刑法第195条

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条文[編集]

(特別公務員暴行陵虐)

第195条
  1. 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑に処する。
  2. 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

改正経緯[編集]

2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役又は禁錮
(改正後)拘禁刑

解説[編集]

  1. 主体
    1. 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者(第1項)
    2. 法令により拘禁された者(第99条、被拘禁者)を看守し又は護送する者(第2項)
  2. 機会
    1. 職務を行うに当たって(第1項)
    2. 被拘禁者を看守し又は護送する際に(第2項)
  3. 客体
    1. 被告人、被疑者、証人などその他の者(第1項)
    2. 被拘禁者(第2項)
  4. 行為
    1. 暴行
      人の身体に加えられる不法な有形力 - 暴行罪(第208条)のものと同じ。
    2. 陵辱加虐
      「陵辱」は辱める行為ないし精神的に苦痛を加える行為、「加虐」は苦しめる行為ないし身体に対する直接の有形力の行使(暴行)以外の肉体的苦痛を与える行為をいうが、厳密な区分の要はなく、暴行以外で苦痛を与えること。
      (例)
      • 被告人・被疑者等を強く侮辱する、過度に恫喝する。
      • 証人等に「証言しないと家族に迷惑がかかる」などの言葉で精神的に追い詰める。
      • 被拘禁者に食事を与えない、睡眠を制限する、風呂に入らせない。
      • 被拘禁者と性的関係を持つ(被拘禁者の同意があっても、陵虐となる)。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 特別公務員陵虐等被告事件(最高裁決定 昭和27年10月28日)
    刑法第195条にいう「刑事被告人其他ノ者」の意義
    刑法第195条にいう「刑事被告人其他ノ者」とは、刑事司法上の被告人または被疑者本人、証人、参考人等のみにかぎらず、行政警察上の監督保護を受くべき事件の本人または関係人をも含むものと解すベきである。
  2. 付審判請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定 平成6年3月29日)刑訴法262条1項
    少年補導員が刑法195条1項にいう「警察の職務を補助する者」に当たらないとされた事例
    大阪府警察本部通達に基づいて警察署長から委嘱を受け、非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法195条1項にいう警察の職務を補助する者に当たらない。
  3. 特別公務員陵虐等被告事件(横浜地方裁判所判決 平成14年8月9日)
    看守者が被拘禁者と性的関係を持ったことを陵虐とした例
    • 神奈川県警察に勤務し,看守の職務に従事する警察官であった被告人が,その職務中,留置場において,被拘禁者である被害者を前後7回にわたり姦淫したという特別公務員暴行陵虐の事案。
    • 本件当時は被害者も被告人に対して好意を持っており,もとより犯罪の成否に影響を及ぼすものではないが,被害者は被告人と肉体関係を結ぶことに同意していたことがうかがえ,また,被告人が被害者に対して暴行や脅迫を加えたようなことはないこと(中略)などの被告人に有利な事情をできる限りしんしゃくしても,刑の執行を猶予することは考えられず,本件については,被告人を懲役3年の実刑に処するのが相当である。

前条:
刑法第194条
(特別公務員職権濫用)
刑法
第2編 罪
第25章 汚職の罪
次条:
刑法第196条
(特別公務員職権濫用等致死傷)
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