利用者:Ninomy/電気回路理論

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目次

[編集] 電気回路の基礎

電気回路(electric circuit)とは、電気の回る路(みち)である。すなわち、電気が移動する通り道であって、電源を出発して電源へ戻るような閉ループを形成するものである。

[編集] 電気回路を記述する量

電気回路は主に電源と負荷、およびそれらをつなぐ導線から構成される。電源は電気エネルギーを回路へ供給し、負荷はそれらを蓄積したり、あるいは光エネルギーや熱エネルギーへと変換して消費する。電気エネルギーの根源は電荷であり、単位時間あたりの電荷の移動量を電流(current)という。すなわち回路のある地点を移動する電荷の量Q(t)[C]について、その点での電流I[A]は

I = \frac{dQ}{dt}

で与えられる。

時間によって流れる向きの変化しない電流を直流(direct current, DC)といい、周期的に電流の流れる向きが変動する電流を交流(alternating current, AC)という。多くは交流と言えば時間波形が正弦波となる正弦波交流をいう。

電荷の移動は回路中の電位差によって引き起こされる。ある2地点間の電位差を電圧(voltage)という。また特に、電源が発生する電位差を起電力(electromotive force)という。

単位時間あたりの電気エネルギーは電流と電圧の積によって与えられる。これを電力(power)といい、電圧V[V]で電流I[A]が流れていれば、その電力P[W]は

P = IV

で与えられる。

[編集] 回路素子

電気回路を構成する素子を紹介する。

[編集] 電圧源・電流源

電気回路へエネルギーを供給する電源として、電気回路理論では理想化された電源を2種類考える。一つは電圧源(voltage source)であり、回路の2地点間にある一定の電圧を供給し続けるものである。電圧源の回路図記号としては電圧源が用いられる。線の長い方が正極、短い方が負極であり、正極のほうが負極よりも電位が高い。もう一つは電流源(current source)であり、回路へある一定の電流を供給し続けるものである。電流源の回路図記号は電流源である。矢印の向きにある一定の電流を流しつづける。回路理論においてはこれらは理想的なものと考え、他の回路素子等の影響を受けずにある一定の電圧や電流を供給し続けるものとして考える。

なお、これらは直流電源である。交流の場合は一般化した電圧源として交流電圧源の記号を用いたり、また特に正弦波交流電圧源であれば正弦波交流電圧源の記号を用いる。通常は交流電流源は考えない。

[編集] 抵抗器

抵抗

抵抗器(resistor)は通常抵抗と呼ばれる回路素子で、与えられた電気エネルギーを単純に消費する素子である。回路図記号は抵抗あるいは負荷であるが、本書では前者を抵抗の回路図記号として用いることにし、後者はより一般的な意味での負荷を表すものとする(後述)。

抵抗の両端の電圧V[V]と、そのとき抵抗を流れる電流I[A]は、比例の関係にある。すなわち比例定数をRとして

V = RI

の関係が成り立つ。これをオームの法則(Ohm's law)といい、このときのR[Ω](オーム, ohm)を抵抗値(resistance)あるいは抵抗と呼ぶ。

上式より、抵抗が大きいほど同じ電圧でも流れる電流は小さくなる。すなわち抵抗は電流の流れにくさを表す量と言ってもよい。逆に、逆数は、電流の流れやすさの指標となる。抵抗の逆数

G = \frac{1}{R}

コンダクタンス(conductance)といい、このときオームの法則は

I = GV

と書き表される。コンダクタンスの単位は[S](ジーメンス, siemens)である。

[編集] インダクタ

インダクタ

インダクタ(inductor)は誘導器とも呼ばれる回路素子である。現実の回路では導線を螺旋状に巻いて作ったコイルによって実現される。回路図記号はインダクタである。

インダクタは電流を流すと、電流の時間変動に比例した誘導起電力をインダクタの両端に生じる。これは電気磁気学で学ぶように、電流I[A]を流すことによって電流に比例した鎖交磁束\phiを生じるからである。この比例係数をLとすると、鎖交磁束と電流との間には

\phi = LI

が成り立ち、この磁束が時間変動することによって、インダクタの両端に電磁誘導による誘導起電力V[V]が生じる。これを自己誘導(self-induction)といい、

V = \frac{d\phi}{dt} = L\frac{dI}{dt}

が成り立つ。誘導起電力の生じる向きは、電流の変化を妨げる向きである。この式をIについて解けば、

I = \frac{1}{L}\int Vdt

が得られる。

比例定数Lはインダクタのインダクタンス(inductance)と呼ばれる。インダクタンスの単位は[H](ヘンリー, henry)である。

[編集] キャパシタ

キャパシタ

キャパシタ(capacitor)は容量器とも呼ばれる回路素子である。現実の回路では2枚の極板を近づけて置いて作ったコンデンサによって実現される。回路図記号はキャパシタである。

キャパシタは電流を流すと、電荷が徐々に蓄積されていき、やがて電荷は蓄積されなくなる。ある電圧V[V]をかけたときに蓄積される最大の電気量をQ[C]とすると、これらは比例関係にあり、比例定数をCとして

