解析学基礎/常微分方程式

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目次

[編集] はじめに

微分方程式とは、関数とその何階かの導関数との方程式のことである。この方程式を満たすような関数を求める操作を、微分方程式を解く、という。

微分方程式は、大きく分けて常微分方程式と偏微分方程式に分かれる。常微分方程式とは、一変数関数とその導関数との方程式のことである。偏微分方程式とは、多変数関数とその偏導関数との方程式のことである。ここでは、常微分方程式の解き方について記述する。

[編集] 一階線型微分方程式

常微分方程式はさらに、方程式が含む導関数が最大で何階なのかということによって分類される。 しばらくはまず、一階微分方程式について見てみよう。

一階微分方程式が線型であるとは、

y' + f(x)y = g(x)

と書けることである。このように書けないものは一階"非"線型微分方程式という。

[編集] 斉次一階線型微分方程式

斉次一階線型微分方程式とは、一階線型微分方程式であって、特にg(x)=0であるもののことを言う。 g(x)=0と限らない場合は斉次一階線型微分方程式と区別して"非”斉次一階線型微分方程式というのは容易に想像ができるだろう。

まずは斉次一階線型微分方程式を解いてみよう。 簡単な微分積分法しか知らない我々は、これ程までに限定してやっと解けるようになるのである。

今解こうとしているのは、次の微分方程式である。

y' + f(x)y = 0
まずy \ne 0を仮定して、この式を同値変型する。
{{y'} \over {y}} = -f(x)
両辺を積分して
{\rm ln}|y| = \int{ - f(x)dx + C_0}   (i)
両辺をeの肩に掛けて、
|y| = e^{\int{ - f(x) dx + C_0}}
右は常に正なので、e^{C_0}=Cとして、
y = Ce^{\int{ - f(x)dx}} (ii)

この解法を変数分離法といい、得られた結果をこの斉次方程式の一般解という。

例題 - 次の微分方程式を解け。

y' − 4xy = 0

y = Ce^{\int{ - ( -4x )dx }}= Ce^{2x^2}

一般解はこのようにして求められたが、y(x0) = y0となるときの特殊解yを求めなければならないときもある。 この問題は初期値問題と呼ばれていて、一般解を求める時((i)の時)に不定積分を行うところを定積分で行う方法と(ii)に直接代入してCを求める方法がある。 前者の方は、多少厄介だが、積分記号を外せないときにも解を求められ、後者はその逆である。 いちおう公式を求めておこう。

y' + f(x)y = 0y(x0) = y0
積分する前に戻って、
{\int_{x_0}^{x} {{y'} \over {y}}\ dx} = {\int_{x_0}^{x}  -f(x)\ dx}   
{\rm ln}y - {\rm ln}y_0= {{\int_{x_0}^{x} -f(x)\ dx}}
{{y} \over {y_0}} = e^{\int_{x_0}^{x} -f(x)\ dx}
y=y_0e^{\int_{x_0}^{x}  -f(x)\ dx }

結局、一般解(ii)におけるCがy0になっただけであった。

例題 - 次の微分方程式の初期値問題を解け。

y' + y \sin x = 0 ; y(0) = {3 \over 2}

y={3 \over 2}e^{-\int_{0}^{x} \sin t\ dt}={3 \over 2}e^{\cos x-1}

[編集] 非斉次一階線型微分方程式

次に

f'(x) + f(x)g(x) = h(x)    (1.1)

の解き方を考えてみよう。しかし今、我々にできる事は二つしかない。それは、斉次微分方程式を解くことと、各種式変形を行うことである。これを最大限駆使して解くしかない。具体的には、なんとかして(1.1)を斉次微分方程式

y' = ν(x)     ★

の形に式変形して、これを解くのである。

天下り式であるが、(1.3)にある関数i(x)をかけて

f'(x)i(x) + f(x)g(x)i(x) = h(x)i(x)    (1.2)

とする。ここでi(x)が

{f(x)i(x)}' = f'(x)i(x) + f(x)g(x)i(x)    (1.3)

をみたすような関数であるとすると、y = f(x)i(x),ν(x) = h(x)i(x)とすれば★の形に変形できる。

ではそのようなi(x)は存在するのだろうか。具体的に求めてみる。

{f(x)i(x)}' = f'(x)i(x) + f(x)i'(x)であるから、これを(1.3)に代入すると

f'(x)i(x) + f(x)i'(x) = f'(x)i(x) + f(x)g(x)i(x)
i'(x) = g(x)i(x)

