制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/連立微分方程式の解法/(sI-A)^-1の原像/dxdt=Ax の解

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

これで我々の所期の目的は達成された. しかし,念のため,

[1]

が,

の解であることを確認しておこう.そのため若干の準備をする.

定理 5.3 (初期値定理)

を真の分数とするとき,

ならば

が成立する.

証明

既述のように[2] の分母の根を とすれば,

と書けるから,

[3]

  1. ^ 式 (5.14b) において,

    とおいた.
  2. ^ 制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法, 特に 式 (4.12) を参照せよ.
  3. ^ この式中の は,この章で扱っている連立微分方程式 の行列 ではなく,特性方程式の 番目の根 についての部分分数展開に現れる係数としての 2 引数の定数 である.

    において, の中の第二項以降, のとき に収束する.
    第一項 については,



    よって のとき
    ここで だから

    のとき
    のとき


この初期値定理を用いると,

(5.23)

であることが分かる[1].この結果から次の事実を示すことができる.

[補題 5.1]

定理 5.2の系 に対して,

すなわち,

が成立する.ただし, とする.


証明

(5.24)

より,

が得られる.その原像が,

である.[2]

のときは, を念頭におけば 式 (5.24) から,

であったから,

を得る.[3]


  1. ^ 定理5.2 のもの.
    はこれを定義する逐次多項式の定義から の最高次数は であり の係数は
  2. ^ 式 (5.24) の両辺を で割って移項を施す.

    より
    …①
    定理 5.2 系 中の定義より,

    また より①の原像は,

  3. ^ 式 (5.24) より,

    両辺を で割って,

    移項して

    であるから,
    …②
    式 (5.23) より

    よって,

    また より②の原像は,


以上の準備の下に,次の結論を得る.

[補題 5.2]

とおけば,

が成立する.


証明

Cayley-Hamilton の定理

を用いると,

となる.ここで補題 5.1を考慮すれば,さらに

であることが分かる.また,

式 5.23 より明らか.


定理 5.4

は,

の解である[1]


証明

また

[2]


例117

のとき,

[3]

したがって,

[4]

よって,

となり,以前の結果(元々の問題は例 104)と一致する.


  1. ^ 定理 5.2, 補題 5.2 でも定義されていたもの.
  2. ^
  3. ^
  4. ^ において,この場合は
    漸化式の初期値より

例118


のとき,

[1]
[2]

であるから,

ところで,

[3]
[4]
[5]

よって,

[6]


  1. ^

    より,第一列を縦にみて


  2. ^ において,この場合は


  3. ^
    よってその原像は
  4. ^
    よってその原像は
  5. ^
    よってその原像は
  6. ^