ここでは、数学IIの微分・積分の考えで学んだ積分の性質についてより詳しく扱う。また、三角関数や指数・対数関数などの関数の積分についても学習する。
積分の基本的な性質[編集]
積分法について
(aは定数)
が成り立つ。
導出
の両辺を微分すると、
左辺 =右辺 =
が従う。
よって、
の両辺は一致する。
(実際には2つの関数の導関数が一致するとき、
それらの関数には定数だけのちがいがある。
仮に、F(x)とG(x)が共通の導関数h(x)を持ったとする。
このとき、
となるが、0の原始関数は定数Cであることが分かる。
よって、両辺を積分すると、
となり、F(x)とG(x)には定数だけの差しかないことが確かめられた。
よって、
は定数だけのちがいを含んで成り立つ式である。
より一般に、不定積分が絡む等式は定数分の差を含めて成り立つというのが通例である。)
についても両辺を微分すると、
左辺=右辺= a f(x)
が従う。
よって、
が成り立つことが分る。
関数 の原始関数を とすると
である。
置換積分法[編集]
関数の原始関数を求める手段として、
積分変数を別の変数で置き換えて積分を行なう手段が知られている。
これを置換積分と呼ぶ。
導出
をについて微分すると、
再びについて積分すると、
また、特に
例えば、を考える。
と置く。
この両辺を微分すると
が成り立つことを考慮すると、
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となることがわかる。
実際この式をxで微分すると
と一致することが分る。
置換積分を使わずに計算することも出来る。
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(と置き換えた。)
となり確かに一致する。
部分積分法[編集]
関数の積の積分を行なうときある関数の微分だけを取りだして積分すると、うまく積分できる場合がある。関数 の原始関数を とすると
導出
積の微分法より である。これを移項して
である。両辺をxで積分して
が得られる。
例えば、
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いろいろな関数の積分[編集]
多項式関数の積分[編集]
のとき、なので、
のとき、なので、
が成り立つ。
三角関数の積分[編集]
が成り立つことを考慮すると、
となることが分る。
は、置換積分法を使って
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-
- なお同様に、 であるので、
-
より一般に有理関数 に対して、 について考える。 とおく。 よって である。 であり、 かつ
である。よって
と有理関数の積分にもち込める。
幾何学的は、この変換は単位円上の点 と点 を結ぶ直線の勾配 で変換したものである。実際円周角の定理より より
被積分関数の周期が の場合は、被積分関数は の有理関数なので、 と置換すると計算が楽だ。被積分関数が の有理関数となるときもこの範疇に属する。 と置換したとき、, , ( と の正負は一致するため), となる。
例 は と置換すると、 と置換してしまうと、 と計算量が少し増える。
指数・対数関数の積分[編集]
指数関数について
が成り立つことを用いると、
が得られる。
また、 なので、 である。
また、の
原始関数も求めることが出来る。
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となる。
有理関数 に対して、積分 は すると より
二次無理関数の積分(発展)[編集]
有理関数 に対して、積分 について考えよう。平方根の中身は平方完成することによって、のいずれかの形になる。それぞれの場合について、 と変数変換すると三角関数の積分に帰着する。
また、 は二次曲線で、特に のときは双曲線となる(より[1])。このとき、 すなわち と変換するとうまく計算できる(符号はどちらを選択しても良い)。幾何学的には、双曲線の漸近線に平行で切片が の直線 と双曲線のただ一つの交点 を変数 で表したものである。
例 は と置換すると、 なので、 すなわち また、 .なので、 である。
ところで、この変換は双曲線 と直線 のただ一つの交点による変換であった。その交点を方程式を解いて で表すと、 を得る。これは双曲線の媒介変数表示の一つである。また、 とすると、 これは の部分の双曲線の媒介変数表示である。最右辺は双曲線関数と呼ばれ、三角関数と似た性質を持つ。関数名の はhyperbolaに由来する。例えば、双曲線の方程式より得られる は とよく似ている。例示の不定積分は と置換しても解くことが出来るが、ほとんど同じことなので省略する。
特殊な定積分[編集]
とする。積分 は とすると、 より、被積分関数 は中心 で半径 の円周の上半分であり、積分区間もその両端なので、積分の値は半円の面積に等しく、 である。
King Property[編集]
一般に、関数 のグラフは関数 のグラフを直線 で対称移動したものである。
従って、連続関数 を区間 で積分した値 と、連続関数 を区間 で積分した値 は等しい:
この等式は単に、 の変数変換によっても導出できる。
この等式より、 が導かれる。
この公式は、 が簡単な形になる定積分で役に立つ。
例えば、
King Property の応用例は , , などがある。計算してみよ。
演習問題1
次の不定積分を求めよ。
- (1)
- (2)
- (3)
- (4)
- (5)
