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高等学校数学C/複素数平面

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
高等学校数学 > 高等学校数学C > 高等学校数学C/複素数平面

本項は高等学校数学Cの「複素数平面」の解説です。

数学Ⅱの複素数と方程式及び三角関数を履修後に学習してください。数学Cのベクトル・二次曲線の先行履修を推奨します。また、数学Ⅲの積分法より前の履修が望ましいです。数学Cの行列とはどちらの順番で履修しても構いません。

複素数平面

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複素数 z=a+bi(a,b は実数)は、複素数平面では直交座標 (a, b) に対応する。"Re" は実軸(real part)、"Im" は虚軸(imaginary part)を意味する。

虚数単位 i を i2=−1 を満たす数とする。2つの実数 a,b によって a+bi と表される数を複素数という。

座標平面上の点 (a,b) と複素数 a+bi を同一視することで、複素数を座標平面上の点と考えることができる。この平面を複素数平面(complex plane)という。[1]

複素数平面において、 x 軸を実軸(real part)、 y 軸を虚軸(imaginary part)という。

複素数平面上で複素数 z に対応する点 A のことを A(z) と表現し、「点z」と呼ぶこともある。


複素数の加法・減法・実数倍を複素数平面上で考えると、それぞれベクトルの加法・減法・実数倍に対応する。

すなわち、α=a+bi,β=c+di,kを実数とすると、

点α+βは点αを実軸方向にc、虚軸方向にdだけ平行移動した点である。
点α−βは点αを実軸方向に-c、虚軸方向に-dだけ平行移動した点である。
点kαは点αの原点からの距離をk倍に拡大した点である。

なお、α=a+biのとき、「実軸方向にa、虚軸方向にbだけ平行移動」を「αだけ平行移動」と表現する場合がある。

ベクトルと同様に、3点0,α,βが一直線上にある条件は、β=kαとなる実数kが存在することである。


複素数 z=a+bi について複素数 z¯=a−bi を z の共役複素数[2]といい、z¯ で表す。

複素数 z と複素数 −z は原点に対して対称であり、複素数 z と複素数 z¯ は実軸に対して対称である。 つまり、次のことが成り立つ。

αが実数⟺α¯=α
αが純虚数⟺α¯=−α(ただしα≠0)

また、α¯¯=αである。


  • 問題
    • 複素数αの実部と虚部をそれぞれα,α¯を用いて表せ。
    • 以下を証明せよ
      1. α+β‾=α¯+β¯
      2. α−β‾=α¯−β¯
      3. αβ‾=α¯β¯
      4. (αβ)‾=α¯β¯
      5. (αn)‾=(α¯)n


上で証明した性質を用いると、数学Ⅱで習った「実数係数のn次方程式の解の一つがαならば、α¯も方程式の解の一つである」ことを証明できる。


複素数平面において、複素数 z=a+bi から原点までの距離を絶対値といい |z| で表す。三平方の定理より |z|=a2+b2 である。 b=0のとき、実数の絶対値で考えた時と同じ結果になることがわかる。

2点A(α),B(β)間の距離(すなわち線分ABの長さAB‾)を考える。平行移動しても線分の長さは変わらないので、点Aを原点Oに移す平行移動を考えると、−αだけ平行移動するので、点Bは点C(β−α)へと移る。 つまり、AB‾=OC‾=|β−α|である。

zz¯=(a+bi)(a−bi)=a2+b2=|z|2 である。zが実数のとき、z¯=zなので実数の絶対値の2乗の計算と一致する。


極形式

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r(cos⁡ϕ+isin⁡ϕ)に対応する点。

上記のように、複素数平面では、複素数の実部と虚部をそれぞれ平面上の点の直交座標に対応させている。ところで、平面上の点の位置の表し方として、直交座標の他に極座標があった。点の位置を極座標で表すことに対応する複素数の表し方を、極形式という。直交座標と極座標は

x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θ

で変換することができるのであった。つまり、極形式とは次のような形の複素数の表現である。

z=a+bi=rcos⁡θ+irsin⁡θ=r(cos⁡θ+isin⁡θ)

ここで、θを複素数zの偏角といい、θ=arg⁡zで表す。また、r=a2+b2=|z|である。θは原点、z、a を頂点とする三角形の原点の角度を表している。

逆三角関数を知っている読者は「偏角はarctan⁡baで求められる」と思うであろうが、逆正接関数の値域は−π2≦arctan⁡x≦π2であり、偏角は基本的に0≦arg⁡z≦2πあるいは−π≦arg⁡z≦πの範囲で表すため、場合分けが必要になってしまい面倒である。なので、偏角を求めるときは素直にcos⁡θ,sin⁡θの値からその値をとるθを求めよう。


z¯の極形式は、z¯=r(cos⁡θ−isin⁡θ)=r{cos⁡(−θ)+isin⁡(−θ)}である。 つまり、arg⁡z¯=−arg⁡zが成り立つ。


複素数の積・商

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極形式で複素数を表すと、複素数の積が次のように簡単に計算できる。

z1=r1(cos⁡θ1+isin⁡θ1), z2=r2(cos⁡θ2+isin⁡θ2) とすると、

z1z2={r1(cos⁡θ1+isin⁡θ1)}{r2(cos⁡θ2+isin⁡θ2)}=r1r2(cos⁡θ1+isin⁡θ1)(cos⁡θ2+isin⁡θ2)=r1r2{cos⁡θ1cos⁡θ2−sin⁡θ1sin⁡θ2+i(sin⁡θ1cos⁡θ2+cos⁡θ1sin⁡θ2)}=r1r2{cos⁡(θ1+θ2)+isin⁡(θ1+θ2)}
ただし、三行目から四行目への式変形は三角形の加法定理を使った。
次に複素数の商を計算してみよう。
z2=r2(cos⁡θ2+isin⁡θ2) とすると、
1z2=z¯2z2z¯2=z¯2|z2|2=1r22r2(cos⁡θ2−isin⁡θ2)=1r2(cos⁡(−θ2))+isin⁡(−θ2))
なので、
z1z2=r1r2(cos⁡(θ1−θ2)+isin⁡(θ1−θ2))
である。
これから、複素数 z1 に複素数 z2 をかける操作は、複素数 z1 の原点からの距離を r2 倍し、原点周りに θ2 だけ回転した点に移す操作であると、複素数 z1 を複素数 z2 で割る操作は、複素数 z1 の原点からの距離を 1r2 倍し、原点周りに −θ2 だけ回転した点に移す操作であると、幾何学的に理解できる。
また、この性質から以下の性質が直ちに導かれる。
  1. |z1z2|=|z1||z2|
  2. |z1z2|=|z1||z2|
  3. arg⁡z1z2=arg⁡z1+arg⁡z2
  4. arg⁡z1z2=arg⁡z1−arg⁡z2

