刑法第95条

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条文[編集]

(公務執行妨害及び職務強要)

第95条
  1. 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
  2. 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

改正経緯[編集]

2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役若しくは禁錮
(改正後)拘禁刑

解説[編集]

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ウィキペディア公務の執行を妨害する罪の記事があります。


参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 暴力行為等処罰に関する法第律違反・業務妨害、建造物侵入、窃盗(最高裁決定 昭和26年07月18日)
    1. 公務員に対する威力の誇示と業務妨害罪の成否
      以上の如き被告人等の行為(スクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げた行為)が暴力でないとすれば威力であるから、公務員執行妨害罪が成立しないとしても業務妨害罪(刑法第234条)が成立すると主張するのであるか、業務妨害罪にいわゆる業務の中には、公務員の職務は含まれないものと解するを相当とするから、公務員の公務執行に対し、かりに暴行又は脅迫に達しない程度の威力を用いたからといつて業務妨害罪が成立すると解することはできない。
    2. 生産管理の違法性
      会社の従業員等(労働組合員)が、会社との争議中、会社側の意向を全然無視し、強いて会社の建造物に立ち入つてこれを占拠し、他の従業員に就業を阻止し、あるいは会社所有の物品をほしいままに管理処分するが如き一連の行為をした場合にはかりに、原判決認定のごとき会社側に非難に値する仕打があり、従業員側にむしろ同情すべき事情があつたとしても、かかる行為を緊急止むを得ない争議行為として適法視することはできない。
    3. 社会と組合との間に争議について妥協成立し双方の合意によつて全員解雇され組合が解散した場合と争議の終了
      争議中、会社と組合との間に妥協成立し、双方の合意によつて会社の従業員たる組合員全員が適法に解雇され、組合も解散したときはこれにより争議は終了する。
    4. 右の場合会社となお抗争を継続する組合の少数反対派の行動は争議行為といえるか
      右の場合、組合の少数反対派の者が会社と飽く迄も抗争せんとして行動しても、それは争議行為とはいえない。
    5. 検挙に向つた警察官等に対しスクラムを組み労働歌を高唱する労働者等の行為と公務執行妨害の成否
      会社業務の妨害の現行犯として検挙に向つた警察官等に対し、労働者等がスクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げたとしてもそれだけでは必ずしも公務執行妨害罪は成立しない。
    6. 暴力行為を等処罰に関する法律第1条第1項の合憲性
      暴力行為等処罰に関する法律第1条第1項の規定は、憲法第28条,憲法第98条に違反しない。
  2. 公務執行妨害、傷害(最高裁判決 昭和41年3月24日)
    刑法第95条第1項にいう暴行脅迫の程度およびその客体。
    刑法第95条第1項に規定する公務執行妨害罪の成立には、公務員が職務の執行をなすに当り、その職務の執行を妨害するに足りる暴行脅迫がなされることを要するけれども、その暴行脅迫は、必ずしも直接に当該公務員自身に対して加えられることを要せず、当該公務員の指揮に従いその手足となり、その職務の執行に密接不可分の関係において関与する補助者に対してなされるものでもよい。
  3. 威力業務妨害(最高裁判決 昭和41年11月30日)
    国鉄の事業ないし業務は刑法第233条、第234条にいう業務に含まれるか
    国鉄の行なう事業ないし業務は、刑法第233条第234条にいう業務に含まれる。
    1. 上告人(被告人)の主張
      国鉄は公務及び業務の両面において二重に保護を受けることとなり、民営鉄道に対比し、法律上の保護に差別を生じ、憲法一四条に定める法の下における平等の原則に反する結果となるのみならず、従来の判例理論が判然と区別していた右業務と公務との両者の関係を不明確ならしめ、不明確な規準の下に法の適用をはかることになり、憲法第31条の罪刑法定主義の精神に反する結果となる。
    2. 判決理由
      その行う事業ないし業務の実態は、運輸を目的とする鉄道事業その他これに関連する事業ないし業務であつて、国若しくは公共団体又はその職員の行う権力的作用を伴う職務ではなく、民営鉄道のそれと何ら異なるところはないのであるから、民営鉄道職員の行う現業業務は刑法第233条、第234条の業務妨害罪の対象となるが、国鉄職員の行う現業業務は、その職員が法令により公務に従事する者とみなされているというだけの理由で業務妨害罪の対象とならないとする合理的理由はない。
  4. 公務執行妨害(最高裁判決昭和53年6月29日)
    1. 刑法95条1項にいう職務の範囲
      刑法95条1項にいう職務には、ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる。
    2. 刑法95条1項における職務の執行中であるか否かの判断に際しその性質上ある程度継続した一連の職務として把握するのが相当であるとされた事例
      刑法95条1項における職務の執行中であるか否かの判断に際しては、日本電信電話公社の電報局長の、局の事務全般を掌理し部下職員を指揮監督する職務及び同電報局次長の、局長を助け局務を整理する職務は、その性質上、その内容及び執行の過程を個別的に分断して部分的にそれぞれの開始、終了を論ずるべきではなく、一体性ないし継続性を有するものとして把握すべきである。
    3. 刑法95条1項における職務の執行が終了したものではないとされた事例
      本件電報局長の、電報料金の収納等に関する会計書類の点検、決裁の職務及び本件電報局次長の、電報配達業務等に関する上部機関への報告文書作成の職務の各執行が事実上一時的に中断したとしても、その状態が被告人の不法な目的をもつた行動によつて作出されたものである場合には、刑法95条1項における職務の執行は終了したものではない。
    4. 公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識の程度
      公務執行妨害罪の主観的成立要件としての職務執行中であることの認識があるというためには、行為者において公務員が職務行為の執行に当つていることの認識があれば足り、具体的にいかなる内容の職務の執行中であるかまで認識することを要しない。

前条:
刑法第94条
(中立命令違反)
刑法
第2編 罪
第5章 公務の執行を妨害する罪
次条:
刑法第96条
(封印等破棄)
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