位相空間論

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このページでは、位相空間に関する基本的な一般論を解説する。集合論と解析学の初歩知識は仮定するので、おぼつかない読者は集合論解析学基礎などを参照のこと。位相空間に関するより進んだ内容は、例えば位相幾何学などにいずれ書かれるだろう。

命題にはなるべく証明を付したが、まだ書きかけの教科書なので、証明のついていない命題もある。証明は一段下げて書いたので、事実だけをすばやく知りたいときは読み飛ばすこともできるが、はじめはなるべく証明を追うべきである。また、証明のまだついていない命題に対しては、読者は積極的に自分で証明を作りながら読み進めるべきである。

位相空間とはなにか[編集]

位相空間とは、集合に対して、「位相」というある種の構造を付加したもののことである。

解析学においては、点列の収束や関数の連続性といった概念はとても重要な概念であった。これらの概念はEuclid空間でしか定義されていないが、もし他の集合でも同様の概念を定義できれば、その集合上でも解析学や幾何学が展開できるだろう。位相という概念を考える動機はここにある。すなわち、Euclid空間が持っているある種の構造を抜き出して特徴づけることで、他の集合にも同様の構造を与え、同じような理論を展開しようというものである。

それでは、具体的にはどのような構造を与えることが必要十分なのであろうか。それを考える上で、次の命題が重要な手がかりとなる。

命題 実数上の関数f : \mathbb{R} \to \mathbb{R}について、次は同値

  1. fは連続関数
  2. 任意の開集合U \subset \mathbb{R}に対して、f ^{-1} (U)は開集合
(証明)
fを連続関数、Uを開集合とする。x_0 \in f^{-1}(U)を任意にとり、y_0=f(x_0)とする。y_0 \in Uであり、Uは開集合なので、ある\varepsilon>0が存在して、|y-y_0|<\varepsilon \Rightarrow y \in Uである。fは連続なので、この\varepsilonに対してある\deltaが存在して、|x-x_0|<\delta \Rightarrow |f(x)-y_0|<\varepsilonである。すなわち、|x-x_0|<\delta \Rightarrow x \in f^{-1}(U)である。したがって、f^{-1}(U)は開集合である。
次に、任意の開集合Uに対してf^{-1}(U)は開集合だとする。x_0 \in \mathbb{R},\varepsilon>0を任意に取り、y_0=f(x_0)とする。U=\{y \in \mathbb{R}||y-y_0|<\varepsilon\}は開集合なので、f^{-1}(U)=\{x \in \mathbb{R}||f(x)-y_0|<\varepsilon\}は開集合である。すなわち、ある\delta>0が存在して|x-x_0|<\delta \Rightarrow |f(x)-f(x_0)|<\varepsilonである。よって、fは連続である。//

この命題からわかることは、これまで関数の連続性は「近くが近くに移る」という概念だと理解してきたが、実は「開集合の逆像が開集合である」という概念だと言い換えることができる、ということである。すなわち、「開集合」という概念さえ定義できれば、「近く」という概念を定義せずとも連続性を扱えるということである。

位相空間の定義[編集]

開集合の公理[編集]

前節では、集合に対して「開集合」という概念を与えると、集合の間の写像に対して「連続」という概念を考えることができそうだということを見た。しかし、「開集合」という概念の与え方が滅茶苦茶であったら、純粋に論理的に見るだけならば整合性はあったとしても、実際上の意味は皆無だろう。「開集合」という概念の与え方にある程度の制限をつけておく必要がある。もちろん、その制限を与える根拠は、既に知っているEuclid空間の開集合に求められるだろう。そのように考え、次のような制限を与えることにする。

公理 集合Xのある部分集合族\mathcal{O}が次の3条件を満たすとき、\mathcal{O}はXに位相を与える、あるいは単にXの位相であるといい、集合S \in \mathcal{O}をXの開集合という。開集合の補集合を閉集合という。集合Xと位相\mathcal{O}の組(X,\mathcal{O})を位相空間という。

  1. X \in \mathcal{O} , \phi \in \mathcal{O}
  2. O_1,O_2 \in \mathcal{O} \Rightarrow O_1 \cap O_2 \in \mathcal{O}
  3. \{ O_\lambda | \lambda \in \Lambda \} \subset \mathcal{O} \Rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda} O_\lambda \in \mathcal{O}

