民法第501条

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法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文[編集]

弁済による代位の効果)

第501条
  1. 前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
  2. 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の1人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
  3. 第1項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
    1. 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
    2. 第三取得者の1人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
    3. 前号の規定は、物上保証人の1人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
    4. 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
    5. 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第1号及び第2号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第1号、第2号及び前号の規定を適用する。

改正経緯[編集]

2017年改正前の条文は以下のとおり。改正により「登記に付記」の要件が削除された。「付記」とは不動産登記法の付記登記のことであり(決して担保物権抹消登記ではない)、弁済した保証人が代位を付記登記していない場合、第三取得者の「被担保債権が消滅した」という信頼を保護するためであるが、付記登記がないからと言って第三者が被担保債権の消滅を信頼するのか疑問であり、さらに被担保債権の譲受人が付記登記なしで抵当不動産を取得した第三者に対抗できないものではないことによる。

前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
  1. 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
  2. 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
  3. 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
  4. 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
  5. 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
  6. 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。

解説[編集]

  • 債務者に代わって債務を弁済した者の代位権につき、その優先順位等について規定している。
  • 第三取得者が保証人に代位しないのは、抵当権の負担を覚悟で取得したからである。
計算方法は、まず求償額総額÷(保証人の人数+物上保証人の人数)=保証人一人あたりの求償額
求償額総額ー保証人一人あたりの求償額×保証人の数=物上保証人全員の求償額
物上保証人全員の求償額を資産の額で案分すれば物上保証人それぞれの求償額が算出できる。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 登記抹消請求 (最高裁判決  昭和41年11月18日)
    1. 代物弁済予約上の権利は弁済による代位の目的となるか
      いわゆる代物弁済予約上の権利は、民法第501条本文の「債権ノ担保トシテ債権者カ有セシ権利」にあたり、同条による代位の目的となる。
    2. 第三取得者の取得後に弁済をする保証人と民法第501条第1号所定の代位の附記登記の要否
      担保権の目的である不動産の第三取得者の取得後に当該債務の弁済をする保証人は、民法第501条第1号所定の代位の附記登記をしなくても、右第三取得者に対して債権者に代位する。
  2. 配当異議 (最高裁判決 昭和59年05月29日)民法第442条民法第459条
    1. 保証人と債務者との間に成立した求償権につき約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約と民法501条所定の代位の範囲
      保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使することができる。
    2. 保証人と物上保証人との間に成立した民法501条但書5号所定の代位の割合と異なる特約の第三者に対する効力
      保証人と物上保証人との間に民法501条但書5号所定の代位の割合と異なる特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、右特約の割合に応じて債権者が物上保証人に対して有していた抵当権等の担保権を代位行使することができる。
  3. 求償債務履行 (最高裁判決  昭和61年02月20日)民事訴訟法第191条
    代位弁済者の債権者から代位取得した原債権又はその連帯保証債権の給付請求を認容する場合と判決主文における求償権の表示
    代位弁済者が債権者から代位取得した原債権又はその連帯保証債権の給付を求める訴訟において、裁判所が請求を認容する場合には、求償権の額が原債権の額を常に上回るものと認められる特段の事情のない限り、主文において、請求を認容する限度として求償権を表示すべきである。
  4. 配当異議 (最高裁判決  昭和61年11月27日)
    保証人・物上保証人の両資格を兼ねる者と弁済による代位の割合
    保証人又は物上保証人とその両資格を兼ねる者との間の弁済による代位の割合は、両資格を兼ねる者も一人として、全員の頭数に応じた平等の割合であると解するのが相当である。
  5. 不当利得返還(最高裁判決 平成4年11月06日) 民法第392条民法第500条
    共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合と後順位抵当権者の代位
    共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、甲不動産の後順位抵当権者は、民法392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができる。
  6. 求償金(最高裁判決 平成9年12月18日)
    担保権の設定された物件が弁済までの間に共同相続により共有となった場合における民法501条5号にいう「頭数」の意義
    民法501条5号にいう「頭数」は、単独所有であった物件に担保権が設定された後、これが弁済までの間に共同相続により共有となった場合には、弁済の時における物件の共有持分権者をそれぞれ一名として数えるべきである。
  7. 精算金(最高裁判決 平成10年04月14日)民法第442条,民法第675条,商法第511条1項,和議法第5条,和議法第45条,和議法第57条,破産法第24条,破産法第26条,破産法第104条,破産法第32条
    1. 構成員に会社を含む共同企業体の債務と各構成員の連帯債務関係
      構成員に会社を含む共同企業体の各構成員は、共同企業体がその事業のために第三者に対して負担した債務につき連帯債務を負う。
    2. 和議開始の申立てをした連帯債務者の一人に対し他の連帯債務者が右申立てを知って和議開始決定前の弁済により取得した求償権をもって相殺することの可否
      連帯債務関係が発生した後に連帯債務者の一人が和議開始の申立てをした場合において、右申立てを知って和議開始決定前の弁済により求償権を取得した他の連帯債務者は、右求償権をもって和議債務者の債権と相殺することができる。
    3. 和議認可決定を受けた連帯債務者の一人に対し他の連帯債務者が和議開始決定後の弁済により取得した求償権をもってする相殺の要件及び限度
      連帯債務者の一人について和議認可決定が確定した場合において、和議開始決定後の弁済により求償権を取得した他の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、右弁済によって取得する債権者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で右求償権をもって和議債務者の債権と相殺することができる。
  8. 求償金請求事件(最高裁判決 平成18年11月14日)民法第147条,民法第155条(現・民法第154条),民事執行規則第171条
    物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に保証人が代位弁済をした上で差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが承継の申出について民法155条(旧)所定の通知がされなかった場合における保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無
    債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条(旧)所定の通知がされなくても,上記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断する。
  9. 前渡金返還請求事件(最高裁判決 平成23年11月24日)民事再生法第85条1項,民事再生法第121条1項,民事再生法第121条2項
    求償権が再生債権である場合において共益債権である原債権を再生手続によらないで行使することの可否
    弁済による代位により民事再生法上の共益債権を取得した者は,同人が再生債務者に対して取得した求償権が再生債権にすぎない場合であっても,再生手続によらないで上記共益債権を行使することができる。

前条:
民法第500条
(法定代位)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第6節 債権の消滅

第1款 弁済
次条:
民法第502条
(一部弁済による代位)
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