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初等数学公式集/解析幾何/コラム

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

このページは、初等数学公式集の解析幾何に関係する数学的な事項についてのコラムである。

高校数学における三次元の問題の多くは、「計算すれば求まる」ように作られている。しかしその計算は、しばしば試行錯誤的であり、どこに向かっているのか見えにくい場合もある。

本コラムで扱う内容は、そのような計算の背後にある構造を示すものである。すなわち、「なぜその形の計算をすればよいのか」「どの方向に進めばよいのか」という見通しを与える“地図”のような役割を果たすものである。

学習指導要領に定められた高校数学の範囲を超える事項について言及する場合があり、このページの内容や登場する数式を暗記することはもちろん必要ないし、すべてを理解することを目的とはしていない。しかし、入試問題をはじめとした高校数学に隠された意図等について伝わることによって、この単元の理解が深まることが期待できる。それを踏まえ、本ページに記載されたことが理解できるか否かを気にせず、直観を養うための一種の頭の体操として読んでほしい。

なお、ここで現れる関係式は公式として暗記することも可能であるが、本来は計算によって導くことができるものであり、その構造を理解することが重要である。このような見通しを持つことで、個々の計算は単なる作業ではなく、一定の方向性をもった操作として理解できるようになる。

また、本コラムや本章の証明では、できるかぎり計算過程を残すようにしている。大学など高等数学で取り扱う場合には、多くは結論を理解することが目的であり、逆に結論さえ理解していれば、結論への過程は忘れていいものであるが、ここでは、上で述べたとおり実際の過程(計算)の結果として結論(公式)が導き出せることの「発見」を期待するものだからである。

三次元空間上で一次独立である2つのベクトルと直交するベクトル

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本節のタイトルである「三次元空間上で一次独立である2つのベクトルと直交するベクトル」は本章の「三次元空間」節に繰り返し登場するものである。
この方向ベクトル(大きさは考慮する必要がない)の計算は、数値が与えられていれば、ごく簡単に求められ、一般式にしても比較的容易に求めることができる。
 
(計算例)
v=(p,q,r),V=(P,Q,R) とするとき、各々に直交するベクトルn=(a,b,c)を求める(なお、法線は英語でnormal又はnormal line、フランス語でnormaleであるので、しばしば、法線ベクトルはnと表される。)。
直交の条件から
vn=ap+bq+cr=0 - ①
Vn=aP+bQ+cR=0 - ②
これを満たすa,b,cを求めるのに、①× R - ②× r として、
apR+bqR+crR=aPr+bQr+cRr
apR+bqR=aPr+bQr
(pRPr)a=(QrqR)b - ③
a,b 2変数を解くものであるが、方向ベクトルを得ることが目的であるので、この場合、a,b の比が求まれば足りる。したがって、③を満たすa,bの一つは、
a=QrqR
b=pRPr (符号を揃えるために順序を入れ替えた)
となる。これを①に代入して、
cr=apbq=(QrqR)p(pRPr)q=pQr+pqRpqR+Pqr=pQr+Pqr
辺々r で割って c=PqpQ
これらは、p,q,r,P,Q,R に関して、対称性を示しているので整理すると、
a=QrqR
b=RprP
c=PqpQ
と表すことができ、これが「v=(p,q,r),V=(P,Q,R) 各々に直交するベクトルnの『ひとつ』」である。
※このようなベクトルは無数に存在し、ここで求めたものはその一例である(定数倍しても同様に直交する)。
 
このベクトルは、v,Vx成分、y成分、z成分の6個の要素により構成されてるが、単純なルールにより構成されており、比較的覚えやすい(ただし、繰り返し述べるが、高校範囲における試験等の出題では、この関係は計算で出すことができるようになっており、公式として形を暗記することを目的としてはいけない)。
ここで、nx成分(a)を例にとると以下のようになっていることがわかる。なお、前提として、ここに登場する成分はpqrp,PQRPのような循環順序とする。
  • x成分には、v,Vx成分は含まれない。
  • 2番めのベクトル(V)の2番め(y成分)と1番めのベクトル(v)の3番め(z成分)の積から、1番めのベクトル(v)の2番め(y成分)と2番めのベクトル(V)の3番め(z成分)の積を引いたものとなる。
同じ、性質がy成分(b)にもz成分(c)にも当てはまっていることがわかる。
 
