高校英語の文法/否定

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否定[編集]

never[編集]

never は、頻度について「一度も~ない」(経験が「ない」)や「決して~ない」という意味。

「決して~ない」の意味の場合、never は決して単に not の強調語ではない。

never の「決して~ない」の意味は、現在の習慣として、比較的に長期の期間にわたって、確実に「ない」ことの意味である(青チャート、ジーニアス)。

なので、短期の間だけ「ない」場合には never は用いない(ジーニアス、青チャート)。


never は、助動詞ではない(don't などとは違う)。なので、never のあとの動詞は、主語や時制によって形が変わりうる(青チャート)。たとえば、もし主語が it や he や she など三単現なら、neverのうしろの動詞には三単現の s がついたまま(青チャート)。

助動詞ではないので、will never などのように助動詞と併用することも可能(エバーグリーン、ジーニアス)だし、will never は「(今後、)~することはないだろう」の意味を表す(ジーニアス)。

never は完了形have といっしょにhave never (または has never)という形で使われることもあり、have never は「一度も~したことがない」の意味で使われる(ジーニアス、桐原ファクト)。


never の語源と意味合いは、not ever である。

「 Nothing will ever 動詞 」の構文のように、一見すると never の単語が無くても、「否定の語句 + ever 」という構文なら、その意味合いは基本的には never と同じである場合もある(青チャートの無生物主語の単元)。

no[編集]

どこの参考書にもある例文で(桐原、大修館)、


I have no money with me. 「お金の持ち合わせが少しもありません。」

no は強い否定を表す。


He is no genius. 「彼は天才なんかじゃない」(=馬鹿だ)

He is no gentleman. 「彼は紳士なんかじゃない」


「no 形容詞」で、その逆の意味であることを表す。和訳の際は、単に「決して・・・でない」と訳せば十分(桐原、大修館)。


「no 名詞」は、「~がひとつもない」という意味も表す用法もある。

この場合、続く名詞が単数形か複数形かは、他の一般的な場合に単数であることの多い名詞ならnoに続く名詞も単数形に、同様に一般的に複数であることの多い名詞ならnoに続く名詞もあわせて複数形にする。


準否定語[編集]

not や no は、文を完全に否定する。

いっぽう、完全な否定ではなく、「ほとんどない」や「あまりない」といった程度や頻度が少ないことをあらわす語のことを「準否定語」という(青チャート、桐原ファクト)。

hardly や scarcely 、seldom や rarely, few や little などが準否定語である(インスパイア)。

なお、文中でのこれらの準否定語の位置は、never や not などと同じであり、具体的に言えば 一般動詞の前/ be動詞・助動詞の後ろ である(青チャート、桐原ファクト)。


hardly, scarcely 程度が「ほとんど・・・ない」

hardly, scarcely は程度が「ほとんど・・・ない」ことを示す。

hardlyなどの位置は、普通、一般動詞の前、be動詞/助動詞の後ろに置く。

scarcely は固い語である。


seldom, rarely 頻度が低い「めったに・・・ない」

seldom, rarely は頻度が低いことを示し、和訳の際はよく「めったに・・・ない」と訳される。

seldom などの位置は、普通、一般動詞の前、be動詞/助動詞の後ろに置く。

なお、hardly ever または scarcely ever で頻度の低さを示すこともできる(桐原、大修館)。


few , little 数や量が「ほとんど~ない」

few や little は数や量が「ほとんど~ない」ことを示す。

few は数えられる名詞(可算名詞)の場合において「ほとんどない」場合を示す。

たとえば 「few people ~」で、「~な人はほとんどいない」の意味。


little は数えられない名詞(不加算名詞)の場合において「ほとんどない」場合を示す。

このように few や little は、やや否定の意味が弱まっている。


なお a few や a little のように不定冠詞 a がつくと、否定の意味がさらに弱まり、「少しはある」の意味になる。


しかし、まぎらわしいことに、

only a few および only a little は、「ほとんど~ない」の意味である(ロイヤル、大修館)。

なお、only a few および only a little は形容詞的に名詞を修飾するのに使うのが一般的である。参考書では特に言及されてないが、例文がそうである。

日本語の否定との違い

よく日本語の否定は「否定語が最後にくるので、最後まで聞かないと否定かどうか分からないので、日本語は分かりづらい」などと批判されることもある。

しかし日本語の否定表現には、「あまり~ない」や「ほとんど~ない」といった上述でいう準否定のような表現も含めて、必ず日本語では「ない」またはそれを変化した単語が来るのが通例であるので(青チャート)、文末さえ読み書きさえすれば、あとは文章を一見しただけで否定表現であるかどうかが容易に判別できるので、考えようによっては日本語には分かりやすい面もある(青チャート)。

裏を返せば、英語には、日本語のような準否定と完全否定との間においての共通の単語は無い。 seldom のように準否定でしか使われない単語なら、まだ判別しやすいが、ほかにも 「too ~ to 不定詞」(・・・するには~すぎる)のような表現になると too も to も否定以外でも使われるので、文法知識が無いと否定表現だとは判別できなくなる。

このように英文法の学習では、発想を日本語とは切り替える必要がある(青チャート)。


部分否定と全否定[編集]

not ・・・ all は「すべてが・・・というわけではない」のような意味なので、少しは・・・なものがある、という含みがある。また、このような否定の仕方を、部分否定という。


