複素数は
の正の解
を用いて
と表されるものであった。
ここでは、同様にして
の非実数解
を用いて
と表される数について考える。
を満たす
と
を用いて
と表される数を分解型複素数(反複素数, 双曲複素数, 双数 etc.)という。二重数全体は
に
を元として加えた集合であり、実数体上の二次元の可換かつ単位的な結合多元環(二元数)の一種である。
虚数単位と同様に、
に注意すれば
は通常の文字式と同様の演算が可能である。
すなわち、
として以下が成り立つ。



(
のとき)
複素数に対して複素数平面を考えたのと同様に、分解型複素数を平面に対応させることを考える。
分解型複素数
に対して点
が対応するようにとった座標平面を分解型複素数平面という。これは通常の複素数平面及び交代的複素数平面と相補的な関係にある。
複素数と同様に
に対する複素共軛を
、二重数の絶対値を
と定義する。
より、根号の中身が負になる場合がありうるので、分解型複素数の絶対値はそのままでは考えることができない。
当ページでは、根号の中身の絶対値を取る方法を用いる(他には絶対値が複素数になることを許容してしまう方法、絶対値の平方のみを議論に用いる方法がある)。
交代的複素数平面における単位円を考える。
単位円は
を満たす点の集合なので、
を満たす点全体を考えれば良い。そのような点の集合は、単位双曲線
である。
テイラー展開は分解型複素数範囲でも同様に成り立つので(証明略)、
・・・(*)が成り立つ。
オイラーの公式
では、複素数平面上において単位円上の点
と原点を結ぶ直線、実軸、単位円で囲まれた領域の面積が偏角
を用いて
と表された。同様に、分解複素数平面上において単位双曲線上の点
と原点を結ぶ直線、実軸、単位双曲線の実軸より上の部分で囲まれた領域の面積は
で表される。式(*)における媒介変数
は分解型複素数平面における偏角という訳ではなく、先述の領域の面積を表している。