「線型代数学/ベクトル」の版間の差分

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R^3変換起草
編集の要約なし
12 行 12 行
の事である。n次元ベクトルを総じて''ベクトル''という。
の事である。n次元ベクトルを総じて''ベクトル''という。
<math>a_1,a_2,,,a_n</math>は、ベクトル'''a'''の''要素''または''成分''(element)と呼ばれていて、成分がすべて実数のベクトルを特に''実ベクトル''と言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に''複素ベクトル''と言う。また、成分が全て0のベクトルを''零ベクトル''といい、'''o'''と書く。
<math>a_1,a_2,,,a_n</math>は、ベクトル'''a'''の''要素''または''成分''(element)と呼ばれていて、成分がすべて実数のベクトルを特に''実ベクトル''と言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に''複素ベクトル''と言う。また、成分が全て0のベクトルを''零ベクトル''といい、'''o'''と書く。



二次元、三次元実ベクトルは、二次元空間<math>(R^2)</math>、三次元空間<math>(R^3)</math>内の、大きさと方向を持った量を表すものと見ることもできる。これは空間の図の中に矢印を書いて表すこともあり、このベクトルを特に''空間ベクトル''と言う。原点を起点とする空間ベクトルの行き先の点は、このベクトルによって一意に表すことができる。これをこの点の''位置ベクトル''という。
二次元、三次元実ベクトルは、二次元空間<math>(R^2)</math>、三次元空間<math>(R^3)</math>内の、大きさと方向を持った量を表すものと見ることもできる。これは空間の図の中に矢印を書いて表すこともあり、このベクトルを特に''空間ベクトル''と言う。原点を起点とする空間ベクトルの行き先の点は、このベクトルによって一意に表すことができる。これをこの点の''位置ベクトル''という。

===相等関係===
次元の同じ2つのベクトルがあるとき、この2つのベクトルが同じであるということを、すべての成分が同じであることと定義する。すなわち、
'''a'''='''b'''⇔a_i=b_i(∀i∈{1,2,...,n})


== ノルム ==
== ノルム ==
113 行 116 行


とする。
とする。

===相等関係===

'''a'''='''b'''
⇔a_i=b_i(∀i∈{1,2,...,n})


=== 和・差 ===
=== 和・差 ===
185 行 183 行
内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。
内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。


*'''a'''と'''b'''が直交する⇔('''a''','''b''')=0<ref>なす角について述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。</ref>
*'''a'''と'''b'''が直交する⇔('''a''','''b''')=0
*c('''a''','''b''')=(c'''a''','''b''')=('''a''',c'''b''')
*c('''a''','''b''')=(c'''a''','''b''')=('''a''',c'''b''')
*('''a''','''b'''+'''c''')=('''a''','''b''')+('''a''','''c''')
*('''a''','''b'''+'''c''')=('''a''','''b''')+('''a''','''c''')
192 行 190 行
*||'''a'''||+||'''b'''||≧||'''a'''+'''b'''||(三角不等式)
*||'''a'''||+||'''b'''||≧||'''a'''+'''b'''||(三角不等式)
*|('''a''','''b''')|≦||'''a'''||||'''b'''||(シュワルツの不等式)
*|('''a''','''b''')|≦||'''a'''||||'''b'''||(シュワルツの不等式)

</references>


'''演習'''
'''演習'''
219 行 219 行
以後、特に空間ベクトルについて議論する。
以後、特に空間ベクトルについて議論する。


一般の直線を、平面ベクトルの式で表うなる。
まずは、二次元空間上の直線を、助変数を用いて現すことを考える。

*'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>0</sub>           (4.1)


<math>\mathbf{x}=
<math>\mathbf{x}=
227 行 225 行
x\\
x\\
y\\
y\\
\end{pmatrix}</math>
\end{pmatrix},
\mathbf{a}=

<math>\mathbf{a}=
\begin{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a\\
a\\
b\\
b\\
\end{pmatrix}</math>
\end{pmatrix},
\mathbf{x}_0=

<math>\mathbf{x}_0=
\begin{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_0\\
x_0\\
y_0\\
x_0\\
\end{pmatrix}</math>
\end{pmatrix}</math>


とすると、
とすると、一般の直線は下の式で表される。


*'''x'''='''a'''t+'''x'''<sub>0</sub>

成分を用いて書けば、
<math>
<math>
\begin{pmatrix}
\begin{pmatrix}
257 行 256 行
y_0\\
y_0\\
\end{pmatrix}</math>
\end{pmatrix}</math>
である。
これをよく見てみると、うえで定義したベクトルの演算から、
成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。
<math>
x=at+x_0