ここで、添字を使って表記すると対称性がより明らかになる。
v1=(p1,q1,r1),v2=(p2,q2,r2) とするとき、各々に直交するベクトルをn=(x,y,z)とすると。
x=q2r1q1r2
y=r2p1r1p2
z=p2q1p1q2
 
注目点
  1. 「三次元空間において2個のベクトルに直交するベクトル」は、三次元空間を扱う場合、頻繁に利用される。公式集とその証明においては、以下のように繰り返し微妙に形を変えて登場している。
    1. 点と直線がなす平面
      直線lの方向ベクトルd=(p,q,r)と直線外の点Pと直線上の点Qによる方向ベクトルPQ=(x1x0,y1y0,z1z0)に直交するベクトルd=(a,b,c)として、
      a=r(y1y0)q(z1z0)
      b=p(z1z0)r(x1x0)
      c=q(x1x0)p(y1y0)
      を得ている(→参照)。ここで、x1x0=P,y1y0=Q,z1z0=Rとすれば、上で示した式に一致する。
    2. 平行な2直線が属する平面
      平行な2直線l1.l2において方向ベクトルd=(p,q,r)であり、l1.l2上の点をP1(x1,y1,z1),P2(x2,y2,z2)とするとき、P1P2=(x2x1,y2y1,z2z1)。この2つのベクトルに直交するベクトルをn=(a,b,c)とすると、その例として、
      a=r(y2y1)q(z2z1)
      b=p(z2z1)r(x2x1)
      c=q(x2x1)p(y2y1)
      を得ている(→参照)。ここで、x2x1=P,y2y1=Q,z2z1=Rとすれば、やはり、上で示した式に一致する。
    3. 交点を持つ2直線が属する平面
      交点を持つ各々の方向ベクトルがv1=(p1,q1,r1),v2=(p2,q2,r2) である2直線l1,l2について、l1,l2に直交するベクトルをn=(a,b,c)とすると、これを満たす例としてのベクトルは、
      a=q2r1q1r2
      b=r2p1r1p2
      c=p2q1p1q2
      であり(→参照)、まさに、添字を使って上で示した式に一致する。「直線がねじれの位置にある場合」の解法にも用いる。
    4. 同一直線上にない3点を通る平面の式
      証明参照。
  2. ところで、上記の3例では、「三次元空間において2個のベクトルに直交する」ということで、その方向ベクトルの性質が利用されてきた。ところが、この形の係数の組み合わせが、長さや面積といった量の表現にも出てくる。
    1. 点と直線の距離(公式集証明
      d={(y0y1)r(z0z1)q}2+{(z0z1)p(x0x1)r}2+{(x0x1)q(y0y1)p}2p2+q2+r2
      ここに登場する数式を以下のように置く。
      (y0y1)r(z0z1)q=s
      (z0z1)p(x0x1)r=t
      (x0x1)q(y0y1)p=u
      そうすると、v=(s,t,u)は、直線の方向ベクトルp=(p,q,r)と直線外の点Pと直線上の所与の点Q0によるベクトルPQ0=a1=(x1x0,y1y0,z1z0)と直交するベクトルの形をしていることがわかる。
    2. 2直線がねじれの位置にある場合
      ねじれの位置にある2直線の各々の方向ベクトルがv1=(p1,q1,r1),v2=(p2,q2,r2) であって、各々、点P1(x1,y1,z1),P2(x2,y2,z2) をとおる場合、この2直線l1,l2 は以下の式で表される。
      l1:xx1p1=yy1q1=zz1r1, l2:xx2p2=yy2q2=zz2r2
      また、P1P2=a=(x2x1,y2y1,z2z1)である。
      2直線が最も接近する箇所は、各々の直線と直交する共通垂線の箇所であり、その距離dは以下の式で表される。
      d=|(x2x1)(q2r1q1r2)+(y2y1)(r2p1r1p2)+(z2z1)(p2q1p1q2)|(q2r1q1r2)2+(r2p1r1p2)2+(p2q1p1q2)2 - ①
      v1,v2に直交するベクトルのひとつは、今まで述べてきたことから、
      n=(q2r1q1r2,r2p1r1p2,p2q1p1q2) であることがわかる。
      登場する数式を再構成すると、①式の分子は、an の内積であり、分母は nの大きさ(長さ)となっていることがわかる。
      この理由については、「証明」にて解説する。
 
