され、二酸化炭素が、排出(はいしゅつ)されます。肺の中で酸素と二酸化炭素の交換(こうかん)が、おこなわれています。

鼻から、気管、気管支、肺までを 呼吸器(こきゅうき) と言います。以上にくわえて、横隔膜(おうかくまく)や、ろっ骨(ろっこつ、肋骨)を、呼吸器にふくめる場合も、あります。

横隔膜(おうかくまく)が下がると、肺がふくらむので、肺に空気が吸い込まれます。横隔膜が上がると、肺が元に戻って、空気が吐き出されます。

肺の中には、気管支が、より小さな細気管支に枝分かれしていて、その先に 肺胞(はいほう) という小さな ふくろ が、いくつも ついています。酸素の吸収と、二酸化炭素の排出は、この肺胞(はいほう)で行われています。肺胞で、酸素と二酸化炭素の交換(こうかん)が、おこなわれています。

※ 範囲外: 人体の肺の肺胞の数は、左右合わせて、おおよそ数億個です。(※ 肺胞の正確な個数は、文献によって数がちがうので、中学・高校の時点では覚える必要は無い。)

肺胞の一つ一つのまわりには、 毛細血管(もうさいけっかん) という細かい血管(けっかん)がついています。なお、血管とは、血液を運んでいる管です。肺胞は、毛細血管に酸素を送っています。また、毛細血管から、二酸化炭素を受け取っています。


なお、口から食べ物が入った時に食べ物が通る管である 食道(しょくどう) と、気管とは、べつの管である。

人間や、ほかのほ乳類は、肺で呼吸をしています。肺で呼吸をすることを 肺呼吸(はいこきゅう) と言います。 人間の呼吸は、肺呼吸です。ほ乳類の呼吸は、肺呼吸です。

しかし、魚は、エラで呼吸をします。魚には、肺はありません。 魚は、口から水を吸い込み、その口の中の水をエラに通して、エラで水から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出します。 なお、魚を、魚の外側から見た時に、目のうしろにあるヒレのようなものは、「えらぶた」という物であって、エラではない。エラは、えらぶたに下に、かくれている。 エラの内部には、毛細血管が、たくさん、あります。


※ 検定教科書にない話題

クジラとイルカは、ほ乳類です。クジラとイルカは、海に住んでいますが、ほ乳類です。クジラもイルカも、肺で呼吸しています。クジラには、エラが、ありません。イルカには、エラが、ありません。

魚類だけでなく、イカもタコも、エラで呼吸しています。エビも、エラで呼吸しています。貝も、エラで呼吸しています。


鳥類と、は虫類(トカゲやヘビなど)は、肺呼吸です。カメは、は虫類なので、カメは肺呼吸です。

両生類(カエルなど)は、成体(せいたい)は肺呼吸ですが、成体になる前の子(たとえばオタマジャクシなど)は、エラ呼吸です。


血液のはたらき[編集]

血管[編集]

ヒトの、主な血管
  • 動脈

心臓から出て行く血液が運ばれている血管を、動脈(どうみゃく、英語: artery)と言う。動脈は、壁(かべ)が厚く、弾力性がある。

  • 静脈
静脈弁。血液の逆流を防ぐ

、vein、Venae) 心臓に戻っていく血液が運ばれている血管を、 静脈(じょうみゃく) と言う。静脈の中には、血液が逆流しないための弁(べん)が、ある。

  • 毛細血管

とても細かく枝分かれをしていて、血管の壁もうすい毛細血管(もうさいけっかん、英語: capillary vessel, capillary)という血管が、体のいろんな場所にある。毛細血管では、栄養のやりとりや、酸素や二酸化炭素のやりとりをしている。


呼吸との関係[編集]

