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解析学基礎/フーリエ級数

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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ここでは、フーリエ級数と関数のフーリエ展開について扱う。フーリエ変換については解析学基礎/フーリエ変換を参照。

物理数学II フーリエ解析も参照。

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周期関数

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ある関数f(x)がT(>0)に関して全区間で

f(x+T)=f(x)

を満足するとき、f(x)を周期関数(periodical function)、Tをf(x)の周期(period)という。また、「f(x)は周期Tを持つ」という表現もする。

このとき、n∈ℤとして

f(x+nT)=f(x)

が成り立つ。

そのため、周期のうち最も基本的なものという意味で最小のTを基本周期(fundamental period)や最小周期(least period)とも呼ぶ。

周期関数は、幾何学的には「グラフが平行移動対称である」ような関数といえる。


基本周期Tを持つf(x)について、f(ax+b)の基本周期を求める。

g(x)=ax+bとすると、
f(ax+b)=f(g(x))=(g∘f)(x)・・・(*)である。
これが基本周期ψを持つとすると、
(f∘g)(x)=(f∘g)(x+ψ)が成り立つ。
(f∘g)(x+ψ)=f(g(x+ψ))=f(a(x+ψ)+b)=f(ax+aψ+b)なので、
(*)よりf(ax+b)=f(ax+b+aψ)・・・(^)が成り立つ。
ここでg(x)=Xとおくと(^)はf(X+aψ)=f(X)と書ける。
故にaψはf(x)の周期の一つであるが、
f(x)は周期Tを持つのでaψ=nTが成り立たなければならない。
よってaψ=nT⟺ψ=nTa
ここでψはf(ax+b)の基本周期なので、ψが最小の正数であるとき
ψ=T|a|である。

これは、「f(kx)のグラフはf(x)のグラフを1|k|倍に縮小したものである」という幾何的な性質に一致する。


周期関数として最も有名な関数は三角関数である。

sin⁡xは周期τを持つ。
cos⁡xは周期τを持つ
tan⁡x周期τ2を持つ。

周期関数のグラフは波形なので、周期関数を波形関数ともいう。


y=sin⁡x、y=cos⁡xのグラフは正弦波と呼ばれる美しい曲線を描く。正弦波からの歪(ひず)みが小さい波形関数は正弦波により近似されるが、歪みが著しいときは単一の正弦波では精度良く近似できない。そのため、振幅の異なる複数の正弦波で波形関数を近似することを考える。

近似式の次数を高くしてテイラー展開を導いたときと同様の考え方をすると、近似に用いる正弦波の数が増えるほど(近似に用いる正弦波の振幅が適当ならば)近似の精度が良くなり、∞個の正弦波を用いれば元の波形と一致するはずである。

そのため、周期関数は正弦関数の無限和に展開できる。

この事実を利用したのが、以下で扱うフーリエ展開である。

フーリエ展開

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周期関数は物理的には時間を変数とした関数である。

そのため、一般の周期Tを持つ周期関数のフーリエ展開を考えるとき、角周波数ωを導入すると便利である。

最も周波数の低い波(基本波)を表す正弦関数・余弦関数の周期はτなので、角周波数はω=τTと定義される。


無限級数S∞(x)=a02+∑n=1∞(ancos⁡nωx+bnsin⁡nωx)をフーリエ級数(Fourier series)といい、f(x)をフーリエ級数で表すことをフーリエ展開(Fourier expansion)という。


級数を決定する各係数a0,an,bnをフーリエ係数(Fourier coefficient)という。

a0を特に定数項(constant term)と呼ぶが、a0は電気的には時間に依存しない直流部を表す。そのため、DC componentという名称も用いられる。

a1,b1は基本波成分の最大値(注:maxx{sin⁡x}=maxx{cos⁡x}=1)なので、基本波項(fundamental term)と呼ばれる。

a2,b2は基本波の二倍の周波数成分の最大値なので、第二次高調波項(second harmonics)と呼ばれる。

以下、an,bnは同様に第n次高調波(n -th harmonics, hyper harmonics)と呼ばれる。


同じkという次数の周波数を持つ成分は三角関数の合成によりakcos⁡kωx+bksin⁡kωx=ak2+bk2sin⁡(kωx+arctan⁡akbk)=ak2+bk2cos⁡(kωx−arctan⁡bkak)と、単一の単振動の式で書ける。

故に、フーリエ級数は以下のように変形される。

a02+∑n=1∞(ancos⁡nωx+bnsin⁡nωx)=a02∑n=1∞Ansin⁡(nωx+θn)=a02+∑n=1∞Bncos⁡(nωx−ϕn)

(但しAn=Bn=an2+bn2,θn=arctan⁡anbn,ϕn=arctan⁡bnan)