Q = CV

なる関係がある。この比例定数Cキャパシタンス(capacitance)あるいは静電容量容量と呼ぶ。キャパシタンスの単位は[F](ファラド, farad)である。

電流は電荷の時間微分であったから、これらを時間に関する関数と見ると、時間t_0に電荷が蓄積されていない(Q(t_0)=0)として

Q(t) = \int_{t_0}^t I(t)dt

が成り立っている。したがってキャパシタの両端に発生する電圧V(t)[V]との間には上式より

CV(t) = \int_{t_0}^t I(t)dt

の関係がある。通常はこれをVIについて解いた式

V(t) = \frac{1}{C}\int_{t_0}^t I(t)dt
I(t) = C\frac{dV(t)}{dt}

が用いられる。

[編集] その他

抵抗やインダクタ、キャパシタなどが回路負荷の例であるが、これらを特に明示せずに単純に何がしかの負荷があるのだと書きたい場合もある。この様な場合は回路図記号に負荷を用いることにする。なおこの記号は抵抗の回路図記号としても用いられるため、抵抗であるか一般の負荷であるかは回路図を見る際には十分注意しなければならない。

また、電気回路(電子回路)においては、コイルやコンデンサ、抵抗のような線形素子の他に、トランジスタやダイオードなどの非線形素子を用いる場合もある。線形素子とは素子を流れる電流と両端の電圧との関係がたかだか1次式で書くことのできるような素子であり、そうでない素子を非線形素子と呼ぶ。非線形素子を含む場合は回路も非線形な振る舞いをする。線形素子のみによって構成される回路を線形回路といい、非線形素子を含む回路を非線形回路という。本書では線形回路について主に取り扱うことにする。

[編集] 直流回路

[編集] 直列と並列

複数の回路素子が1つの線上に配置されているような接続を直列(serial)接続といい、複数の回路素子が二股に分かれるように配置されている接続を並列(parallel)接続という。

直列接続においては、それぞれの回路素子に流れる電流は全て等しい。一方、並列接続においてはそれぞれの回路素子の両端にかかる電圧が全て等しい。

また、直列接続においてはそれぞれの回路素子にかかる電圧の和が全電圧となり、並列接続においてはそれぞれの回路素子を流れる電流の和が全電流となる。

このことは初等教育理科で学ぶことであるが、これからの回路理論の解説に先立って再確認しておく。また、これについては後の節でさらに一般化・数式化して述べることにする。

[編集] オームの法則

回路中の抵抗Rとその両端にかかる電圧V、および抵抗を流れる電流Iについて

V = RI

の関係が成り立ち、これをオームの法則(Ohm's law)と呼ぶ。

抵抗が複数接続されている場合、その複数の抵抗をまとめてあたかも1つの抵抗が接続されているかのような等価的な回路を考えることができる。複数の抵抗と等価な1つの抵抗を合成抵抗という。

直列抵抗

抵抗がn個直列に接続されている場合を考える。抵抗R_1, R_2, \cdots, R_nが直列に接続されている場合、各抵抗を流れる電流は等しく、これをIとする。各抵抗R_i (i = 1, 2, \cdots, n)にかかる電圧をV_iとすると、オームの法則より

V_i = R_iI (i = 1, 2, \cdots, n)

が成り立つ。このとき直列抵抗の両端の電圧Vは、

V = \sum_{i=1}^n V_i = \sum_{i=1}^n R_i I = I\sum_{i=1}^n R_i

である。これと等価な抵抗Rが1つだけ接続されているような等価回路を考えるとき、

V = RI

が成り立つから、したがってこれらのn個の直列抵抗の合成抵抗Rとして

R = \sum_{i=1}^n R_i

を得る。すなわち、直列合成抵抗は各抵抗の総和となる。

並列抵抗

同様に、抵抗がn個並列に接続されている場合を考える。抵抗R_1, R_2, \cdots, R_nが並列に接続されている場合、各抵抗の両端の電圧は等しく、これをVとする。各抵抗R_i (i = 1, 2, \cdots, n)を流れる電流をI_iとすると、オームの法則より

V = R_iI_i (i = 1, 2, \cdots, n)

が成り立つ。このとき並列抵抗へ流れ込む電流Iは、

I = \sum_{i=1}^n I_i = \sum_{i=1}^n \frac{V}{R_i} = V\sum_{i=1}^n \frac{1}{R_i}

である。これと等価な抵抗Rが1つだけ接続されているような等価回路を考えるとき、

V = RI

が成り立つから、したがってこれらのn個の並列抵抗の合成抵抗Rとして

\frac{1}{R} = \sum_{i=1}^n \frac{1}{R_i}

を得る。すなわち、並列合成抵抗の逆数は各抵抗の逆数の総和となる。

並列抵抗の場合は、抵抗の代わりにコンダクタンスを用いると見通しがよい。コンダクタンスG_1, G_2, \cdots, G_nの抵抗が並列に接続されている場合、これは抵抗R_iの逆数であることに注意すれば、合成コンダクタンスG