実は、v1,v2 の各成分を用いてn のように表す操作は「外積」と言って、高等数学(大学以上の課程で取り扱う数学)で用いる重要な操作、すなわち、「2つのベクトルに直交するベクトルを系統的に与える公式」であり、外積ではこれを一つの演算としてまとめて扱うものであるが、高校数学では範囲外であるので、その操作が直接教えられることはない。しかし、三次元空間での取り扱いでは、点・直線・平面の関係を表す操作として各種出題に埋め込まれている場合が少なくない。この背景を理解しておくことで、出題意図の見通しが多少でも良くなることを期待して、次節以降で入門編として解説したい。

外積とは

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(高等数学での取り扱いは線型代数学/ベクトル#外積を参照)

定義に先立って

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さて、ここで「外積」について考えるが、「外積とは何か」という定義に先立って、これから取り扱うものは、あくまでも高校数学における三次元空間の具体的な成分計算による演算に関するものである。

すなわち、このコラムで想定する「外積」とは、成分表示された2個の空間ベクトルv1=(p1,q1,r1),v2=(p2,q2,r2) の各成分を用いて、以下の形式で表されるものである、

n=(x,y,z)
x=q2r1q1r2
y=r2p1r1p2
z=p2q1p1q2

ここでは、この形により外積を具体的に理解することを目的とする。

なぜならば、「外積」の利用法の一つとして、三次元空間の問題にどのように現れるかを中心に扱うことになるが、「外積」の本質は、空間幾何に限らず、さまざまな局面で利用される概念であり、成分による表示は、その一つの具体的な表現に過ぎないからである。さらに、これまで、外積によって得られるベクトルは「向き」に注目して扱ってきた。しかし実際には、このベクトルは「大きさ」にも重要な意味を持っている。さらに、この成分表示そのものが計算の中で直接用いられることにも注意が必要である。

