高等学校化学I/金属元素の単体と化合物/2族元素/カルシウム
カルシウム(Ca)はアルカリ土類金属のひとつである。単体は塩化カルシウムの融解塩電解により得られる。
酸化物[編集]
単体を空気中で燃焼させると酸化カルシウム(CaO)を生じる。酸化カルシウムは生石灰(せいせっかい)とも呼ばれる。
- 2Ca + O2 → 2CaO
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生じる。水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれる。
- CaO + H2O → Ca(OH)2
酸化カルシウムは水を吸収し、そのさい発熱することから、乾燥剤や発熱材として用いられる。
水酸化物[編集]
酸化カルシウムに水を加えると熱を出しながら水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生じる。
- CaO + H2O → Ca(OH)2
逆に、水酸化カルシウムを加熱すると酸化カルシウムが得られる。
- Ca(OH)2 → CaO + H2O
水酸化カルシウムはカルシウムを水と反応させることによっても得られる。
- Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
水酸化カルシウムは白色の粉末であり、水酸化カルシウムは消石灰(しょうせっかい)とも呼ばれる。水酸化カルシウムの水溶液は塩基性を示し、一般に石灰水(せっかいすい、lime water)と呼ばれる。石灰水に二酸化炭素を通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿を生じて白濁する。この反応は二酸化炭素の検出に用いられる。
- Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3↓ + H2O
しかし、白濁した石灰水にさらに二酸化炭素を通じ続けると、炭酸水素カルシウムとなって沈殿は溶解し、無色の水溶液になる。
- CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
この炭酸水素カルシウム水溶液を加熱すると、ふたたび炭酸カルシウムの沈殿が生じる。
- Ca(HCO3)2 → CaCO3 + CO2 + H2O
水酸化カルシウム水溶液に塩酸を加えると、塩化カルシウムを生じる。塩化カルシウムは吸湿性があり、乾燥剤としてしばしば用いられる。
- Ca(OH)2 + 2HCl → CaCl2 + 2H2O
水酸化カルシウム水溶液に塩素を通じると、さらし粉を生じる。
- Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O
炭酸塩[編集]
炭酸カルシウム CaCO3 の固体は、天然には石灰岩や大理石として存在する。
鍾乳洞(しょうにゅうどう)や鍾乳石(しょうにゅうせき)は、炭酸カルシウムが地下水にいったん溶けて、水中で炭酸水素カルシウムとなり、その後、炭酸カルシウムに戻り、再度、固まったものでる。
炭酸カルシウムは塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を発生する。
- CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑
炭酸カルシウムは、セメントの原料や、チョークの原料、ガラスの原料、歯みがき粉の原料などとして、使われている。
硫酸塩[編集]
水酸化カルシウム水溶液に硫酸を加えると、硫酸カルシウム CaSO4 の白色沈殿を生じる。硫酸カルシウムは天然には二水和物がセッコウ(石膏)として存在する。セッコウを約130℃で焼くことにより、二分の一水和物である焼きセッコウの白色粉末となる。
- Ca(OH)2 + H2SO4 → CaSO4 + 2H2O
焼きセッコウの粉末に水を少量まぜると、硬化して、体積が少し増え、セッコウになる。セッコウ像や医療用ギプスは、この性質を利用している。
カルシウムやバリウムの硫酸塩は水に溶けにくく、この性質は陽イオンの系統分離において重要である。また日常生活においても重要で、硫酸カルシウムは建築材や医療用ギプスに、硫酸バリウムBaSO4はX線撮影の造影剤として用いられる。