学習方法/高校日本史

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

はじめに[編集]

高校の日本史は、小学校・中学校の歴史で習ったことと重なる部分が多い。しかし、一つ一つの出来事について覚えることが一気に増えるため、ボリュームに圧倒されがちである。

例えば、平安時代の政治について考えてみよう。中学校までならば、「平安時代に入ると、藤原氏の勢力が増していった。藤原氏は娘を天皇の后とし、その娘が産んだ子が次の天皇になると、天皇の祖父として幼い頃は摂政、成長すると関白となり、政治の実権を握った。こうした政治は摂関政治とよばれ、藤原道長・頼道のころに最盛期となる」という理解でよかった(これでも歴史が苦手な生徒にとってはうんざりかもしれないが……)。

しかし、高校では「藤原冬嗣が嵯峨天皇の信頼を得て皇室と姻戚関係を結んだことをきっかけとし、息子の藤原良房が初めて皇族以外で摂政となる。そして、良房は承和の変で橘逸勢を、応天門の変で伴善男を失脚させて権力を固めた。良房の養子であった藤原基経がはじめて関白に就任する。その後も菅原道真や源高明を失脚させて多氏の排斥を完成させ、摂関は常置され藤原氏の長である藤氏長者が政治の頂点に立つようになった。しかし、今度は藤原氏内部で氏の長者をめぐる争いが起きる。その争いをせいしたのが藤原道長であり、内覧・摂政・太政大臣と位を上げ、三人の娘を皇后とした」といった具合(これでもかなり端折っている)となり、中学までは歴史が苦手ではなかった生徒も悲鳴をあげる内容となる。

このように、ボリューム満点の高校日本史を効率よく学習するための方法について説明する。

歴史の流れをおさえよう[編集]

何事も自分が学ぼうとするものの全体像がつかめないと何をしてよいものかわからなくなる。高校の日本史のように覚えるべきものが膨大なものは特にそうである。

第一のステップとして、日本史がどのような過程をおってきたのかを大雑把でも構わないので、理解することから始めよう。各時代の細かい内容はとりあえず後回しでよい。学校の授業はどうしても、一つ一つの時代を丁寧に扱うため、各時代のつながりがぼやけがちである。

元から歴史が比較的得意だったり、好きだったりする場合や、活字に拒否反応が無ければ大手予備校から出版されている講義形式のテキストを読んでもいい。しかし、そうではない場合や、基礎の土台づくりをしておきたいという人は以下の方法を活用してみよう。

歴史マンガの活用[編集]

日本史の全体像を把握するのに大変便利なのが歴史マンガである。マンガという媒体のおかげで、読み進めるのもスムーズであるし、歴史における「ストーリー」をキレイに整理しているため、全体像をつかみやすい。特に日本史が苦手な生徒は、恥ずかしがらずに歴史マンガからはじめよう。もちろん、歴史が好きな生徒ならばより興味をもって読めるだろう。高校生ならば、以下が定番でありおススメである。どちらを読み進めよう。

  • 『学習まんが少年少女日本の歴史(旧版)』(小学館)
    • 日本史マンガの定番。基本的に小学生を対象としているが、中学受験から大学受験まで使える幅の広さが魅力。
    • 監修がしっかりしており、作者の力量もあった。そのため、複雑怪奇なことで知られる南北朝の争いを手堅くまとめているなど、コンパクトでありながら良質。人物事典や施設・資料館事典もついている。
    • 古代から江戸時代までが充実している半面、近現代史はやや薄い。なお、現代史にとんでもない捏造があるのだが……それについては各自調べてほしい。
    • 場合によっては学校図書室や公立図書館にも置かれている可能性があるため、財布にもやさしい。
    • 作者のあおむら純氏・監修の児玉幸多氏が二人とも亡くなっているため、20巻以前(当初に発売された部分。昭和まで)の修正がほぼ絶望的。
    • 2022年、『小学館版 学習まんが 日本の歴史』が発売され、内容が一新された
  • 『学習まんが日本の歴史』(集英社)
    • 小学館とならぶ定番だが、内容的にはこちらの方が大学受験向き。何度も大幅なバージョンアップが行われていて、最新学説も積極的に取り入れられている。
    • 古代(旧石器時代~古墳時代)はあっさりしている。
    • 近現代史が充実している。特に昭和史がしっかり書かれているため、日本史Bだけでなく、日本史Aや政治経済などにも応用できるか。
    • 価格はやや高め。最新版は図書館におかれている可能性も低い。なお、古い版(1968年版・1982年発行版)は「講談調」「やっつけ仕事」「古い説がそのまま載っている」と評されるほどの低レベルのため、古本を買う場合や図書館におかれているものを読むときには要注意。
    • 良くも悪くも絵柄は現代的。なじみやすい反面、肝心の歴史の内容が頭に入りにくいという指摘も。