外積の定義

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あらためて、ここで「外積」を定義する。外積とは、

3次元空間において定義される、2つのベクトルから新たなベクトルを与える二項演算(2つの対象から新たな対象を決定する規則)であり、3次元空間の2つのベクトルに対し、①両者に垂直で②両ベクトルのなす平行四辺形の面積と等しい長さを③右手系の方向にとったベクトルを得るもの(二項演算)である。
2つのベクトルをa,bとして、外積は乗算記号または角括弧を用いて以下のように表される。
  • 乗算記号を用いる場合:a×b
  • 角括弧を用いる場合:[a,b]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアクロス積の記事があります。
「外積」の呼称
「外積」は"exterior product"の訳だけではなく、さらに高次の高等数学で用いられる関連概念である"outer product"の訳(ただし、一般には「直積」や「テンソル積」と訳される)に当てられる場合もあり、明確に区別するため「クロス積(ウィキペディアの見出しにはこちらが用いられている)」と呼んだり「ベクトル積」と呼んだりすることもあるが、本稿においては上の定義によるものを「外積」と呼称することで統一する。
3次元ベクトル a,bの外積(a×b)。
以下、定義について解説する。ここでは、2つのベクトルをa,bとして、外積となるベクトル e=a×bとする。
  1. 3次元空間の2つのベクトルに対し、両者に垂直 - ①
    これは、今まで繰り返し出てきた性質である。すなわち、
    ae=0
    be=0
    となる。
  2. ベクトルの長さは両ベクトルのなす平行四辺形の面積と等しい長さ - ②
    すなわち、
    |e|=|a||b|sinθθは、abがなす角)
    ということになる。この計算の形は、内積の形が|a||b|cosθであることと、好対照である。
    (コラム in コラム)
    外積の大きさが面積に等しいとされることに違和感を覚えるかもしれない。「長さ」と「面積」という異なる「次元」の量(実際には、これは「面積を長さとして表現する」ために方向(法線方向)を付け加えた量とみなすことができる)が対応しているように見えるためである。
    しかし、数学においては、このように異なる意味を持つ量であっても、共通の構造に基づいて同一の形式で扱われることがある。すなわち、対象の「属性」そのものよりも、それらの間に成り立つ関係や構造が重視されるのである。
    外積の場合、2つのベクトルが張る平面の「向き」と「広がり」を同時に表す量として、その大きさが面積に対応し、その方向が平面に垂直な方向を与える。
    このように、外積は「向き」と「面積」という異なる意味を同時に扱う量であり、数学における抽象化の考え方と、現実の計算(例えば三次元空間における図形の扱い)における有用性とを結びつける代表的な例の一つである。
  3. 2つのベクトルに対し、右手系の方向 - ③
    右手の法則による外積の向き
    「2つのベクトルに対し、両者に垂直」という場合、方向が2つあるということがイメージできるだろうか。すなわち、3次元空間において、z軸は、xy平面(z=0)に対して垂直であるが、z>0の領域とz<0の領域を持っている。ベクトルの始点からの方向は一意に決まる必要があるから、いずれかの方向に決めなければならない。
    外積においては、「右手系」(右図で、aを人差し指、bを中指の方向とした時、親指の方向)の方向と定める。
    このように方向を定めることは単なる約束ではなく、空間における向きの一貫性(向きづけ)を保つために必要なものである。
     
    これを決めることにより、何が起こるかというと、a×bb×a ということ、すなわち、外積には交換法則は適用できないということである。
    すなわち、2つのベクトルのうち、どちらを先に扱うかで正負が逆転し、a×b=b×a ということになる。これを交換法則に代えて、反交換法則と呼ぶことがある。
    これは、ベクトルの並び順そのものが幾何的な意味(向き)を持つことを示している。
    (注意点)
    本章の証明上記の振り返りなどでは、正負いずれの方向であっても支障がなかったため、「向き」を特定した解法をとっておらず、また、上で説明したベクトルの量が関係する算式であっても2乗するなり絶対値を取るなりすることで正負の違いが解消されていたこともあって、この性質を厳密に適用していないが、「外積」計算自体では「向き」を一方に特定する必要がある。
以上をまとめると、
a×b=|a||b|sinθ n
なお、θは、abがなす角、na,bに直交する右手系に従って定まる方向の単位ベクトル(an=bn=0,|n|=1)である。

外積の計算

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外積の計算は、上記の通り交換法則が成り立たないなど、スカラーの計算を主とする初等数学とは、かなり異なっている。以下に外積の計算のパターンを示すが、高校の数学の範囲で、本来、外積の計算(ベクトル演算)をすることはないので、これも参考程度で眺めておけば良い。なお、"・"は、内積を表す。