上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。
y=bt+y_0
もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、'''a'''はノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。
</math>
という構造が見えてくる。これは、単に直線の[[高等学校数学C 式と曲線|媒介変数表示]]である。式①を''助変数表示''または、''ベクトル表示''と言う。勿論助変数表示の仕方は、一つではない。しかし、一般に'''a'''はノルム1のものを選ぶと便利な事が多い。三次元においても同様である。


'''例題'''
'''例題'''
321 行 318 行


===空間内の直線===
===空間内の直線===
平面内の直線は

:<math>ax+by+c=0</math>
グラフを描いてみれば分かるとおり、空間内の曲線は一本の式では表すことができない。
という式で表された。しかし、空間において
一本の式で表せるのは、曲面だけであるである。曲線は、二曲面の交線として、表される。
:<math>ax+by+cz+d=0</math>
直線は特に、二平面の交線である。平面の式は、平面内の直線と同じく、一次方程式で表される。
という式の表す図形は平面である。直線は2つの平行でない平面の共通部分として表される。式で書けば、
つまり、空間内の一般の直線は、次のように表される。
:<math>\left\{ \begin{matrix} a_1x+b_1y+c_1z=d_1 \\ a_2x+b_2y+c_2z=d_2 \end{matrix}\right.</math>

となる。この式が表す直線をベクトル表示することを考えよう。連立方程式を解く要領で
<math>\left\{ \begin{matrix} a_1x+b_1y+c_1z=d_1 \\ a_2x+b_2y+c_2z=d_2 \end{matrix}\right.</math>
:<math>\left\{\begin{matrix} y=\alpha_1x+x_1 \\ z=\alpha_2x+x_2 \end{matrix}\right.</math>

(但し,<math>\alpha_1,\alpha_2,x_1,x_2</math>は定数)
方法論的にはxにtを代入し、y,zの値を求める。
と書けることはすぐわかる。この式は、形式的にはxをtと置き換えることで、下のように書ける。

<math>\left\{\begin{matrix} y=A_1t+x_1 \\ z=A_2t+x_2 \end{matrix}\right.</math>
:<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_1</math>
これが空間内の直線の助変数表示である。
(但し,A<sub>1</sub>,A<sub>2</sub>,x<sub>1</sub>,x<sub>2</sub>は定数)

と書けることは自明である。この式は、下の形にできる

<math>\mathbf{x}=\mathbf{a}t+\mathbf{x}_1</math>

と書ける。これこそが、空間内の直線の助変数表字である。驚くべきことに式が増えたのにも関わらず平面内と同じく、
助変数表字では、式は一本である。


'''例題'''
'''例題'''
345 行 335 行
<math>\left\{ \begin{matrix} x+2y+3z=4 \\ 5x+6y+7z=8 \end{matrix}\right.</math>
<math>\left\{ \begin{matrix} x+2y+3z=4 \\ 5x+6y+7z=8 \end{matrix}\right.</math>


を助変数表にせよ。
を助変数表にせよ。


:x=tとすると、
:x=tとすると、
386 行 376 行
===空間内の平面===
===空間内の平面===


前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。
前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。今度は2つの助変数s,tを導入することで、同様にして
:<math>\mathbf{x}=

方法論的には今度は変数がtだけでは足りないので、もう一つsを代入する。x=t,y=sである。すると、

<math>z=-{a\over c}t-{b\over c}s+{d\over c}</math>

とやって、下の形へ持っていくことになる。

そして、一般に

<math>\mathbf{x}=
\mathbf{a}t+
\mathbf{a}t+
\mathbf{b}s+
\mathbf{b}s+
\mathbf{c}</math>
\mathbf{c}</math>
と表せる。これを平面の助変数表示とう。

平面の助変数表示とう。


'''例題'''
'''例題'''


*2a+b+3c=5を助変数表にせよ。
*2a+b+3c=5を助変数表にせよ。


:a=t,b=sとすると、
:a=t,b=sとすると、
432 行 412 行
'''演習'''
'''演習'''


1.2x-y+3z=1を助変数表にせよ
1.2x-y+3z=1を助変数表にせよ


2.
2.
459 行 439 行


===まとめ===
===まとめ===

右の図は、読者の理解を助けるであろう。


1.平面上の直線のベクトル表示
1.平面上の直線のベクトル表示
482 行 460 行
:t<sub>1</sub>'''p'''+t<sub>2</sub>'''q''', t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>≧0
:t<sub>1</sub>'''p'''+t<sub>2</sub>'''q''', t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>≧0