ド・モアブルの定理

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Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアにド・モアブルの定理の記事があります。

整数 n に対し、複素数 cos⁡θ+isin⁡θ の n 乗は、

(cos⁡θ+isin⁡θ)n=cos⁡nθ+isin⁡nθ

となることが知られている。これを ド・モアブルの定理 という。数学Iで習ったド・モルガンの法則と混同しないように注意。

これを証明しよう。

まず、n≥0 の場合を数学的帰納法で証明する。

n=0 のとき、

(左辺)=(cos⁡θ+isin⁡θ)0=1
(右辺)=cos⁡0+isin⁡0=1

である。

n≥1 とし、

n−1 のとき

(cos⁡θ+isin⁡θ)n−1=cos⁡(n−1)θ+isin⁡(n−1)θ

が成り立つと仮定すると

(cos⁡θ+isin⁡θ)n=(cos⁡θ+isin⁡θ)n−1(cos⁡θ+isin⁡θ)={cos⁡(n−1)θ+isin⁡(n−1)θ}(cos⁡θ+isin⁡θ)=cos⁡nθ+isin⁡nθ

となり、n の場合も証明できた。

n≥1 のとき、

(cos⁡θ+isin⁡θ)−n={(cos⁡θ+isin⁡θ)−1}n={cos⁡(−θ)+isin⁡(−θ)}n=cos⁡(−nθ)+isin⁡(−nθ)

したがって、 n が整数のときド・モアブルの定理が成り立つことが証明できた。


ド・モアブルの定理を用いて、zについてのn次方程式

zn=a

の複素数解をすべて求めてみよう。まず、aが正の実数のときを考える。z=r(cos⁡θ+isin⁡θ)と極形式で表すとき、ド・モアブルの定理よりzn=rn(cos⁡nθ+isin⁡nθ)である。正の実数aの絶対値はa、偏角は0であることに注意すると、zn=aを満たすとき、

rn=a, nθ=2kπ(k∈ℤ)

でなければならないことがわかる。r(∈ℝ)>0に注意してこの式を解くと、

r=an, θ=2kπn

であるから、整数kを用いて

z=an(cos⁡2kπn+isin⁡2kπn)

と表される数が複素数解の全てである。

一般の複素数αに対して、zについてのn次方程式

zn=α

を考えると、全く同様の計算により解は整数kを用いて

z=|α|n(cos⁡arg⁡α+2kπn+isin⁡arg⁡α+2kπn)

と表される。

偏角が 2π の整数倍ずれるだけの複素数は同じ複素数であることに注意すると、いずれの場合も異なる解はちょうどn個存在することがわかる。そのn個の解を複素数平面上で考えると、zのn乗根は原点を中心とする正n角形を描くことが確かめられる。

このことを数学的に確かめてみよう。

zn=αの解のうち、n乗して初めてαとなるものをαの原始n乗根という。

1の原始n乗根zk=cis2kπnのうち、z0=1を除く各zkについて以下が成り立つ。

①k⊥nのとき、zkは1の原始n乗根の一つであり、各zkは点1を頂点に持ち単位円に内接する正n角形を描く。

②k⊥̸nのとき、zkは1の原始n乗根ではない。
  • 証明

①の前半と②

∀m∈ℕ(1≦m≦n),zkm=1⟺∃l∈ℕ>0,2kπn×m=2π×l
⟺∀m,n|km・・・(*)
(1)
k⊥n⟹n|m⟹n=m(∵1≦m≦n)
故に、zkは1の原始n乗根である。
(2)
k⊥̸n⟹∃k′,n′∈ℕ>0(k′⊥n′),{k=gcd(k,n)×k′n=gcd(k,n)×n′
∴(*)⟺n′|k′m⟹n′|m
m=n′のとき
n′<n⟹1≦m<n,km=kn′=gcd(k,n)k′n′=nk′
∴zkn′=1(n′<n,∵(*))
故に、zkは1の原始n乗根でない。

①の後半

1の原始n乗根zkについて、arg⁡zka(a∈ℕ>0)は順に
kn⋅2π,2kn⋅2π,3kn⋅2π,⋯,nkn⋅2πであり、
隣り合う2つの偏角の差は全て|2kπn|であり、任意の2つの偏角の差はbkn⋅2π(1≦|b|≦n−1)と表される。
bkn=c(∈ℤ)と仮定するとbk=cn
∴n|b
これは1≦|b|≦n−1に反する。
よってbkn∉ℤより任意の2つの偏角の差は2πの整数倍にならず、各zkは相異なることから各zkは点1を頂点に持ち単位円に内接する正n角形を描く。

Q.E.D.

これに関連して、以下が成り立つ。

③単位円に内接する正n角形の1つの頂点から他の頂点に引いたn−1本の線分の長さの積はnに等しい。
  • 証明
1のn乗根の一つをζ=cis2πnとおく。
各ζs(1≦s≦n)は相異なり、(ζs)n=(ζn)s=1s=1より、各ζsはn次方程式zn−1=0の解である。
zn−1=(z−1)∑k=0n−1zkより、各ζs(s≠n)は方程式∑k=0n−1zk=0の解である。
よって∑k=0n−1zk=∏s=1n−1(z−ζs)・・・(@)と因数分解できる。
z=1を代入すると∏s=1n−1(1−ζs)=n
両辺の絶対値をとると複素数の積の絶対値の性質より
∏s=1n−1|1−ζs|=n
複素数平面上の点Ps(ζs)を考えると、
|1−ζs|=P0Ps‾より
∏s=1n−1P0Ps‾=n
ここで①から各ζsは点1を頂点に持ち単位円に内接する正n角形を描くため、③が成り立つことが示された。

