聖書ヘブライ語入門/音節構造・アクセント・シェワー/シェワー/シェワーの判別

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3.3.1 シェワーの判別

シェワーが無音であるか有音であるかの判別は,次の場合,音節構造の規則(ここでは「規則」と略す)によって可能である.

  1. בְּרִית のように語頭字にシェワーがある場合,brīt は規則 1によって排除されるから,bɘrīt,つまり有音でなければならない.すなわち語頭字についたシェワーは有音である.
  2. יִמְלְאוּ のように,語中にシェワーが二つ並んでいる場合,yiml-'ū, yim-l'ū(無音シェワー→無音シェワー)はいずれも規則 1 によって,yi-məl-'ū(有音シェワー→無音シェワー)は規則 3,yi-mə-lə-'ū (有音シェワー→有音シェワー)は規則 4によって,それぞれ排除されるから,yim-lə-'ū だけが唯一の可能な読みである.すなわち,語中に二つ並んだシェワーは,右が無音,左が有音(無音シェワー→有音シェワー)である.
  3. קָטַלְתְּ qāṭalt のように語末に二つ並んだシェワーは,上述のように,2 子音の連続を示すものであるから,当然二つとも無音である.
  4. אֶצְבַּע 'eṣbaˁ, מִשְׁתֶּה mište, のように,シェワーのついた文字の次にダゲシュの付いた文字がある場合,もしこのシェワーを有音とすると,'e-ṣə-baˁ, mi-šə-te のように,母音の直後に閉鎖音が現れることになって「母音の直後の閉鎖音は摩擦音化する」という規則を破る.またこのダゲシュを強ダゲシュとしても 'e-ṣəb-baˁ, mi-šət-te となって規則 3に反する.よってダゲシュの付いた文字の直前のシェワーは無音である.מַלְכֵי malḵē のように,シェワーの付いた文字の次にダゲシュの無い閉鎖音字(תפכדגב )が現れ,しかもこのシェワーが無音とみなされる語が少数ながらある.しばしば,shwa medium 「中間シェワー」と呼ばれるが,ここで摩擦音化した ḵ は閉鎖音 k と対立した子音なのであって,その直前の母音の存在を要求しない.
  5. לֵ֫כְנׇה のように,シェワーに付いた子音がある場合,もしこれを léː-kə-nā のように有音に読むと,アクセントが語末から 3 番目の音節にあることになり,アクセントの規則に反する.よって,アクセントのある母音の次のシェワーは無音である.
  6. 上記 1-5 以外の場合,すなわち בַּרְזֶל のようにシェワーが語中で単独に現れ,次の文字にダゲシュがなく,前の母音にアクセントが無い場合は,原則として,有音・無音のいずれも可能であって,場合によっては対立を生じる(すなわち,有音か無音かによって,互いに意味の異なった別の語になる).しかしメテグの付いたテキストであれば,このような場合,その右側の母音符号との間にメテグがあれば有音シェワー,メテグがなければ無音シェワーである.メテグは開音節にだけ付くものだからである.こうして,例えば וַיִּרְאוּ way-yir-'ū 《そして彼らは見た》とוַיִּ֣רְאוּ way-yi-rə-'ū《そして彼らは恐れた》とが区別される.

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