Euclid空間における通常の意味での開集合がこの公理を満たしていることを確認されたい。Euclid空間に通常の意味での開集合を定義することで与えられる位相を、Euclid位相と呼ぶ。

注意すべきことは、同じ集合に対して異なる位相を与えることも可能であり、その場合、異なる位相を与えれば異なる位相空間とみなされるということである。例えば実数全体の集合にEuclid位相以外の位相を入れることも可能である。特に集合が有限集合の場合はその集合に何種類の位相を与えることができるかまで調べることが可能である(それを数えてもあまり意味はないが)。

また、一般に、任意の集合Xに対して次のような2つの位相を与えることができることがすぐわかる。

\mathcal{O} = \{ S | S \subset X \}  (これを離散位相という)

\mathcal{O} = \{ X , \phi \}  (これを密着位相という)

これらの位相はもっとも極端な位相の一例である。これから先「位相空間であって、さらに~~という条件を満たすもの」といって幾種類かの位相空間を特別に扱うが、しばしばEuclid位相はその性質を満たしてしまうので、その条件がいったい何を要求しているのかがわかりづらい。離散位相や密着位相はしばしばその条件を満たさないので、理解の役に立つだろう。

連続写像[編集]

位相空間と開集合を定義することができたので、これによって、位相空間の間の写像の連続性を定義できることになる。

定義 (X,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)を位相空間とする。写像f:X \to Yが連続であるとは、U \in \mathcal{O}_Y \Rightarrow f^{-1}(U) \in \mathcal{O}_Xを満たすことである。特に、写像が連続かつ全単射で、逆写像も連続なとき、同相写像という。

2つの位相空間の間に同相写像があるとき、この2つの位相空間は同相であるという。

群同型などの定義を知っている読者は、同相写像の定義に「逆写像も連続なとき」という条件がわざわざついていることに違和感を感じるかもしれない。だが群などの場合は、全単射な準同型は逆写像も必ず準同型になることが保証されるので、たまたまこのような条件が不要なるというだけである。位相空間の間の連続な全単射の逆写像は必ずしも連続になるとは限らないので、この条件がなければ2つの位相空間が同相という関係が(対称律を満たさないので)同値関係ではなくなってしまう。

 元が2つ以上ある集合Xに離散位相を入れた空間をX_dとし、密着位相を入れた空間をX_tとする。このとき、恒等写像i:X_d \to X_tは連続であるが、逆写像i:X_t \to X_dは連続でない。

開核と閉包[編集]

位相空間Xとその部分集合Aについて、Aに含まれるXの開集合で(包含関係について)最大のものをAの開核または内部といい、A^\circであらわす。また、Aを含む閉集合で最小のものをAの閉包といい、\bar{A}であらわす。差集合\bar{A} \setminus A^\circをAの境界といい、\partial Aであらわす。また、X=\bar{A}を満たすとき、AはXで稠密であるという。

誘導位相・部分位相・商位相[編集]

誘導位相[編集]

集合Xと位相空間(Y,\mathcal{O}_Y)の間に写像f:X \to Y があるとする。この状況においてXに新たに位相を与えるとすれば、どのような位相を与えるのが自然だろうか?当然、写像fが連続になるように与えるのが自然であろう。すなわち、

\mathcal{O}_X=\{f^{-1}(U)|U \in \mathcal{O}_Y\}

とすればよさそうである。実際、このように定めると位相空間の公理を満たす。このようにして与えられるXの位相を、写像fによって誘導される位相という。

部分位相[編集]

(X,\mathcal{O}_X)を位相空間とする。Xの部分集合Sに位相を与えるには、包含写像が誘導する位相を与えるのが一般的である。すなわち、

\mathcal{O}_S= \{ U \cap S|U \in \mathcal{O}_X \}

このようにして定める位相を、部分位相ないしは相対位相という。以下、特に断りがなければ位相空間の部分集合には部分位相を与える。部分位相を与えられた部分空間を部分空間という。

整数の集合\mathbb{Z}はEuclid空間\mathbb{R}の部分集合なので、部分位相を入れることができる。この位相は離散位相と一致する。

これを示せ。

商位相[編集]

