物理数学I 解析学

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目次

[編集] 解析学

解析学は高校までの数学の延長としてとらえることも出来るが、高校までの数学を厳密に基礎づける科目ととらえることも出来る。例えば、高校までの範囲では数列の極限や関数の連続は厳密には定義されていなかった。解析学ではこのような極限を取る手法を扱う。また、微分や積分に関するより進んだ計算も扱う。ここで学んだ手法は線形代数と並んで、より進んだ計算を行なうための基礎となるので、ここで学ぶ手法には十分習熟する必要がある。

[編集] 1変数の計算

ここでは、1つの変数を扱う関数を用いて収束や連続性の定義を扱う。また、それらを用いて厳密に定義された手法を用いてテイラー展開やより複雑な積分を導入する。

[編集] 実数の連続性

最初に、無理数を定義する手法を考える。高校までの範囲では、実数のうちで有理数でないものを無理数と定義した。ここで有理数とは、2つの互いに素の整数n,mを用いて、


\frac n m

とかかれるもの全体を指す。しかし、この構成ではそもそも実数が何なのかが示されていないため、無理数というものがとらえにくいという難点がある。 ここで、実数の性質について1つの仮定をおく。

実数が全て書かれた直線を数直線とする。この数直線上でただ1点に対する切断を考えるとき、その点はその点より小さい数の集合と大きい数の集合を作りだす。このとき、この数自身は小さい数の集合に含まれて、大きい数の集合には含まれないものとする。

この定義はデデキントの切断(w:en:Dedekind cut)と呼ばれる。このとき、ある実数をその数より小さい有理数の集合によって定義する。この定義は有理数と無理数の両方に対して適用できる。なぜなら、切断で選ばれた点が有理数だったときには、その点自身までの有理数の集合を選んだ有理数を表わす有理数の集合として扱えばよい。一方、切断によって選ばれた点が無理数だったときには、その切断は必ずその近くにある別の数を表わす切断とは区別される。なぜなら、ある数を選んだときその数と別の数の間には必ずある有理数が存在するからである。有理数のこの性質は有理数のw:稠密性と呼ばれ、有理数の重要な性質である。これは、どんな数でも数値として書くならその値はどんな場合でも無限小数で書くことが出来、無限小数はどれほど小さい数でも有理数で書かれ循環小数を含んでいることから確かに成立するのである。このようにして、無理数はその数より小さい有理数全体の集合によってとらえられた。

[編集] 数列の収束の定義

ここからは、上で述べた実数の連続性を用いて、数列の収束を定義する。まずは、収束の定義を述べる。任意の(小さい)ある数εをとったとき、あるNが存在してn > = N を満たす全てのnについて

| ana | < ε

が成り立つとき数列anは、定数aに収束するという。

ここで、実数の連続性は無限にある定数aに近い数がただ1つしかないということを見るために用いられている。これは、ある定数aと異なった点bは、定数aとの間に何らかの有理数を持つため、定数aと無限に近くにあることは出来ない。そのため、数列 | ana | が、定数aと選んだ点bの距離よりも小さいεよりも小さいという条件を満たすとき、anが収束する点は確かに点bではなく、点aであることが 保証されるのである。上の定義は高校までに行なった極限の定義に適合しているはずなので、実際に極限の計算を行なうときには、これまでに用いた結果をそのまま用いてもよい。この定義を用いたとき、以下が成り立つ。

定数a,bに収束する数列an,bnに対して、

(I)


\lim (a _n + b _n) = a + b

(II)


\lim (a _n \times  b _n) = a b

が成り立つ。

  • 導出

(I)について、数列anがaに収束することから、ある定数ε1を取ったとき、ある定数N1が存在し、N1 < nを満たす全てのnについて、

| ana | < ε1

が成立する。同様に数列bnがbに収束することから、ある定数ε2を取ったとき、ある定数N2が存在し、N2 < nを満たす全てのnについて、

| bnb | < ε2

が存在する。

ここで、

an + bn

について、

N = max(N1,N2)

としたとき、全てのn > Nを満たす整数nに対して

| an + bn − (a + b) |

を計算すると、この量は三角不等式を用いることで、

< | ana | + | bnb |
< ε1 + ε2

が成り立つ。しかし、ε1,ε2はNを大きく取ることでいくらでも小さくできるため、全てのεに対して

ε1 + ε2 < ε

となるような整数Nが存在する。よって、


\lim ( a _n + b _n)  =  a+b

が示された。

(II)

