解剖学/体幹の骨

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体幹を支える骨は脊椎を中心に、臓器を保護する肋骨・胸骨が含まれる。このうち脊椎は節構造を成しており、似たような形の骨が複数個寄り集まってできている。それだけに本項では各骨の判別などについても注意深く学習して欲しい。

脊柱[編集]

脊椎の弯曲

脊椎骨が連なってできる脊柱は、大きく分けて頚椎cervical vertebrea・胸椎thoracic vertebrae・腰椎lumber vertebraeと仙骨sacrum、尾骨coccyxから構成される。頚椎・胸椎・腰椎はそれぞれ7個・12個・5個からなり(実は仙骨も5個の仙椎が癒合したものであるが)、C7・Th12・L5のようにイニシャルと番号で呼ぶ事が多い。各脊椎の構造は若干異なるが、それについては後述する。
脊柱の働きは、大きく分けて3つある。

  1. 身体の支持
  2. 体幹の運動
  3. 脊髄の保護

このうち、身体の支持の仕方は我々直立歩行のヒトと四足歩行の動物で大きく異なる。本来四足歩行動物の脊柱は後ろに凸の弯曲している。これを後弯といい、ヒトでも胎児期にはこの後弯のみが見られる。しかし、生後1年以内に頚部と腰部に前に凸の弯曲(前弯)が起こり、最終的に右図のような形になる。この前弯は首がすわる時期(生後3ヶ月)と立って歩き出す時期(生後1年)にできる。

脊椎[編集]

図1:胸椎(上面)
図2:胸椎(右側面)
図3:胸椎の関節

前述の通り脊椎は3~5種類に分かれ、同じ名称の椎骨でも部位により若干形状が異なる。しかし、まずは椎骨のおよその形を掴むため、胸椎を例に椎骨の構造を見ていく。


まず、上面から胸椎を見ると、骨質の詰まった円柱状の椎体(腹側:図1の上)と弓状の椎弓が見える。椎弓が取り囲んでいる孔は脊髄を収める椎孔である。縦に繋がった椎孔は脊柱管と呼ばれる。そして椎弓に付属する形でやや背側左右に一対の横突起、背側正中に棘突起、上部(図1手前)に向けて一対の上関節突起がある。更に、図2を見ると分かるが椎弓のやや前部に一対の下関節突起がある。これらの突起はだいたいが他の骨との関節に働いている。

  • 椎体
  • 椎弓
    • 横突起:胸椎に特有で肋骨と関節する
    • 棘突起
    • 上関節突起:全ての椎骨に見られ一つ上の椎骨の下関節突起と関節する
    • 下関節突起:略

次に図3を見て欲しい。椎孔には脊髄が収まる事は前に述べたが、縦に連なる椎孔の他に椎弓同士の間に横方向の隙間があるのがわかる。これは椎間孔と呼ばれ、椎弓の根元(椎弓根)にある切痕により形成される。すなはち、第1椎間孔は第一頚椎(C1)の下椎切痕と、第2頚椎(C2)の上椎切痕がかみ合うことでつくられる。この椎間孔は、脊髄神経が椎孔を出て全身へ向かう際の通り道となる。

  • 椎孔:脊髄を容れる脊柱管を形成する
  • 椎間孔:脊柱管から全身へと向かう脊髄神経が通る


以上が脊椎の概観をつかむ上で理解しておくべき構造である。

頚椎[編集]

ここからは各椎骨に特徴的な構造について述べていく。頚椎は、7つの骨からできている(キリンの首も7つの頚椎からなるという話は有名)。首周りの運動の他に、体幹と頭蓋骨の連絡をするという役割を持つ。それゆえ、特に第1、第2頚椎は他の脊椎と形態的にかなり異なり、それぞれ環椎(Atlas)、軸椎(Axis)という別の呼び名がある。第7頚椎は、棘突起が対表面の隆起として触れる事ができることから、隆椎(vertebra prominens)とも呼ばれる。隆椎は肋骨との関節が始まる第1胸椎のすぐ上に位置し、異形として小型の肋骨である頚肋(cervical rib)が現れる事もある。この3つが脊椎の中で別称を持つものである。

  • 環椎(Atlas)
  • 軸椎(Axis)
  • 隆椎(vertebra prominens)
    • 頚肋(cervical rib)

これらを含む7つの頚椎に特徴的な構造は以下のものがある。図4を参照されたい。

  • 横突孔:横突起に開いている孔。椎骨動脈が通る(ここを出た椎骨動脈は鎖骨下動脈へ)。
  • 前結節:横突孔の前部にある結節。環椎では他とかなり異なる部位を指す。軸椎にはない。
  • 脊髄神経溝:脊髄神経が全身に向かって出て行く際、通る溝。ここの真ん中に横突孔が開いており、脊髄神経は椎骨動脈をはさむ形で脊柱管を出て行く。
  • 後結節:横突孔の後部にある結節。環椎では他とかなり異なる部位を指す。軸椎にはない。


環椎と軸椎の構造図5、図6は他の頚椎と分けて考えるべきである。

環椎は横突起も短く、棘突起も無い(後結節がその位置を占める)。全体として丸い輪のようだとも表現できる。前面に椎体はなく、前弓と呼ばれるアーチの頂端に前結節(先ほどまでの前結節と形状・位置が異なる事に注意)がある。横突起の基部には上向きに上関節窩(頭蓋骨の後頭顆と関節)、下向きに下関節窩(軸椎の上関節面と関節)があり上関節面を形作る隆起が外側塊と呼ばれる。更に、環椎は軸椎の歯突起とも関節しており、その関節面は前弓内側の歯突起窩である。

  • 環椎
    • 前弓
    • 後弓
    • 外側塊:上関節窩外側の隆起
    • 上関節窩:頭蓋骨の後頭顆と関節
    • 下関節窩:軸椎の上関節面と関節
    • 歯突起窩:軸椎の歯突起と関節


軸椎は、歯突起が非常に特徴的で一目で他の椎骨と区別できる。歯突起の前面にある前関節面は環椎の歯突起窩と関節し、上関節面はやはり環椎の下関節窩とつながる(上関節面を作る隆起を軸椎では外側塊と呼んでいる)。ちなみに、ここでいう「窩」や「面」は明確な境があるわけではなく、窪んでいるようなら窩、平らであれば面と命名しているに過ぎない。こういった名称を覚えておく事も骨の詳細な特徴を記憶する上で有用といえよう。椎弓の下関節突起にある下関節面は第3頚椎(C3)上関節面に関節する。

  • 軸椎
    • 歯突起:環椎を越えて上部に突き出た突起
    • 前関節面:環椎の歯突起窩と関節
    • 上関節面:環椎の下関節窩と関節
    • 外側塊:上関節面外側の隆起
    • 下関節突起:下関節面を持つ
    • 下関節面:第3頚椎上関節面と関節

画像一覧[編集]

外部リンク[編集]

電脳骨学実習の手引き:素晴らしい問題集