フーリエ級数は三角関数の線型結合で与えられるので、基本波成分はフーリエ級数の張る線型空間の基底、則ちベクトルとみなせる。

一般に関数空間はベクトル空間の公理を満たすため、関数をベクトルと見做すことができる。詳しくは関数解析学で扱うが、先行して幾つかの概念を導入する。

周期Tを持つ関数f(x),g(x)の内積⟨f,g⟩は次のように定義される。

⟨f,g⟩=∫0Tf(x)g(x)dx

これは内積空間の公理を満たすので、内積と呼んで良い。

f(x)について自身との内積の正の平方根をとったものをf(x)のノルムという。

‖f‖=⟨f,f⟩=∫0T{f(x)}2dx

これはノルム空間の公理を満たすので(以下略)。


フーリエ級数の基本波成分sin⁡nωx,cos⁡nωxの内積を考える。

sin⁡nωx,cos⁡nωxの周期はτnωなので、

⟨sin⁡nωx,cos⁡nωx⟩=∫0τnωsin⁡nωxcos⁡nωxdx=12∫0τnωsin⁡(2nωx)dx=−14nω[−cos⁡(2nx)]0τnω=cos⁡0−cos⁡2τ4nω=0

よって、sin⁡nx,cos⁡nxは内積が0なので直交しているといってよい。

‖sin⁡nωx‖,‖cos⁡nωx‖を求める。

‖sin⁡nωx‖=∫0τnωsin2nωxdx=τ2ω
‖cos⁡nωx‖=∫0τnωcos2nωxdx=τ2ω

よって、sin⁡nωx,cos⁡nωxを正規化した2ωτsin⁡x,2ωτcos⁡xは正規直交基底である。


この事実を用いることで、フーリエ係数が元の関数に関する一周期の定積分で求まることがわかる。

展開前の関数及び展開後の級数をf(x)とおく。
定数項はf(x)の一周期の積分平均をとれば求まるので、a0=2T∫0Tf(x)dx
⟨f(x),cos⁡nωx⟩をとるとbnを含む成分が全て0となって消えるので、an=2T∫0Tf(x)cos⁡nωxdx
⟨f(x),sin⁡nωx⟩をとるとanを含む成分が全て0となって消えるので、bn=2T∫0Tf(x)sin⁡nωxdx

これらの式は普通に積分しても得られるが、計算が非常に煩雑になるため割愛する。

フーリエ展開の例

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偶関数をフーリエ展開するとき、奇関数であるsin⁡xが入ると偶関数ではなくなってしまうため、sin⁡nωxの係数であるbnは0であると容易に判断できる。

同様に、奇関数をフーリエ展開するときa0=an=0であると容易にわかる。

f(x+T2)=−f(x)を満たす周期関数をT2-奇対称関数という。

定義式からf(x+T2)+f(x)=0であり、左辺をフーリエ展開すると
a0+∑n=0∞[sin⁡(nωx+θn)+sin⁡{nω(x+T2)+θn}]=0
これがxに関する恒等式なので、
a0=0∧n:even.が成立の必要十分条件である。

よって、奇対称関数のフーリエ展開はa2n−1を含む項とb2n−1を含む項で示される。

同様に、f(x+T2)=f(x)を満たす周期関数をT2-偶対称関数といい、そのフーリエ変換はa2nを含む項とb2nを含む項で示される。

以上を踏まえ、実際の波形関数をフーリエ展開してみよう。


  • 問題
  • 以下の波形関数をフーリエ展開せよ
    1. 矩形(くけい)波f(x)={A(x∈[0,T2])−A(x∈[T2,T])
    2. 三角波f(x)={4ATx(x∈[0,T4])2A−4ATx(x∈[T4,3T4])4AT(x−T)(x∈[3T4,T])
    3. 鋸歯(きょし)波f(x)=ATx(x∈[0,T))
    4. 半波整流波f(x)={Asin⁡ωx(x∈[0,T2])0(x∈[T2,T])
    5. 平均値反転全波整流波f(x)=4AT2(x−T2)2(x∈[0,T))
  • 解答
    1. f(x)は奇関数であるが、f(x+T2)=f(x)を満たすのでT2-偶対称関数でもあり、a0=an=b2n=0。
      b2n−1=2T(∫0T2Asin⁡(2n−1)ωxdx+∫T2T(−A)sin⁡(2n−1)ωxdx)
      =−2A(2n−1)ωT([cos⁡(2n−1)ωx]0T2+[cos⁡(2n−1)ωx]TT2)
      =−2A(2n−1)τ(2cos⁡(2n−1)τ2−cos⁡(2n−1)τ−cos⁡0)
      =8A(2n−1)τ
      よってこの矩形波のフーリエ展開は以下である。
      f(x)=∑n=1∞8A(2n−1)τsin⁡(2n−1)ωx(=∑n:odd.8Anτsin⁡nωx)
    2. f(x)は奇関数であるが、f(x+T2)=−f(x)を満たすのでT2-奇対称関数でもあり、a0=an=b2n−1=0。
      b2n−1=2T∫0tf(t)sin⁡(2n−1)ωxdx
      =8T∫0T44ATxsin⁡(2n−1)ωxdx
      =32A(2n−1)2ω2T2[−(2n−1)ωxcos⁡(2n−1)ωx+sin⁡(2n−1)ωx]0T4
      =32A(−1)n(2n−1)2τ2
      よって、この三角波のフーリエ展開は以下である。
      f(x)=∑n=1∞(−1)n32A(2n−1)2τ2sin⁡(2n−1)ωx