動画の活用[編集]

最近ではYouTubeなどで学習系動画も上がっているので、それを利用するのも一手だろう。ただし、こちらは玉石混交である。つまり、非常に優れているものもある一方で、個人の体験を絶対化しているものや、そもそも間違った知識を伝授していることからかえって学習の妨げになるものも多い。そのため、まずは、Try It(「家庭教師のトライ」が運営するチャンネル)などのような大手で実績のあるチャンネルやNHK高校講座から見た方がよい。それ以外のものは、もう少し学力がついたりして自力での判断や吟味が可能になってからの方がよい。

また、歴史ネタを面白おかしく解説しているものも少なくない。だが、これも一長一短である。以下の長所と短所を挙げるため、それを念頭に置いたうえで視聴してほしい。

  • 長所
    • ストーリーが明確で、分かり易い。
    • ともすれば無味乾燥な歴史の話題に彩りを添えるため、歴史への興味を持ちやすい。
  • 短所
    • 面白さを第一としているため、正確さに欠けることが多い。誇張はザラで、現在では否定されている古い説や俗説、完全な作り話、独自研究が混ざっている場合も。過激で目を引くような文句を入れているような動画は除外した方がよい。
      • 特に動画サイトは俗に言うネット右翼(ネトウヨ)の活動が激しく、おおよそ学問的ではない扇動的な主張が展開されていることも珍しくない。そうしたチャンネルは「教科書が教えない」「隠された真実」「○○の真実」などのあおり文句を使うことが多い。そうしたものは避けるのが吉。
    • 一つの時代や出来事に特化しているため、特定の時代(それも戦国時代や幕末など、人気の高い時代だけ)にかたよっている。
    • アラカルト的で、通時的ではないものも多い。例えば、第一回が江戸時代、第二回が鎌倉時代……という具合に。そのため、全体像の把握という点では役に立たないこともある。

語句のまとめ[編集]

第二ステップが、こまごまとした用語、人物名、出来事の暗記である。ここで必要なのが、教科書・資料集・ノートに加えて、一問一答集用語集の二つである。

まとめの手順[編集]

通史からストーリーをつむぐ[編集]

通史を先に行うのは、人間の記憶にはストーリーや関連付けが必要だからである。これができていないと、用語を覚えることはできないし、なんとか覚えてもすぐに忘れてしまったり、肝心の試験で答えるべき用語が出てこないという事態に陥る。

書く[編集]

暗記の天才でない限り、書かないと覚えることができない。かといって、やみくもに用語を書いても、意味がない。

 まとめの手順は、教科書の索引で、書く語句の登場するページを知る。そのページおいて、その語句の登場する文章を確認する。あわせて用語集も引く。その書き抜いた文章のなかの、他の固有名詞についても、索引をつかって調べ、また用語集も引く、というものである。

 このようにして調べた説明を、ノートや教科書の余白に書き加える。それにより、別々のページに書かれている事柄を、つなげてとらえることもできる。

まとめの注意点[編集]

 まとめの注意点は、教科書の文章を、内容を省いて写さない。しかし、文章は短い方が記憶しやすいため、同じ内容でも、少ない字数でまとめられるように工夫するとよい。

工夫としては、たとえば

  1. 修飾フレーズを頭にのせる。

 たとえば、青木昆陽(あおき こんよう)の説明を覚えるときには、けっして「蘭学・オランダ語習得をし、その習得は幕府書物方において行った」とはせず、つぎのように「幕府書物方で蘭学・オランダ語習得をした」としたほうが短いので覚えやすいだろう。けっして、その習得は~、と後からつけくわえるのではなく、修飾フレーズを頭にのせた文を覚える。このようにすると、文章の密度が高まり、記憶の負担が減る。

