「簿記/複式簿記の組織/複式簿記の基礎」の版間の差分
→取引の二重性: 2まで |
→取引の二重性: 4まで。 |
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129 行 | 129 行 | ||
もし、この際現金の支払に代えて、約束手形を振出したとすれば、一方に負債を減少し、他方に「手形債務」なる他の負債を同額増加する。すなわち |
もし、この際現金の支払に代えて、約束手形を振出したとすれば、一方に負債を減少し、他方に「手形債務」なる他の負債を同額増加する。すなわち |
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負債(買掛金)の減少 500.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> 負債(手形債務)の増加 500.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> |
負債(買掛金)の減少 500.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> 負債(手形債務)の増加 500.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> |
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* 3. 積立金¥10,000.<span style="text-decoration: underline; ">00</span>ヲ資本金ニ繰入ル。 |
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この取引は、一方に「積立金」なる資本を¥10,000.<span style="text-decoration: underline; ">00</span>減じ、他方に「資本金」なる他の資本を同額増加する。すなわち |
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資本(積立金)の減少 10,000.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> 資本(資本金)の増加 10,000.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> |
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* 4. 貸金ノ利息 50.00 ヲ現金ニテ受取ル。 |
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この取引は、一方に「現金」なる資産を¥50.<span style="text-decoration: underline; ">00</span>増加し、他方に「利息」なる利益¥50.<span style="text-decoration: underline; ">00</span>を増加し、したがって同額の資本増加を生ずる。すなわち |
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| 資産(現金)の増加 50.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> 利益 || (資本増加)の増加 50.<span style="text-decoration: underline; ">00</span> |
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| || (利息) |
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=== 仕訳 === |
=== 仕訳 === |
2012年1月2日 (月) 11:06時点における版
勘定理論
既に第一篇で述べたように、複式簿記には一定の原理からなる記帳法則がある。この原理は財産と資本との性質ならびに簿記の用語たる借方・貸方の何であるかを明らかにするもので、貸借の原理とも称せられ、勘定記入の法則とともに通常勘定理論と呼ばれている。勘定理論は実に複式簿記の基礎をなすものであって、簿記理論の最も重要な部分である。勘定理論についての諸学者の見解を勘定学説 Kontentheorien または簿記学説 Buchhaltungstheorien という。勘定学説をいかに分類するかについての定説はないが、普通にはこれを人的説または擬人説 Personification theory, personalistische Theorien と等式説 Equation theory または物的説 Materialistische Theorien ならびにその他の学説とに分類する。前者は記帳を全然形式的に行うか、または人格者間の貸借によって説明せんとするものであり、後者は財産および資本の増減を人格者間の貸借視せず、経済現象そのままのものとして説明する。さらに後者はその説明方法として簡単なる方程式を用いるところから、これを等式説または数学説とも呼ぶ。その他の学説としては現実学説や循環学説等を挙げ得る。これらのうち現在簿記学者の多数説は物的説であり、財産・資本なる二つの本質的に相異なる職能と作用とをもつ勘定系統を認めるいわゆる二勘定系統説である。しかもそのうち、次の方程式を基礎とするものである。 即ち
