東洋音楽の特徴と相違点
この章では、東洋音楽の地理的範囲を定義し、その共通の特徴と地域ごとの主な相違点を明らかにしていきます。
共通する特徴
[編集]東洋音楽の範囲
[編集]一般に東洋とは、西洋の対義語としての意味合いが強く、トルコから東の地域をさすことが多いですが、本書では、中国とインドを中心とした音楽のことを差すこととします。これらの広い地域では、地域ごとに多様性がある一方で、東洋音楽全体にはいくつかの共通した性質が見られます。
- 音階の構造:
音楽は五音音階(ペンタトニック)または七音音階(ヘプタトニック)で構成されています。五音音階は、中国、モンゴル、日本、安南(ベトナム)、タイ、ミャンマー、南洋諸島などで使われています。
七音音階も中国やタイで使われますが、多くの場合、五音音階がその基礎となっています。インドとアラビアでは、古くから七音音階が用いられてきました。ミャンマーでは、西洋音楽に近い独特の七音音階が使われており、その音楽は近代的な印象を与えます。
- 楽器の役割:
管楽器、弦楽器、打楽器が多用されますが、特に打楽器を中心としている音楽が非常に多いです。インドは弦楽器が中心のように見えますが、打楽器を有効に活用しています。
打楽器が中心であるため、舞踊音楽が多いのも特徴です 。これは、東洋では「リズム」に非常に関心が払われていることを意味します。
- 声楽と器楽の関係:
歌う際に、歌手の声の高さを楽器の音高に合わせるのではなく、逆に楽器の音の高さを歌手の声に合わせます。
- 音楽の用途とジャンル:
祭典や祝典、公式な饗宴などで用いる壮大で華麗な儀礼音楽が非常に発達しました。庶民音楽は器楽もありますが、主として歌が中心です。その題材は、有名な伝説や歴史物語から取られることが多くなっています。
- 音楽の持つ雰囲気:
宮廷音楽から庶民音楽に至るまで、たとえ「喜び」を表現する曲であっても、西洋音楽に比べて哀愁を帯びて聞こえる傾向があります。これは、その音程が科学的に作られた西洋の音階とは異なり、その土地の自然環境の影響を受けた結果生まれた、その民族にとって自然なものであるためです。
主な相違点
[編集]共通点がある一方で、地域ごとの音楽文化には明確な違いも存在します。
- 音律(チューニングシステム)の違い:
中国では、十二律を用いています。インドでは、1オクターブを22に等分する、いわゆる二十二等分平均律を用いています。タイでは、1オクターブを7つに等分しています。アラビアでは、1オクターブを17に区分しています。
- その他の違い:
使用される楽器の種類にも、それぞれの地域で特色があります。歌唱時の発声法も、似ているように感じられても、それぞれに特色があります。器楽もまた、本質的に異なっています。
東洋音楽の理解に向けて
[編集]多くの人は、よく東洋音楽を「原始的」と考えるかもしれませんが、それは西洋音楽の基準から見た一方的な見方です。
東洋音楽の音律も数学的に算出されていますが、その方法はあくまで東洋的なものであり、西洋の模倣ではありません。
西洋美術の知識だけで東洋美術を理解するのが困難であるのと同じように、西洋音楽の知識だけで東洋音楽を理解しようとするのは無理なことです。
その本質を探し求めて味わうならば、その美しさを知ることができ、深い興味を持つことができるでしょう。