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民法第733条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文

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削除

2022年(令和4年)12月10日、民法の嫡出推定制度の見直し等を内容とする民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号)が成立し、本条は削除され、2024年(令和6年)4月1日に施行された[1]
以下、削除された条文
再婚禁止期間)
第733条
  1. 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
  2. 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
    1.  女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
    2.  女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

改正経緯

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2016年6月7日改正、即日施行。改正前の条項は以下のとおり。改正理由等は「解説」参照。

  1. 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
  2. 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

解説

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以下は、削除された条文に関する解説である。

女子の再婚禁止期間を定めた規定。明治民法の規定(旧・民法第767条)を戦後の民法改正において、そのまま継承した。女性のみに課される制限であって、日本国憲法第24条の両性の本質的平等に抵触するという指摘もあるが、本条の立法趣旨は「父性推定の重複を回避し父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあ」り、合理的な根拠に基づく法的取扱いの区別であって憲法に反するものではない旨確認されている(最判平成7.12.5 判時1563.81「平成7年判決」)。事実としては、戸籍上の夫婦関係があっても妻の性的生活がこれに拘束されるものではない一方で、現代においては、DNA鑑定など、状況の判断によらず確定的に父子関係を確定する手段もあるため、必ずしも女性に対する再婚の禁止によって父性の推定の重複を回避する必要性はないという指摘も強い。しかしながら、子の立場からは、父を確定するのに訴訟を待つという不安定な状態は好ましくないため、最高裁判所は依然本条項及び後述する民法第772条の合理性を認めている(最判平成27.12.16 民集69-8-2427 「平成27年判決」)。
しかしながら、本条の立法趣旨が「父性の推定の重複の回避」であるならば、明治民法以来の再婚制限期間は6ヶ月と、父性の推定を定めた民法第772条第2項における、「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」との定めは矛盾することとなる。なぜならば、婚姻を解消した夫(以下、「前夫」)については、「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」が適用され、新たに婚姻した夫(以下、「後夫」)について「婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」を適用すると、前夫との離別後100日を経過せずに後夫と婚姻関係になることにより、「前夫の父性推定」と「後夫の父性推定」が重複し、立法趣旨である「父性の推定の重複の回避」が奏功しないこととなる。これを鑑み、2015年12月16日、最高裁判所大法廷は、再婚禁止期間の内、100日を超える部分について憲法違反であるとの判決を下した(平成25(オ)1079)。2016年6月7日、最高裁判決を受け、再婚禁止期間を6箇月から100日に短縮し、さらに重複が推定されない場合(①前婚の解消時に妊娠していない場合-制限の意味がない、②前婚解消後出産した場合-「前夫の父性推定」が確定する)には即時に再婚可能とした改正が行われ、同日施行された。

参照条文

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判例

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本節は憲法解釈の変遷として記載する。

  1. 損害賠償(最高裁判決平成7年12月5日 判時1563.81 「平成7年判決」)民法733条,国家賠償法1条1項,憲法14条1項
    1. 再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条は憲法14条1項に違反するか
      民法733条の元来の立法趣旨が、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される以上、合理的な根拠に基づいて各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではない。
    2. 再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条を改廃しない国会ないし国会議員の行為と国家賠償責任の有無
      再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条を改廃しない国会ないし国会議員の行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。
  2. 損害賠償請求事件(最高裁大法廷判決平成27年12月16日 「平成27年判決」)憲法14条1項,憲法24条,民法733条,民法772条,国家賠償法1条1項
    1. 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
      民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は憲法14条1項、24条2項に違反しない。
    2. 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
      民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は,平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていた。
    3. 立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合
      法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがある。
    4. 国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
      平成20年当時において国会が民法733条1項の規定を改廃する立法措置をとらなかったことは,
      1. 同項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分が合理性を欠くに至ったのが昭和22年民法改正後の医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等によるものであり,
      2. 平成7年には国会が同条を改廃しなかったことにつき直ちにその立法不作為が違法となる例外的な場合に当たると解する余地のないことは明らかであるとの最高裁判所第三小法廷の判断が示され,
      3. その後も上記部分について違憲の問題が生ずるとの司法判断がされてこなかった
      など判示の事情の下では,上記部分が違憲であることが国会にとって明白であったということは困難であり,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

参考

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明治民法において、本条には以下の規定があった。

  1. 子ハ父ノ家ニ入ル
  2. 父ノ知レサル子ハ母ノ家ニ入ル
  3. 父母共ニ知レサル子ハ一家ヲ創立ス
    • 「家」;戸籍

脚注

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  1. ^ 民法等の一部を改正する法律について(法務省)

前条:
民法第732条
(重婚の禁止)
民法
第4編 親族

第2章 婚姻

第1節 婚姻の成立
次条:
民法第734条
(近親者間の婚姻の禁止)
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