民法第366条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第2編 物権

条文[編集]

質権者による債権の取立て等)

第366条
  1. 質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
  2. 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
  3. 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
  4. 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

解説[編集]

債権質の権利者の有する、目的物の債権の取立権について規定している。

なお、訴訟で取立て権を行使した場合、債権質権者は、自己のための訴訟担当として訴訟追行権を有する(通説)。つまり、請求の目的である債権の利益帰属主体は質権設定者であり、その債権の管理処分権が債権質権者に与えられている。従って債権質権者として取立てを請求した者が敗訴すると、質権設定者(目的の債権の債権者)も債権の行使に悪影響を受ける可能性がある。これに対し、債権質権者が彼固有の利益に基づき質権設定者の権利関係につき訴訟を追行していると構成し、訴訟担当ではなく固有適格とする説がある。この説によれば、取立てを受けた債務者は、二重の応訴の負担を避けるべく、その訴訟に質権設定者を引き込むことになるだろう。

1項
直接取立権
責任転質の場合、質物再度質入説ではこの規定が例外規定であるとする。共同質入説ではこの規定が当然の規定であるとする。

参照条文[編集]

判例[編集]

  • 破産申立却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁判決 平成11年04月16日)破産法第132条
    債権を目的とする質権の設定者が当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることの可否
    債権を目的とする質権の設定者は,質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り,当該債権に基づきその債務者に対して破産の申立てをすることはできない。
    • 質権の目的とされた債権については、原則として、質権設定者はこれを取り立てることができず、質権者が専ら取立権を有すると解されるところ(民法第367条(旧)参照)、当該債権の債務者の破産は、質権者に対し、破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を負わせ(破産法第16条(旧)参照)、また、本件のように当該債権の債務者が株式会社である場合には、会社の解散事由となって(商法404条1号(旧)参照)、質権者は破産手続による配当によって満足を受けられなかった残額については通常その履行を求めることができなくなるという事態をもたらすなど、質権者の取立権の行使に重大な影響を及ぼす。

前条:
民法第365条
(指図債権を目的とする質権の対抗要件)
民法
第3編 債権

第9章 質権

第4節 権利質
次条:
民法第367条
削除
民法第369条
(抵当権の内容)
このページ「民法第366条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。