  1. 漢字表現の使用。

 たとえば、「漢訳洋書の輸入制限を緩和した徳川吉宗」ではなく、「漢訳洋書 輸入制限 緩和をした徳川吉宗」と、熟語の間にある「の」「を」を、可能ならば省略し、できるだけ漢字を連ねた表現にする。

教科書との付き合い方[編集]

教科書が必要な人・必要ではない人[編集]

高校日本史は良くも悪くもボリューム満点である。ここでいう「教科書」とは、日本史Bの定番教科書『詳説日本史』(山川出版社)を指すと思ってほしい。ただし、詳説日本史探究の教科書では、最新の時事covid19や菅義偉内閣、岸田文雄内閣の記述とかが反映されていない。実教出版の日本史探究には、この内容まで文章で記述している(2023年4月1日教科書入手後確認)ので、今後は実教出版の日本史探究の教科書の購入をお勧めする。

教科書が必要かつ重要な人[編集]

以下に該当する人が教科書が必要であり、キッチリとやりこむ必要がある人である。

  • 国公立大学二次試験で論述式の地歴が出される大学志望

具体的には、国公立大学の文系学部を受ける場合である。特に、旧帝大や一橋大学などの難関校が典型であるが、これらの大学の歴史科目はただの用語の暗記では全く歯が立たない。これらの大学では論述式が多く、知識を基に思考していくことが求められるのである。そのためには、教科書を読み込み、ある出来事の大まかな説明はもちろん、物事の因果関係や後世への影響などをどれだけ説明できるかがカギとなる。

教科書を活用した方がよい人[編集]

以下に該当する人は、教科書をやりこむ必要はないが、参考書などを手掛かりにして教科書の概略をつかんでおいた方がよい。

  • 記号選択・穴埋めと論述が混在している大学入試対策
    • 中堅どころの国公立大学受験生
    • 難関私立大学入試の文学部・教育学部・その他学際的な学部

国立大学文系でもすべて論述問題というところは少ない。実際には私立大学のように記号選択や穴埋めが多く、論述は数問という場合が多い。とはいえ、後で述べるように、論述で最終的な差がつきやすいので、出来事の因果関係や影響、用語の意味、歴史的意義などを大まかでよいので説明できるほどにはしなければならない。

私立の場合、大学ごとの違いもさることながら学部による違いもあるので注意したい。おおまかな一般論を言えば、「文学部・教育学部などの人文科学や学際分野(様々な学問を横断する分野)を扱う学部では論述式が出され、法学部・経済学部などの社会科学系学部では論述式がない」という傾向が見える。各自、志望校の内容を確認してほしい。

こうした大学の場合、ほとんどが記号選択や用語を穴埋めするような記述式だが、国立大学的な論述問題で最終的な差がつくことも多い。なお、早稲田大学や慶應義塾大学に顕著だが、私立大学の入試の中には異常なまでに細かすぎることを問うものが珍しくない。こうした難問奇問珍問はほぼ全員解けないので、あまり気にする必要はない。むしろ、基本的な所を確実にとることの方が重要なので、普通に教科書と参考書を利用した学習を進めた方がよい。

教科書があまり必要でない人[編集]

以下に該当する人はそこまで教科書を読みこむ必要はない。

  • センター試験(大学入学共通テスト)までしか歴史を使わない大学受験生
    • すべての国公立大学の理系学部受験生
    • 一部地方国立大学
  • 標準的な私立大学受験生

結論から言うと、論述式の入試のない大学を志望する場合には教科書との付き合いはほどほどでかまわない。問題集や参考書を活用して概略の理解にとどめ、練習を通じて知識の定着をはかることメインとしたい。まず、理系であればすべての国公立大学入試では、地理歴史とはセンター試験(大学入学共通テスト)までの付き合いとなる。中堅の国立大学では文系であっても歴史はセンター試験(大学入学共通テスト)までというのは意外に少なくない。

また、私立大学は多くの受験生をさばく必要があるせいか、採点に時間のかかる論述式は少なく、マークシート、記号・用語穴埋めがほとんどである。とはいえ、先に述べたように学部による差が生じている。私立専願であれば、入試問題はちゃんとチェックして論述の程度を確認しておきたい。