(X,\mathcal{O}_X)を位相空間とする。Xを同値関係で割った商集合X/~に位相を与えるには、次のように与えるのが一般的である。

\mathcal{O}_{X/\sim} = \{ U | \pi ^{-1} (U) \in \mathcal{O}_X \}

ただし\piは商集合への自然な全射である。自然な全射が連続となるように位相を定めたと理解できる。このようにして定める位相を、商位相ないし等化位相という。以下、特に断りがなければ位相空間の商集合には商位相を与える。商位相を与えられた位相空間を商空間という。

Euclid空間\mathbb{R}上の同値関係~をx \sim y \Leftrightarrow x-y \in \mathbb{Z}で定める。このとき、商空間\mathbb{R}/\simは、\mathbb{R}^2の部分空間S^1=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2|x^2+y^2=1\}と同相である。

これを示せ。

開集合の基と積位相[編集]

基と準基[編集]

位相空間(X,\mathcal{O}_X)において、Xの部分集合族\mathcal{B}の部分集合\mathcal{U}を用いて任意の開集合UU=\bigcup \mathcal{U}と表されるとき、\mathcal{B}はこの開集合系のであるという。位相空間が高々可算の濃度からなる基を持つとき、この空間は第二可算公理を満たすという。

逆に、部分集合族を任意に与えたとき、その部分集合族を基とする開集合系が存在するだろうか。一般には存在しないが、部分集合族\mathcal{B}が次の条件を満たせばよい。

命題 集合Xの部分集合族\mathcal{B}が次の条件を満たすとき、\mathcal{O}=\left\{ \bigcup \mathcal{U}| \mathcal{U}\subset\mathcal{B} \right\}は開集合系の公理を満たし、\mathcal{B}を基とする開集合系となる。

  1. \bigcup\mathcal{B}=X
  2. \forall B_1 ,B_2 \in \mathcal{B} , \exists \mathcal{V} \subset \mathcal{B} \ s.t. \ B_1 \cap B_2 = \bigcup \mathcal{V}

では、この条件を満たさない部分集合族から位相を構成するにはどうすればよいだろうか。そのためには、次のように修正すればよい。

命題 集合Xの部分集合族\mathcal{B}'\bigcup\mathcal{B}'=Xを満たすとき、\mathcal{B}=\left\{\bigcap_{i=1}^{n}S_i|S_i \in \mathcal{B}' \right\}は開集合の基となる条件を満たす。

すなわち、族に属する集合たちの有限個の交わりを追加するのである。このようにして作った\mathcal{B}を基とする位相を\mathcal{B}'が生成する位相といい、\mathcal{B}'をこの位相の準基という。

なお、\mathcal{B}が基となる条件を満たす場合、\mathcal{B}が生成する位相は\mathcal{B}を基とする位相に他ならない。

積位相[編集]

位相空間(X_i,\mathcal{O}_{X_i}) \ (i=1,2,...)の直積に位相を入れることを考える。部分位相や商位相の場合と同じように、直積の場合は第i成分への射影p_i : X_1 \times X_2 \times ... \to X_iが連続になるような位相を入れることを目標にしたい。

最も安直な発想をするならば、\mathcal{S} = \cup_{i=1,2,...} \{ p_i^{-1}(U) | U \in \mathcal{O}_{X_i} \}という集合族が考えられる。しかし、この集合族は位相空間の公理を満たさず、開集合系ではない。だが、前節で見た開集合基となるための条件は満たしている。そこで、直積集合には、\mathcal{S}によって生成される開集合系によって位相を与えることにする。このようにして与えられる位相を積位相という。以下、特に断りがなければ位相空間の直積には積位相を与える。

連結・コンパクト・Hausdorff[編集]

この項では、位相空間の中で特別なよい性質を満たすものに特別な名前を与えていく。これらの性質がどのようなものであるかをよく理解するために、本文中で与える例のほかにも、それぞれの性質を満たす位相空間と満たさない位相空間の例を作りながら読むとよいだろう。

連結空間[編集]