  1. λa×b=a×λb=λ(a×b)
  2. a×b=b×a
    交換法則は成り立たない。
  3. a×(b+c)=a×b+a×c、また、(a+b)×c=a×c+b×c
    分配法則は成り立っており、以下のとおりの式展開ができる。
    (a+b)×(c+d)=a×c+a×d+b×c+b×d
    • 定義に従った簡易な証明
      aを固定し、b,cを考えると、a×b,a×cはそれぞれ、aと各ベクトルが張る平行四辺形の向き付き面積を表す。一方、a×(b+c)は、ab+cによる平行四辺形を表すが、この図形は、bによる部分とcによる部分に分解することができる。
      したがって、面積は加法的であり、向きも一致することから、a×(b+c)=a×b+a×cが成り立つ。
  4. a×(b×c)(a×b)×c
    すなわち、結合法則は成り立っていない。これらは、以下の等式となる(ベクトル三重積の公式・ラグランジュの公式)。
    a×(b×c)=(ac)b(ab)c
    (a×b)×c=(ac)b(bc)a
  5. a×a=0
    aaがなす角θ=0であるので、a×a=|a||a|sinθ n=0
  6. a(a×b)=0
  7. a(b×c)=(a×b)c
    • スカラー三重積(その意味などについては後述)
      なお、循環形として、以下を理解しておくと良い。
      a(b×c)=b(c×a)=c(a×b)
      内積には交換法則が成立しているので、右端の辺はc(a×b)=(a×b)c であって、同じことを意味している。
      この演算は、「スカラー三重積」と呼ばれ、ベクトルの順序さえ意識すれば良いので、[a,b,c] とも表記される。
      演算の性質から、[a,b,c]=[b,c,a]=[c,a,b]、であるが、[a,b,c][a,c,b](=[c,b,a]=[b,a,c]) であることに注意。
  8. (ab)2+|a×b|2=|a|2|b|2
    内積の定義よりcosθ=ab|a||b|、したがって、cos2θ=(ab)2|a|2|b|2
    また、外積の定義よりa×b=|a||b|sinθn、したがって、|a×b|2=|a|2|b|2sin2θ nは単位ベクトルであるから、|n|2=1
    よって、sin2θ=|a×b|2|a|2|b|2
    ※内積は「同じ方向の成分」、外積は「垂直方向の成分」を表しており、この式はそれらが直交的に分解されていることを意味している。

外積の成分表示

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成分表示された空間ベクトルa=(x1,y1,z1),b=(x2,y2,z2) を用いてa×bの定義を検証する。
ここでは、a×b=e=(xe,ye,ze)とする。
 
成分表示による計算にあたって、基本ベクトル(標準基底e1=(1,0,0),e2=(0,1,0),e3=(0,0,1)相互の計算結果について確認し、これを利用する。
  1. e1×e2=e3 が成り立っている。
    なぜならば、e1×e2 は、定義からe1=(1,0,0),e2=(0,1,0) に垂直、すなわち、z軸上にある位置ベクトル(0,0,z)であり、右手系であることから、z>0である。また、e1,e2が形成する平行四辺形の面積は、1辺が1である正方形であるので1。従って、e1×e2=(0,0,1)=e3となる。同様にして、基本ベクトル間には以下の関係(※)が成立している。
    • e1×e2=e3
    • e2×e3=e1
    • e3×e1=e2
  2. e1,e2,e3を用いると、
    a=x1e1+y1e2+z1e3
    b=x2e1+y2e2+z2e3
    と表すことができる。外積は一般には結合法則を満たさないが、ここで行う計算は分配法則とスカラー倍に関する性質、および基底ベクトル間の関係を用いることで展開することができる。
    a×b=(x1e1+y1e2+z1e3)×(x2e1+y2e2+z2e3)
    =x1x2e1×e1+x1y2e1×e2+x1z2e1×e3+y1x2e2×e1+y1y2e2×e2+y1z2e2×e3+z1x2e3×e1+z1y2e3×e2+z1z2e3×e3
    =x1y2e1×e2+x1z2e1×e3+y1x2e2×e1+y1z2e2×e3+z1x2e3×e1+z1y2e3×e2v×v=0
    =x1y2e1×e2x1z2e3×e1y1x2e1×e2+y1z2e2×e3+z1x2e3×e1z1y2e2×e3v×u=u×v
    =x1y2e3x1z2e2y1x2e3+y1z2e1+z1x2e2z1y2e1 上記※より
    =(y1z2z1y2)e1+(z1x2x1z2)e2+(x1y2y1x2)e3
    文字順を揃え、
    a×b=(y1z2y2z1,z1x2z2x1,x1y2x2y1)
    となる。
以上を踏まえて、
  1. 3次元空間の2つのベクトルに対し、両者に垂直であれば、以下の式を満たす。
    ae=be=0
    上記の結果を代入すると、
    ae=x1xe+y1ye+z1ze=x1(y1z2y2z1)+y1(z1x2z2x1)+z1(x1y2x2y1)=0
    be=x2xe+y2ye+z2ze=x2(y1z2y2z1)+y2(z1x2z2x1)+z2(x1y2x2y1)=0
    となり、成立している。
  2. 外積eの長さ|e|はベクトルa,bのなす平行四辺形の面積Sと等しい長さである。
    S=|a||b|sinθ=|a||b|1cosθ2。ここで、ab=|a||b|cosθ より cosθ=ab|a||b|
    与式に代入して、S=|a||b|1(ab)2|a|2|b|2=|a|2|b|2(ab)2
    |a|2=x12+y12+z12|b|2=x22+y22+z22ab=x1x2+y1y2+z1z2 であるから、
    S=(x12+y12+z12)(x22+y22+z22)(x1x2+y1y2+z1z2)2=(y1z2y2z1)2+(z1x2z2x1)2+(x1y2x2y1)2
    となり(初等数学公式集/初等代数#式の変形ラグランジュの恒等式参照)、これは、成分表示したeの長さ|e|に一致する。
    なお、上記外積の計算8.を用いると、|a|2|b|2(ab)2=|a×b|2 であり、式を展開せず外積を利用できる。