G = \sum_{i=1}^n G_i

となる。並列合成コンダクタンスは各コンダクタンスの総和である。

[編集] キルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則(Kirchhoff's circuit laws)は電気回路理論において大変重要かつ基本的な定理である。キルヒホッフの法則はマクスウェルの方程式から得られる法則であり、直流・交流、あるいは線形・非線形回路を問わず一般の回路について成り立つ。

キルヒホッフの法則は2つの法則から成り立つ。

  • キルヒホッフの電流則(第一法則, Kirchhoff's current law; KCL)
  • キルヒホッフの電圧則(第二法則, Kirchhoff's voltage law; KVL)

この2つの法則について見ていくことにする。

[編集] キルヒホッフの電流則

KCLの例。中央の黒丸が節点。節点へ流れ込む電流の総和は0である。すなわち、-i_1+i_2+i_3-i_4=0が成り立つ。

キルヒホッフの電流則(KCL)とは、回路の任意の節点(node)について成り立つ法則である。節点とは回路の中で複数の回路素子が接続される点をいう。

ある任意の節点にn本の導線が接続されているとする。各導線から節点へ流れ込む電流をI_i (i = 1, 2, \cdots, n)とする。もし電流が節点から流れ出す向きに流れていれば、その電流は絶対値の等しい負の値をとると定義する。このとき、

\sum_{i=1}^n I_i = 0

が成り立つ。これをキルヒホッフの電流則という。

キルヒホッフの電流則はさまざまな解釈のしかたがある。一般的には、ある節点へ流れ込む電流の総和と、その節点から流れ出す電流の総和は等しいと考える。あるいは、電流がある1点へ溜まることはなく、あるいはある1点から流れだし続けることもなく、回路上を流れつづけるものと考えることもできる。

[編集] キルヒホッフの電圧則

KVLの例。実線で書かれた部分が一つの閉路をなす。この閉路を時計回りにみて、1周する電圧の和は0である。すなわち、v_1+v_2+v_3+v_4=0が成り立つ。

キルヒホッフの電圧則(KVL)とは、回路の任意の閉路(loop)について成り立つ法則である。閉路とは回路の中で1つの閉じた経路であって、自分自身と交差しない経路をいう。

ある任意の閉路に、n個の回路素子があるとする。各節点を一定の方向にたどって1周する経路を考え、各節点間の電圧をV_iとする。このとき、

\sum_{i=1}^n V_i = 0

が成り立つ。これをキルヒホッフの電圧則という。

キルヒホッフの電圧則もなかば自明な法則である。閉路を1周して元の点に戻ってくれば、その点の電位は出発した点と同電位であるから、電圧は0になるはずである。

[編集] 回路方程式

[編集] 重ね合わせの理

[編集] 鳳-テブナンの定理

鳳-テブナンの定理(ほう-)あるいはテブナンの定理(Thévenin's theorem)は任意の2端子回路について成り立つ、次のような定理である。

テブナン等価回路

電圧源、電流源および抵抗からなり、2端子A、Bを持つ回路がある。ただし、必ずしも電圧源や電流源や抵抗は含まれていなくともよい。この時、回路の内部がどのように構成されているかに関わらず、次の方法によって1つの電圧源と1つの抵抗からなる等価電圧源を構成することができる。

  1. 端子AB間を開放した時にAB間に現れる電圧をV_0とする。
  2. 2端子回路の中の電源を除去(電圧源ならば短絡し、電流源ならば除去・開放する)したときの端子ABから見た合成抵抗をR_0とする。
  3. このとき、この2端子回路は電圧V_0の電圧源と抵抗R_0の抵抗が直列に接続された回路と等価である。

証明は後ほど行うとして、まず具体的な使用法を見ることにする。

[編集] 例題

例題

右図の回路のテブナン等価回路を求める。

この回路は1個の電圧源と4個の抵抗からなる。もちろんこのまま解析しても構わないが、なるべく単純な等価回路へ置き換えを行ってから解析を行いたい。そこで、鳳-テブナンの定理によって等価電圧源を求めることにする。

まず、端子ABを開放した時にAB間に現れる電圧を求める。ABを開放していれば抵抗R_1に電流は流れない(∵KCL)ので、点Aの電位はR_1の左側の節点の電位と等しくなる。すなわちAB間の電圧はR_2, R_3にかかる電圧と等しくなる。電源、R_4R_3R_2からなる閉路の分圧回路を考えて、AB間に現れる電圧V_0

V_0 = \frac{R_2 + R_3}{R_2 + R_3 + R_4}V_1 = 7.5\mathrm{V}

となる。

合成抵抗の計算

次に、電圧源や電流源を除去した時に端子ABから見た合成抵抗を求める。右図から、合成抵抗R_0

R_0 = R_1 + \frac{1}{\frac{1}{R_4} + \frac{1}{R_2 + R_3}} = 2\mathrm{k\Omega}

となる。

これより、この回路のテブナン等価回路は下図のようになる。

テブナン等価回路

[編集] 証明

鳳-テブナンの定理は重ね合わせの理を用いて容易に証明することができる。

[編集] ノートンの定理

[編集] 補償の定理

[編集] 相反定理

[編集] Δ-Y変換

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