民法第762条

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法学民事法民法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文[編集]

夫婦間における財産の帰属)

第762条
  1. 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
  2. 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

解説[編集]

夫婦の財産のあり方を法定した規定(法定財産制度)の一つである。
夫婦であるといっても、それぞれが独立した個人であるから、婚姻前から有する財産や、婚姻中であっても自己の名で得た財産は、それぞれの単独名義の財産(特有財産)となる。しかし、夫婦は共通した生計のもと共同生活を営む(民法第752条)ため、ある財産がどちらに属するか判明しない場合もある。その場合は、夫婦の共有に属するものと推定されることになる。
明治民法においても、第807条において、「妻又ハ入夫カ婚姻前ヨリ有セル財産及ヒ婚姻中自己ノ名ニ於テ得タル財産ハ其特有財産トス」と定められ、単独で所有する「特有財産」とされた。なお、帰属の不分明な財産は家に属するものとされた。
「自己の名で得た財産」の解釈については、以下の判例等を参考。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 土地所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和34年07月14日)
    登記簿上の所有名義人と特有財産。
    夫婦間の合意で、夫の買い入れた土地の登記簿上の所有名義人を妻としただけでは、土地を妻の特有財産と解すべきではない。
  2. 所得税審査決定取消事件(最高裁判決 昭和36年9月6日)憲法24条所得税法1条1項,所得税法9条本文
    1. 民法第762条第1項の憲法第24条適否。
      民法第762条第1項は憲法第24条に違反しない。
      • 憲法24条の法意は、民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたものであり、男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもつて権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものであつて、結局、継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定と解すべく、個々具体の法律関係において、常に必らず同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を包含するものではない。
      • 民法762条1項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされている。
    2. 所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていないことの憲法第24条適否。
      所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていないからといつて憲法第24条に違反しない。

参考[編集]

明治民法において、本条には以下の規定があった。戸主制廃止に伴い削除廃止。

  1. 新ニ家ヲ立テタル者ハ其家ヲ廃シテ他家ニ入ルコトヲ得
  2. 家督相続ニ因リテ戸主ト為リタル者ハ其家ヲ廃スルコトヲ得ス但本家ノ相続又ハ再興其他正当ノ事由ニ因リ裁判所ノ許可ヲ得タルトキハ此限ニ在ラス

前条:
民法第761条
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法
第4編 親族

第2章 婚姻

第3節 夫婦財産制
次条:
民法第763条
(協議上の離婚)


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