A - P = K
この方程式は普通に資本方程式と呼ばれ、したがってこの説を資本学説ともいう。以下この立場から説明を進める。ただし勘定理論のうち、財産と資本とがそれぞれいかなる性質を持つかについては、既に述べたから(第一篇第二章)、本章ではこれには触れない。
勘定口座の記入法
最初勘定は次のようにして行われた。
現金 | |||||
---|---|---|---|---|---|
日付 | 摘要 | 金額 | |||
4 | 1 | 手許在高 | 1,000 | 00 | |
〃 | 2 | 商品代支払 | - | 500 | 00 |
500 | 00 | ||||
〃 | 5 | 商品代受取 | + | 300 | 00 |
800 | 00 | ||||
〃 | 7 | 売掛金回収 | + | 250 | 00 |
1050 | 00 | ||||
〃 | 10 | 買掛金支払 | - | 700 | 00 |
350 | 00 |
(例)
- 4/1
- 本日現金手許在高¥1,000.00也。
- 4/2
- 商品ヲ買入レ、此代金¥500.00ヲ現金ニテ支払フ。
- 4/5
- 商品ヲ売渡シ、此代金¥300.00ヲ現金ニテ受取ル。
- 4/7
- 売掛金¥250.00ヲ現金ニテ受取ル。
- 4/10
- 買掛金¥700.00ヲ現金ニテ支払フ。
この形式を楷段式計算 Staffelrechnung または残高計算 Saidorechnung という。楷段式計算による表示形式は、各計算項目の現在高をいつでもただちに知り得るの長所を有する。しかし反面それでは価値変動の総額、即ち上例では現金の受入総額と支払総額とがいくらあったかを知ることができない。のみならず取引数が多いときには間違いを生じやすい。それゆえ以上の形式は次のように改められた。
現金 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | |||
4 | 1 | 手許在高 | 1,000 | 00 | ||
〃 | 2 | 商品代支払 | 500 | 00 | ||
〃 | 5 | 商品代受取 | 300 | 00 | ||
〃 | 7 | 売掛金回収 | 250 | 00 | ||
〃 | 10 | 買掛金支払 | 700 | 00 |
この形式によると、収入と支出とが区別して計算せられるから、その総額を知り得るとともに、両者の差引計算によって、容易に残高を求めることができ、そのうえ計算が単純になって間違いを起こすことも少ないのである。そしてこの形式の勘定で常に残高を示そうとすれば、残高欄を付設して次掲のようにする。
現金 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日付 | 摘要 | 収入 | 支出 | 残高 | ||||
4 | 1 | 手許在高 | 1,000 | 00 | 1,000 | 00 | ||
〃 | 2 | 商品代支払 | 500 | 00 | 500 | 00 | ||
〃 | 5 | 商品代受取 | 300 | 00 | 800 | 00 | ||
〃 | 7 | 売掛金回収 | 250 | 00 | 1,050 | 00 | ||
〃 | 10 | 買掛金支払 | 700 | 00 | 350 | 00 |
これを残高式の勘定と呼ぶことは前篇第二章で既に述べた。しかしこの形式では収支の金額欄が密接しているから、誤記を生じやすい。よって乙1の形式を次掲丙1のようになし、さらにこれを整理して紙面の不経済を避けるようにすると、丙2の形式になる。これを標準式と呼ぶことも既に述べたところである。
現金 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(借方) | (貸方) | ||||||||
日付 | 摘要 | 収入 | 日付 | 摘要 | 支出 | ||||
4 | 1 | 手許在高 | 1,000 | 00 | |||||
4 | 2 | 商品代支払 | 500 | 00 | |||||
〃 | 5 | 商品代受取 | 300 | 00 | |||||
〃 | 7 | 売掛金回収 | 250 | 00 | |||||
〃 | 10 | 買掛金支払 | 700 | 00 |
現金 | |||||||||
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(借方) | (貸方) | ||||||||
日付 | 摘要 | 収入 | 日付 | 摘要 | 支出 | ||||
4 | 1 | 手許在高 | 1,000 | 00 | 4 | 2 | 商品代 | 500 | 00 |
〃 | 5 | 商品代 | 300 | 00 | 〃 | 10 | 買掛金 | 700 | 00 |
〃 | 7 | 売掛金 | 250 | 00 |