同様に

anbn

について、

| anbnab |

は、

= | an(bnb) + b(ana) |

\le  |a _n ( b _n - b) | +  |b| |a _n - a |

となる。ここで、n > Nに対しては

a − ε1 < an < a + ε1

が成り立つことに注目すると、

< (a + ε12 + | b | ε1

が得られる。ここで、ε1,ε2はNを大きく取ることでいくらでも小さくできるため、a,bが有限のときa,bの値に関わらず上の値は限りなく小さくなる。よって、


\lim (a _n \times  b _n) = a b

が示された。

    • 問題

次の数列


n  \rightarrow \infty

の極限値を求めよ。

(I)


\lim ( 1 + \frac 1 n)

(II)


\lim ( 2 \times \frac 1 n)
    • 解答

上の結果である

(I)


\lim (a _n + b _n) = a + b

(II)


\lim (a _n  b _n) = a b

を用いればよい。ただし、定数は全てのnに対して同じ数を取る数列として扱う。

(I)


\lim ( 1 + \frac 1 n)

は、1は極限値1をとり


\frac 1 n

は、極限値0を取ることから、


\lim ( 1 + \frac 1 n)  = 1 +0 =1

となる。

(II)


\lim ( 2 \times \frac 1 n)

について、2は、極限値2を取り、


\frac 1 n

は極限値0を取ることから、


\lim ( 2 \times \frac 1 n) = 2 \times 0 = 0

が成り立つ。一般に定数倍や定数の足し算は、極限値に定数倍や定数の足し算をすればよい。


次に数列の発散の定義をする。ここでも上の場合と同様無限個の数列の値がある値より大きくなることが重要である。あるNが存在してn \ge N を満たすすべてのnについて任意に取った(大きい)Rに対して、

an > R

が成り立つとき、anはn無限大で正の無限大に発散するという。このことを


\lim a _n = \infty

と書かれる。

  • 問題例
    • 問題
正の無限大に発散する例

数列

an = n

の場合についてこの数列が上の定義を用いたときに正の無限大に発散することを示せ。

    • 解答

ここでも、Nの選び方が重要である。ここでは、あるRに対して


N \ge R

と選べばよい。この場合、どのような(大きい)Rを取ったとしても


N \ge R

を満たすような整数Nを選ぶと、それ以降の全てのnについて


a _n = n  \ge R = N

が成り立つ。値Rはいくらでも大きくできるので、このことは数列の発散の条件を満たしている。よって、数列

an = n

はn無限大で正の無限大へと発散する。


同じ様にして、 あるNが存在してn \ge N を満たすすべてのnについて任意に取った(小さい)Rに対して、

an < R

が成り立つとき、anはn無限大で負の無限大に発散するという。このことは


\lim a _n = - \infty

と書かれる。

このうちのいずれにも当てはまらない場合もある。例えば、次の場合は数列はどの値に収束することもないため、数列は極限値を持たない。


  • 問題例
    • 問題
ある有限値に収束しない場合
an = ( − 1)n

が上の定義のいずれも満たさないことを示し、この数列が収束も発散もしないことを導出せよ。


    • 解答

このとき、非常に大きなNを取ったとしても、そのNから先の全てのnについてanがきわめてaに近い値に留まるようなaは存在しない。例えば、a = 1と取ったとすると、ある値kにおいて

ana = 0

となり、両者は非常に近くなる。しかし、n=k+1においては既に、その値は-1となり、

| ana | = 2

となり、任意に小さい数εに対してより小さい数であり続けることはできない。これはどれほど大きなkをとっても、もしくはa = -1 もしくはそれ以外の量を選んでも同じである。よって、この数列はn無限大である値に収束することは無い。一方、この数列は1と-1しか値を取らないため、どのような数よりも大きくなるような数列ではない。よって、この数列は正負の無限大に発散することもない。よって、この数列は収束も発散もしないことが示された。

[編集] 連続の定義

ある関数についてその関数が定義された区間においてどんなεについてもあるδが存在して | xa | < δを満たす全てのx について

| f(x) − f(a) | < ε

が成り立つとき関数fは連続であると呼ぶ。


[編集] 複数回微分の定義

n回微分を f(n) = (f(n − 1))' で定義する。


[編集] テイラー展開

  • テイラー級数の定義

ある関数 f(x)について、fが定義された全ての実数について


f(x) = f(a) + f'(a)(x -a ) + \frac 1 2 f''(a) (x - a)^2 + ... + 
\frac 1 {n!} f ^{(n)} (\xi ) (x -a)^n

が成り立つ。(ξはaとxの間にある,ある実数。)これを発見者にちなんでw:テイラー級数と呼ぶ。これは複雑な関数をべき級数という比較的分かり易い関数で近似することが出来るということを表わす定理である。