ζが1の原始n乗根であるときは(@)が常に成り立ち、特にnが素数のときは全てのζについて(@)が成り立つ。

なお、1の原始n乗根の個数はオイラーのトーシェント関数φ(n)の値に等しいことが知られている。

複素数平面の応用

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ここでは、複素数平面を利用して幾何学的な問題を解くことを考える。

線分の内分・外分

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α=a+bi,β=c+diとすると、複素数平面とベクトルの対応から点A(α),B(β)の位置ベクトルはそれぞれa→=(a,b),b→=(c,d)となる。

このとき、線分ABをm:nに内分する点、外分する点の位置ベクトルはそれぞれna→+mb→m+n,−na→+mb→m−nと求まる。

もう一度ベクトルと複素数平面の対応を考えると、それぞれn(a,b)+m(c,d)m+n→n(a+bi)+m(c+di)m+n,−n(a,b)+m(c,d)m−n→−n(a+bi)+m(c+di)m−nと変形できる。

つまり、線分ABをm:nに内分する点、外分する点を表す複素数はnα+mβm+n,−nα+mβm−nである。


中点・重心に関しても位置ベクトルと同様の公式が成り立つ。


方程式の表す図形

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α を複素数、r を正の実数とする。 方程式 |z−α|=r を満たす複素数 z の軌跡は、 α を中心とし、 r を半径とする円である。これは円のベクトル方程式の複素数表示である。

α,β を複素数とする、方程式 |z−α|=|z−β| を満たす複素数 z の軌跡は、α,β を通る線分の垂直二等分線である。

異なる2点からの距離の比がm:nである点全体の集合はm=nのときは2点を結ぶ線分の垂直二等分線であるが、m≠nのときは2点を直径の両端に持つ円となる。この円をアポロニウスの円という。

例えば、方程式|z+3|=2|z|を満たす点zの集合は、

|z+3|2=4|z|2
⟺(z+3)(z¯+3)=4zz¯
⟺zz¯−z−z¯=3
⟺(z−1)(z¯−1)=22
⟺|z−1|2=22
⟺|z−1|=2
∴点1を中心とする半径2の円

と求まる。 この円は点-3, 点0からの距離の比が2:1なアポロニウスの円である。


複素数平面上の点 A(α),A′(α′),B(β),B′(β′) に対し、 arg⁡α′−αβ′−β はベクトル AA′→ とベクトル BB′→ のなす角である。特に、 α′−αβ′−β が実数のときベクトル AA′→ とベクトル BB′→ は平行。α′−αβ′−β が純虚数のときはベクトル AA′→ とベクトル BB′→ は垂直である。

異なる3点A(α),B(β),C(γ)に対し、半直線ABから半直線ACまでの正の回転角を∠βαγのように書く(つまり、2nπ分の摺れを無視すれば∠γαβ=−∠βαγ)。点Aを原点に移す平行移動により、点B,Cはそれぞれ点β′=β−α,γ′=γ−αに移る。よって∠βαγ=∠β′0γ′=arg⁡γ′−arg⁡β′=arg⁡γ′β′=arg⁡γ−αβ−αと求まる。

これと平行移動を組み合わせることで、上で述べた条件は、AA′→//BB′→⟺arg⁡β′−βα′−α={0π,AA′→⊥BB′→⟺arg⁡β′−βα′−α=±π2と表せる。


w=1/zが描く図形の問題は入試でよく見られる。 与えられた条件からzの方程式を導き、wの関係式に変形して解いていく。

例えば、zが点12を通り実軸に垂直な直線上を動くとき、点zは原点と点1を結ぶ線分の垂直二等分線上を動くので、|z|=|z−1|である。w≠0よりw=1z⟺z=1wなので、|1w|=|1w−1|⟺1=|1−w|⟺|w−1|=1である。よって、点wは原点を除いた、点1を中心とする半径1の円を描く。


発展:反転

中心O, 半径rの円Cを考える。Oと異なる点Pに対し、Oを端点とする半直線OP上の点P′を、OP‾⋅OP′‾=r2となるように定める。このとき、P→P′の対応を円Cに関する反転、この円Cを反転円、点P′を点Pの鏡像という。また、点Pの軌跡が図形ℱであるとき、P′の軌跡である図形ℱ′をℱの円Cに関する反形という。

反転により、C内部の点は外部に、外部の点は内部に移される。円周上の点は反転で移されない。中心の移動先は無限遠点である。

鏡像は、以下のように作図することができる。

  1. 点Pを通りOPに垂直な直線と円の交点をAとする。
  2. 点Aに於ける円の接線と半直線OPの交点がP′である。
  • 証明
△OAP′∼△OPA
∴OA‾:OP‾=OP′‾:OA‾
∴OP‾⋅OP′‾=OA‾2=r2

点Pが外部にあるときは、点Pから円に引いた接線の接点からOPに下した垂線の足がP′である。


円や直線の反形には、以下のような性質がある。

円や直線の反形の性質

①反転円の中心Oを通る円の反形は、Oを通らない直線。
②反転円の中心Oを通らない直線の反形は、Oを通る円。
③反転円の中心Oを通らない円の反形は、Oを通らない円。
④反転円の中心Oを通る直線の反形は、その直線自身。
  • 証明
反転円の方程式を|z|=rとする。
点zの鏡像を点z′とすると、3点O,P(z),P′(z′)はOを端点とする同一半直線上にある。
よって、z′=kzとなる実数kが存在し、反転の定義から|z||z′|=k|z|2=r2。
故にk=r2|z|2(実数なので適する)なのでz′=kz=r2|z|2z=r2zz¯z=r2z¯。
これはz=r2z′¯・・・(*)と同値である。
ここでPの軌跡が反転前の図形であるとすると、0でない異なる複素数α,β及び実数lを用いて各図形は以下のように表される。
①|z−α|=|α|、②|z|=|z−α|、③|z−α|=|β|、④z=lα
各方程式に(*)を代入すると、
①|r2z′¯−α|=|α|の両辺に|z′¯α|を掛けて|r2α−z′¯|=|z′¯|。
両辺複素共軛をとって|z′|=|z′−r2α|。
これは原点と点r2αの垂直二等分線を表すので、点P′(z′)の軌跡則ち反形は原点を通らない直線である。
②|r2z′¯|=|r2z′¯−α|の両辺に|z′¯α|を掛けて|r2α|=|r2α−z′¯|。
両辺複素共軛をとって|z′−r2α|=|r2α|。
これは原点と点r2αを通る円を表すので、点P′(z′)の軌跡則ち反形は原点を通る円である。
③|r2z′¯−α|=|β|の両辺に|z¯β|を掛けて変形して|z′¯|=|αβ||z′¯−r2α|。
両辺複素共軛をとって|z′|=|αβ||z′−r2α|。
これは直径の両端を点|α|2|α|2+|β|2⋅r2α,|β|2|α|2−|β|2⋅r2αとするアポロニウスの円なので、点P′(z′)の軌跡則ち反形は原点を通らない円である。
④r2z¯′=lαの両辺に|z¯′|2を掛けて変形してz′=lr2|z′|2α。
これはz′=l′α(l′は実数)と書けるので、点P′(z′)の軌跡則ち反形は元の直線自身である。

