「線型代数学/計量ベクトル空間」の版間の差分

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シュワルツの不等式とかの証明
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注)そのようなベクトルはただひとつではない。
注)そのようなベクトルはただひとつではない。


==一般の線型空間でのノルム・内積==
==<math>\R,\C</math> 上の線型空間でのノルム・内積==
次に、上で書いたような数ベクトルのノルム・内積の概念をさらに拡張しよう。
次に、上で書いたような数ベクトルのノルム・内積の概念をさらに拡張しよう。
===定義===
===定義===
<math>\ V</math> を <math>\bold K</math>上の線型空間とする。
<math>\ V</math> を <math>\R </math> または <math>\C</math>上の線型空間とする。(以下、<math>\bold K</math> は一般の体ではなく、実数体 <math>\R </math>または複素数体 <math>\C</math>を指すことにする )


<math> \bold x,\bold y \in \ V </math> に対して、<math> \bold K </math> の元をかえすような演算<math> (\bold x, \bold y)</math>が次の'''(Ⅰ)'''~'''(Ⅳ)'''の性質をみたすとき、<math> (\bold x, \bold y)</math>を'''内積'''という。
<math> \bold x,\bold y \in \ V </math> に対して、<math> \bold K </math> の元をかえすような演算<math> (\bold x, \bold y)</math>が次の'''(Ⅰ)'''~'''(Ⅳ)'''の性質をみたすとき、<math> (\bold x, \bold y)</math>を'''内積'''という。
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:<math> 0 \leq ||a\bold x + b\bold y||^2 = (a\bold x + b\bold y,a\bold x + b\bold y) = |a|^2||\bold x||^2 + a\bar b(\bold x,\bold y) + \bar a b(\bold y,\bold x) + |b|^2||\bold y||^2 </math>
:<math> 0 \leq ||a\bold x + b\bold y||^2 = (a\bold x + b\bold y,a\bold x + b\bold y) = |a|^2||\bold x||^2 + a\bar b(\bold x,\bold y) + \bar a b(\bold y,\bold x) + |b|^2||\bold y||^2 </math>
ここで、<math>\ a = ||\bold y||^2 ,\ b = -(\bold x,\bold y)</math> とおけば、
ここで、<math>\ a = ||\bold y||^2 ,\ b = -(\bold x,\bold y)</math> とおけば、
:<math> 0 \leq ||\bold y ||^4 ||\bold x||^2 - ||\bold y||^2 \overline{(\bold x,\bold y)} (\bold x,\bold y) - ||\bold y||^2 (\bold x,\bold y)\overline{(\bold x,\bold y)} + |(\bold x,\bold y)|^2||\bold y||^2 = ||\bold y||^2(||\bold x||^2||\bold y||^2- |(\bold x,\bold y)|^2)</math>
:<math>\begin{align} 0 & \leq ||\bold y ||^4 ||\bold x||^2 - ||\bold y||^2 \overline{(\bold x,\bold y)} (\bold x,\bold y) - ||\bold y||^2 (\bold x,\bold y)\overline{(\bold x,\bold y)} + |(\bold x,\bold y)|^2||\bold y||^2 \\ &= ||\bold y||^2(||\bold x||^2||\bold y||^2- |(\bold x,\bold y)|^2)\\ \end{align}</math>


両辺を <math> ||\bold y||^2 </math> で割り、正の平方根をとれば、
両辺を <math> ||\bold y||^2 </math> で割り、正の平方根をとれば、
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逆にこれが成り立つとき、不等号は等号になる□
逆にこれが成り立つとき、不等号は等号になる□


(2)<math>||\bold x + \bold y||^2 = (\bold x + \bold y,\bold x + \bold y) = ||\bold x||^2 + (\bold x, \bold y) + (\bold y,\bold x) + ||\bold y||^2 \leq ||\bold x||^2 + 2|\bold x, \bold y|+ ||\bold y||^2 \leq ||\bold x||^2 + 2||\bold x|| ||\bold y|| + ||\bold y||^2 = (||\bold x + \bold y||)^2 </math>
(2)<math>\begin{align} ||\bold x + \bold y||^2 = (\bold x + \bold y,\bold x + \bold y) & = ||\bold x||^2 + (\bold x, \bold y) + (\bold y,\bold x) + ||\bold y||^2\\ & \leq ||\bold x||^2 + 2|(\bold x, \bold y)|+ ||\bold y||^2 \\
& \leq ||\bold x||^2 + 2||\bold x|| ||\bold y|| + ||\bold y||^2 \\&= (||\bold x + \bold y||)^2\\ \end{align}</math>


したがって、正の平方根をとれば <math>|| \bold x + \bold y || \leq || \bold x || + || \bold y || </math> となる。
したがって、正の平方根をとれば <math>|| \bold x + \bold y || \leq || \bold x || + || \bold y || </math> となる。
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==基底の直交化==
==基底の直交化==
==種々の特徴的な変換==
===随伴変換===
===ユニタリ変換と直交変換===
===エルミート変換と対称変換===
 
 

2009年6月26日 (金) 08:22時点における版

このページでは、2、3次元の数ベクトルの長さや内積を拡張し、一般の線型空間のベクトルについても、長さ(ノルム)や内積を定義する。

2、3次元の数ベクトルの場合は、高等学校数学B ベクトルを参照のこと。

数ベクトルのノルム・内積

ノルム

ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、

と定義される。これをaのノルムと言う。

演習

次のベクトルのノルムを求めよ

内積

ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

ab内積という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • (a,a)=||a||2
  • abが直交する⇔(a,b)=0[1]
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)
  1. ^ なす角について上で述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。

演習

空間ベクトル

とのなす角がであり、かつ

とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

上の線型空間でのノルム・内積

次に、上で書いたような数ベクトルのノルム・内積の概念をさらに拡張しよう。

定義

 を  または 上の線型空間とする。(以下、 は一般の体ではなく、実数体 または複素数体 を指すことにする )

に対して、 の元をかえすような演算が次の(Ⅰ)(Ⅳ)の性質をみたすとき、内積という。

(Ⅰ)
(Ⅱ)
の複素共役)
(Ⅲ)
(Ⅳ)
が成り立つのは、 のときに限る。

また、

で定義される量をxノルムという。

このように、内積が定義された線型空間を計量ベクトル空間計量線型空間)という。

1. のとき、

とすれば、これは内積になっている。

2. のとき、

とすれば、これは内積になっている。(Trについては行列概論を参照)

3.{上連続な関数} ,上連続な関数のとき、

とすれば、これは内積になっている。

三角不等式・シュワルツの不等式

ここで定義した内積・ノルムに関しても数ベクトルの場合と同様に三角不等式・シュワルツの不等式が成り立つ。

定理  に対して、次の(1),(2)の不等式が成り立つ。

(1)(シュワルツの不等式)

等号が成り立つのは、と書ける場合のみ。

(2)

等号が成り立つのは、実数 を用いて、 と書ける場合のみ。

(証明)(1) とすると

ここで、 とおけば、

両辺を  で割り、正の平方根をとれば、

  となる。

等号が成り立つのは、 すなわち、 となるときだから、 と書ける。

逆にこれが成り立つとき、不等号は等号になる□

(2)

したがって、正の平方根をとれば  となる。

1つ目の等号は が非負の実数となるときに成り立ち、2つ目の等号は  と書けるとき成り立つ。この2つの条件から、実数 を用いて、 と書けるときのみ等号が成立する□

基底の直交化

種々の特徴的な変換

随伴変換

ユニタリ変換と直交変換

エルミート変換と対称変換