を得る。この微分方程式を解けばよい。定数倍は関係ないので、

i(x)=e^{\int g(x) dx}     (1.4)

とすればよい。

さて、(1.2)と(1.3)より、

{f(x)i(x)}' = h(x)i(x)     (1.5)

を得る。これを変形すると

f(x)i(x)=\int h(x)i(x)dx+C
f(x)={1 \over {i(x)}}(\int h(x)i(x)dx+C)

あとはこれに(1.4)を代入すれば解f(x)が得られる。

初期値問題f'(x) + f(x)g(x) = h(x), f(x0) = y0を解くには、(1.5)の両辺を積分する際に定積分とすれば、

\int_{x_0}^x \{f(x)i(x)\}' dx=\int_{x_0}^x h(x)i(x) dx

を得る。あとはこれをf(x)について解けばよい。

以上、非斉次微分方程式の解法を述べた。手順をまとめると、

i(x)=e∫g(x)dx(積分因子)を求める→h(x)にそれを掛け積分する→それをh(x)で割ってy=とする。

となる。

f'(x)-2xf(x)=x

を解いてみよう。 g(x)=-2xより、積分因子i(x)は、

i(x)=e∫-2xdx=e-x2

これを与式右辺に掛けて

{f(x)e-x2}'=e-x2x  (1.6)
\begin{align}
f(x)e^{-x^2}&=\int e^{-x^2}xdx \\
&=-{1\over 2}e^{-x^2}+C \\
\end{align}

f(x)=-{1\over 2}+Ce^{x^2}

例題

上の例の方程式を満たし、f(1)=2を満たすfを求めよ。

(1.6)を積分するときに定積分にする。

\int_1^x {f(t)e^{-t^2}}'dt=\int_1^x e^{-t^2}tdt
[f(t)e^{-t^2}]_1^x=[-{1\over 2}e^{-t^2}]_1^x
f(x)e^{-x^2}-2e^{-1}=-{1\over 2}e^{-x^2}+{1\over 2}e^{-1}
f(x)e^{-x^2}=-{1\over 2}e^{-x^2}+{5\over 2}e^{-1}

f(x)=-{1\over 2}+{5\over 2}e^{x^2-1}

演習

次の方程式を解け

  1. f'(x) + f(x)cosx = 0
  2. f'(x)+f(x)\sqrt x \sin x=0
  3. f'(x)+f(x){{2x}\over {x^2+1}}={1 \over {x^2+1}}
  4. f'(x) + f(x) = xex
  5. f'(x) + f(x)x2 = 1
  6. f'(x)+f(x){x \over {x^2+1}}=1-{x^3 \over {x^4+1}}f(x)
  7. f'(x)+f(x)\sqrt{x^2+1}=0,f(0)=\sqrt 5
  8. f'(x)+f(x)\sqrt{x^2+1}e^-x=0,f(0)=1
  9. f'(x)+f(x)\sqrt{x^2+1}e^-x=0,f(0)=0
  10. f'(x) − 2xf(x) = x,f(0) = 1
  11. f'(x)+xf(x)=x+1,f({3 \over 2})=0
  12. f'(x)+2f(x)={1 \over {x^2+1}},f(1)=2
  13. f'(x) − 2xf(x) = x,f(0) = 1
  14. (x^2+1)f'(x)+xf(x)=(x^2+1)^{5 \over 2}
  15. (x^2+1)f'(x)+3xf(x)=(x^2+1)^{5 \over 2},f(1)={1 \over 3}

[編集] 原子核の崩壊速度

線型微分方程式のひとつの応用例として、原子核の崩壊に関するものを見てみよう。

物理学者ラザフォードは、放射性元素の原子核は不安定で、一定の割合で崩壊する事を示した。つまり、原子核の数をyという関数で表すことにすれば

y'=-λy                   (5.1)

という関係式が成り立つ。ここで比例定数λは崩壊定数と呼ばれる正数である。 この関係式は、まさに一階線形常微分方程式となっているので、これまでに述べた方法で解くことができる。 y(x0)=y0とすれば、(5.1)は

y=y_0e^{-\lambda(x-x_0)}                   (5.2)

と解ける。適当に文字を置き換えると、高等学校理科 物理II 原子と原子核の1.2.3で述べた式が導かれたことになる。

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