  • テイラー展開の定義

上で述べたテイラー級数はn次までのべき級数によって展開したが、ある性質のいい関数については最後のややこしい項からの寄与が無限に小さくなり、単にその項をよりわかりやすい無限和で置き換えることが出来る。このときテイラー級数は


f(x) = f(a) + f'(a)(x -a ) + \frac 1 2 f''(a) (x - a)^2 + \cdots + 
\frac 1 {n!} f ^{(n)} (a ) (x -a)^n + \cdots

と書き換えられるが、これをw:テイラー展開と呼ぶ。テイラー展開は短く


f(x) = \sum  _ {n=0} ^{\infty} \frac 1 {n!} f^{(n)} (a) (x-a) ^n

と書くことが出来る。無限回微分が可能な関数は、テイラー展開可能である。

  • 重要なテイラー展開の例
    • exの例
f(x) = ex

に対してx=0のまわりでのテイラー展開を導出する。


f(x) = f'(x)=f''(x)= \cdots = f^{(n)}(x) = \cdots = e^x

であることを用いると、テイラー展開の定義の式で

f(n)(a) = f(n)(0) = 1

が得られる。 よって、exのx=0のまわりでのテイラー展開は、


e^x = \sum  _n \frac 1 {n!} x^n

となる。


    • (1 + x)aの例 (aは実数。)
(1 + x)a

についてテイラー展開を考える。実際には、aが整数の場合にはこの値は通常のべき級数展開に一致する。例えば、

(1 + x)2

をx=0のまわりでテイラー展開すると、

f(0) = 1
f'(0) = 2
f''(0) = 2

となり、 2次の代数式であるので3階以降の微分は0になることを考慮すると、そのテイラー展開は、


\begin{matrix}
(1+x)^2 &= 1 + \frac 1 {1!} + 2 \cdot x + \frac 1 {2!} 2 x^2\\
&= 1 + 2x + x^2
\end{matrix}

となり、確かに通常の展開と一致する。

aが整数でない場合にはこの展開は無限に続く。この展開の係数をaが整数の場合の2項定理の拡張として、


\begin{pmatrix}
a\\
n
\end{pmatrix}

と定義し、2項定数と呼ぶ場合がある。ここでaは(1 + x)aのaであり、nはxについてのn次の項を表わす。この係数を用いると、このテイラー展開は、


(1+x)^a = \sum  _{n=0}^\infty = 
\begin{pmatrix}
a\\
n
\end{pmatrix}
x^n

と書くことが出来る。例えば、a= 1/2では、x=0のまわりの展開について

(1 + x)1 / 2

について、

f(0) = 1

f'(0) =\frac 1 2

f''(0) = -\frac 1 4

が得られることから、2項目までのテイラー展開として、


\begin{matrix}
(1+x)^{1/2}&= 1 + \frac 1 2 x + \frac 1 2 \cdot ( - \frac 1 4 ) x^2 + \cdots\\
&=  1 + \frac 1 2 x  - \frac 1 8  x^2 + \cdots
\end{matrix}

が得られる。もちろん根気があればどこまででも値を得ることが出来る。よって、


\begin{pmatrix}
1/2\\
0
\end{pmatrix}
=1

\begin{pmatrix}
1/2\\
1
\end{pmatrix}
=1/2

\begin{pmatrix}
1/2\\
2
\end{pmatrix}
=-1/8

が得られる。


    • sinx,cosxのテイラー展開

sinxcosxは微分によって互いに移り変わるのでそのテイラー展開は同時に扱うことが出来る。詳しく計算すると、x = 0のまわりでの展開は


\sin x = \sum  _{n=1} ^{\infty} (-1)^n\frac 1 {(2n-1)!} x^{2n-1}

\cos x = \sum  _{n=0} ^{\infty} (-1)^n\frac 1 {(2n)!} x^{2n}

を得ることが出来る。このとき、この値と、

eix

のテイラー展開の値を比較した場合、

eix = cosx + isinx

の関係が示唆される。この関係は発見者の名にちなんでw:オイラーの公式と呼ばれる。この公式の正当化は複素関数論を使わないとうまくいかないようなのでこの稿の範囲を超えるが、物理数学II以降で扱われる予定である。オイラーの公式を用いると、三角関数を指数関数を用いて表すことができる。具体的には、


\cos x = \frac {e^{ix} + e^{-ix}}2, \sin x = \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i}, \tan x =\frac 1 i  \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{e^{ix} + e^{-ix}}

