中学校保健体育/自己形成と心の健康

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本節は、自己形成の意味と心の健康についてみていきます。

本節も重要な単元となります。

キーワード[編集]

自己形成・心の健康

自己形成とは[編集]

※自己形成とは何でしょうか。

思春期になると、自分自身を一つの対象として見るようになります。自分の性格、自分の能力や可能性、自分と友達の比較、自分は周りからどう見られているのかなどを強く意識するようになります。

偏った見方をせずに自分自身を見つめるようになると、自分自身がどんな人間か分からなくなってしまうかもしれません。力のなさを感じて何の理由もなく落ち込んだり、なりたい自分と今の自分の違いを理解するのに悩んだりします。逆に、自分が大人に近づくと、自分の長所や特技・可能性を実感するようになります。

このような経験を積み重ねると、自分らしい考え方や振る舞いが出来るようになります。

ナルシシズムとは、自分を好きになりすぎる状態や自分に興味を持ちすぎる状態を指します。ナルシシズムはギリシア神話のナルキッソスから来ています。ナルキッソスは水面で自分の美しさを考えている間に亡くなったと言われています。

自己形成とは、自分にしかない考え方や行動を見つけ出す過程を指します。

様々な経験・考え・学び・悩み・成功・失敗を繰り返して、自己形成が進みます。その結果、自分の長所や短所などを含め、自分の性格と向き合うようになります。大切なのは、自分が好きだと思えるかどうかです。

様々な教科の学習・部活動・学校行事・友達や他の人と交流、読書などは、自己形成にきっと役立つかもしれません。心豊かな「自分」を作るためには、このような活動に取り組み、様々な生き方や考え方を学ばなければなりません。

自己形成を助けるのは
吉野源三郎の名作『君たちはどう生きるか』は今でも読み継がれています。『君たちはどう生きるか』は、主人公の青年コペル君が、叔父との交流をきっかけに自己を形成する過程を描いています。この本の中で、叔父さんはコペル君に自分で考え、決めるためのヒントや知識を与えています。叔父の言葉の正しさだけではなく、家族や友達とは違う「叔父」の関係性があったので、コペル君は叔父さんの言葉を受け入れました。

これまで人間は1種類の自己しかないと考えてきました。しかし、社会が複雑になってくると、意識の有無に関係なく、場所や時間に合わせて様々な自己に変わっていくと言われています。

心の発達と心の健康[編集]

※心の健康と自己形成の進歩にはどのような関係が考えられるでしょうか。

心の健康では、自分がどう感じていて、どのように考えていて、どのように他の人と仲良くしていて、どのような生き方なのかに大きく関係しています。

知的機能が発達すると、困った時や悩んだ時にどうしたら上手く解決出来るのかを慎重に考えられるようになります。情意機能が発達すると、他人の気持ちに気付いたり、自分の感情に気付いたり出来るようになります。また、情意機能が発達すると、自分の気持ちを上手く表現出来るようになります。社会性が発達すると、他の人に助けを求められるようになります。また、他の人のために何かをすると、自身や満足を得るようになります。

こうして自己形成が進み、自分の望む価値観を考えるようになると、自分らしい生き方を目指すために何をしなければならないのかを考えるようになります。

資料出所[編集]

  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年