外積の応用と用途

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平行六面体

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Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディア平行六面体の記事があります。
ベクトル a,b,cによる平行六面体
原点Oではない、空間上の異なる点A,B,CについてOA=a,OB=b,OC=c として、点D,E,F,GOD=a+b,OE=b+c,OF=c+a,OG=a+b+c となるようにとる。
この、点O,A,B,C,D,E,F,Gで囲まれる立体は、6面の平行四辺形で構成されている立体であり平行六面体と呼ばれる。なお、直方体や立方体も平行六面体の一種である。
(ベクトル方程式としては、sa+tb+uc(ただし0s,t,u1)を領域とする立体とも表現される)
平行六面体の体積
この平行六面体の体積は、平行四辺形OADBの面積Sに、平行四辺形OADBに相対する平行四辺形CFEGまでの距離(高さ)hをかけたShである。
この値は、外積を使うことにより、簡単に求められる。
平行四辺形OADBは、ベクトルa,bにより、作られる図形であり、外積の定義から|a×b|はベクトルa,bのなす平行四辺形の面積Sと等しい。
また、a×bは、平行四辺形OADBに垂直であることから、高さの方向ベクトルの向きになっている。ここで、a×bともう一つの要素であるcの成す角をθとすると、h=|c|cosθとなる。
cosθ を得るのには内積を用いれば良いので、a×bcの内積を計算する。
|(a×b)c|=||a×b||c|cosθ|=Sh
と、cosθの値を得るまでもなく、体積を得ることができた。
したがって、ベクトル a,b,cによる平行六面体の体積は、|(a×b)c| と表すことができる。
四面体の体積
原点O,A,B,Cによる四面体の体積は上記平行六面体の体積から簡単に求めることができる。
Cを頂点とし、平行四辺形OADBを底面とする四角錐は、上記平行六面体と共通の高さを持つので、体積は平行六面体の13である。
原点O,A,B,Cによる四面体は、点Cを頂点としOABを底面とする三角錐であり、OABは平行四辺形OADBの一部であり、その面積は平行四辺形OADB12であるので、体積は上記四角錐の12である。
したがって、原点O,A,B,Cによる四面体の体積は|(a×b)c|6 と表すことができる。
公式集における以下の式は、原点O(0,0,0)および3点P,Q,Rについて、OP,OQ,ORとして、成分表示によったものである。
|a1b2c3+a2b3c1+a3b1c2a1b3c2a2b1c3a3b2c1|6
=|(b1c2b2c1)a3+(c1a2c2a1)b3+(a1b2a2b1)c3|6=|(OP×OQ)OR|6
=|(b1c3b3c1)a2+(c1a3c3a1)b2+(a1b3a3b1)c2|6=|(OP×OR)OQ|6
=|(b2c3b3c2)a1+(c2a3c3a2)b1+(a2b3a3b2)c1|6=|(OQ×OR)OP|6
※順序の違いにより符号は変わりうるが、絶対値は一致する。
なお、これを、右手系を意識して表記すると、
(OP×OQ)OR=(OQ×OR)OP=(OR×OP)OQ
となる(内積は交換法則が成立している)。
これは、上記「外積の計算」の第7番目に登場する「スカラー三重積」になっている。すなわち、3個のベクトルで形成される平行六面体の体積は、3個のスカラー三重積の値の絶対値となっている(スカラー三重積自体はマイナスの値も取りうる)。

