「竹取物語 かぐや姫のおひたち」の版間の差分
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たいそう小さいので、籠に入れて育てる。 |
たいそう小さいので、籠に入れて育てる。 |
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# <span id="1_1">今は昔 |
# <span id="1_1"></span>今は昔 |
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#: 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。 |
#: 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。 |
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# <span id="1_2">[[wikt:けり|けり]] |
# <span id="1_2"></span>[[wikt:けり|けり]] |
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#: 過去の助動詞。助動詞「[[wikt:き|き]]」との違いの一つは、「き」が直接経験し記憶にある過去の意味をあらわすのに対し、「けり」は人から伝え聞いたことの回想をあらわすことである。 |
#: 過去の助動詞。助動詞「[[wikt:き|き]]」との違いの一つは、「き」が直接経験し記憶にある過去の意味をあらわすのに対し、「けり」は人から伝え聞いたことの回想をあらわすことである。 |
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# <span id="1_3">[[wikt:つつ|つつ]] |
# <span id="1_3"></span>[[wikt:つつ|つつ]] |
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#: 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。 |
#: 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。 |
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# <span id="1_4">[[wikt:をば|をば]] |
# <span id="1_4"></span>[[wikt:をば|をば]] |
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#: 格助詞「を」に係助詞「は」が付き、「は」が連濁を起こしたもの。「を」を強調する。係助詞「は」の結びで文末の「けり」が連体形の「ける」になっている。 |
#: 格助詞「を」に係助詞「は」が付き、「は」が連濁を起こしたもの。「を」を強調する。係助詞「は」の結びで文末の「けり」が連体形の「ける」になっている。 |
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# <span id="1_5">讃岐造麿(さぬきのみやつこまろ) |
# <span id="1_5"></span>讃岐造麿(さぬきのみやつこまろ) |
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#: 竹取の翁の名前である。讃岐氏は朝廷に竹細工を献上していたとされる。 |
#: 竹取の翁の名前である。讃岐氏は朝廷に竹細工を献上していたとされる。 |
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# <span id="1_6">[[wikt:なむ|なむ]] |
# <span id="1_6"></span>[[wikt:なむ|なむ]] |
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#: 係助詞。係り結びで文末「ける」は連体形で結ばれている。 |
#: 係助詞。係り結びで文末「ける」は連体形で結ばれている。 |
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# <span id="1_7">[[wikt:うつくし|美しう]] |
# <span id="1_7"></span>[[wikt:うつくし|美しう]] |
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#: 形容詞の連用形「―しく」「―く」が助詞「[[wikt:く|く]]」「[[wikt:しく|しく]]」や他の用言に続くときはウ音便になる。 |
#: 形容詞の連用形「―しく」「―く」が助詞「[[wikt:く|く]]」「[[wikt:しく|しく]]」や他の用言に続くときはウ音便になる。 |
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# <span id="1_8">[[wikt:にて|にて]] |
# <span id="1_8"></span>[[wikt:にて|にて]] |
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#: 理由や原因をあらわす接続助詞。 |
#: 理由や原因をあらわす接続助詞。 |
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# <span id="1_9">[[wikt:なめり|なめり]] |
# <span id="1_9"></span>[[wikt:なめり|なめり]] |
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#: 断定の助動詞「[[wikt:なり|なり]]」の連体形「なる」に推量の助動詞「[[wikt:めり|めり]]」が付いた「なるめり」の撥音便形「なんめり」の「ん」が表記されないもの。古くは「ん」の文字は用いられなかった。 |
#: 断定の助動詞「[[wikt:なり|なり]]」の連体形「なる」に推量の助動詞「[[wikt:めり|めり]]」が付いた「なるめり」の撥音便形「なんめり」の「ん」が表記されないもの。古くは「ん」の文字は用いられなかった。 |
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# <span id="1_10">[[wikt:ば|ば]] |
# <span id="1_10"></span>[[wikt:ば|ば]] |
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#: 順接の接続助詞。ここでは、前の語「幼けれ」は已然形であるので確定条件である。 |
#: 順接の接続助詞。ここでは、前の語「幼けれ」は已然形であるので確定条件である。 |
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腹立たしいことも気が晴れた。 |
腹立たしいことも気が晴れた。 |
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# <span id="2_1">[[wikt:よ|よ]] |
# <span id="2_1"></span>[[wikt:よ|よ]] |
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#: 竹の節と節の間の空洞のこと。 |
#: 竹の節と節の間の空洞のこと。 |
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# <span id="2_2">[[wikt:かくて|かくて]] |
# <span id="2_2"></span>[[wikt:かくて|かくて]] |
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#: このようにして、の意。 |
#: このようにして、の意。 |
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# <span id="2_3">[[wikt:ほどに|ほどに]] |