位相空間が連結であるとは、直感的にはその空間が「繋がっている」ということである。より厳密には下のように定義される。

定義 位相空間Xが連結であるとは、Xの開かつ閉な部分集合はX自身と空集合に限ることである。

この定義が何を言わんとしているかを少し直感的に解説する。数直線\mathbb{R}の部分空間[0,1] ∪ [2,3]を考える。この集合は、直感的には「繋がっていない」。ところで、この集合の部分集合[0,1]は開集合であり、また[2,3]も開集合である(よくわからなければ部分位相の定義を確認せよ)。したがって、[0,1]と[2,3]は開集合であり、また閉集合でもある。ところが、直感的に見て「繋がっている」部分空間[0,1]を考えると、そのような開かつ閉な部分集合はありそうにない。以上の例から、この定義の妥当性が少しは納得できただろうか。

命題 連結集合の連続写像による像は連結である。

(証明)
Xを連結な位相空間、Yを位相空間、f:X \to Yを全射な連続写像とする。Yが連結でないと仮定すると、Yの空でない真部分集合であって、開かつ閉であるものが存在する。これをUと書き、V=Y \setminus Uとする。U,Vは開集合で、fは連続写像なので、f^{-1}(U),f^{-1}(V)は開集合である。また、f^{-1}(U)=X \setminus f^{-1}(V)であり、したがってf^{-1}(U)は閉集合である。また、fは全射なので、f^{-1}(U),f^{-1}(V)は空でない。したがって、f^{-1}(U)はXの開かつ閉な空でない真部分集合であり、このような集合が存在することは矛盾。ゆえにYは連結である。//

命題 連結集合の直積は連結である。

一方、連結集合の部分集合は連結とは限らない。\mathbb{R}は連結なので、先ほど挙げた例が反例になっている。

連結性とよく似た概念に、弧状連結性がある。

定義 位相空間Xが弧状連結であるとは、\forall a,b \in Xに対して、ある連続写像\gamma : [0,1] \to Xであって\gamma(0)=a,\gamma(1)=bを満たすものが存在すること。

つまり、位相空間Xの任意の2点を結ぶ「弧」がある、ということである。

命題 弧状連結な位相空間は連結である。

ところが、連結であっても弧状連結であるとは限らない。反例を作ってみよ。(少し難しい)

コンパクト空間[編集]

位相空間Xの開集合の族であって、\bigcup \mathcal{U} = Xを満たすものを開被覆という。Xの任意の開被覆が、そのうちの有限個だけをとってもやはり開被覆となっているとき、Xはコンパクトであるという。

コンパクトな集合の例と、コンパクトでない集合の例を挙げる。

 集合Xに密着位相を入れた空間はコンパクトである。

(証明)
開被覆は\{X\}だけであり、これ自身有限部分被覆である。

 有限集合はコンパクトである。

(証明)
n個の元を持つ有限集合の部分集合の個数は2n個なので、この集合の開部分集合の個数はこれより少ない(有限個である)。よって、有限集合の任意の開被覆は有限個の開集合によって成っているので、それ自身が有限部分被覆である。//

 無限集合Xに離散位相を入れた空間はコンパクトではない。

(証明)
\mathcal{U}=\{\{x\}| x \in X \}Xの開被覆だが、有限の部分被覆を持たない。

 \mathbb{R}の部分集合(0,1)はコンパクトではない。

(証明)
\mathcal{U}=\{ (\frac{1}{n},1) | n=2,3,... \}は(0,1)の開被覆だが、有限の部分被覆を持たない。//

また、一般に次が成り立つ。

命題 コンパクト集合の連続写像による像はコンパクト。

(証明)
Kをコンパクト位相空間、Yを位相空間、f:K \to Yを全射な連続写像とする。Yの開被覆\{ U_\lambda \}を任意にとる。fは連続なので、各f^{-1}(U_\lambda)は開集合であり、特に\{ f^{-1}(U_\lambda) \}はKの開被覆である。Kはコンパクトなので、この開被覆は有限部分被覆\{ f^{-1}(U_{\lambda_n}) \}を持つ。このとき、\{ U_{\lambda_n} \} \{ U_\lambda \}の有限部分被覆になっている。したがってYはコンパクトである。//

