民事訴訟法第4条

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法学民事法コンメンタール民事訴訟法

条文[編集]

(普通裁判籍による管轄)

第4条
  1. 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
  2. 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
  3. 大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
  4. 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
  5. 外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
  6. 国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

解説[編集]

裁判籍とは、第一審訴訟の土地管轄において、事件の当事者また訴訟物に密接に関係する特定の地位を指示する観念で、事件を特定の管轄区域に連結させ、その裁判所に土地管轄を発生せしめる原因となるものをいう。

普通裁判籍とは、事件の種類内容問わず、民事訴訟一般についての土地管轄を定める裁判籍をいう。ただし、他の裁判所の専属管轄に属する事件だけは除外される。これに対し、種類、性質によって限定された範囲の事件について、普通裁判籍と競合的に(選択裁判籍)、またははその例外として認められるもの(専属裁判籍)を特別裁判籍という。もっとも、その中には、財産権上の訴訟というように、かなり広範囲の事件について認められるものもある。特別裁判籍には、他の事件と無関係に、その事件だけについて本来認められる独立の裁判籍と、他の事件との関連から、これに引きずられて生じる関連裁判籍とがある。

住所による普通裁判籍では、民法上の住所の観念に従う。法定の本籍とは無関係でありまた住民登録の有無にも関わらない。客観的に生活の本拠とする事実があれば主観的にその意思がなくとも、住所と認定してよいとされている(民法22条規定、大審院判決大正9年7月23日民録26巻1157頁)また、住所は1人について同時に複数認められる場合もあるから、住宅がこの裁判所の管轄区域にまたがっていても、主たる居住の場所が住所であり、もしこれを決定できないときは、管轄の指定によるべきであると解されている。 居所による普通裁判籍では、居所の観念も民法による。この裁判籍は、日本に住所のない場合、または日本の住所の知れない場合に認められる。これは、民法がこれらの場所に居所を持って住所とみなしているのに対応する。(民法23条)また外国に住所があっても居所による普通裁判籍を認める妨げにはならないとされている。

最後の住所による普通裁判籍では、日本に居所のないとき又は日本における居所の知れないときに認められる。外国に居所があると否とに関わらない。最後の住所とは、日本において有した住所の中の最後のものであって、一般的に現在無住所者が、最後に有した住所が日本にある場合だけに限定されない。

大公使の普通裁判籍では、外国にあって治外法権の特権を享有する日本人は、原則として駐在国の裁判籍に服されないので、これに対する民事訴訟は必ず日本の裁判所で提起できるようにする必要があり、このような日本人に対し、一般人の場合には普通裁判籍は日本にないような場合でも、これを認めることとしたものである。また治外法権を享有する者の範囲は、国際法上の原則及び国際条約によって定まるとされている。なお、普通裁判籍所在地は、民事訴訟規則(最高裁規則)6条によって、東京都千代田区と指定されている。

他の法令の例[編集]

参照条文[編集]

判例[編集]

前条:
第3条の12
(管轄権の標準時)
民事訴訟法
第1編 総則

第2章 裁判所

第2節 管轄
次条:
第5条
(財産権上の訴え等についての管轄)
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