    3. f(x)は周期延長すると奇関数とみることができなくなるので、an=0のみ成り立つ。
      f(x)は全区間に拡張しても特異点を持たないので、積分区間にTを含んでも通常の積分のように計算してよい。
      a0=2T∫0TATx=AT2[x2]0T=A
      bn=2T∫0TATxsin⁡nωxdx=2An2ω2T2[−nωxcos⁡nωx+sin⁡nωx]0T
      =2An2τ2⋅(−nτ)
      =−2Anτ
      よって、この鋸歯波のフーリエ展開は以下である。
      f(x)=A2−∑n=1∞2Anτsin⁡nωx

    4. a0=2T(∫0T2Asin⁡ωxdx+∫T2T0dx)=2ATω([−cos⁡ωx]0T2)=2Aτ
      an=2T(∫0T2Asin⁡ωxcos⁡nωxdx+∫T2T0cos⁡nωxdx)
      =2AT∫0T2{sin⁡(n+1)ωx−sin⁡(n−1)ωx}dx(∵積和の公式)
      =2Aτ([cos⁡(n+1)ωxn+1]T20+[cos⁡(n−1)ωxn−1]0T2)
      ={0(n:odd.)−4Aτ(n+1)(n−1)(n:even.)
      bn=2T(∫0T2Asin⁡ωxsin⁡nωxdx+∫T2T0sin⁡nωxdx)
      =AT∫0T2{cos⁡(n−1)ωx−cos⁡(n+1)ωx}dx(∵積和の公式)
      n≠1のとき
      bn=0
      b1=2AT∫0T21−cos⁡2ωx2dx
      =2AT∫0T2sin2ωxdx
      =A2T[2x−1ωsin⁡2ωx]0T2
      =A2
      よって、この半波整流波のフーリエ展開は以下である。
      f(x)=2Aτ+A2sin⁡ωx−∑n=1∞4Acos⁡2nωx(4n2−1)τ

    5. f(x)は偶関数なのでbn=0。
      a0=2T∫0T4AT2(x−T2)2dx
      =8AT3∫0T(x2−Tx+T24)dx
      =8AT3[x33−T2x2+T24x]0T
      8AT3⋅T312(7−6)
      =2A3
      an=2T∫0T4AT2(x−T2)2cos⁡nωxdx
      =8AT3∫0T(x2cos⁡nωx−Txcos⁡nωx+T24cos⁡nωx)dx
      =8An2ω2T3[{nω(x2−Tx+T24)−1nω}sin⁡nωx+(2x+1)cos⁡nωx]0T
      =8An2ω2T3⋅2T
      =16An2τ2
      よって、この平均値反転全波整流波のフーリエ展開は以下である。
      f(x)=A3+∑n=1∞16An2τ2cos⁡nωx

高校数学で三角関数の積和公式を習ったときは「何に使うのかわからん」と思った人もいるであろう。実は、このようにフーリエ係数(すなわち積分)の計算を簡略化するのに役立つのである。

なお、テイラー展開とは異なり、展開後の無限級数が元の関数に完全に一致するわけではない。

  • 不連続点近傍ではフーリエ級数が振動して元の関数に一致しない(ギブズ現象)
  • ディリクレ条件などの不満足によって元の関数と異なる挙動を示す
  • 一葉収束せず各点収束するので局所的に摺れる
  • 関数の定義域が二乗可積分である場合各点収束せず二乗平均収束するので摺れる

収束条件

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フーリエ級数の収束条件に関する議論は、それまでは非常に曖昧だった数学的概念を厳密に定義し直そう、という運動の契機となった。


ある区間毎に別々に定義された関数を区分的に定義された関数という。

次を満足する関数を区分的に連続な関数という。

不連続点が高々有限個
任意点の右側極限・左側極限ともに収束する(発散する点が存在しない)


区分的に定義された関数が任意点に於いて右微分・左微分ともに収束するとき、区分的に滑らかな関数という。

区分的に滑らかならば区分的に連続であり、逆は一般には成り立たない。


フーリエ級数の収束定理

f(x)が区分的に滑らかであるとき、f(x)に対応するn項フーリエ級数Sn(x)の極限は各点収束し、以下が成り立つ。

limn→∞(x)={f(x)(xが 連 続 点 で あ る と き)12{limt→x−f(t)+limu→x+f(u)}(xが 不 連 続 点 で あ る と き)
  • 証明

(執筆中)

複素フーリエ展開

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参考文献

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鳥居粛, 藤川英司, 伊藤泰郎『電気数学』森北出版 2003年