高等学校政治経済/権利と義務の関係

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憲法における権利と義務の関係[編集]

国家は、国民にさまざまな義務を課すが、近代立憲主義思想において、憲法などによって国民に課される義務の正当性の根拠とは、国民どうしの人権の衝突を防ぐなどの理由である。(※ べつに私の持論ではなく、清水書院の検定教科書などに、こういう理屈が書いてある。)

ただし、以上のハナシはあくまで、国家と国民との間での、「権利と義務」の関係である。

それよりも、これから大人になる高校生読者にとって重要なハナシは、国民どうしにおける個人間での権利と義務の関係は、国家・国民間の権利義務の関係とは、すこし異なる、ということである。 (※ ココらへんの話題も、検定教科書の範囲内です。 うたがうなら、清水書院などの検定教科書を読もう。)

もちろん、(国家対個人の場合と、個人間の場合とで、権利・義務の関係が)まったく異なるというわけではない。

たとえば、個人と個人との行為でも、たとえば、ある個人Aが別の個人Bを殺害して生存権を奪ったら、もはや犯罪として、その個人Aは処罰される。 (※ 検定教科書には書いてない。だが、明らかに真実だろう。)

さて、次の節で述べるように、個人と個人との間での契約において、両者とも原則的に契約を守る義務がある。


個人間の契約における権利と義務の関係[編集]

個人と個人との間での契約において、両者とも原則的に契約を守る義務がある。

買い物などにおける、権利と義務の発生について、考えれば分かるでしょう。


たとえば、売買契約が成立すれば、買い主は、代金を払う義務があります。(この場合、代金を支払うことは「債務」(さいむ)に分類される。債務については後述する。)

一方、売り主には、買い主に代金を支払うように請求できる権利があります。(この場合、買い主に代金を支払うように請求できる権利が、「債権」(さいけん)である。債権については後述する。)

このように、個人間では、契約によって、権利と義務が同時に発生します。 (※ 検定教科書の範囲内です)

契約によって発生する義務のことを債務(さいむ)という。同様に、契約によって発生する権利のことを債権(さいけん)という。(※ 「債権」「債務」は検定教科書の範囲。第一学習社の政治経済の教科書パンフレット(公式サイトより)で確認。)

つまり、契約によって、債権と債務が同時に発生します。

さて、一方、売り主は、代金が支払われれば、商品をすみやかに渡す義務があります。(「代金が支払われれば、商品をすみやかに渡す」という債務)

また、買い主は、代金を支払ったあとなら、売り主に商品を引き渡すように請求できる権利があります。(「代金を支払ったあとなら、売り主に商品を引き渡すように請求できる権利」という債権)

このように、代金の支払いによっても、権利と義務が同時に発生しています。 (※ 検定教科書の範囲内です) つまり、代金の支払いによっても、債権と債務が同時に発生しています。

このように、契約によって、権利だけでなく義務も発生しますので、契約をする際には、契約内容をきちんと調べるなどして、注意をしましょう。(※ 中学高校の検定教科書の範囲内です)


さらに「契約自由の原則」といって、基本的に、国家権力は個人間の契約については、あまり規制をしないのが原則です。(※ 検定教科書の範囲内です) 通常の買い物などでは、個人と企業間の契約も、国家権力はあまり規制をしません。

そのため、もしアナタが契約内容を理解してないと、自分に不利な契約をしてしまう場合もある。

なお、個人と個人との関係や、個人と企業(株式会社など民間企業)などのような、民間どうしの関係を、私人間(しじんかん)と言う。

つまり、「契約自由の原則」により国家権力は、私人間の契約を、あまり規制しない。

このように個人間の契約においては、自由には責任が ともないます。

もっとも、なんでもかんでも契約なら自由というわけではなく、たとえば労働契約では、労働基準法に定められた最低賃金を下回る給料での労働契約は無効である、・・・などのように「契約自由の原則」には例外もある。

また、契約内容がウソの内容である「詐欺」(さぎ)などの場合、契約を取り消しできる場合もある。(高校の「現代社会」の教科書などで習う。)脅迫をされて、むりやり契約をさせられた場合も、契約を取り消せることが、民法などに定められている。

しかし、詐欺や脅迫である事を証明するのが難しい場合が多いのが実情である。(高校の「現代社会」の教科書などで習う。)