が成り立つ。

  • 問題例

上の結果を確かめよ。

    • テイラー展開を用いた関数の極限の計算

テイラー展開を用いて極限を求めることが出来ることがある。例えば、 x 
\rightarrow 0で、


\frac {e^x -1} x = \frac {x + x^2/2 + \cdots } x = 1 + x/2 \rightarrow 1

となる。

[編集] ロピタルの定理

aを実数または\plusmn \infinとして


\lim _{x \rightarrow a}f(x) = \lim _{x \rightarrow a}g(x) = 0

または


\lim _{x \rightarrow a}f(x) = \lim _{x \rightarrow a}g(x) = \infin

となる微分可能な関数について


\lim  _{x \rightarrow a} \frac { f(x)}{g(x)} = \lim  _{x \rightarrow a} \frac { f'(x)}{g'(x)} 
例えば、 
\lim _{x\rightarrow 0} \frac {\sin x} x = \lim _{x\rightarrow 0} \frac {\cos x} 1 = 1 
となる。

[編集] 積分の定義

ある区間を考え、区間を細かく分割する。ここで、ある関数fに対して、分けられた区間でもっとも大きい部分をとり、区間の広さをかけて、足し合わせたものをその関数の上積分と呼ぶ。同様にもっとも小さい部分を取り足し合わせたものを関数の下積分と呼ぶ。上積分と下積分が一致するとき、それをその関数の積分と呼び、fを積分可能と呼ぶ。

Note:連続な関数は積分可能である。

  • 上積分と下積分が一致しない例

例えば関数 
f (x) = 
\begin{cases}
1 ~ \textrm{(x is rational)} \\ 
0 ~ \textrm{(x is irrational)}
\end{cases}
について区間0 < x < 1で考えたとき、どんな小さい区間を使って0 < x < 1を分割したとしても有理数の稠密性により、上積分は1,下積分は0となる。よってfは積分可能でない。

[編集] 双曲線関数

w:双曲線関数は三角関数と関係の深い一連の関数群である。これらは積分を行うための変数変換で使うことがあるので、ここで導入する。双曲線関数は次の3つの関数である。


\sinh x = \frac {e^x - e^{-x}} 2

\cosh x = \frac {e^x + e^{-x}} 2

\tanh x = \frac {\sinh x} {\cosh x}

を双曲線関数と呼ぶ。

それぞれのグラフ

これらは関係式

cosh2x − sinh2x = 1

を満たすが、x2y2 = 1が双曲線の関数表示であることから、この関数は双曲線関数と呼ばれる。上の式は三角関数の対応物であるcos2x + sin2x = 1に類似しているが、この結果は偶然ではない。上のオイラー公式を使った三角関数の式を見ると、 sinix = isinhx,cosix = coshx,tanix = itanhx が得られる。この式をcos2x + sin2x = 1でx=izとしたものに代入すると、cosh2x − sinh2x = 1の関係が得られる。

[編集] 三角関数の逆関数

sin − 1xsinxの逆関数とする。これは多価関数であるので通常 − π < y < π の範囲を選んで用いる。 同様に tan − 1x− π < y < π の範囲を選んで用いる。一方 cos − 1x0 < y < 2π の範囲を選んで用いる。

[編集] 様々な積分


\int dx \frac 1 {\sqrt{1-x^2}}  = \textrm{Arcsin} x

\int dx \frac 1 { 1+x^2} = \textrm{Arctan} x

が得られる。

  • 導出

まず、


\int dx \frac 1 {\sqrt{1-x^2}}  = \textrm{Arcsin} x

を導出する。y = sinxとする。このとき、


\frac{d{y}}{d{x}} = \cos x

\begin{matrix}
\frac{d{x}}{d{y}} &= \frac 1 {\cos x }\\
&= \frac 1 {\sqrt { 1 - (\sin x)^2} }\\
&= \frac 1 {\sqrt { 1 - y^2} }\\
\end{matrix}

よって、

x = sin − 1y

と合わせると、


\frac{d{x}}{d{y}} = \frac{d(\sin ^{-1} y)}{dy} = \frac 1 {\sqrt { 1 - y^2} }

となり、2番目の式と、3番目の式をyで積分することで求める式を得る。

y = tanxとおく。


\frac{d{y}}{d{x}} = \frac 1 {\cos ^2 x}

より、


\begin{matrix}
\frac{d{x}}{d{y}} &= \cos ^2 x\\
&= \frac 1 {1+\tan^2 x } \\
&= \frac 1 {1+y^2 } \\
\end{matrix}