# <span id="2_3"></span>[[wikt:ほどに|ほどに]] |
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#: 理由や原因をあらわす。 |
#: 理由や原因をあらわす。 |
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# <span id="2_4">よき程 |
# <span id="2_4"></span>よき程 |
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#: かぐや姫は、三か月で十二、三歳のように育ち、成人した。 |
#: かぐや姫は、三か月で十二、三歳のように育ち、成人した。 |
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# <span id="2_5">[[wikt:かみあげ|髪上げ]] |
# <span id="2_5"></span>[[wikt:かみあげ|髪上げ]] |
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#: 平安時代、女性は成人(十二、三歳ごろ)すると、髪を結い上げた。これを「髪上げ」という。 |
#: 平安時代、女性は成人(十二、三歳ごろ)すると、髪を結い上げた。これを「髪上げ」という。 |
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# <span id="2_6">[[wikt:もぎ|裳着]] |
# <span id="2_6"></span>[[wikt:もぎ|裳着]] |
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#: 「[[wikt:も|裳]]」は女性が腰から下にまとう衣。女性が成人すると、髪上げと同時に、裳着の式が行われた。 |
#: 「[[wikt:も|裳]]」は女性が腰から下にまとう衣。女性が成人すると、髪上げと同時に、裳着の式が行われた。 |
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# <span id="2_7">世になし |
# <span id="2_7"></span>世になし |
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#: 世の中に比類がない、の意。 |
#: 世の中に比類がない、の意。 |
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108 行 | 108 行 | ||
男も女も分け隔てなく呼び集めて、たいそう盛大に楽しんだ。 |
男も女も分け隔てなく呼び集めて、たいそう盛大に楽しんだ。 |
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# <span id="3_1">[[wikt:ひさし|久しく]] |
# <span id="3_1"></span>[[wikt:ひさし|久しく]] |
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#: 時間の経過が長い、の意。 |
#: 時間の経過が長い、の意。 |
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# <span id="3_2">勢猛 |
# <span id="3_2"></span>勢猛 |
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#: 大きな財力や権力がある様。 |
#: 大きな財力や権力がある様。 |
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# <span id="3_3">なよ竹 |
# <span id="3_3"></span>なよ竹 |
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#: ほそくしなやかな竹。しなやかな女性に対しても用いる。 |
#: ほそくしなやかな竹。しなやかな女性に対しても用いる。 |
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# <span id="3_4">[[wikt:あそぶ|遊ぶ]] |
# <span id="3_4"></span>[[wikt:あそぶ|遊ぶ]] |
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#: 歌舞や管弦をして楽しむ。 |
#: 歌舞や管弦をして楽しむ。 |
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2018年4月7日 (土) 16:43時点における版
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かぐや姫のおひたち
1今は昔、竹取の |
今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた。
野山に分け入って竹をとっては、様々なことに使っていた。
名をさぬきのみやつこまろと言った。
その竹の中に、根元が光るものが一本あった。
不思議がって近づいて見ると、竹の筒の中が光っていた。
それを見ると、三寸ほどの人がたいそうかわいらしく座っていた。
翁が言うことは、 |
- 今は昔
- 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。
- けり
- 過去の助動詞。助動詞「き」との違いの一つは、「き」が直接経験し記憶にある過去の意味をあらわすのに対し、「けり」は人から伝え聞いたことの回想をあらわすことである。
- つつ
- 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。
- をば
- 格助詞「を」に係助詞「は」が付き、「は」が連濁を起こしたもの。「を」を強調する。係助詞「は」の結びで文末の「けり」が連体形の「ける」になっている。
- 讃岐造麿(さぬきのみやつこまろ)
- 竹取の翁の名前である。讃岐氏は朝廷に竹細工を献上していたとされる。
- なむ
- 係助詞。係り結びで文末「ける」は連体形で結ばれている。
- 美しう
- にて
- 理由や原因をあらわす接続助詞。
- なめり
- ば
- 順接の接続助詞。ここでは、前の語「幼けれ」は已然形であるので確定条件である。
竹取の |
竹取の翁はこの子を見つけて以後に、竹を取ると、節を隔てて空洞(よ)ごとに金が入っている竹を見つけることが重なった。 このようにして、翁はだんだん豊かになっていく。 この子を育てると、すくすくと大きくなっていく。 三か月ほどたった頃に、成人したので、髪上げなどをあれこれ手配して、髪上げし裳着を行った。 帳台の中からも出さず、心をこめて大切に育てる。 この子の顔だちの美しいことは世に類がなく、家の中は暗いところなど無いほど光に満ち溢れていた。 翁は気分が悪く苦しいときでも、この子を見ると苦しいこともなくなった。 腹立たしいことも気が晴れた。 |
- よ
- 竹の節と節の間の空洞のこと。
- かくて
- このようにして、の意。
- ほどに
- 理由や原因をあらわす。
- よき程
- かぐや姫は、三か月で十二、三歳のように育ち、成人した。
- 髪上げ
- 平安時代、女性は成人(十二、三歳ごろ)すると、髪を結い上げた。これを「髪上げ」という。
- 裳着
- 「裳」は女性が腰から下にまとう衣。女性が成人すると、髪上げと同時に、裳着の式が行われた。
- 世になし
- 世の中に比類がない、の意。
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翁は竹を取ることが長くなった。 財力の大きい者になった。 この子の背丈がたいそう大きくなったので、三室戸斎部秋田を呼んで名前をつけさせた。 秋田は、なよ竹のかぐや姫、と名づけた。 この三日間は酒盛りをして楽しむ。 管弦や歌舞などありとあらゆる遊びをした。 男も女も分け隔てなく呼び集めて、たいそう盛大に楽しんだ。 |
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