命題 コンパクト集合の直積はコンパクト。

命題 コンパクト集合の有限個の和集合はコンパクト。

命題 位相空間のコンパクト部分集合と閉集合の交わりはコンパクトである。

(証明)
Xを位相空間とし、KをXのコンパクト部分集合、FをXの閉部分集合とする。K \cap Fの開被覆\mathcal{U}をとる。このときFは閉集合なのでX \setminus Fは開集合であり、\mathcal{U} \cup \{X \setminus F \}はKの開被覆である。Kはコンパクトなのでこの開被覆の有限部分被覆\mathcal{V}が存在する。\mathcal{V} \setminus \{X \setminus F \}\mathcal{U}の有限部分被覆になっている。//

Euclid空間の部分集合については、次の事実(Heine-Borelの定理)がよく知られている。

定理 Euclid空間の部分集合がコンパクトであることは、有界かつ閉集合であることと同値。

特に実数上の有界閉集合は最大値と最小値を持つので、ここからコンパクト集合上の実数値連続関数は最大値・最小値を持つことが従う。

Hausdorff空間[編集]

位相空間XがHausdorffであるとは、Xの任意の2点が開集合で分離されることである。より正確に述べると、

定義 位相空間XがHausdorffであるとは、a \neq bなる任意のa,b \in Xに対し、a \in U,b \in V,U \cap V = \phiを満たす開集合U,Vが存在することである。

Euclid空間はHausdorffであり、またHausdorff空間の部分集合、直積はHausdorffであるので、初学者がすぐに思いつくような空間でHausdorffでないものは少ないが、たとえば以下のような空間は明らかにHausdorffではない。

 (密着位相)元が2つ以上ある集合に密着位相を入れた空間はHausdorffではない。

 (補有限位相)無限集合Xに対して、開集合系\mathcal{O}

S \in \mathcal{O} \Leftrightarrow S=\phi \ or \ X \setminus Sは有限集合

として定めると、これによって位相が定まるが、この空間はHausdorffではない。

応用上扱う空間はHausdorffであることが多いので、次の2つの命題は見た目以上に使い道の広い命題である。

命題 Hausdorff空間のコンパクト集合は閉集合である。

(証明)
XをHausdorff空間、Kをそのコンパクト部分集合とする。X \setminus Kが開集合であることを示せばよい。そのためには、X \setminus Kの任意の元xに対して開集合U_x \ni xであってU_x \cap K=\phiなるものが存在すればよい(このときX \setminus K=\bigcup_{x \in X \setminus K}U_xは開集合である) 。
xをひとつ固定し、y \in Kを任意にとると、x \in U_y,y \in V_y,U_y \cap V_y=\phiなる開集合U_y,V_yがある。\{V_y | y \in K\}はKの開被覆なので、有限部分被覆\{ V_{y_i} \}_{i=1,...,n}を持つ。このときU_x=U_{y_1} \cap ... \cap U_{y_n}とすると、これははじめに言った条件を満たす開集合U_xである。//

命題 コンパクト空間からHausdorff空間への連続な全単射は同相写像である。

(証明)
Kをコンパクト空間、XをHausdorff空間、f:K \to Xを連続な全単射とする。fの逆写像が連続であることを示せばよい。そのためには、fが閉集合を閉集合に写すことを示せば十分である。FをKの閉集合とする。Kはコンパクトなので、Fはコンパクトであり、したがってf(F)もコンパクトである。つまりf(F)はHausdorff空間のコンパクト集合なので、閉集合である。//

なおHausdorffは人名である。伝記はw:フェリックス・ハウスドルフを参照。

距離空間[編集]

距離の公理[編集]

Euclid位相の開集合の定義は、次のようなものであった。

X \in \mathcal{O} \Leftrightarrow (\forall x \in X \ \exists \varepsilon >0 \ s.t. \ |x-y|<\varepsilon \Rightarrow y \in X)

ここで、点と点の距離というものが重要な役割を果たしていることに注目してもらいたい。実は、Euclid空間に限らず、点と点の距離というものが考えられる空間であれば、Euclid空間と同様に距離を用いて位相を入れることができる。

まず、距離という概念が満たすべき公理を考えよう。

公理 d:X \times X \to \mathbb{R}が距離関数(あるいは単に距離)であるとは、\forall x,y,z \in Xについて、次の4条件を満たすこと。