となる。よって、


\frac{d{x}}{d{y}} = \frac{d(\tan^{-1}y)}{dy} = \frac 1 {1+y^2}

が得られた。この式の2番目の式と、3番目の式をyで積分することで求める式を得る。

[編集] 有理関数の積分

w:有理関数の積分

有理関数は必ずw:初等関数を用いて積分できる。


  • 説明

有理関数の積分は


\int dx \frac {P(x)}{Q(x)}

の形に書くことが出来る。(P,Qはxの整式。)ここで、次のような手順を実行する。

    • 上の式の次数が下の式の次数より高かったら、上の式を下の式で割る。

このことによって、被積分関数の分母の次数は、上の式の分子の次数より低くなる。割ることであまった部分は必ず、分数でない形になるので(普通の数やx,x2などになる。)積分できる。

    • 次に、分母を因数分解する。

代数式は必ず複素数の範囲で因数分解できることが知られているので、(w:代数学の基本定理) 分母は必ず(x-a)の積の形に書ける。ここで、元々の被積分関数が実数だったとすると、因数分解された式は、必ず、(xa)(xa * )の形になっているはずである。(*は複素共役)これらの2因数をかけ合わせることにすると、結局これらの式の分母は、1次式か2次式の積で書ける。


\frac 1 {(x^2-1) }

については、


\begin{matrix}
=&\frac 1 {(x-1)(x+1) } \\
=&\frac {1} 2 (\frac 1 {x-1 }-  \frac 1 {x+1})
\end{matrix}

が得られる。

    • これまでの手順を経た結果、得られた式の形は、

\int \frac 1 {x-a}

か、


\int \frac {x-b} {cx^2 + dx +e}

が得られることが分かる。これらは共に初等関数の範囲で積分可能である。実際、上の式は


\int \frac 1 {x-a}
= ln | xa |

を満たすことが分かる。下の式については、まず、分母を平方完成すると、分母は、

c(x − α)2 + β

の形になるが、ここで

y = x − α

の置き換えをすると、元々の積分は、


\int \frac {y+f} {y^2 +g}

となる。ここで、このうちの第1項は、


\begin{matrix}
\int \frac y {y^2+g} dy\\
=& \int \frac 1 2 \frac 1 {y^2+g} dy^2\\
=&  \frac 1 2 \ln (y^2 +g ) \\
\end{matrix}

が得られ、積分できることが分かる。次に、第2項については


z = \sqrt {g} y

の置き換えをすると、定数因子を除いて、


\int \frac {1} {z^2 +1}

となるが、この積分の結果はこのページの上の方で見た通り、

= tan − 1z

となる。

よって、全ての有理関数は、初等関数の範囲で積分できることが分かった。


  • 計算例

計算例として、


\int dx \frac {x+3} {(x+2) (x^2+1) }

を実際に計算してみる。 計算を行なうときにはまず、分子の次数が分母の次数よりも低いことを確認する。次に、部分分数分解を行なうが、このときには、


\frac A {x+2} + \frac {Bx+C} { x^2+1}

とおいて計算すればよい。ここで、分母を通分すると、分子は、

(A + B)x2 + (2B + C)x + A + 2C

が得られるが、これは元々の式の分子である

x + 3

と一致していなくてはならない。よって、


\begin{matrix}
A+B = 0\\
A+2C = 3\\
2B+C = 1
\end{matrix}

が得られる。これを解くと、


A= \frac 1 5, B = - \frac 1 5, C = \frac 7 5

が得られる。元の積分は


\int dx (\frac 1 5 \cdot \frac 1 {x+2} + \frac {\frac{-1}5 x + \frac 7 5  }{x^2 +1} )

に帰着するが、これらの項ははそれぞれ初等関数の範囲で積分できる。実際に積分を行なうと、


\int dx (\frac 1 5 \cdot \frac 1 {x+2} + \frac {\frac{-1}5 x + \frac 7 5  }{x^2 +1} )

= \frac 1 5 \ln (x+2)  -\frac 1 {10} \ln (x^2+1) + \frac 7 5 \tan^{-1} x

が得られ、上で得た値と一致する。

[編集] 無理数を含んだ積分

関数が有理数だけで書かれない場合、その式はもはや積分が出来るとは限らない。簡単に積分が実行できる場合を挙げる。すぐに積分の仕方が見当たらない場合、それが定積分であったら、数値的に求めることを考えることも必要である。

  • 
\sqrt{1-x^2}
の場合。

\sqrt{1-x^2}

で書かれる無理式が含まれ、それ以外の無理式が含まれない場合には、


x =  \sin t ~\textrm{or}~ x = \cos t

の置き換えをすることで、この式を三角関数の積分に置き換えることが出来る。三角関数の積分は、後に述べる通り有理関数の積分に帰着させることが出来るので、この積分は解析的に実行できる。