- (6)
- (7)
- (8)
- (9)
- (1)
- (2)
- (3)
- (4)
- (5)
- (6)
- (7)
- (8)
- (9)
演習問題2
第一問
- は非負整数とし、 とする。
- (1) を示せ。
- (2) を示せ。
- (3) を求めよ。
第二問
- は非負整数、 は なる実数とし、 とする。
- (1) を示せ。
- (2) を求めよ。
積分の応用[編集]
面積,体積[編集]
ある関数f(x)の原始関数を求める演算は
f(x)とx軸にはさまれた領域の面積を求める演算に等しい。
このことを用いて
ある関数によって作られた領域の面積を求めることが出来る。
例えば、
は、放物線について
の範囲でかこまれる面積に等しい。
- 楕円の面積
楕円の面積の導出
楕円をについて解くと
となる。そのうちは半楕円(楕円の上半分)を示している。その半楕円の面積を2倍したものが楕円の面積Sとなるので
となる。
ある立体のにおける断面積が有限な値で、その値が の関数となるとき、この立体を平面,(ただし、)で切り取った領域の体積は、底面積に極めて小さい高さ[2]の積の区間における累積であるので、以下の式で表すことができる。
(例1)
- である三角錐を考える。
- この三角錐を平面で切断すると、断面の三角形の各座標はとなる。この時、の面積となる。
- これを、区間で積分すると、
- となる[3]。
(例2)
- 設問
- である立方体を想定。
- 平面で切断し、を得る。
- 線分に、各々点から、長さである点をとり、をとする。
- を区間で変化させた時、が通過する部分の体積を求めよ。なお、が正方形である証明は省略してよい。
- 解答
- の1辺の長さをとおくと、
- の面積はであるから、
- これを、区間で積分すると、
- となる。
回転体の体積[編集]
で与えられる曲線をx軸の回りに回転させて作られる
立体の体積Vは、
で与えられる。
導出
立体をx軸に垂直であり、x=cを満たす面とx=c+hを満たす面で切ると(hは小さな
定数)、その切断面で挟まれた立体は半径 f(c)の円と半径 f(c+h)の円
ではさまれた立体となる。
しかし、hが極めて小さいとき、この図形は半径f(c),高さhの円柱で
近似できる。
よってこの2つの面に関して、得られた図形の体積は
となる。
これを満たす全てのcについて足し合わせると、
が得られる。
例えば、
をx軸の回りに回転させて得られる図形の体積は、
- 図形の絵?
となる。
- 球の体積
球の体積の導出
半径rの球は半円をx軸の周りに回転させてつくることができる。
また体積をrで微分すると球の表面積が得られる。
区分求積法[編集]
これまでに学んだように、積分は微分の逆演算であると同時に、座標平面上での面積計算でもある。この項では、座標平面上の面積計算の方法の一つである区分求積法、および積分法との関連について学ぶ。
右図のようなある曲線がある。単純のため、ここではつねにであるものとして考える。この曲線と、x軸、および直線によって囲まれる領域の面積Sを求める。この面積は#面積の項で学んだように、
と積分法を用いて計算することができた。では、これをもう少し原始的な方法で近似的に求めることを考えてみよう。
曲線を含む図形の面積を求めることは簡単ではないが、例えば三角形や長方形、台形などの直線で囲まれた図形の面積を求めることは難しくない。そこで、下図のようにy=f(x)を棒グラフで近似し、長方形の面積の和を計算することで、求めたい面積Sに近い値を求めることができる。左下のように棒グラフの幅が大きいと誤差も大きいが、棒グラフの幅を狭くすればするほど、すなわち分割数を多くするほど、徐々に求めたい面積の値に近づけることができる。そこで、この区間[a,b]をn等分し、その時の長方形の面積の総和を求め、その後での極限を考えることにする。このようにして、区間を細かく等分割し、長方形の面積の総和を求めることにより図形の面積を求める方法を、区分求積法と呼ぶ。
を棒グラフで近似するとき、右図のように、長方形の左上の頂点を曲線上に取る方法と、右上の頂点を曲線上に取る方法がある。どちらの方法でも、分割数を大きくすればいずれ求めたい面積に近づくが、まずは左上の頂点を曲線上に取る方法で考えることにする。
ここでは面積を求めたい区間を、単純のため[0, 1]とする。区間[0, 1]をn等分するとき、それぞれの長方形の左端のx座標は、
となる。ここで、一般に第k番目の長方形について考えることにする。ただし、いちばん左側の長方形を第0番目とし、いちばん右側の長方形を第n-1番目とする。第k番目の長方形の左端のx座標はであるから、この長方形の高さはとなり、また長方形の幅はである。そのため、この長方形の面積は、
となる。したがって、これらの長方形の面積の総和は、
このは、区間[0, 1]をn等分した時の長方形の面積の総和であるが、nを大きくすればするほど、次第にもとの面積に近づいていく。したがって、の極限を考え、
となる。このようにして、求めたい面積を計算することができる。さらに、ここでこの区間の面積が積分法により計算できたことから、
が成り立つ。また、長方形の右上の頂点を曲線上に取る場合は、同様にして
となる。
演習問題[編集]
- ^ 右辺が0のとき双曲線とはならないが、このときは簡単に平方根を外すことが出来るので考える必要はない。
- ^ なお、この時、がに対して積分区間で常に鉛直方向の関係にあることが保証されていなければならない。
- ^ 三角錐は、を底面()とし、を高さ()とする三角錐なので、体積は、となり、正しい。