労働基準法違反や詐欺や脅迫などのような例外的な場合をのぞけば、原則として「契約自由の原則」により、個人間の契約においては、自由には責任がともなうので、原則的に契約を守る義務を、(司法を含む)社会から要求される。

たとえば、「借りたカネを返さない」などのように、もしも借金の契約に違反すると、場合によっては、裁判(借金の裁判は、普通は民事裁判であろう)にかけられてしまい、そして判決では、財産を取り上げられるなどの強制執行の判決が出る場合もあります。(※ 「強制執行」は、中学公民の検定教科書の範囲内です)


民事裁判において、裁判官はどのような考えにもとづいて判決を出さなければならないかは、民法などの法律に書いてある。(中学公民および高校「現代社会」「政治経済」の範囲内。)

民法では、個人と個人どうしの契約についての法が、定められている。なお民法では、契約についての定めの他にも、婚姻や親子関係、相続、損害賠償などについても民法で定められている。(※ 検定教科書の範囲。帝国書院などの現代社会の教科書パンフレット(公式サイトより)で確認。)


(※ ↓ 本節で以下、範囲外。)

ただし、「契約自由の原則」は、あくまでも 契約 の場合だけに関してのハナシであり、おそらく想定されている事例は、主に商取引や金銭支払いに関する契約、借金契約などのハナシであろう。

個人と個人との間のことでも、たとえば、ある個人Aが別の個人Bを殺害したり暴行したり物を盗んだりなどの犯罪行為に及べば、もはや自由ではなく、警察などが介入してきたりして刑事事件になる。

また、個人と個人との契約に関する出来事でも、詐欺や脅迫によって契約が成立された場合には、場合によっては詐欺罪(さぎざい)や脅迫罪(きょうはくざい)などの罪によって、刑事的に処罰される場合もある。

(※ ↑ 以上、範囲外。)

なお、所有物は、原則的に、法律の範囲内なら、どう使用しようが自由であり、この原則を「所有権絶対の原則」という。(東京書籍の「現代社会」科目の教科書パンフレット(web)などで記載を確認。)

  • 参考: 日本における、法と年齢の関係 (※ 検定教科書の範囲内。清水書院の教科書。帝国書院の「現代社会」教科書など。)
出生(しゅっしょう)時: 親が出生(しゅっしょう)届を出す。(戸籍法第49条)
6歳:  義務教育の開始。(教育基本法第5条、学校教育法第17条)
14歳:  罪をおかすと、刑事上の責任を問われ、刑事処罰される対象になる。(刑法第41条)
16(女)、18歳(男):  男は18歳で結婚できる。女は16歳で結婚できる。(民法第731条)ただし未成年の結婚の場合、親の同意が必要である。(民法第737条)
18歳:  選挙権をもつ。(公職選挙法第9条)
国会議員の被選挙権をもち立候補できる年齢は、衆議院では25歳、参議院では30歳。
40歳:  介護保険料の負担。(介護保険法第129条)
65歳:  老齢厚生年金の支給。(老齢厚生年金法第42条)
死亡時: (遺族などが)死亡届を出す。(戸籍法第86条)


なお、当然のことだが、親は子を育てる義務を負う。なお、このような、家族間で生活を援助する義務のことを「扶養義務」(ふよう ぎむ)という。未成年の子は、親の保護監督に従う義務がある。(※ 「現代社会」科目の範囲(東京書籍の教科書などで確認)。常識として、「扶養義務」などは知っておこう。)

親には、子供を保護・教育の方法などを、親がある程度自由に決められる権利があり、また子供の財産などを管理できる権利があるが、これらの親の子に対する権利を親権(しんけん)という。(※ 「現代社会」科目の範囲(東京書籍の教科書などで確認)。「親権」は常識的な知識。)

結婚している夫婦は、同居義務があり、扶養義務がある。


さて、成年者は原則的に、自由に契約ができる。(契約自由の原則) 

しかし、精神障害・身体障害などの重度の障害の場合や、または老齢などで、法的な判断が困難な場合もある。法的な判断が困難な場合に、成年後見制度(せいねんこうけんせいど)によって法的な判断の権利を後見人に預けたり、または後見人に法的な判断を助けさせたりすることができる。(※ 「現代社会」科目の範囲(東京書籍の教科書などで確認)である。)

