民法第905条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第5編 相続 (コンメンタール民法)

条文[編集]

相続分の取戻権)

第905条
  1. 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
  2. 前項の権利は、1箇月以内に行使しなければならない。

解説[編集]

遺産分割前の相続財産は、共同相続人の共有(民法第249条以下)に属する。ただし、遺産分割前でも共同相続人は自己の相続分を第三者に譲渡することができる。この場合に遺産分割に第三者の介入を望まない他の共同相続人は価額・費用を償還することでその相続分を買い戻すことができると定めたのが本条である。

明治民法第1009条を継承。

関連条文[編集]

判例[編集]

  • 共有物分割(最高裁判決 昭和53年07月13日)
    共同相続人の一人が遺産たる特定不動産に対する共有持分権を譲渡した場合と民法905条の適用又は類推適用の可否
    共同相続人の一人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲渡した場合に、民法905条の規定を適用又は類推適用することはできない。
  • 不動産登記処分取消請求事件(最高裁判決 平成13年07月10日)農地法第3条1項,不動産登記法第35条1項、不動産登記法第49条
    共同相続人間においてされた相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転についての農地法3条1項の許可の要否
    共同相続人間においてされた相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない
    共同相続人間の相続分の贈与を原因とする農地の持分移転登記の申請を農地法3条1項の許可を証する書面の添付がないことを理由に却下することの可否
    共同相続人の共有の相続登記がされている農地につき,「相続分の贈与」を原因として共同相続人の1人に対する他の共同相続人の持分の移転登記が申請された場合には,登記官は,農地法3条1項の許可を証する書面の添付がないことを理由に申請を却下することはできない。

参考[編集]

明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、戦後改正時に第842条に継承されたが、2011年改正により第841条に条数が繰り上げられた。

母カ財産ノ管理ヲ辞シ、後見人カ其任務ヲ辞シ、親権ヲ行ヒタル父若クハ母カ家ヲ去リ又ハ戸主カ隠居ヲ為シタルニ因リ後見人ヲ選任スル必要ヲ生シタルトキハ其父、母又ハ後見人ハ遅滞ナク親族会ヲ招集シ又ハ其招集ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス

前条:
民法第904条の3
(期間経過後の遺産の分割における相続分)
民法
第5編 相続

第3章 相続の効力

第2節 相続分
次条:
民法第906条
(遺産の分割の基準)
このページ「民法第905条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。