動脈のうち、肺に血液を送り出す肺動脈(はい どうみゃく)は、二酸化炭素が多く、酸素が少ないです。

この理由は、肺動脈には、他の臓器などで酸素の消費の終わった血液が送られてくるので、よって酸素が少なく二酸化炭素が多いのです。

※ 注意: 「肺動脈」の「肺」という字面(じづら)にひきづられて、勘違い(かんちがい)しないようにしよう。

ただし、肺と心臓とが、比較的に近くにある事から、肺と心臓の間の血管以外では、動脈には酸素が多いのが普通です。

※ 中学の範囲では、肺動脈はうまく省略し、動脈の血液は酸素が多いとしている(※ 東京書籍など)。

ともかく、肺で酸素を血液にたっぷりと取り入れたあと、酸素をふくんだ血液は肺静脈を通っていったん心臓に戻ります(肺循環(はい じゅんかん))。

心臓から肺動脈、肺、肺静脈を通って心臓に戻る血液循環のことを「肺循環」(はい じゅんかん)と言います。

そして、肺循環を終わったあとの血液は酸素を豊富に含むので、さらに別の動脈によって、全身の各部に送られ、その各部の毛細血管で酸素が消費されて二酸化炭素に置き換わったあと、今度は静脈によって回収され、心臓に静脈血が集まります(体循環(たい じゅんかん))。

心臓から、肺以外の全身を通って心臓に戻る血液循環のことを「体循環」(たい じゅんかん)と言います。

そして、体循環を終えて心臓に戻ったあとの血液が、そして肺に送り出してまた、酸素をたっぷり取り入れる(肺循環の再開)、・・・という繰り返しの流れになる。

※ 心臓そのものの働きは、単に血液を送り出したり回収するためのポンプとしての役割であるが、ではなぜ、そのようなポンプ的な役割が人体に必要かというと、大きな理由のひとつ、細胞の活動によって消費された酸素を補い、不要な二酸化炭素を排出するために、血液を肺に送り出すために心臓も必要であるという仕組みになっている。
このように中学では、肺と心臓を関連づけて覚えること。中学理科のこの単元は、そういう教育内容になっている。


なお、毛細血管からの帰りなどで、酸素の少ない血液のことを「静脈血」と言います。このため、肺動脈を通って心臓から肺に向かう血液は、流れている場所は動脈ですが、しかし血液中の酸素が少ないので、肺動脈の血液の分類上は「静脈血」になります(※ 東京書籍、学校図書、大日本図書の見解)。

肺動脈は、血管の分類は、心臓から送り出される血液の血管なので、動脈です。


同様に、肺から出たあとの、酸素を多く含んだ血液のことを「動脈血」と言います。このため、(肺から心臓に向かう)肺静脈の血液は、分類上では、動脈血になります。

心臓[編集]

図1.ヒトの心臓(しんぞう)。
血液の流れは、白い矢印で、かかれている。

ヒトの心臓は、筋肉で、出来ている。なお、心臓の筋肉を 心筋(しんきん) という。

心臓は、ふくらんだり、ちぢんだりを、たえまなく、くりかえしていて、血液を動かしている。

心臓のつくりは、4つの大きな部屋に分かれている。 右心室(うしんしつ、英: right ventricle) 、 右心房(うしんぼう、right atrium) 、 左心室(さしんしつ、Left ventricle) 、 左心房(さしんぼう、Left atrium) という、4つの部屋に分かれている。

なお、心臓で言う「左」とか「右」の向きは、その心臓を持っている側の人間から見た場合の、向きである。

だから、図1.を見ている者から見た場合では、見ているあなたの左側に、右心室や右心房が来る。見ているあなたの右側に、左心室や左心房が来る。

  • 左心房

肺から送られた血液は 肺静脈(はいじょうみゃく,pulmonary vein) を通って、左心房(さしんぼう)まで、たどりつく。

  • 左心室

左心室(さしんしつ)から 大動脈(だいどうみゃく、aorta) へと血液を送り、大動脈から全身へと血液が送られる。


心房と心室について

心房と心室は、交互(こうご)に、ちぢむ。心房がちぢんでいる時は、心室は、ちぢまない。いっぽう心室がちぢんでいる時は、心房は、ちぢまない。

  • 右心房

全身の血液が、 大静脈(だいじょうみゃく、vena cava) を通って、心臓の右心房(うしんぼう)へと血液が戻って来る。

  • 右心室

右心房へともどってきた血液は、右心房から右心室へと送られる。そして右心室から、肺動脈(はいどうみゃく)へ送られる。肺動脈を通って肺へ血液が送られている。


肺と血液との関係[編集]