民法などに、親子の法的義務、夫婦の義務、相続、成年後見制度などの規定が定められている。

(※ なお、入試範囲外だろうが、商業高校の科目『高等学校商業 経済活動と法』で、これらの話題が説明されている。wikibooksでは、
単元『高等学校商業 経済活動と法/自然人の行為能力と制限行為能力者制度』(成年後見制度など)
単元『高等学校商業 経済活動と法/家族と法』(親子の法律関係など)
などに、解説がある。)


相手方が債務どおりに実行しない事態(債務不履行(さいむ ふりこう))のように、契約違反によって(主に金銭的な)損害を負わされたりした場合、契約違反をした者に対して損害賠償を請求できる、という内容の規定が民法にある。また、事故などの過失によって損害を負わされた場合も、その事故を起こした者に対し、損害賠償を請求できる場合がある。(※ 第一学習社などの検定教科書に記述あり。) ただし、事故を起こした者(加害者)が、事前に(法律的に)充分な注意をしていた場合で、それでも事故が起きてしまった場合は、損害賠償をまぬがれるのが原則である。つまり、法的に充分な注意をせずに事故を起こした場合に(なお、このような場合を「過失」(かしつ)という)、加害者は損害賠償の責任を負う。

つまり、加害者に過失がある場合に、加害者は賠償責任を負う。

なお、債務不履行とは、文字通り「債務が実行されない」というような意味である。

たとえば、「貸したカネを、返してもらえない。」「借りたカネを、自分の所持金が足りないので、(カネを)返せない。」とか、または「商品の代金を支払ったのに、商品が引き渡されない。」などの事態も、債務不履行である。


さて、国家や地方公共団体が不法な行為をした場合には、国家や地方公共団体に対しても損害賠償をするように請求でき、このように請求できる権利を国家賠償請求権という。

国家や地方公共団体に対する損害賠償の法律として、国家賠償法がある。(※ 「現代社会」の教科書などで、国家賠償法を紹介している教科書会社もある。山川出版社など。) 憲法17条の「国及び地方公共団体の賠償責任」をもとづき、国家賠償請求権がある。


※ 中学の復習: 国家権力による、個人の権利の制限[編集]

「公共の福祉」により、人権が制限される例
人権 制限の内容 根拠法令
表現の自由 * 他人の名誉を傷つける行為の禁止 刑法
* 不当な選挙運動の禁止 公職選挙法
 集会・結社の自由  * デモの規制 公安条例
居住・移転の自由 * 感染症による入院・隔離の措置 感染症法・医療法
* 親の指示による子の居住地指定 民法
* 破産者の居住制限 破産法
財産権  * 道路・空港などのために補償金を払ったうえで
 土地を収用
土地収用法
* 不備な建築の禁止 建築基準法
 労働基本権  * 公務員のストライキの禁止
国家公務員法、
地方公務員法
営業の自由  * 医師などの国家資格職において
 無資格者による営業の禁止
医師法など
* 企業の価格協定(カルテル)などの禁止 独占禁止法

(※ 政治経済の検定教科書にも、右表のような「公共の福祉」の一覧表があり、高校「政治経済」の範囲内です。)

国民どうしの人権の衝突を防ぐ場合のみに義務が与えられることで、権利が制限される、・・・

という事は、裏を返せば、他者の権利を守るためなら、権利は制限されるという事である。

生存権のような基本的人権を除けば、もはや他の権利は、あまり基本的ではなく、特別な理由があれば、制限されるのである。

中学校で習ったように、・・・

医者や弁護士のように、その仕事につくのに免許などの資格が必要な仕事もある。(「経済活動の自由」の制限)
未成年の子供は、親など保護者の許可がなくては、引越しはできない。(「居住・移転の自由」の制限)

などのように、自由権が制限される場合もある。


一般に日本の法律などでは、(日本国憲法の定める)「公共の福祉」などの概念によって、最小限の権利制限であるならば、「権利」というものは制限可能である、・・・と考えられている。

「公共の福祉」とは、自分の人権と、他人の人権がぶつかったときに、それを調整・解決するための原理である。


さて、他にも、「公共の福祉」ではないが、犯罪を犯して逮捕されて拘束された者に対しては、拘束を禁じるという意味での「身体の自由」なんて、当然、ありえない。このように、権利は、場合によっては制限される。