Q.E.D

先述のw=1zの例は②のパターンに当たる。但し、w≠0より反形から原点が除かれる。


発展:メビウス変換

複素定数α∼δを用いて次の式で表されるz→wの変換をメビウス変換(一次分数変換)という。

w=αz+βγz+δ・・・(@)(但し、メビウス行列M=(αβγδ)は正則とする。)


メビウス変換は一次変換やアフィン変換よりも守備範囲の広い変換であり、基本的な変換(平行移動、回転移動、相位変換、反転、実軸対称移動)の合成で表される。

  • 証明
[1]γ≠0のとき
(@)の右辺の分母分子をγで割ってw=αγz+βγz+δγ=αγ+βγ−αδγ2z+δγ=βγ−αδγ2z+δγ
よって、zからwを求めるためには以下の①~④の変換を順次行えばよい。
①z1=z+δγ
これはzをδγだけ平行移動する操作である。
②z2=1z1
これはz1の単位円に関する反転と実軸に関する対称移動の合成である。
③z3=−detMγ2z2
これは定数部分をζとおくと、原点を中心とした回転角arg⁡ζの回転移動と、|ζ|倍だけ拡大・縮小する相位変換の組み合わせである。
④w=z3+αγ
これはαγだけの平行移動である。
[2]γ=0のとき
det⁡M=αδ−βγ≠0より、γ=0⟹αδ≠0⟺{α≠0δ≠0
よって(@)の右辺はw=αδz+βδ=αδ(z+βα)となり、[1]の①の型、③の型の変換の合成であることがわかる。

Q.E.D


直線を半径が∞の円と捉えると、メビウス変換は複素数平面上の円を円に移す変換といえる。

  • 証明
上で述べたように、メビウス変換は①~④の変換の合成である。
①、③、④は全て相似変換なので円が円に移ることは明らかである。
②について、実軸に関する対称移動は合同変換なので円が円に移ることは明らかである。
反転は先述の性質より円・直線を直線・円に移すが、ここでは直線も円に含めるので、円を円に移す変換といえる。

Q.E.D

なお、後述の「異なる4点が同一円周上にある条件」からも証明できる。


参考:ジューコフスキー変換

正の実数aを用いてw=z+a2zと表される変換をジューコフスキー変換という。

この変換により、円|z|=rは

a=rのとき、2点−2a,2aを結ぶ長さ4aの線分
a≠rのとき、長軸の長さ2r(r+a2r)、短軸の長さ2|r−a2r|の楕円

に移される。


点p+qiを中心とし点1を通る円Cは、a=1のジューコフスキー変換により曲線{x=p+rcos⁡θ+p+rcos⁡θ(p+rcos⁡θ)2+(q+rsin⁡θ)2y=q−rsin⁡θ+q+rsin⁡θ(p+rcos⁡θ)2+(q+rsin⁡θ)2に移される(証明略)。

ここで、(p,q)=(−0.1,0.2)としたこの図形は、飛行機の翼に酷似した形である。

ジューコフスキー変換の逆変換を用いることで、この図形の周りの気流を円Cの周りの気流として計算することができる。よって、気流が翼に生じさせる揚力を流体力学の知識から計算できる。このような理論は、飛行機の安全な運航のための基礎になっている。

回転移動

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複素数 z に複素数 cos⁡θ+isin⁡θ をかけた複素数 (cos⁡θ+isin⁡θ)z は、複素数 z を原点を中心に θ だけ回転した点を表す。これはド・モアブルの定理を用いて証明できる。

「負の数に負の数を掛けたら正の数になる」という中学1年生で習った事実の数学的な説明はこの定理を用いて初めてできる。


一般に、複素数 z を複素数 α を中心に θ だけ回転した点 z′ は、z′=(z−α)(cos⁡θ+isin⁡θ)+α である。 z′−α=(z−α)(cos⁡θ+isin⁡θ) の形にすると覚えやすいだろう。


複素数zにcos⁡θ+isin⁡θを掛ける操作はzの位置ベクトルに回転行列(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)を掛ける一次変換に対応する。 一般に複素数a+biは二次行列(a−bba)に対応することが知られている。 回転移動の計算は、行列を用いる場合に比べて複素数を用いた方が楽な場合が多い。 特に、回転の中心が原点ではない場合、行列の場合は余計な次元を追加して計算する必要がある(詳しくはアフィン変換を参照)。それに比べ、複素数の場合は比較的単純な計算で一般の点を中心とした回転を求めることができる。


発展:図形の回転

図形は点の集合なので、図形の回転移動は点の回転移動に帰結する。つまり、点の座標が定数から変数に変わるだけである。図形を表す方程式がわかっていれば、回転移動した図形を表す方程式を求められる。

回転前の点をX(x,y)、回転後の点をY(x', y')とする。

このとき、「Xをθだけ回転したらYに移った」と考えると最終的に出てくる式はそれぞれ左辺にx',y'、右辺に(xの式),(yの式)が来る形となる。

xとyの関係式(回転前の図形を表す方程式)に代入するためにはそれぞれ左辺にx,y、右辺に(x'の式),(y'の式)が来る形にする方が望ましい。

そのため、発想を逆転させて「Yを-θだけ回転したらXに移った」と考える。

こうすると、最終的に出てくる式はそれぞれ左辺にx,y、右辺に(x'の式),(y'の式)が来る形となる。

具体的に計算すると、

x+yi={cos⁡(−θ)+isin⁡(−θ)}(x′+y′i)=(cos⁡θ−isin⁡θ)(x′+y′i)=(x′cos⁡θ+y′sin⁡θ)+(−x′sin⁡θ+y′cos⁡θ)i
∴{x=x′cos⁡θ+y′sin⁡θy=−x′sin⁡θ+y′cos⁡θ

