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遺伝学Ⅰ

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

遺伝学Ⅰ以降はは基礎遺伝学を修了した方向けの内容となっている。従って、先に基礎遺伝学を修了することを推奨する。

目次

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  • 第1章:メンデルの法則
  • 第2章:倍数性
  • 第3章:遺伝子座
  • 第4章:グリフィスの実験と形質転換
  • 修了試験

第1章:メンデルの法則

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メンデル

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 1853年オーストリア=ハンガリー帝国の都市ブリュンの修道士グレゴール・ヨハン・メンデルは、修道院の庭でエンドウを用いた交配実験を行った。この実験により、エンドウの花の色は紫か白であることがわかった。ここから、彼は遺伝子の存在に気付いた。そして、1856年にメンデルの法則が報告された。メンデルの法則は分離の法則・独立の法則・顕性の法則の3つから成る。 Gregor_Mendel_with_cross ↑グレゴール・ヨハン・メンデル

分離の法則

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 通常、生物では2個で1組の遺伝子を持つ。そして、父親と母親から1つずつ遺伝子を受け継ぐ。このことを分離の法則と呼ぶ。

独立の法則

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 遺伝子が分離の法則に則って分離するとき、互いに何の影響も及ぼさないとする法則が独立の法則である。

顕性の法則

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 異なる遺伝子が共存したとき、形質が現れやすい方を顕性という。また形質が現れにくい方を潜性と呼ぶ。この2種類の形質が遺伝子を受け継ぐさいに存在することを顕性の法則と呼ぶ。

形質

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 形質とは生物の持つ特徴のことである。特に遺伝によって伝えられる形質を遺伝形質という。基本的に、形質は遺伝形質のことを指す。

 形質で観察可能な特徴を表現型という。また、ある特徴について2種類の表現型があるとき、ある個体が一方の形質を現すのであれば、もう一方の形質は現れない。このような2つの形質を対立形質と呼ぶ。この対立形質が持つ遺伝子を対立遺伝子と呼び、アレル(アリル)とも呼ぶ。

第2章:倍数性

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染色体と倍数性

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 遺伝情報の発現と伝達を担う物質を染色体と呼ぶ。

 倍数性とは染色体上のゲノムを何セット持つかを示す概念である。ゲノム1セットに相当する染色体数を基本数と言い、xもしくはbで表す。倍数性は基本数の倍数でx,2x,3x…と表現されていく。それぞれ、一倍性(半数性)、二倍性、三倍性と呼ぶ。それらの倍数性の生物はそれぞれ、一倍体(半数体もしくは単数体)二倍体三倍体…という。

 例えば基本数が9の三倍体の生物の体細胞における染色体数は

9×3=27

∴27本

と立式できる。

第3章:遺伝子座

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遺伝子マーカー

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 遺伝子マーカーとは個体の遺伝型もしくは系統の目印となる、ある性質を持った個体特有のDNA配列をいう。遺伝マーカーDNAマーカーともいう。

遺伝子座

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 特定の遺伝子もしくは遺伝子マーカーが存在する染色体の特定の位置を遺伝子座と呼ぶ。各染色体は多くの遺伝子座を持ち、それぞれの遺伝子は異なる位置の遺伝子座を占めている。

接合性

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 生物の形質に関する対立遺伝子の類似性を接合性という。二倍体生物の、ある遺伝子座がAA,BB,aa,bbのように同一の対立遺伝子を持つ接合性をホモ接合型という。ホモ接合型の個体をホモ接合体と呼ぶ。また、二倍体生物で遺伝子座がAa,Bbのように同一ではない対立遺伝子を持つ接合性をヘテロ接合性と呼び、ヘテロ接合性の個体をヘテロ接合体という。

遺伝子地図

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 1913年米国の遺伝学者トーマス・ハント・モーガンは遺伝子地図を作成した。遺伝子地図とは染色体上の遺伝子の位置を示した地図のことである。遺伝学的地図または染色体地図ともいわれる。この功績により、モーガンは1933年に米国初のノーベル生理学・医学賞を受賞した。 Thomas_Hunt_Morgan ↑トーマス・ハント・モーガン  

第4章:グリフィスの実験と形質転換

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グリフィスの実験

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 1928年英国の細菌学者フレデリック・グリフィスは次のような実験を行った。

 病原性を持つⅢ-S株と病原性を持たないⅡ-R株の2種類の肺炎レンサ球菌を用いる。マウスにⅢ-S株を注射すると肺炎で失うが、Ⅱ-R株を注射すると生存する。まず、Ⅲ-S株のバクテリアを加熱させ死滅させたものと通常のⅡ-R株を用意する。このふたつをそれぞれ、単独でマウスに注射すると、マウスは生存した。しかし死滅させたⅢ-S株と通常のⅡ-R株を混合させたものをマウスに接種すると、マウスは失った。さらにそのマウスからⅢ-S株とⅡ-R株が分離されていたことが分かった。 Griffith_experiment_ja ↑グリフィスの実験

形質転換

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 グリフィスは「Ⅲ-S株の死んだものに含まれる何らかの形質転換要素が原因となり、Ⅱ-R株が致死性に転換した。」と考えた。この実験から、人為的に形質を転換させることができると証明された。細胞外部からDNAを導入し形質を転換させることを形質転換と呼ぶ。

修了試験

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1.次の各問いに答えよ。

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(1).分離の法則、独立の法則、顕性の法則を合わせて何というか。

(2).観察可能な形質を何というか。

(3).アリルを漢字4字に言い換えよ。

2.次の各問いに答えよ。

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(1).二倍体で基本数が6の生物がいる。この生物の体細胞における染色体数を求めよ。

(2).四倍体で体細胞における染色体数が48の生物がいる。この生物の基本数を求めよ。

3.次の文章aからcを読み、内容が不適当なものを記号で選べ。

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a:遺伝子地図はアメリカ合衆国のモーガンによって1933年に作成された。

b:接合性がPp,Jjのような組み合わせをヘテロ接合性と呼ぶ

c:接合性を発見したモーガンは1933年に染色体地図を作成しノーベル賞を受賞した。

4.次の文章を読み後の問いに答えよ。

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 病原性のある肺炎レンサ球菌をS,病原性のないものをRとする。このとき実験用マウスに死滅させたSと通常のRを混合させたものを打った。するとマウスは失った。このとき次の問いに答えよ。

(1).本文中にマウスは失ったとあるが、その原因は何か推論せよ。

(2).加熱殺菌させたSをマウスに接種すると、どのようになるか推論せよ。