暴行罪

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暴行概念[編集]

  1. 最広義の暴行
    有形力不法に行使される全て、対象は人・物を問わない。
    (対象条項)騒乱罪[1]多衆不解散罪内乱罪
  2. 広義の暴行
    人に対する不法な有形力の行使。必ずしも直接に人の身体に対して加えられることを要せず、対物有形力でも、それが人の身体に物理的に強い影響力を与えうる物であれば足る。
    例. 人の耳元で鉦などを叩き不快にさせる。フラッシュ等による目くらまし。
    (対象条項)公務執行妨害罪職務強要罪加重逃走罪逃走援助罪強要罪
  3. 狭義の暴行
    不法な有形力が人の身体に対して加えられる場合。暴行罪(→刑法第208条)。
  4. 最狭義の暴行
    人に対し、かつ、その反抗を抑圧するに足る強度の有形力の行使。
    (参考)
    かつては、「強姦罪」においては「被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度」、「強制わいせつ罪」においては「強弱を問わず有形力の行使」が「暴行」とされていたが、法改正により各々、「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」となり、「暴行」行為は要件ではなくなったため、これらの犯罪に関する暴行の概念は不要になった。

暴行罪[編集]

刑法第208条

暴行とは
人の身体に加えられる不法な有形力
暴行の故意
「有形力を加える」か「有形力を加え致傷させる(傷害罪の故意)」かを問わない。
「違法・不法な」有形力の行使であることを要するか?
  • (判例)要しない。
    傷害致死被告事件(東京高裁判決昭和31年11月28日)
    加持祈祷を業とする者が病気平癒のため病気により衰弱した女性の身体に対し強圧強拒を加え遂に死に至らしめた所為は業務上過失致死罪か傷害致死罪か
    加持祈祷を業とする者が、病気により衰弱した女性の身体に対し、強圧、強扼を加える所為は、たとえ、病気平癒の目的に出でたものであつても、客観的には違法な有形力の行使であつて刑法上の暴行に該当し、その者に暴行の認識ありと認められるから、よつて死に致さしめた場合には傷害致死罪の成立を免かれない。
    • 被告人に暴行の事実の認識がありながら迷信のためにこれを有効な治療行為だと誤信したのは「違法性の錯誤」なので故意を阻却しない。
  • (批判)違法性の認識に欠けるので、「暴行・傷害」の故意はなく、過失傷害と評価すべき[2]
暴行の既遂
未遂は処罰されないが、既遂時期として有形力が実際に身体に接触することを必要とするか?
  • 接触不要説 - 判例・通説
    不要とする。暴行罪を、一種の危険犯と認識する。基本的には妥当であるが、危険が行為者の主観において認識・認容されていたことは要する。
  • 接触必要説 - 学説による批判各種
    • 暴行は結果犯であって、有形力が身体に接触したことが結果となる。危険の発生とするのは文理上妥当ではないし、可罰対象行為の拡大となる。
    • 少なくとも、命中の具体的危険性の発生は必要。
    • 少なくとも、傷害の具体的危険性の発生は必要。
傷害の発生
暴行の結果、傷害にいたった場合、暴行罪は傷害罪に吸収される(法条競合)。

脚注[編集]

  1. ^ 最高裁判決昭和35年12月8日
  2. ^ 中山研一の刑法学ブログ「『狐落とし』治療術と暴行の故意 」
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