この式を図形の方程式に代入すると、回転後の図形の方程式となる。

陽関数y=f(x)は陰関数表示f(x,y)=0へと変形できる。


図形の回転

図形を表す方程式がf(x,y)=0であるとき、原点を中心にθだけ回転させた図形の方程式はf(xcos⁡θ+ysin⁡θ,−xsin⁡θ+ycos⁡θ)=0である。


記述式の問題の場合、上の公式に代入するのではなく、先ほど述べた手順で式変形して求めるのが望ましい。


補:図形の性質

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ここでは、これまでの幾何学で習ってきた定理や性質を複素数平面の視点から見ていく。

まずは、幾何的条件の複素数表現を復習しておく。

O(0),A(α),B(β),C(γ),k∈ℝ,α=a+biとする。

図形の性質の複素数表現
図形の条件 複素数表現 (参考)ベクトル表現
線分の長さ
AB‾
|β−α| |AB→|=|OB→−OA→|
角の大きさ
∠BAC
∠βαγ=arg⁡γ−αβ−α arccos⁡(AB→⋅AC→|AB→||AC→|)
共線条件
3点A,B,Cが同一直線上
∠βαγ=0,π⟺γ−αβ−α∈ℝ⟺γ−α=k(β−α) AC→=kAB→⟺OC→−OA→=k(OB→−OA→)
垂直条件
AB⊥AC
∠βαγ=±π2⟺γ−αβ−α∈iℝ⟺γ−αβ−α+(γ−αβ−α)‾=0 AB→⋅AC→=0
平行移動
x方向にa
y方向にb
移動前の点z,移動後の点z′として
z′=z+α
移動前の点P, 移動後の点P′として
OP′→=OP→+(ab)[(ab)=PP′→]⟺(OP′→1)=(10a01b001)(OP→1)
回転移動
原点を中心とするθ回転
z′=z×cisθ OP′→=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)OP→
平行移動+回転移動
点Aを中心とするθ回転
z′−α=(z−α)cisθ⟺z′=(z−α)cisθ+α AP′→=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)AP→⟺OP′→=(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)AP→+OA→⟺(OP′→1)=(10a01b001)(cos⁡θ−sin⁡θ0sin⁡θcos⁡θ0001)(10−a01−b001)(OP→1)⟺(OP′→1)=(cos⁡θ−sin⁡θa(1−cos⁡θ)+bsin⁡θsin⁡θcos⁡θb(1−cos⁡θ)−asin⁡θ001)(OP→1)
方程式の一般形

点P(z)が点A(α),B(β)を通る直線上にあるとき、共線条件から

z−αβ−α=(z−αβ−α)‾=z¯−α¯β¯−α¯

であり、分母を払うと

(β−α)(z¯−α¯)=(β¯−α¯)(z−α)・・・(@)

zに就いて整理すると

(β¯−α¯)z−(β−α)z¯+(α¯β−αβ¯)=0

このとき定数項は

α¯β−αβ¯‾=α¯β‾−αβ¯‾=αβ¯−α¯β=−(α¯β−αβ¯)

より、純虚数または0である。
よって、複素数平面上で異なる2点を通る直線の方程式は

μ¯z−μz¯+ν=0(μは0でない複素数、νは0または純虚数)

と表される。
ここでμ=a+biとすると

{μ¯i=b+ai−μi=b−aiνi∈ℝ

より、この方程式はλ=b+ai,νi=cとして

λ¯z+λz¯+c=0

と表される。
これを、複素数平面に於ける直線の方程式の一般形という。

演習問題
点A(α),B(β)の二等分線の方程式を一般形で表せ。



点P(z)が点A(α),B(β)からの距離の比k:1であるとき、P(z)の軌跡はアポロニウスの円であり、その方程式は|z−α|=k|z−β|であった。
両辺二乗すると(z−α)(z¯−α¯)=k2(z−β)(z¯−β¯)であり、整理して(1−k2)zz¯+(k2β¯−α¯)z+(k2β−α)z¯+(|α|2−k2|β|2)=0
ここでa−k2=m,k2β−α=ν,|α|2−k2|β|2=lとおくとm(≠0),l∈ℝ,ν∈ℂであり、

mzz¯+ν¯z+νz¯+l=0

これを、複素数平面に於ける円の方程式の一般形という。


逆に、方程式mzz¯+ν¯z+νz¯+l=0が一般に表す図形について考察する。

m=0のとき、この方程式は直線の方程式の一般形に等しくなるので直線を表す。
m≠0のとき、
zz¯+ν¯mz+νmz¯+lm=0
(z+νm)(z¯+ν¯m)−νν¯m2+lm=0
|z+νm|2=|ν|2−mlm2
よってこの図形は、
|ν|2>mlのとき点−νmを中心とする半径|ν|2−ml|m|の円
|ν|2=mlのとき点−νm
|ν|2<mlのとき半径|ν|2−ml|m|iの虚円
を表す。
中線定理

中線定理とは、「△ABCに於いて辺BCの中点をMとするとAB‾2+AC‾2=2(AM‾2+BM‾2)」という定理であった。これを複素数平面で証明する。

M(0),A(α),B(β)とするとC(−β)である。
よってAB‾2+AC‾2=|β−α|2+|−β−α|2=|β−α|2+|β+α|2=(β−α)(β−α)‾+(β+α)(β+α)‾=(β−α)(β¯−α¯)+(β+α)(β¯+α¯)=2(αα¯+ββ¯)=2(|α|2+|β|2)
一方、2(AM‾2+BM‾2)=2(|0−α|2+|0−β|2)=2(|α|2+|β|2)
従って、AB‾2+AC‾2=2(AM‾2+BM‾2)//

なお、これはベクトルや座標平面で考えると同じ(Mを始点にとる)方法ながら記述量が少なく済む。他に余弦定理を用いた証明が有名である。


中点連結定理

中線連結定理とは、「△ABCに於いて辺AB,ACの中点をそれぞれD,EとするとBC//DE,BC‾=2DE‾」という定理であった。これを複素数平面で証明する。

A(0),B(β),C(γ)とするとD(β2),E(γ2)である。
よってγ2−β2γ−β=12∈ℝなので平行条件よりBC//DE
DE‾を計算すると、
|γ2−β2|=12|γ−β|=12BC‾
故にBC‾=2DE‾//