  1. d(x,y) \ge 0
  2. d(x,y)=0 \Leftrightarrow x=y
  3. d(x,y)=d(y,x)
  4. d(x,y)+d(y,z) \ge d(x,z)(三角不等式)

このとき、集合と距離関数の組(X,d)を距離空間という。

Euclid空間の通常の距離はこの公理を当然に満たしていることを確認してほしい。他にも距離の公理を満たす例は無数にある。いくつか例を挙げる。

(離散距離)
任意の空でない集合Xに対して、d:X \times X \to \mathbb{R}を次のように定めると、距離の公理を満たしている。これを離散距離という。

d(x,y)=
\begin{cases}
1 & x \ne y \\
0 & x = y
\end{cases}

(マンハッタン距離)
d:\mathbb{R}^2 \times \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}を次のように定めると、これは距離の公理を満たしている。

d((x_1,y_1),(x_2,y_2))=|x_1-x_2|+|y_1-y_2|

イメージとしては、マンハッタンや札幌のような、碁盤の目上に道路が配置されている街で、交差点から交差点へ移動するために通過する道路の長さのイメージである。

距離位相[編集]

最初に書いたように、距離空間には距離をもとにした位相を入れることができる。これを距離位相という。念のため、距離位相の定義を再掲しておく。

X \in \mathcal{O} \Leftrightarrow (\forall x \in X \ \exists \varepsilon >0 \ s.t. \ d(x,y)<\varepsilon \Rightarrow y \in X)

これが位相空間の公理を満たすことを、距離の公理を用いて確認してほしい。読者自ら確認することで、距離の公理に対する理解が深まるだろう。

距離空間は、比較的よい性質を持った位相空間である。それは、距離空間について、一般に次の命題が成り立つことからもわかるだろう。

命題 距離空間はHausdorff

(証明)
距離空間Xの点xと正の数\varepsilonに対し、B(x,\varepsilon)= \{ y \in X | d(x,y) < \varepsilon \}と書くことにする。
x_1,x_2 \in Xを任意に取り、d(x_1,x_2)=\deltaとする。このとき、B(x_1,\frac{\delta}{2}),B(x_2,\frac{\delta}{2})x_1,x_2を分離する開集合である。したがって距離空間はハウスドルフである。//

命題 距離空間の部分集合はコンパクトならば有界

Hausdorff空間のコンパクト部分集合は閉集合なので、距離空間のコンパクト部分集合は有界閉集合であることがわかる。しかし、逆は一般には成り立たない。Heine-Borelの定理は、この逆がEuclid空間の場合は成り立つ、ということを主張している。

点列の収束と完備性[編集]

距離空間上の点列に対しては、Euclid空間の場合とまったく同様にして「収束」や「Cauchy列」といった概念を定義することができる。

定義 距離空間(X,d)上の点列(a_n)と点 a

\forall \varepsilon >0 \ \exists N \in \mathbb{N} \ s.t. \ n>N \Rightarrow d(a_n,a)< \varepsilon

を満たすとき、この点列は点 a に収束するといい、

\lim_{n \to \infty} a_n=a

と書く。

定義 距離空間(X,d)上の点列(a_n)が次の性質を満たすとき、この点列はCauchy列であるという。

\forall \varepsilon>0 \ \exists N \in \mathbb{N} \ s.t. \ m,n>N \Rightarrow d(a_m,a_n)<\varepsilon

距離空間上の収束する点列は必ずCauchy列であることは容易に(Euclid空間の場合とまったく同様に)確かめられる。しかし、逆は必ずしも成り立たないことが次のようにわかる。よく知られているように、任意の実数に対してその数に収束する有理数列が存在するので、適当な無理数に対してこの数列を考える。この数列は、有理数の集合に通常の距離を入れた距離空間上の点列で、しかもCauchy列であるが、有理数上には収束しない。

そこで、逆の成り立つ距離空間には特別な名前を与えることにする。

定義 距離空間(X,d)上の任意のCauchy列が収束するとき、(X,d)は完備であるという。

Euclid距離を与えられた実数の集合が完備であることはよく知られている。この性質は歴史的経緯から「実数の連続性」と呼ばれるが、近代的な位相空間の用語法では「連続性」は写像に対して考えられる概念であるから、「実数の完備性」と言ったほうがより正確だろう。