現在複式簿記で記録計算のために用いられる勘定形式は、乙2および丙2の両型である。かくて一般的に次のように言うことができる。即ち、勘定は二面的計算であるから、各側には同じ種類の価値系列が示され、したがって上側では現金の収入と支出とが別々に示され、その合計額は加算によって容易に見出される。しかも両側の数字系列は増減なる反対の意味を有し、したがってそれは互いに差引関係にある。このように勘定では差引計算を全然行わないで、差し引くべき数字は、すべてこれを反対側に記入することが、その一大特色である。
貸借の意義
勘定口座の左方と右方とを表すために、簿記では借方・貸方なる語を用いる。この用語は簿記が発達せる当初、人名勘定即ち事業が他人との間に貸借関係を生じたとき、これら債権債務を記帳するため相手の人名を科目とした勘定に、この両語を用いたことに由来する。この際貸借は事業を主としないで、相手方即ち口座を主とするもので、借方は口座主が借主または債務者たることを意味し、彼が事業に債務を負った時に記入せられる側であり、貸方は口座主が貸主または債権者であるとの意味で、彼が事業に対して債権を得たときに記入せられる側である。このように人名勘定では、この両語は文字通りに解釈せられる。しかるに複式簿記が進展し、しかもこれら両語をそのまま受け継いでからは、その適用範囲は拡大されて、人名勘定以外の各種財産および資本構成部分の諸勘定に対しても用いられるようになったのであるが、ここに至ると、人名勘定では文字通りの意味を有したこれら両語も、他の勘定については本来の辞義通り解釈することがもはや不可能となり、単に口座の左右両側を示す符牒にすぎないものと解せられるに至った。されば、単なる符牒という点よりするならば、それは貸借の代わりに+-・増減・出入等とするも差し支えないわけである。
勘定記入法則
前に述べたように、すべて勘定では差引計算を行わないで、差し引くべき金額は反対側に加える。そして増加側の合計と減少側の合計とを比較して、残高を求める。ゆえに各勘定へは一方に増加が他方に減少が記入されるのである。その際資産Aに属する諸勘定では、計算統制上増加を左方即ち借方に、減少を右方即ち貸方に記入する。したがって反対の性質を有する負債と、負債類似の資本に属する諸勘定では、記入関係が反対になり、増加を右方または貸方に、減少を左方または借方に記入する。損益は既に述べたように、資本そのものであるから、資本Kと同一勘定としても差し支えないが、Kの記録を単純にし、業績を明らかにし、かつこれが管理を容易にするため、普通に別勘定として取り扱う。その際、利益は新たに増殖された資本にほかならないから、Kとまったく同一に増減を記入し、また損費は失われた資本であるから、Kとは反対に、したがって形式上Aと同様に増減を記入する。かくて、各勘定への記入関係は次のようになる。
(借) | 資産勘定 | (貸) | |
増加 | 減少 |
(借) | 負債勘定 | (貸) | |
減少 | 増加 |
(借) | 損費勘定 | (貸) | |
増加 | 減少 |
(借) | 資本勘定 | (貸) | |
減少 | 増加 |
(借) | 利益勘定 | (貸) | |
減少 | 増加 |
取引の二重性
すべて取引は次に示すように、財産や資本の価値に増加および減少なる同額の二面的変動を与えるもので、これを取引の二重性と称する。例えば
- 1. 商品ヲ買入レ、此代価¥1,000.00ヲ現金ニテ支払フ。
なる取引は、一方に「商品」なる資産を¥1,000.00増加せしめ、他方に「現金」なる他の資産を同額すなわち¥1,000.00減少せしめる。すなわち
資産(商品)の増加 1,000.00 資産(現金)の減少 1,000.00
もし、この際代金のうち¥500.00は小切手を振出して支払い、残額は掛借にしたとすれば、この取引は一方に「商品」なる資産を¥1,000.00増加せしめ、他方に「銀行預金」なる他の資産を¥500.00減少せしめ、なお「買掛金」なる負債を同額増加せしめる。すなわち
┌資産(銀行預金)の減少 | 500.00 | |
資産(商品)の増加 1,000.00 | ┤ | |
└負債(買掛金)の増加 | 500.00 |
- 2. 買掛金¥500.00ヲ現金ニテ支払フ。
この取引は、一方に「買掛金」なる負債を¥500.00減じ、他方に「現金」なる資産を同額減少せしめる。
負債(買掛金)の減少 500.00 資産(現金)の減少 500.00
もし、この際現金の支払に代えて、約束手形を振出したとすれば、一方に負債を減少し、他方に「手形債務」なる他の負債を同額増加する。すなわち
負債(買掛金)の減少 500.00 負債(手形債務)の増加 500.00
- 3. 積立金¥10,000.00ヲ資本金ニ繰入ル。
この取引は、一方に「積立金」なる資本を¥10,000.00減じ、他方に「資本金」なる他の資本を同額増加する。すなわち
資本(積立金)の減少 10,000.00 資本(資本金)の増加 10,000.00
- 4. 貸金ノ利息 50.00 ヲ現金ニテ受取ル。
この取引は、一方に「現金」なる資産を¥50.00増加し、他方に「利息」なる利益¥50.00を増加し、したがって同額の資本増加を生ずる。すなわち
資産(現金)の増加 50.00 利益 | (資本増加)の増加 50.00 |
(利息) |
仕訳
仕訳および転記の例示
貸借平均の理
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