トレミーの定理

トレミーの定理とは、「円に内接する四角形ABCDに就いて、AB‾⋅CD‾+AD‾⋅BC‾=AC‾⋅BD‾」という定理であった。これを複素数平面で証明する。

A(0),B(β),C(γ),D(δ)とする。
円に内接する四角形の性質より∠CBA+∠ADC=πなので
arg⁡0−βγ−β+arg⁡γ−δ0−δ=arg⁡(−βγ−β⋅γ−δ−δ)=arg⁡(γ−δ)β(γ−β)δ=±π
よって分子・分母をそれぞれz1,z2とおくとz1≠0,z2≠0,z1≠z2,arg⁡z1z2=±πより3点z1,0,z2はこの順に一直線上にある。
故に|z1−z2|=|z1|+|z2|
ここでz1−z2=(γ−δ)β−(γ−β)δ=(β−δ)γより
|(β−δ)γ|=|(γ−δ)β|+|(γ−β)δ|
⟺|β−δ||γ|=|γ−δ||β|+||γ−β||δ|
⟺AC‾⋅BD‾=AB‾⋅CD‾+AD‾⋅BC‾//


演習問題
次の定理を初等幾何・解析幾何・ベクトル・複素数平面の4通りで証明せよ。

 正方形の定理 
 
△ABCの外側に正方形ABDE,ACFGを作ったとき、線分EGの中点MについてAM⊥BC,AM‾:BC‾=1:2,BG⊥CE,BG‾=CE‾。


五心

△ABCの五心とは内心I、外心O、重心G、垂心H、傍心JA,JB,JCのことであった。

重心G(wg)は位置ベクトルのときと同様にしてwg=α+β+γ3と容易に求まる。

それでは、他の4心の複素数表現はどうなるであろうか?

まずは、内心の複素数表示を求める。

A(α),B(β),C(γ)について、
BC‾=|γ−β|=a,CA‾=|α−γ|=b,AB‾=|β−α|=cとおく。
∠ACBの二等分線と辺ABの交点をD(δ)とおくと、角の二等分線定理より
AD‾:DB‾=CA‾:BC‾=b:a
故にδ=aα+bβb+a
内心I(wi)は∠CABの二等分線と線分CDの交点であるから、
CI‾:ID‾=CA‾:AD‾=b:(ba+b⋅c)=(a+b):c
よってIは線分CDを(a+b):cに内分するので、
wi=c⋅γ+(a+b)⋅δ(a+b)+c=aα+bβ+cγa+b+c=|β−γ|α+|γ−α|β+|α−β|γ|β−γ|+|γ−α|+|α−β|

これは内心の位置ベクトル表示に等しい。


次に、外心の複素数表示を求める。

A(α),B(β),C(γ)について、
線分CAの垂直二等分線上の点zは
|z−γ|=|z−α|⟺|z−γ|2=|z−α|2⟺(z−γ)(z¯−γ¯)=(z−α)(z¯−α¯)⟺z¯(α−γ)+z(α¯−γ¯)−(αα¯−γγ¯)=0
を満たす。
同様に、線分CBの垂直二等分線上の点ζは
ζ¯(β−γ)+ζ(β¯−γ¯)−(ββ¯−γγ¯)=0
を満たす。
外心O(wo)はz,ζが一致する場合なので、
{wo‾(α−γ)+wo(α¯−γ¯)−(αα¯−γγ¯)=0wo‾(β−γ)+wo(β¯−γ¯)−(ββ¯−γγ¯)=0
wo‾の項を消去して
wo{(α¯−γ¯)(β−γ)−(β¯−γ¯)(α−γ)}=(αα¯−γγ¯)(β−γ)−(ββ¯−γγ¯)(α−γ)
ここで、(α¯−γ¯)(β−γ)−(β¯−γ¯)(α−γ)=0とするとα−γβ−γ=α¯−γ¯β¯−γ¯=(α−γβ−γ)‾よりα−γβ−γ∈ℝであるが、
これは3点A,B,Cが同一直線上にある場合なので三角形を成さない。
故に(α¯−γ¯)(β−γ)−(β¯−γ¯)(α−γ)≠0なので
wo=(αα¯−γγ¯)(β−γ)−(ββ¯−γγ¯)(α−γ)(α¯−γ¯)(β−γ)−(β¯−γ¯)(α−γ)=αα¯(β−γ)+ββ¯(γ−α)+γγ¯(α−β)α¯(β−γ)+β¯(γ−α)+γ¯(α−β)


次に垂心の複素数表示を求める。

A(α),B(β),C(γ)について、
垂心H(wh)はAH⊥BC,BH⊥CAより
{wh−αγ−β+(wh−αγ−β)‾=0wh−βα−γ+(wh−βα−γ)‾=0
を満たす。
{(γ¯−β¯)(wh−α)+(γ−β)(wh‾−α¯)=0(α¯−γ)(wh−β)+(α−γ)(wh‾−β¯)=0
ここからwh‾を消去して
wh=(α¯−γ){(γ¯−β¯)α+(β−γ)(α¯−β¯−β)}(γ−β)(α¯−γ)−(α−γ)(γ¯−β¯)

ここで外心の複素数表示を用いると、wh=α+β+γ−2woと非常に綺麗な形になる。
更に変形すると3wg=2wo+whであり、「重心は外心と垂心を結んだ線分を1:2に内分する」という性質が現れる。ここで、重心・外心・垂心が乗る一直線をオイラー線といった。つまり、オイラー線の存在証明も複素数平面上でできたことになる。