なお、not always 「いつも~なわけはない」も部分否定である。つまり、例の not always の場合なら時々は~な場合もある。


not ・・・ any は「ひとつも・・・なものはない」のような意味であり、またこのような否定のしかたを全否定という。


ただし、all ~notが部分否定か全否定かは文脈による(ロイヤル)。


また、nobody または no ~ も同様に全否定。


not ~ both は「両方とも~なわけではない」という部分否定。

not ~ neither は全否定。


部分否定を作る語は、次のようなものがある。一般に否定語とともに次の語が用いられると部分否定になる。

always(いつも), altogether(全く), every(すべての),

necessarily(必ず), wholly ,

entirely(完全に), completely(完全に),


これらの語の多くは、「全部」や「完全」などの意味をもつ副詞・形容詞であり、それらを否定することは「全部がそうである」という事を否定しているにすぎず、「一部にはそうでないものもありうる」という含みがある。

not necessarily は「必ずしも~というわけではない」の意味。


「not many 名詞」は、「あまり多くない」の意味。

「not much」は「あまり~でない」の意味。


「both ~ not 」および「 not ~ both 」は部分否定であり「両方とも・・・とは限らない」の意味だが、全否定と混同されやすにこともあり、使用は避けられている(インスパイア)。

all ~ not や every ~ not も同様、部分否定か全否定かは、形からは判別できない(インスパイア、青チャ)。ジーニアスは、all ~ not の語順は避けるべきだとしている。なお、always ~ not や every ~notなども同様(ジーニアス)

ただし、次の慣用句

All that glitters is not gold. 「光るものは必ずしも金ならず.」(部分否定)

は部分否定だと分かっている。

ここら辺の単元は紛らわしいので、入門的な参考書(エバーグリーンや桐原ファクトなど)では深入りしてない事項である。

なお、not all は部分否定である(エバーグリーン、ジーニアス)。いっぽう、 none は全否定である。


暗記としては「not all 部分否定」とでもnot all のほうだけをセットで覚えて、覚えてないほうは「使用が避けられているから、暗記対象から外れている」という事だけを覚えるのが良いだろう。

二重否定[編集]

たとえば

It's not unusual ~ 「~するのは、めずらしいことではない」

のような表現を、二重否定という。

unusual は、usual(普通である)を否定した語である。

さらに not unusual とnotで否定しているので、つまり最終的には肯定の意味に近くなるが、しかし二重否定は肯定とまったく同じとは言えず、二重否定には若干のためらいや控えめな気持ちがある(大修館、ロイヤル)。

このためか、二重否定の文の和訳の際には、「めすらしいことではない」のように訳し分けるのが一般(ロイヤル、大修館)。


never ・・・ without ~ 「~なしで・・・することは決してない」

nobody や nothing や no one などは普通、二重否定にはしないので、つまり not や never とは併用しない(ロイヤル、桐原フォレスト、エバーグリーン)。

慣用表現[編集]

You cannot be too careful when ~ 「~する時はいくら気をつけても気をつけすぎることはない」

cannot help ~ing 「~せずにはいられない」

ここでの help は「~を避ける」の意味。


not ~ until ・・・ 「・・・して始めて~した」の意味。


no longer 「(今では)もはや~ではない」「(今では)もう~ではない」

not any longer でも言い換えできる。


no sooner ・・・ than ~ 「・・・するとすぐに~」


否定を使った慣用表現は多数あるので、紹介しきれない。市販の参考書でも、参考書によって紹介されている表現がマチマチである。


「do nothing but ~(動詞の原型)」は「~してばかりいる」「~ばかりしている」の意味。

このbutは「~を除いて」の意味であり、それを除くと何もしなくなるのだから、つまりそれしかしていないという意味になるので、上述のような意味になる。


否定語を使わない否定表現[編集]

不定詞を使った否定表現[編集]

「too ~ to ・・・」は「~すぎて・・・できない」の意味。直訳すると「・・・するには~すぎる」の意味。この直訳のほうを和訳として紹介している参考書もあるので、直訳でも間違いではない。


「be the last person to ~動詞の原型」は、「けっして~しない人である」の意味。主語がheならpersonの部分がmanのこともある。

He is the last man to ~. 「彼はけっして~する男ではない。」


fail to ~(不定詞)「しない」「できない」

は、本来なら起きるべき事が起こらなかった場合に使う。

その他の否定表現[編集]

far from ~ 「~から程遠い」=「けっして~とは言えない」、「少しも~ではない」の意味。

far from の後ろには名詞の場合のほかにも、形容詞が来る場合もある。

free from ~ 「~がない」

free from は、束縛するものがないという意味なので、意味的にやっかいなものが後ろに続き、嫌なものや心配や苦痛など(ジーニアス、フォレスト)が「~」の部分に来る。


たとえば、

be free from air pollution 「大気汚染がない」(ロイヤル、桐原フォレスト)


前置詞に fromの代わりにof が来ることもある。

free of ~ 「~がない」


anything but ~ 「けっして~ではない」

but は「~を除いて」「~以外」の意味。anything は「何でも」の意味。

「anything but ~」で直訳すれば「~以外は何でも」の意味だが、英語では「けっして~ではない」のように否定の強調として使われるので、和訳の際には「けっして~ではない」という風に訳す。


その他、前置詞 beyond ~ は「~を超えて」の意味であるが、文脈によっては否定の意味になる事もある。

たとえば、beyond my understanding 「私の理解を超えて」→「私には理解できない」、(ロイヤル英文法)

beyond description 「描写を超えている」→(凄すぎたりして)「描写しようがない」

など。beyond の後ろに人がする行動の名詞などが来ると、「~をできる範囲を超えている」→「~できない」のような意味になる。