血液中の酸素は、どこから供給されているのかというと、肺で、血液は酸素を受け取っています。なので、肺から出てきたばかりの血液は、酸素が多いのです。 逆に、肺へ、これから送られる血液は、酸素が少なく、二酸化炭素が多いです。

肺へ送られる血液の通る血管は、心臓の右心室(うしんしつ)からの肺動脈(はいどうみゃく)です。つまり、肺動脈は、酸素が少ないです。肺から出てきたばかりの血液が通る血管は、肺静脈(はいじょうみゃく)です。肺静脈の血液は、これから左心房(さしんぼう)に流れ込みます。

血液の成分[編集]

ヒトの血液には、赤血球(せっけきゅう、英: Red blood cell)、白血球(はっけっきゅう、英: White blood cell)、血小板(けっしょうばん、英:Platelet)などの固形成分と、血しょう(けっしょう、血漿)という透明な液体の成分がある。

左から赤血球、血小板、白血球
  • 赤血球
赤血球

中央のくぼんだ円盤状の1個の細胞。身体中の細胞に酸素や栄養を運ぶはたらきをしている。色の赤いヘモグロビン(hemoglobin ヒーモグロービン)というタンパク質の物質を赤血球がふくむため、血液は赤く見える。ヘモグロビンが酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(てつ)をふくんでいる。鉄を化学式で書けば、鉄の化学式は Fe だから、つまりヘモグロビンは Fe をふくんでいる。

学校給食など食事の際、鉄分をふくんだレバーやホウレンソウなどが、ときどき食品に出される理由のひとつは、鉄分は血液に欠かせない重要な物質だからである。

ヘモグロビンは、酸素の多い所では、酸素とむすびつき、酸素の少ない所では、酸素を放す(はなす)。このヘモグロビンのしくみで、酸素の多い肺から体の各部へと酸素が運ばれる。

赤血球は細胞だが、ほ乳類の赤血球には、核は無い。

なお、人間の場合、ヘモグロビンは赤血球にあるが、ミミズでは血しょうにヘモグロビンがある。

人間の場合、呼吸で生じる二酸化炭素は、赤血球には、ふくまれていない。呼吸で生じる二酸化炭素は、血しょう(けっしょう)にふくまれて、運ばれる。

(参考) 一酸化炭素の危険性

一酸化炭素( 化学式: CO )は血液中のヘモグロビンと反応して結びついてしまう。そのため酸素( 化学式: O2 )とヘモグロビンが結合できなくなり、血液による酸素の運搬能力を低下させる害がある。不完全燃焼などの際に、炭素と大気中の酸素が反応して一酸化炭素が発生する。

たばこの有名な有害成分は以上の3種だが、この他にも約200種の有害成分がある。

  • 白血球(はっけっきゅう)

1個の細胞であり、体外から侵入した異物や病原体を取りこみ、これらを分解することで、体を守る。核がある。 このように、病気から体を守る仕組みを免疫(めんえき、immunity)という。(※ 中学の保健体育の範囲内) 白血球は、この免疫に、ふかく関わっている。

白血球の種類には、リンパ球(りんぱきゅう)やマクロファージなどがある。(※ 中学の保健体育の範囲内)

発展: 白血球と免疫のしくみ(※ 中学の保健体育の範囲内)

・好中球
好中球(こうちゅうきゅう)はリンパ球の一種で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。ケガをしたときに傷口にできる うみ(膿)は、好中球が死んだものである。
・マクロファージ
マクロファージとは、人体など動物の細胞の一種で、病原体を取り込んで破壊する細胞。マクロファージが、病原体の情報を、リンパ球の一種であるヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう)に伝える。ヘルパーT細胞はリンパ球の一種である。
ヘルパーT細胞は、B細胞(ビーさいぼう)とキラーT細胞(キラーティーさいぼう)に、それぞれ違った指令を出す。指令を受けたキラーT細胞は、病原体に感染した細胞を破壊する。指令を受けたB細胞は、病原体を倒すための抗体(こうたい、antibody)を作って放出し、病原体に抗体を付着させる。
病原体に抗体がつくと、マクロファージが病原体を取り込みやすくなったりするので、病原体を倒しやすくなる。
  • 血小板(けっしょうばん)