最後に、傍心の複素数表示を求める。

A(α),B(β),C(γ)について、
辺BCと∠Aの二等分線の交点をP(z)とすると角の二等分線定理より
AB‾:CA‾=BP‾:PC‾⟺BP‾PC‾=AB‾CA‾⟺|z−β||γ−z|=|β−α||γ−α|
∠Aの二等分線はB,Cからの距離の比が一定なので、P(z)の軌跡は∠Aの二等分線そのものである。
辺ACの延長と∠Bの外角の二等分線の交点をQ(ζ)とすると角の二等分線定理より
AQ‾:QC‾=AB‾:BC‾⟺AQ‾QC‾=AB‾BC‾⟺|ζ−α||γ−ζ|=|β−α||γ−β|
同様にQ(ζ)の軌跡は∠Bの外角の二等分線そのものである。
傍心JA(wjA)はz,ζが一致する場合なので、
{|wjA−β||γ−wjA|=|β−α||γ−α||wjA−α||γ−wjA|=|β−α||γ−β|
両式の比をとって
|wjA−β||wjA−α|=|β−γ||γ−α|
ここでu=wjA−αwjA−βとメビウス変換すると
wjA=α−uβ1−u
傍心の性質からu=γ−αβ−γととれるので、
wjA=α−γ−αβ−γβ1−γ−αβ−γ=α(β−γ)−(γ−α)β(β−γ)−(γ−α)=2αβ−βγ−γαα+β−2γ
点B,Cに関する傍心も同様。

なお、加重平均法を知っていれば、位置ベクトル表示と同じ形の表示も得られる。


チェバの定理

チェバの定理とは、「△ABCに於いて、点P,Q,Rがそれぞれ辺BC,CA,AB上に存在して線分AP,BQ,CRが1点で交わる必要十分条件はBP‾PC‾⋅CQ‾QA‾⋅AR‾RB‾=1」という定理であった。これを複素数平面上で証明する。

A(α),B(β),C(γ)について、
P(p),Q(q),R(r)がそれぞれ点P,Q,Rがそれぞれ辺BC,CA,AB上に存在するとき位置ベクトルと同様に考えて
{p=β+t1(γ−β)(0<t1<1)q=γ+t2(α−γ)(0<t2<1)r=α+t3(β−α)(0<t3<1)・・・(*)
線分AP,BQ,CRの方程式は(@)よりそれぞれ
{(p¯−α¯)z−(p−α)z¯−αp¯+α¯p=0(q¯−β¯)z−(q−β)z¯−βq¯+β¯q=0(r¯−γ¯)z−(r−γ)z¯−γr¯+γ¯r=0
線分AP,BQ,CRが同一点で交わる必要十分条件は、この三元連立一次方程式が線型従属なことである。
よって|p¯−α¯α−pα¯p−αp¯q¯−β¯β−qβ¯q−βq¯r¯−γ¯γ−rγ¯r−γr¯|=0
サラスの公式より
(p¯−α¯)(β−q)(γ¯r−γr¯)+(α−p)(β¯q−βq¯)(r¯−γ¯)+(α¯p−αp¯)(q¯−β¯)(γ−r)−(α¯p−αp¯)(β−q)(r¯−γ¯)−(α−p)(q¯−β¯)(γ¯r−γr¯)−(p¯−α¯)(β¯q−βq¯)(γ−r)=0
ここで各p,q,rを(*)の右辺で置換すると
{α−p=(α−β)−t1(γ−β)β−q=(β−γ)−t2(α−γ)γ−r=(γ−α)−t3(β−α){p¯−α¯=(β¯−α¯)−t1(γ¯−β¯)q¯−β¯=(γ¯−β¯)−t2(α¯−γ¯)r¯−γ¯=(α¯−γ¯)−t3(β¯−α¯){α¯p−αp¯=t1(γα¯−γ¯α)+(1−t1)(βα¯−β¯α)β¯q−βq¯=t2(αβ¯−α¯β)+(1−t2)(γβ¯−γ¯β)γ¯r−γr¯=t3(βγ¯−β¯γ)+(1−t3)(αγ¯−α¯γ)より変形して
t1t2t3−(1−t1)(1−t2)(1−t3)=0を得る。
よってt1t2t3=(1−t1)(1−t2)(1−t3)より
t11−t1⋅t21−t2⋅t31−t3=1
ここで各分数は各線分の内分比となっているので、
BP‾PC‾⋅CQ‾QA‾⋅AR‾RB‾=1が成り立つ//


メネラウスの定理

メネラウスの定理とは、「△ABCと直線lに於いて、半直線AB,BC,CAとlの交点をそれぞれD,E,Fとしたとき、AD‾BD‾⋅BE‾EC‾⋅CF‾FA‾=1。逆にAD‾BD‾⋅BE‾EC‾⋅CF‾FA‾=1となるD,E,Fは一直線上にある。」という定理であった。これを複素数平面で証明する。

A(α),B(β),C(γ),D(δ),E(η),F(ϕ)とおく。
(順定理の証明)
lの方向ベクトルに相当する複素数をζとするとパラメータt1,t2,t3∈ℝを用いて
{δ=α+t1ζη=β+t2ζϕ=γ+t3ζ
よって
AD‾BD‾⋅BE‾EC‾⋅CF‾FA‾=δ−αβ−δ⋅η−βγ−η⋅ϕ−γα−ϕ=t1ζβ−α−t1ζ⋅t2ζγ−β−t2ζ⋅t3ζα−γ−t3ζ=t1β−αζ−t1⋅t2γ−βζ−t2⋅t3α−γζ−t3
ここで「D,E,Fが一直線上にある」という仮定から
{β−αζ−t1=t2t3t1γ−βζ−t2=t3t1t2α−γζ−t3=t1t2t3
が成り立つので、
t1β−αζ−t1⋅t2γ−βζ−t2⋅t3α−γζ−t3=t1t2t3t1⋅t2t3t1t2⋅t3t1t2t3=t12t22t32t1t2t3⋅t1t2t3=1//
(逆定理の証明)
直線DEと半直線ABの交点をF′(ϕ′)とする。
このとき順定理よりAD‾BD‾⋅BE‾EC‾⋅CF′‾F′A‾=δ−αβ−δ⋅η−βγ−η⋅ϕ′−γα−ϕ′=1であり、仮定AD‾BD‾⋅BE‾EC‾⋅CF‾FA‾=δ−αβ−δ⋅η−βγ−η⋅ϕ−γα−ϕと比べると
ϕ−γα−ϕ=ϕ′−γα−ϕ′⟺(ϕ−γ)(α−ϕ′)=(α−ϕ)(ϕ′−γ)⟺ϕα−γα−ϕϕ′+γϕ′=αϕ′−ϕϕ′−αγ−γϕ⟺ϕα+γϕ′−αϕ′+γϕ=0⟺(α−γ)(ϕ−ϕ′)=0
ここでα≠γよりϕ=ϕ′、則ちF′はFに一致し、3点D,E,Fは一直線上にある//