  • 
\sqrt{1+x^2}
の場合。

\sqrt{1+x^2}

で書かれる無理式が含まれ、それ以外の無理式が含まれない場合には、

x = sinht

の置き換えをすることで、この式を三角関数の積分に置き換えることが出来る。 (

cosh2x = 1 + sinh2x

の関係を用いて、根号を消すことが出来る。 )

[編集] 三角関数を含んだ積分

三角関数

sinx,cosx,tanx

だけを含んだ積分については、

tan(x / 2) = t

の置き換えをすることで、これを有理関数の積分に帰着させることができる。実際、


\begin{matrix}
\sin x =& 2 \sin \frac x 2 \cos \frac x 2\\
=& 2 \tan \frac x 2 \cos^2 \frac x 2\\
=&  \frac {2 \tan \frac x 2} {1+\tan ^2 \frac x 2}\\
=& \frac {2 t} {1+t^2} 
\end{matrix}

\begin{matrix}
\cos x &= 2 \cos^2 \frac x 2 - 1\\
&= 2 \frac 1 {1+t^2} - 1\\
&= 2 \frac {1-t^2} {1+t^2} 
\end{matrix}

\begin{matrix}
\tan x &= \frac {\sin x} {\cos x }\\
&= \frac {2t} {1-t^2}
\end{matrix}

さらに、


dx = d(2\tan^{-1} t) = 2 \frac {dt} {1+t^2}

となり、確かにtについての有理関数に帰着することが分かる。よって、三角関数だけの関数は初等関数の範囲で積分され得ることが分かった。


  • 問題例
    • 問題

(I)

{{x+2}\over{x^2+5\,x+4}}

(II)

{{x^2+3\,x+3}\over{2\,x^3-x+1}}

(III)

{{\sin x}\over{\cos ^2x}}

(IV)


\int dx \frac 1 {1+\sin x}

をそれぞれ積分せよ。

    • 解答

(I)


\frac {x+2} {x^2+5x+4}

=\frac {x+2} {(x+4)(x+1)}

ここで、この式が


\frac A{x+4} + \frac B {x+1}

に等しいとすると、


\frac {x+2} {(x+4)(x+1)}
=\frac 1 {(x+4)(x+1)} (A(x+1) + B(x+4))

両辺が等しいことから、

A + B = 1,A + 4B = 2

となり、


B = \frac13, A = \frac23

が得られる。よって始めの式について、


\frac {x+2} {x^2+5x+4}

= \frac 13 \frac 1 {x+1} + \frac 23 \frac 1{x+4}

が得られる。この関数をxで積分すると


\frac 13 \ln (x+1) + \frac 23 \ln (x+4)

が得られる。 (II)


\frac {x^2 + 3x+3}{2x^3 - x +1}

=\frac{x^2 + 3x+3}{(x+1)(2x^2 -2x +1)}

ここで、この式が


\frac A {x+1} + \frac {Bx +C }{2x^2 -2x + 1}

に等しいと仮定すると、両辺の分母を比較することで、

x2 + 3x + 3 = A(2x2 − 2x + 1) + (Bx + c)(x + 1)

となり、

2A + B = 1, − 2A + B + C = 3,A + C = 3

が得られる。これを解くと、


A= \frac 15, B = \frac 3 5, C = \frac {14}5

が得られる。よって元の式は、


\frac 15 \frac 1 {x+1}+ \frac {\frac 3 5x + \frac {14}5}{2x^2-2x+1}

となる。更にこの式の第2項について、項の分子を


\frac 35(2x^2-2x+1)' \frac 14 + \frac 3 {20} \cdot 2 + \frac {14}5

= \frac 3{20}(2x^2-2x+1)' + \frac {31} {10}

と書き換えられる事に注目すると、元の式は


\frac 15 \frac 1 {x+1}+ \frac {\frac 3 {20}(2x^2-2x+1)' }{2x^2-2x+1}
+ \frac {31}{10} \frac 1{2x^2-2x+1}

となる。ここで、この式の1, 2項については、簡単に積分できて、


\frac 15 \ln(x+1) + \frac 3{20} \ln (2x^2-2x+1)

が得られる。最後に第3項については、


\frac 1{2x^2-2x+1} = \frac 2 {(2x-1)^2 + 1}

が成り立つことに注目すると、t = 2x − 1,dt = 2dxの置き換えをして、


\int dx 
\frac 2 {(2x-1)^2 + 1}

= \int dt \frac 1{t^2 +1}
= Arctant = Arctan(2x − 1)

が得られる。よって、全体をまとめると積分値として


\frac 15 \ln(x+1) + \frac 3{20} \ln (2x^2-2x+1)+\frac{31}{10}\textrm{Arctan} (2x-1)

が得られる。

(III)