血管がやぶれたときに、血液をかためることで、出血をふせぐ仕組みに関係している。核は無い。


  • 血しょう(けっしょう、血漿、blood plasma)

約90%は水だが、血しょう(けっしょう)に、ブドウ糖やアミノ酸などの栄養分が溶けており、血液の流れによって、これらの栄養が全身に運ばれる。また、尿素(にょうそ)などの不要物も血しょうに溶けている。また、ホルモンも血しょうに溶けている。なお、ホルモンとは、体の働きを調節する物質である。(※ 中学の保健体育の範囲内) 

「血糖値」(けっとうち)とか「血糖量」(けっとうりょう)とは、この血液中に溶けているブドウ糖の濃度のことである。

呼吸で生じる二酸化炭素は、血しょう に ふくまれて運ばれる。

  • 参考: イカとヘモシアニン
(※ おもに高校の範囲。高校入試でも出る場合がある。)

イカの血液には、ヘモグロビンが無い。かわりに、銅(どう)をふくむヘモシアニンという物質が、イカの血液にふくまれている。イカの体内では、ヘモシアニンが血液の流れによって酸素を全身に運んでいる。

ヘモシアニンをふくむ血液の色は、やや青色である。よって、イカの血液は青い。

そのほかの内蔵[編集]

肝臓[編集]
  • アンモニアの処理(処理)


ほ乳類では、このアンモニアを、肝臓(かんぞう)で、毒性のひくい 尿素 (にょうそ)という物質に変える。尿素は水に溶ける。なお、最終的に尿素は、尿(「にょう」・・・オシッコのこと。)とともに、体外へ排出される。尿については、肝臓の他にも、腎臓(じんぞう)が関わる。

  • 有毒な物質の分解

肝臓(かんぞう)では、血液に入った有毒な物質を分解する。

  • 胆汁(たんじゅう)を作る

消化液の 胆汁 (たんじゅう) は、肝臓で作られている。胆汁は、胆のう (たんのう) へ送られ、胆のうから十二指腸へと送られている。


参考: 糖尿病[編集]

(※ おもに高校の範囲)

健康診断などの尿検査(にょうけんさ)では、尿の中に、血液や糖(とう)などが混ざっていないかなど、さまざまな物を測っている。

糖尿病は、尿の中に、とても多い糖分がふくまれる病気である。この病気は、けっこう危険であり、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こすという症状(しょうじょう)がある。糖尿病には、このような各器官での合併症(がっぺいしょう)があるため、けっこう危険な病気である。


糖尿病(とうにょうびょう、diabetes mellitus)とは、すい臓に異常が起きて、本来なら すい臓から分泌(ぶんぴ)されるべきインスリン(insulin)というホルモンの分泌(ぶんぴ)が、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。もし、本来どおりにインスリンが細胞と結合すると、ブドウ糖を消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、ブドウ糖が余ってしまう。

その結果、原尿にブドウ糖が高濃度で含まれるので、原尿のブドウ糖を吸収するさい、ブドウ糖が多すぎて吸収しきれず、そのため体外に出される尿に高濃度のブドウ糖が含まれて排出される。

(もし健康なヒトなら、原尿のブドウ糖は、ほぼ100%再吸収されてるので、尿中には高濃度のブドウ糖は排出されない。なのに高濃度のブドウ糖を含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。)


高血糖が長く続くと、血管が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、けっこう危険な病気である。

糖尿病になる原因は、大きくは二つの種類に分けられる。

まず、生まれつきの理由で、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合の1型糖尿病(いちがた とうにょうびょう)がある。この1型の場合、若くして発症することが多い。

もう一つは、肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などにより、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これを2型糖尿病という。日本では、II型糖尿病が多く見られている。


糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。

2型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。


参考: 甲状腺[編集]

甲状腺(こうじょうせん)の場所

ヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺(こうじょうせん)という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。(※ くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。)

さて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどに多く含まれている。

さて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無い。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射能のある様々な物質が作られ、その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。

原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区にヨウ素剤(ようそざい)が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。

体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。

なお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。