このように、知識の定着をチェックすることが主な目的の入試では、深く教科書に踏み込む必要はない。教科書は用語集同様に「事典」「辞書」的な使い方にとどめてよい。

とはいえ、文学部や教育学部の歴史科を志望する場合、可能な限り教科書にもあたってほしいが……。

教科書を読む順序[編集]

案1 : 古代から順に読む[編集]

検定教科書の読み片のひとつとして、古代から順番に読むというのがオーソドックスな方法である。

普通の歴史教科書は通史なので、当然ながら、なるべく古代から順番に読んだほうが読者が深い理解をしやすいように検定教科書は作られている。「戦国時代が好き!」とかの特に強いコダワリがなければ、古代から順番に読むのも良いだろう。

もし、教科書を読んでて古代から順に読む方法が「自分には合わない」と感じるなら、例えば、次のような順番で読む方法がある。

案2 : 興味ある時代から読む[編集]

次に紹介するのが、興味重視の順番での学習である。興味を持続したまま勉強したほうが、記憶に残りやすい。要は、自分の興味のある時代から学ぶのである。もし戦国時代に強い興味があれば、戦国時代の前後あたりから読み始めればいい。あるいは、もし源平合戦に強い興味があれば、その前後あたりから読み始めればいい。

おそらく多くの読者の興味は、ドラマ・マンガ・ゲームなどになりやすい戦国時代や幕末、もしくは、服装などが現代に近い明治時代以降に興味があるだろう(明治以降は制度が現代に近い)。

また、日本史の検定教科書はある程度、途中から読み始めても内容が理解できるように、時代区分ごとの単元で詳しく説明されている。

興味ある分野からの読み方は、長所として興味を持続しやすい反面、短所として深い理解には到達しづらいというのがある。理解が深まらないと、興味を広げづらい。また、各時代ごとのつながりをしっかり意識しておかなければ、ぶつ切りの知識にとどまり、役に立たない。戦国時代だけに、幕末だけに妙に詳しくても仕方ないのである。

興味と理解とのバランスが重要である。

案3 : 近現代史から読む[編集]

明治以降を先にやる読み方は、世界史に知識を応用しやすいという利点がある。第二次大戦後の戦後史まで勉強すれば「政治経済」科目にも応用しやすい利点がある。

そのため、ひとまず明治時代から読むのも一手である。思い切って、現代から読んでもよい。

そして、教科書で近現代史をひとまず通読しおえたら、さかのぼってみるのである。つまり、近現代→江戸→安土桃山→……という具合である。高校や予備校で古い時代から現代に向かう歴史をならうのだから、あえて逆向きにしてみるのである。そうすることで、ある出来事の理由を考えやすくなる。

ただし、この方法は上級者向けである。記述式が多い国公立大学や一部の私立大学の入試日本史で、理由などを記述させるものの対策には有効であるし、出来事のつながりを深く理解するのにもよい。だが、元々の出来事の流れをある程度理解していないとかえって、混乱のもととなる。

資料集も有効活用する[編集]

山川出版社(以下、山川)の『詳説 日本史』は、語句の多いことで有名なので受験対策として評判が高い。また、大学入試の日本史・世界史は、センター(大学入学共通テスト)・国公立二次・私立いずれも山川の『詳説 日本史』『新日本史B』がベースとなっているため、これをきっちりやりこむことが基本となる。しかし、じつは掲載語句を多く紹介するために、ひとつひとつの話題の掘り下げが、やや浅くなっている。かといって、別の出版社の教科書を使う必要はない。二冊も教科書を使えば、もてあますこと間違いなしである。

掘り下げをしたいのであれば、まず学校でも配布される資料集を利用しよう。こちらは図表も豊富であり、ビジュアル面での補足が期待できる。また、教科書では簡単な説明しかできなかったことが念入りに説明されていたりする。

検定教科書の傾向[編集]

じつは、1600年「関ヶ原の戦い」より以降の話題が、検定教科書では、教科書全体の半分(もしくは半分以上)である。つまり江戸時代を含んで江戸以降が、教科書では半分以上である。