方冪の定理

方冪の定理とは、「点Pで交わる2直線AB,CDに就て、4点A,B,C,Dの共円条件はPA‾⋅PB‾=PC‾⋅PD‾。また、直線AB上の点Pから引いた直線がA,Bを通る円の点Tに於ける接線である必要十分条件はPA‾⋅PB‾=PT‾2」という定理であった。これを複素数平面で証明する。

A(α),B(β),C(γ),D(δ),P(z)とする。
直線ABの方程式をw1=z+tϕとおく。
円Oの中心・半径をそれぞれo,rとすると円と直線の交点は|z+tϕ−o|2=r2を満たす。
|z+tϕ−o|2=(z−o+tϕ)(z−o‾+tϕ¯)=(z−o)(z−o‾)+t{(z−o)ϕ¯+(z−o)ϕ¯‾}+t2ϕϕ¯=|z−o|2+2Re{(z−o)ϕ¯}+t2|ϕ|2
∴|ϕ|2t2+2Re{(z−o)ϕ¯}+|z−o|2−r2=0
これは実数係数の二次方程式であり、初期条件から2実数解t1,t2を持つので解と係数の関係から
t1t2=|z−o|2−r2|ϕ|2
t1,t2はw1とOの交点に対応するので|z−α|=t1|ϕ|,|z−β|=t2|ϕ|が成り立ち、
|z−α||z−β|=t1t2|ϕ|2=|z−o|2−r2
同様に直線CDの方程式をw2=z+uψとおくと
|z−γ||z−δ|=u1u2|ψ|2=|z−o|2−r2なので、
|z−α||z−β|=|z−γ||z−δ|⟺PA‾⋅PB‾=PC‾⋅PD‾
逆定理の証明はこの過程を逆に辿ればよい。
また、u1=u2の場合を考えればPA‾⋅PB‾=PT‾2も成り立つ//


相似条件

図形ℱが平行移動・相位変換・回転移動で図形ℱ′に一致するとき、ℱ,ℱ′は同じ向きに相似であるという。鏡映も込みで一致するとき、逆向きに相似であるという。

ここでは、三角形に就てそれぞれの相似条件がどう表されるか見ていく。

P(z1),Q(z2),R(z3),P′(w1),Q′(w2),R′(w3)とする。
△PQR∽△P′Q′R′のとき、相似比が対応辺の比となるので
PR‾PQ‾=P′R′‾P′Q′‾⟺|z3−z1||z2−z1|=|w3−w1||w2−w1|⟺|z3−z1z2−z1|=|w3−w1w2−w1|
同じ向きに相似であるとき、
∠QPR=∠Q′P′R′⟺∠z2z1z3=∠w2w1w3⟺arg⁡z3−z1z2−z1=arg⁡w3−w1w2−w1
より絶対値と偏角の条件から
z3−z1z2−z1=w3−w1w2−w1//
逆向きに相似であるとき、
∠QPR=∠R′P′Q′⟺∠z2z1z3=∠w3w1w2=−∠w2w1w3⟺arg⁡z3−z1z2−z1=−arg⁡w3−w1w2−w1
より絶対値と偏角の条件から
z3−z1z2−z1=(w3−w1w2−w1)‾//

なお、平行移動・相位変換・回転移動は複素数平面上でアフィン変換z′=αz+βで表される。鏡映は共軛に対応するので、鏡映を含むアフィン変換はz′=αz¯+βと表せる。

図形の変換は図形を構成する各点の変換の集合と考えられるので、

{w1=αz1+βw2=αz2+βw3=αz3+β(同 じ 向 き ),{w1=αz1¯+βw2=αz2¯+βw3=αz3¯+β(逆 向 き )

それぞれからα,βを消去した式の比をとると

w3−w1w2−w1{z3−z1z2−z1(同 じ 向 き )z3−z1‾z2−z1‾=(z3−z1z2−z1)‾(逆 向 き)

となり、これは再帰則より先ほどの式と同値である。


四角形が円に内接する条件

4点A,B,C,Dがこの順で同一円周上にあるとき、共円条件は「円の内接四角形ABCDに就て円周角の定理とその逆が成り立つ」ことを利用すれば求まる。

A(α),B(β),C(γ),D(δ)とする。
四角形ABCDが円に内接する
⟺∠ACB=∠ADB(∵円周角の定理とその逆)
⟺arg⁡β−γα−γ=arg⁡β−δα−δ
⟺arg⁡β−γα−γ−arg⁡β−δα−δ=0
⟺arg⁡(β−γα−γ÷β−δα−δ)=0
⟺β−γα−γ÷β−δα−δ>0//

ここで最後の変形は、arg⁡z=0⟺z=rcis0=r>0を用いた。

一般には、

4点A,B,C,Dが同一円周上にある⟺β−γα−γ÷β−δα−δ∈ℝ

である。

[1]A,B,C,D、A,B,D,Cの順にあるときは先程と同様に示される。
[2]A,C,B,Dの順に円周上にあるときは、対角定理を用いればよい。
四角形ACBDが円に内接する
⟺∠ACB+∠BDA=π(∵対角定理とその逆)
⟺arg⁡β−γα−γ+α−δβ−δ=±π
⟺arg⁡(β−γα−γ×α−δβ−δ)=±π
⟺arg⁡(β−γα−γ÷β−δα−δ)=±π
⟺β−γα−γ÷β−δα−δ<0
よって全ての場合に就てβ−γα−γ÷β−δα−δ∈ℝ

最後の変形にはarg⁡z=±π⟺z=rcis(±π)=−r<0を用いた。

なお、(β−γα−γ)/(β−δα−δ)のように、比に対して更に比をとったものを複比(クロス比)という。複比は一般に、(a,b;c,d)=(a−c)(b−d)(a−d)(b−c)のように書く。

この記法を用いると、

4点A,B,C,Dが同一円周上にある⟺(α,β;γ,δ)∈ℝ

と簡潔に表せる((α,β;γ,δ)の逆数が実数なので(α,β;γ,δ)は実数である)。

直観的には、この条件は「任意の円に対して変換後の図形が実軸になるような、あるメビウス変換が存在する」ことと理解される。

脚注

[編集]
  1. ^ 複素平面やガウス平面と呼ばれることもある。
  2. ^ 本来は「共軛」と書く。