外積の用途

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外積は、空間の位置関係の把握だけでなく様々な分野で用いられる。

物理計算
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力のモーメント(トルク)
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディア力のモーメントの記事があります。
固定された回転軸をもつ系に対して、力を作用させた時の物理量の関係。力のモーメント τと位置ベクトル r と力 F との関係(上の式:本文に示す)、なお、下の式は角運動量 L と位置ベクトル r と運動量 p との関係である(参考)。
ある点Pのまわりの、物体を回転させる作用の強さを表す「力のモーメント(特に回転軸を持つものを「トルク」という)」は、
r:点Pと力の及ぼされる点(作用点)を結ぶ位置ベクトル
F:力
として、
τ=r×F
によって定義されるベクトルである。
この式から、
  • 大きさ:|r||F|sinθ(回転の強さ)
  • 向き:右ねじの方向(回転軸)
が同時に表されていることがわかる。
力のモーメントは「どれだけ回そうとするか」という量であり、力の大きさだけでなく、作用点の位置と方向の関係によって決まる。特に、力の向きが回転軸に垂直な成分だけが回転に寄与する。そのため、単なる積ではなく、外積という形で表される。
高校物理では、未履修であるため外積を用いずに「距離×力」や「回転方向の符号」で扱っているが、これらはこの式の一部だけを取り出したものである。
高等学校物理/力学#角運動量と力のモーメント参照)

磁場中を運動する電荷に働く力(ローレンツ力)
Wikipedia
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ウィキペディアローレンツ力の記事があります。
ローレンツ力の向き。電荷で考えた場合。
速度vから磁束密度Bに右ねじを回した向きがローレンツ力Fの向き。
荷電粒子が磁場中を動いているとき、磁場から力を受ける。これを「ローレンツ力」という。
ここで、
q:荷電粒子の電荷
v:荷電粒子の速度(方向と「速さ」を持つベクトル。なお、電荷が負の場合は力の向きは逆になる。)
B:磁束密度(ベクトル)
とすると、電荷に働くローレンツ力は、
F=q(v×B)
とベクトルの形式で表される。
磁場による力は、速度と磁場の両方に垂直な方向に働く。したがって、磁場は粒子の速さを変えるのではなく、進行方向だけを変える働きをする。
 
高校物理での取り扱いは、以下を参照。


これらの例からわかるように、外積は単なる計算規則ではなく、「空間の向き(右手系)」と「大きさ(面積や回転の強さ)」を同時に表現する統一的な仕組みである。

意外な利用法:コンピューター・グラフィック
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コンピューター・グラフィックでは、物体の表面の向きを求めるために外積が用いられる。ポリゴン(多角形)の2辺ベクトルの外積を取ることで、その面に垂直なベクトル(法線ベクトル)を得ることができ、これが光の当たり方(陰影計算)に利用される。