けっして、均等に西暦1年〜1000年が教科書の半分ではない。

日本史にかぎらず世界史でも、やや近世や近現代史が教科書では割合多いのだが、特に日本史では、近世・近代史重視の傾向がさらに強い。

なお、ことわりなく「近世」(きんせい)という用語を使ったが、日本史では江戸時代のことを(または安土桃山時代を加えて)「近世」という。
一般に、明治維新から第二次世界大戦あたりまでが「近代」である。第二次世界大戦以降が「現代」史である(しかし「現代」といいつつ、高校教育では、ほぼ戦後昭和史であるが)。近代史と現代史をあわせて「近現代」史という事も多い。
奈良飛鳥時代までが一般に「古代」である。平安時代から室町後期・安土桃山時代あたりまでが「中世」である。

どうやら高校日本史の検定教科書でも、この「古代」・「中世」・「近世」・「近現代」の4区分に対応して、それぞれ4分の1ずつを基本としてページ数を割いているものと思われる。

さらに「古代」「中世」でも、じつは古代史よりも中世史のほうが、やや量が多い。

(おそらく、古代史については、中世と比べて史料が少ない事もあり、高校レベルでは深入りするのが難しいなどの、理由があるのだろう。だとすると将来的にも、今後の高校教育でも、日本史では近世・近現代重視の教育をする傾向が、今後も続くだろうと思われる。)

深入りすべきではないことについて[編集]

人物伝[編集]

小学校から高校まででならう歴史は、日本史の全体像を時系列にそってとらえていくことが目指されている。これを通史という。そのため、歴史上の人物の人生には深く立ち入らない。基本的に、「誰が」「何をしたか」を整理しておけば十分なのである。歴史上の人物関係は、日本史の大きな流れとかかわりがない限り覚える必要はない。

なお、いわゆる偉人伝はそもそも歴史学ではない歴史文学である。たまに司馬遼太郎などの歴史小説を史実と勘違いする「歴史ファン」がいるが、偉人伝を史実だと思いこむ人もまた同レベルであると言っておこう。無論、歴史になじむために偉人伝や歴史小説を読むのは悪くはない。最初に紹介したように歴史マンガも歴史の学習の一助になる。

だが、それらを書くことや読むことが歴史学・歴史研究であると勘違いしてはならない。繰り返すが、これらは文芸・芸術の類である。こういうことを勘違いしたままで文学部や教育学部の歴史科に入ってきて、実際の歴史学・研究においては信長や秀吉といった偉人の華々しい活躍とは全く無縁の、ひたすら史料に当たる「地味さ」と緻密さと厳密さに絶望するという悲喜劇をよく目にするので、ここで釘を刺しておく。

史料問題[編集]

市販の参考書では、古文書などを現代仮名づかいで表記した、史料集が市販されている。また、検定教科書にも、そのような史料の一文が紹介されている。しかし、史料の具体的な文章は、入試では出題されづらい傾向がある。実際にセンター試験の日本史の過去問を見ても、史料問題は数が少ない。

また、たとえ入試に出題されても、細かく語句の意味を問うことはない。せいぜい、「この史料は、何について記述しているかを次の選択肢の中から選べ」的な問題が出るくらいである。

このような出題になる理由は、古文書などの史料を読み解くには、史料批判という分析方法が必要だからだ。しかし、史料批判には専門的な知識が必要であり、一般的な高校で実施される教育(普通教育)の片手間でできるものではない。そのため、入試では「日本国民の一般常識」の範囲内で読める程度の史料しか扱えない。

だから、史料集は、一通りの通読をするぐらいで充分だろう。その上で、大学受験生ならば各大学の出題傾向や赤本・予備校の分析をもとに取り組めばよい。

神話[編集]

歴史とは関係のない神話が出ることはない。もちろん、日本神話が書かれている『古事記』の書物名じたいは、日本最古の歴史書であり、その研究も盛んであることから、当然高校生であれば覚えておかねばならないし、入試で出題の可能性がある。世界史のほうでも、西洋の神話の書物などの名前(聖書やギルガメッシュ叙事詩やアヴェスターなど)は検定教科書にも出ている。しかし、あくまで書物の名前と教科書や用語集で説明されている程度の簡単な内容を知っておくだけで十分である。

(このようなことを一々書く必要はないのだが、少し補足する。『古事記』などの神話的な出来事を史実だと思いこんでいる、戦前からの亡霊のような人間が現代にも一定程度いる。そうした人々の中には社会的影響力を持っている人もおり、「神話を歴史の一部としてもっと教えるべきだ」と教育内容にも口出しをすることもある。だが、こうした意見に惑わされてはならない。そのため、蛇足だが説明しておくのである)