:の形で表される。これを証明せよ
:の形で表される。これを証明せよ


2.
2.
492 行 470 行
:t<sub>1</sub>'''x'''<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>'''x'''<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>'''x'''<sub>3</sub>, t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>,t<sub>3</sub>≧0
:t<sub>1</sub>'''x'''<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>'''x'''<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>'''x'''<sub>3</sub>, t<sub>1</sub>+t<sub>2</sub>+t<sub>3</sub>=1, t<sub>1</sub>,t<sub>2</sub>,t<sub>3</sub>≧0


と表される。これを証明せよ
と表される。これを証明せよ


==法線ベクトル==
==法線ベクトル==

2009年1月20日 (火) 08:13時点における版

複素数の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。

ベクトル

n次元ベクトル(vector)とは(n ∈ N)、n個の複素数の組

の事である。n次元ベクトルを総じてベクトルという。 は、ベクトルa要素または成分(element)と呼ばれていて、成分がすべて実数のベクトルを特に実ベクトルと言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に複素ベクトルと言う。また、成分が全て0のベクトルを零ベクトルといい、oと書く。

二次元、三次元実ベクトルは、二次元空間、三次元空間内の、大きさと方向を持った量を表すものと見ることもできる。これは空間の図の中に矢印を書いて表すこともあり、このベクトルを特に空間ベクトルと言う。原点を起点とする空間ベクトルの行き先の点は、このベクトルによって一意に表すことができる。これをこの点の位置ベクトルという。

相等関係

次元の同じ2つのベクトルがあるとき、この2つのベクトルが同じであるということを、すべての成分が同じであることと定義する。すなわち、 a=b⇔a_i=b_i(∀i∈{1,2,...,n})

ノルム

ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、

と定義される。これをaのノルムと言う。

演習

次のベクトルのノルムを求めよ

ベクトルの演算

一般に2つのベクトルの間には、和、差、内積が定義される。 それぞれは、成分の個数が同じ時だけ次のように定義される。

以下では、

とする。

和・差

abの和という。

ベクトルの和

abの差という。平面、空間ベクトルの場合は図のようになる。 和差に関して、次の性質が成り立つ。

  • a+b=b+a
  • (a+b)+c=a+(b+c)
  • a+o=a

証明は、簡単なので読者に任せたい。

定数倍

ベクトルの定数倍

を、ベクトルaのk倍と言う。
次の諸性質の証明は、読者の演習問題としよう。

  • c(a+b)=ca+cb
  • (c+d)a=ca+da
  • (cd)a=c(da)

演習

空間ベクトルに関して、次のことを示せ。

1.二点PQの位置ベクトルを、a,bとすると、PQの中点の位置ベクトルは

2.三角形の頂点の位置ベクトルをそれぞれa,b,cとすると、その三角形の重心の位置ベクトルは、

内積

ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

ab内積という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • abが直交する⇔(a,b)=0[1]
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)

</references>

演習

空間ベクトル

とのなす角がであり、かつ

とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

助変数表示

平面上の直線

以後、特に空間ベクトルについて議論する。

まずは、二次元空間上の直線を、助変数を用いて現すことを考える。

とすると、一般の直線は下の式で表される。

  • x=at+x0

成分を用いて書けば、 である。 成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。

上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。 もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、aはノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。

例題

  • 3x+2y=5

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
よって、

演習

ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ

1.6x-3y=9.5

2.x=a

3.

4.

空間内の直線

平面内の直線は

という式で表された。しかし、空間において

という式の表す図形は平面である。直線は2つの平行でない平面の共通部分として表される。式で書けば、

となる。この式が表す直線をベクトル表示することを考えよう。連立方程式を解く要領で

(但し,は定数) と書けることはすぐわかる。この式は、形式的にはxをtと置き換えることで、下のように書ける。

これが空間内の直線の助変数表示である。

例題

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
2y+3z=-t+4
6y+7z=-5t+8

これを解いて、

よって、

演習

1.

を助変数表示にせよ

空間内の平面

前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。今度は2つの助変数s,tを導入することで、同様にして

と表せる。これを平面の助変数表示という。

例題

  • 2a+b+3c=5を助変数表示にせよ。
a=t,b=sとすると、
3c=5-2t-s⇔
よって、

演習

1.2x-y+3z=1を助変数表示にせよ

2.

を、直交座標表示で表せ。

まとめ

1.平面上の直線のベクトル表示

2.空間内の直線のベクトル表示

3.空間内の平面のベクトル表示

演習

1.

二点P,Qの位置ベクトルをp,qとすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
t1p+t2q, t1+t2=1, t1,t2≧0
の形で表される。これを証明せよ。

2.