さらに発展:外積と行列

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最後に、外積と行列の関係に触れる。現在の高校数学において、「行列」も本格的に取り上げられているわけではないため、ここでは、あまり深く立ち入らず、「外積」と「行列」という数学的な操作が、何か関係していそうだ、という現象にちょっとだけ触れる。「行列」自体は、本Wikibooks内にも教科書があるので、あまり馴染みのない読者は、斜め読みで良いからその箇所(行列 (高校数学)行列 (高校数学・発展)など)を読んで、本稿を読み進めてほしい。

行列式
まず、ここで、行列の演算の中で重要な「行列式」について復習しておく。
二次行列A=(abcd)に対し、adbcという式を行列式といい、|A| 又は det(A)で表す。
これは、
  • 行列Av1=(a,b),v2=(c,d) 又は u1=(a,c),u2=(b,d)の組み合わせによるものであるとした場合、adbc=0ならば、v1v2u1u2となっている。
  • v1=(a,b),v2=(c,d) による平行四辺形の面積SS=|adbc|で表される。
  • 行列Aに対して、AB=BA=(1001)(単位行列)となる行列B を逆行列と言いA1 と表すが、A1=1adbc(dbca) である。
    従って、adbc0は、行列Aに逆行列が存在する必要十分条件となっている。
  • 行列Aに対して、A2(a+d)A+(adbc)E=O が成り立つ(ケイリー・ハミルトンの定理)。
と繰り返し登場する重要な式である。
外積の各成分と行列式
以下、三次元空間ベクトルa=(x1,y1,z1),b=(x2,y2,z2) について考察する。
この2個のベクトルで外積a×b=(y1z2y2z1,z1x2z2x1,x1y2x2y1) が得られることは、繰り返し述べてきたところである。
ここで、a,b から、x成分を取り去ったベクトルax=(y1,z1),bx=(y2,z2) を各々列ベクトルとした行列をAx=(y1y2z1z2) とする。
同様に、Ay=(z1z2x1x2)Az=(x1x2y1y2)
さて、ここで突然ではあるが (det(Ax),det(Ay),det(Az)) というベクトルを考えてみる。
(det(Ax),det(Ay),det(Az))=(y1z2y2z1,z1x2z2x1,x1y2x2y1)=a×b
という結果を得るのである。
(すなわち、外積の各成分は、他の2成分を取り出した小行列式として表される)
三次行列の行列式
サラスの方法: 左三列の行列式は、赤線で結んだ斜め三項の積の和から青線で結んだ逆斜め三項の積の和を引いたものになる。
行列式は二次行列だけではなく3行3列の三次行列でも定義できる。
この場合
A=(a11a12a13a21a22a23a31a32a33)
に対して、
det(A)=a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32a13a22a31a11a23a32a12a21a33
となる。
これは、一見覚えにくいように思えるが、右図のように考えると、二次行列同様、右下りの要素をかけあわせたものから、右上がりの要素を掛け合わせたものを引くという操作であることがわかる(w:サラスの方法、これは3次行列式の計算規則の一つの見方であり、外積の成分表示と同じ構造が現れている。なお、四次以上の行列には適用できない)。
三次行列の行列式と外積
ここで、互いに一次独立であるベクトル p=(a1,b1,c1), q=(a2,b2,c2), r=(a3,b3,c3) を考える。これも、各々を列ベクトルとした行列にすると、
A=(a1a2a3b1b2b3c1c2c3)
が得られ、この行列式を計算すると、
det(A)=a1b2c3+a2b3c1+a3b1c2a1b3c2a2b1c3a3b2c1
となる。どこかで見た覚えがないであろうか。そう、これはp,q,r で作る四面体の体積の成分表示の分子の中の式である。この体積を6倍すると、p,q,r で作る平行六面体の体積の絶対値の中の式となり、これはすなわち (p×q)r (スカラー三重積)となっている。

この関係がなぜ成立するかなどについては、もはやコラムの領域を超えるので割愛するが、このように、外積は「面積」や「体積」といった量を、行列式という形で統一的に表す仕組みと深く結びついているということを心に留めておいてもらいたい。