\int \frac {\sin x}{\cos^2 x} dx

= - \int 
\frac {1}{\cos^2 x} d(\cos x)

= \frac 1 {\cos x}

(IV)


t = \tan (\frac x 2)

としたとき、


dx = \frac {2dt}{1+t^2}, \sin x = \frac {2t}{1+t^2}

となることを考慮すると、


\int dx \frac 1 {1+\sin x}

= \int \frac 1 {1+ \frac {2t}{1+t^2}}\frac {2dt}{1+t^2}

= \int dt \frac 2 {(1+t)^2}

= - \frac 2 {1+t} = \frac {-2}{1+\tan (\frac x 2)}

となる。別の方法として、


\frac 1 {1+\sin x} = \frac 1 {1+2\sin \frac x 2 \cos \frac x 2}

= \frac 1 {(\sin \frac x 2 + \cos \frac x 2)^2}

= \frac 1{1+\tan \frac x 2}\frac 1 {\cos ^2 \frac x 2}

= \frac d {dx}(\frac 1 {1 + \tan \frac x 2}) (-2)

となるので、両辺を積分して結果を得てもよい。

[編集] 多変数関数の微積分

[編集] 偏微分

多変数で定義された関数fがあるとき例えば、 
\frac {f(x _1 + h, ... ,x _n) - f(x _1, ...,x _n) } h

\frac{\partial{f}}{\partial{{x _1}}}
と書き偏微分と呼ぶ。

[編集] 多変数関数の最大最小値

[編集] 偏微分による計算

多変数関数ではあらゆる独立変数による偏微分がすべて0になる点で、関数が最大値又は最小値を取ることが期待される。

例えば f = x2 + y2 では、 
\frac{\partial{f}}{\partial{x}} = 2x

\frac{\partial{f}}{\partial{y}} = 2y
であるので、 x = 0,y = 0 で、極大極小値を取ることが期待される。

[編集] 2変数関数の極値

2変数関数f(x,y)において、点(a,b)fx(a,b) = fy(a,b) = 0とする。判別式D

D = fxx(a,b)fyy(a,b) − fxy(a,b)2

と定義する。

D > 0のとき

fxx(a,b) > 0ならば、関数f(x,y)は点(a,b)で極小値を
fxx(a,b) < 0ならば、関数f(x,y)は点(a,b)で極大値をとる。

D < 0のときは、極値はとらない。

[編集] 全微分

2変数関数f(x,y)における全微分は

df=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{f}}{\partial{y}} dy

と定義される。例えばf(x,y) = x2 + y2における全微分は

df = 2xdx + 2ydy

となる。同様にn変数関数f(x_1,x_2,\cdots,x_n)における全微分は

df=\frac{\partial{f}}{\partial{x_1}}dx_1+\frac{\partial{f}}{\partial{x_2}} dx_2 + \cdots + \frac{\partial{f}}{\partial{x_n}}dx_n

と定義される。

[編集] ヘッセ行列

ヘッセ行列は2階偏微分によって作られた行列 
H = \left[
\frac{\partial^2{f}}{\partial x_ix_j}(P)
\right]
である。

点Pを、 
\frac{\partial f}{\partial x_1}(P)=
\frac{\partial f}{\partial x_2}(P)=
\cdots
\frac{\partial f}{\partial x_n}(P)=0
なる点(w:臨界点)とする。ヘッセ行列のPにおける固有値が全て正であれば、関数は点Pで極小値を持ち、全て負であれば、点Pで極大値を持つ。どちらでもないなら点Pはw:鞍点である。

例えば、 f = x2 + y2 について、臨界点(0,0)におけるヘッセ行列は、 
H = 
\begin{pmatrix}
\frac{\partial^2{f}}{\partial{x}^2} & \frac {\partial^2 f}{\partial x\partial y}\\
\frac {\partial^2 f}{\partial y\partial x} & \frac{\partial^2{f}}{\partial{y}^2} 
\end{pmatrix}

=
\begin{pmatrix}
2 & 0\\
0&2
\end{pmatrix}
となる。固有値は2であるので、点(0,0)はfの極小値である。

[編集] 陰関数定理

F(x,y) = 0

の形で表わされる関数があるとき、


\frac{\partial{F}}{\partial{y}}

が存在したとすると、この関数は

y = y(x)