三点の位置ベクトルをx1,x2,x3とすると、
この三点が構成する三角形内の任意の点は、
t1x1+t2x2+t3x3, t1+t2+t3=1, t1,t2,t3≧0

と表される。これを証明せよ。

法線ベクトル

さて、平面上の平行二直線ax+by=c,ax+by=0は、

 とすれば、

           (5.1)

           (5.1)'

なので、aと直線(5.1)'は直交し、ゆえに直線(5.1)と直交する。このときaを直線(5.1)の法線ベクトルと言う。


 Oでない点A,Xがある。いま、半直線OAに向かって線分OXから垂線を引く。交点をX'とする。A,X,X'の位置ベクトルをそれぞれ、a,x,x'とするとき、x'xaへの正射影と言う。

例5.1

点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。

l:x=at+x1       (5.3)

x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル

と定義して、||x0-x'0||を求めよう。

(5.3)について、x=x'0を代入し、変形すると、

       (5.4)

ここは躓きやすいところなので解説を加える。aとx0-x'0の交角をθとする。

        (5.5)

(5.5)右辺の分母は、aの長さ、分子は、x0-x1aへの正射影(x'0-x1)の長さである。すると、(5.4)右辺第一項はx'0-x1となる。x0x'0-x1と,x1との和であることは自明の理である。

ゆえに求める最短距離||x0-x'0||は、

と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。


演習

1.例5.1で||x0-x'0||を実際に計算せよ。

2.例5.1でl:(b,x)=cとして||x0-x'0||を求めよ。

3.

空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
F:ax+by+cz=d
を平行移動し、原点を通る平面
F0:ax+by+cz=0
 とすれば、
F:(a,x)=d
F0:(a,x)=0
であるから、aはF0故にFと垂直である。この時aをF0の法線ベクトルと言う。
さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
とするとき、||x0-x'0||を求めよ。

4.

平面Fの法線ベクトルaと平面F'の法線ベクトルa'の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
F:x+2y+2z=3
F':3x+3y=1
の交角を求めよ。

線型変換

単位ベクトル

平面上で定義される、次の二ベクトルを、R2系に対する単位ベクトルと言う。

, 

空間内の単位ベクトルも同様に定義される。やはり、次の三ベクトルをR3系に対する単位ベクトルと言う

,  , 

R2の線型変換

行列とは、4個の実数を正方形に並べた表、

      (6.1)

のことである。同時に行列

との掛け算を

対してベクトル

との掛け算は、

と、定義する。さて、ベクトルとの積は、位置ベクトルxの点Pが、行列Aをかけることによって 位置ベクトルx'の点P'に変換されたと、見ることができる。

例えば、

は、点Pを、x軸に関して線対称な点P'への変換である。これをx軸に関する折り返しと言う。

 次に、行列Aによって点Pを変換したあと、さらに行列Bで変換することよって点Pを点P''(位置ベクトルx'')に移そう。

   

よって、x=B(Ax)=(BA)x

行列A,B,C,ベクトルx,y,数cに関して次の性質が成り立つ。

A(BC)=(AB)C

     (6.2)

特に、(6.2)は重要で、これを行列Aによって引き起こされるR2の変換TA:x→Ax(「TAxのAxへの変換」と言う意味)の線型性と言う。一般にR2変換Tが、次の性質を満たすとき、TをR2の線型変換という

ここで、式(6.2)から、次の定理を導く事が出来る。


定理(6.1)

 Tが線型変換⇔あるAに対してTx=Ax


(証明)

      とする。

任意の

Tは線型変換なので、

  

とすれば、

Tx=Ax                        ♯

Aによって引き起こされる変換をTAと書くこともある。

全てのベクトルをoに移す変換に対応する行列を特にOと書く。

全ての点を反時計回りにα回転させる変換は線型変換であり、対応する行列は

である。


演習

1.原点に対する対象変換は線型変換である。この変換に対応する行列を求めよ

2.TBTA=TBAを示せ。

3.

 Txxaへの正射影とする。この時Tを射影子と言う。射影子は線型変換である。この時

   とすると、Tに対応する行列を求めよ

4.

 (a,b)=0,a,bo

 S:aへの射影子,  T:bへの射影子

 とする。この時次の三つを証明せよ。

 (1)T^2=S (2)TS=ST=O (3)任意のxに対して、Tx+Sx=x

R3の線型変換

前部で定義した行列の概念を広げよう。すなわち、9個の実数の表

も行列と言う事にして、前部で定義した行列を二次の、今定義した行列を三次の行列といって区別することにする。

ベクトルとの積、行列同士の積も同様に定義される。したがって、

に対しては、 が、

  1. ^ なす角について述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。