だからといって、「他人の権利を守るため」などの名目で、なんでもかんでも言動を禁止していいわけではない。高校科目の「日本史」「世界史」などで第二次世界大戦前・大戦中の治安維持法について説明したりするのは、そういう失敗(第二次大戦期において、戦前、「治安の維持」などを名目に、政府に批判的なだけの言動が取り締まられるようになった。)を繰り返さないようにするため、・・・という教育的な意図だろう。

(※ ↓ 以下、範囲外)

ただし、上記のように慎重に権利の制限を行われる場合とは、あくまでも国家権力からの要求によって個人の権利が制限される場合での、ハナシである。 

次の節で述べるように、個人 A と別の個人 B との間における権利問題が発生した場合については、事情が異なる。

※ 範囲外: 個人間における権利の保護について[編集]

個人と個人との間の権利問題について、国家権力 対 個人の場合ほどには、個人と個人の権利が衝突する場合には、積極的に権利保護はなされない。

たとえば、個人と個人どうしの関係において、ある不届き者 A が、相手 B の行為を違法的な(民法違反などの)要求内容で権利制限を要求してきても、制限を要求された相手 B が民事裁判を起こさないかぎり、(裁判所などの)国家権力は介入しないのが通常である。 (※ 日本の中学・高校では、これを習わない。)

あるいは、契約成立前に相手が実力行使に出た場合(なお、これは普通、違法行為)や、または明らかに犯罪行為(窃盗、誘拐、暴行、殺人など)によって行為制限をしようとしていないかぎりは、原則的に、警察などの国家権力は介入しない。


なので、個人間の関係において、もし相手から行き過ぎた要求をされた場合は、場合によっては、アナタは民事裁判を起こす必要もある。

もし、民事裁判の起こし方が分からないなら、弁護士に相談すれば良い。弁護士との相談料の相場価格は、一般的に、1時間あたり数万円である。 そもそも弁護士の仕事の一つとして、裁判の起こし方が分からない一般の人に代わって裁判を起こして法廷闘争をするために、全国各地に弁護士がいるのである。

なお、裁判には手間と費用がかかるので(「権利の濫用」の禁止により、裁判をひんぱんに起こすわけにはいかないので)、裁判を起こす前に、まず、当事者どうしの交渉などによって、双方の納得する和解案を出すのが望ましい。

だが、世間の不届き者の中には、このような、当事者どうしの交渉による解決をしようとする慣習を悪用して、交渉では明らかに民法などに違反する主張をしていたとしても、不届き者が交渉では一歩も引かず、そして相手に負担を押し付けようとする不届き者もいる。

たとえ、このように、交渉相手が民法違反を主張する不届き者な場合であっても、行為が刑法などに違反してないかぎり、警察は介入をしないのが原則的である。

なので、もし相手からの制限要求が行き過ぎであり、交渉で解決しないなら、民事裁判で訴える必要も、ありうる。そもそも民事裁判とは、そのような、個人間での、行き過ぎた権利要求をやめさせるのも、目的のひとつだろう。

以上のように、個人間の権利関係において、自分の権利は、自分で自発的に守る必要がある。 (もちろん、けっして自分一人だけで守る必要はなく、必要に応じて弁護士なども活用すべし。)

別に私個人の持論ではなく、たとえば、民法などの「時効」に関する、法学の格言(かくげん)だが、「権利の上に眠る者は、保護に値(あたい)せず。」という格言がある。 (普通科の範囲内である。現代文Bの教科書で記載を確認。政治学者の故・丸山 眞男(まるやま まさお)が、この格言について著作『「である」ことと「する」こと』にて言及している。しかし、暗記は不要だろう。実用知識として内容を知っておけばいい。)

(お金を貸したまま、取り立てずに数十年間も放っておくと、時効によって、取り立てをできなくなる。このことについて、「権利の上に眠る者は、保護に値(あたい)せず。」と格言でいう。)

なにも時効や貸し借りにかぎらず、一般に、個人間において、ある個人の権利が侵害されそうになっても、その個人がなにもしないでいると、国家権力は介入してくれず、そして(なにもしないでいれば)国家権力は権利を保護してくれないのである。

(※ ↑ 以上、範囲外)