の形に(局所的には)表わすことが出来る。このとき、


y' = - \frac { \frac{\partial{F}}{\partial{x}}}{\frac{\partial{F}}{\partial{y}}}

が成り立つ。

右辺の形は少し妙に見えるかも知れないが例えば、

F(x,y) = ax + by

(a,bは定数)について考えてみると、上の式は、


y' = - \frac a b

となっており、通常の仕方で見たyの傾きと一致している。

この定理は結局のところどんな複雑な曲線でも、ある点のすぐ近くに限れば、それはほとんど直線と同じ様になっているということを述べている。

[編集] Lagrangeの未定定数法

F(x,y) = 0の形の条件が課せられた中で、

z = f(x,y)

の最大値を求める問題を考える。このとき

g = f + λF

で新しい関数gを定義し、 (λはある定数)


\frac{\partial{g}}{\partial{x}} = \frac{\partial{g}}{\partial{y}} = \frac{\partial{g}}{\partial{{\lambda}}} = 0

で与えられるx,yを計算する。得られた点が極大か極小値を取る点である。

  • 計算例
z = x2 + y2,F = x + y − 1

として、この方法を適用してみる。極値は、(図を書いてみると)


x= y = \frac 1 2

で現われると期待される。 この式の場合は、

y = − x + 1

を代入することで答を得ることもできる。平方完成した形は


z = 2(x-\frac 1 2)^2 + \frac 1 2

であり、確かに


x= y = \frac 1 2

で極値を取ることが分かる。未定定数法を用いると

g = f + λF = x2 + y2 + λ(x + y − 1)

が得られる。 ここで、


\frac{\partial{g}}{\partial{\lambda}} = x+y-1 = 0

\frac{\partial{g}}{\partial{x}} = 2x +\lambda = 0

\frac{\partial{g}}{\partial{y}} = 2y +\lambda = 0

が得られるが、これはx,y,λについての連立1次方程式となっている。これを解くと、答は、


\lambda = 1, x = y = \frac 1 2

となり、確かに正確な値と一致する。

[編集] 多重積分

複数の文字について積分を行なうときこれを多重積分と呼ぶ。例えば、 
\iint f(x,y) dx dy

[編集] 累次積分


\iint f(x,y) dx dy 
は、 
\iint f(x,y) dx dy 
 
= \int dy (\int f dx ) = \int dx (\int f dy ) 
で書き変えられる。

[編集] ガウス積分

ガウス積分\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}の導出。

I=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2}dyとおくと、
I^2=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx \int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2}dy
=\iint_{D} e^{-x^2-y^2}dxdyD=\left\{(x,y)|-\infty<x<\infty,-\infty<y<\infty \right\}
=\iint_{D'} e^{-r^2} r dr d\theta (直交座標から極座標に変換、x=r\cos \theta,y=r\sin\theta,dxdy\to rdrd\thetaD'=\left\{(r,\theta)|0\le r <\infty,0\le\theta\le 2\pi\right\}
=\int_{0}^{\infty}re^{-r^2}dr \int_{0}^{2\pi}d\theta
=\frac{1}{2}\times 2\pi
= π
I=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}

また:\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ax^2}dxの積分は

\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ax^2}dx=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-t^2}\frac{1}{\sqrt{a}}dt\sqrt{a}x=tと置いて置換積分)
=\frac{1}{\sqrt{a}}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-t^2}dt
=\sqrt{\frac{\pi}{a}}

となる。

[編集] ガンマ関数

ガンマ関数は\Gamma(t)=\int_{0}^{\infty}x^{t-1}e^{-x}dx で定義される関数である。

ガンマ関数の基本公式
Γ(t + 1) = tΓ(t)
Γ(n + 1) = n!nは自然数)
\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}

[編集] ベータ関数

ベータ関数は\Beta(p,q)=\int_{0}^{1} x^{p-1}(1-x)^{q-1}dxで定義される関数である。

ベータ関数の基本公式
Β(q,p) = Β(p,q)
\Beta(p+1,q)=\frac{p}{q}\Beta(p,q+1)
\Beta(p,q+1)=\frac{q}{p}\Beta(p+1,q)
\Beta(p+1,q)=\frac{p}{p+q}\Beta(p,q)
\Beta(p,q+1)=\frac{q}{p+q}\Beta(p,q)
\Beta(p,q)=2\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2p-1} \theta \cos^{2q-1} \theta d\theta
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^a \theta \cos^b \theta d\theta = \frac{1}{2}\Beta\left(\frac{a+1}{2},\frac{b+1}{2}\right)
\Beta(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}

[編集] 数列の収束

[編集] ダランベールの収束判定法

[編集] \sum \frac 1 {n^{\alpha}}の収束発散


\sum _{n=1}^{\infty} \frac 1 {n^{\alpha}}
は、α = < 1のとき発散し、α > 1のとき収束する。


TODO

  • 実数の連続性
  • 複雑な積分
  • 数列の収束
  • 偏微分は交換可能
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