高等学校数学I/方程式と不等式

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「方程式と不等式」の分野は大きく以下の3つに分けられる。

数と式 
展開や因数分解をできるようにし、数を実数まで拡張することの意義を理解する。
一次不等式 
一次不等式の解き方を理解し、また数直線上に解を表すことができるようにする。
二次方程式 
解の公式を用いて二次方程式を解けるようにし、また判別式によって解の個数を判断できるようにする。

数と式[編集]

式の展開と因数分解[編集]

単項式と多項式[編集]

3や12などの数(定数)や、xy などの文字(変数)を掛けあわせてできる式を(こう、term)という。

次のようなものが項である。

  • 3x
  • 12y
  • 0
  • -x
  • 256xy2

このように一つの項だけからできている式を単項式(たんこうしき、monomial)という。1つ以上の単項式を足しあわせてできる式を多項式(たこうしき、polynomial)という。

以下は多項式の例である。

  • 3x + 12y
  • 5 + a - 13x2y
  • a2 + 2ab + b2
  • x - y
  • 2

単項式も、項が1つしかない多項式の一つであると考える。x - y のように減法を含む式は、x - y = x + (-y) = -y + x と減法を加法に直すことができるので、x, -y を項にもつ多項式であると考えられる。すなわち、多項式の項とは、多項式を足し算の形に直したときの、一つ一つの足しあわさっている式のことである。たとえば 5 + a - 13x2y = 5 + a + (-13x2y) の項は 5, a, -13x2y の3つである。

この教科書では単項式も多項式の特別の場合として考えるが、文字通り複数の(2つ以上の)項をもつ式だけを多項式と呼び、1つの項しかもたない単項式とは区別して考える流儀もある。この流儀では、多項式と単項式をあわせて整式(せいしき)と呼ぶ。整式は、この教科書における「多項式」と同義語である。
  • 問題

次の式のうち単項式であるものを答えよ。

  1. ax2 × bx × c
  2. -(x3y4)(z5)
  3. (a + b)2
  4. a2 + b2 + c2 - ab - bc - ca
  • 解答

1. 2. 3.が単項式。4は項が6つあるため単項式ではない。

  • 解説

ここでは全ての単項式を多項式に含めるため、上の全ての式は多項式だとも言える。

同類項[編集]

3x2 + 5x2 + 8x の 3x2 と 5x2 のように、多項式の文字と指数がまったく同じである項を総称して同類項(どうるいこう、like terms)という。

同類項は分配法則 ab + ac = a(b + c) を使ってまとめることができる。たとえば 3x2 + 5x2 + 8x = (3 + 5)x2 + 8x = 8x2 + 8x である。8x2 と 8x は文字は同じであるが指数が異なるので、同類項ではない。

  • 問題

次の多項式の同類項を整理せよ。

  • 解答

次数[編集]

3x という単項式は、3という数と x という文字に分けて考えることができる。数の部分を単項式の係数(けいすう、coefficient)という。たとえば -x = (-1)x という単項式の係数は-1である。

256xy2 という単項式は、256という数と x, y, y という文字に分けて考えることができるので、この単項式の係数は256である。一方、掛けあわせた文字の数を単項式の次数(じすう、degree)という。256xy2x, y, y という3つの文字を掛けあわせてできているので、この単項式の次数は3である。0という単項式の次数は 0 = 0x = 0x2 = 0x3 = ... と一つに定まらないので、ここでは考えない。

単項式の係数と次数は、単に数と文字に分けて考えるのではなく、ある文字を変数として見たときに、残りの文字を定数として数と同じように扱うことがある。

たとえば -5abcx3(ただし a, b, c は定数)という単項式は、x3 だけが変数で、残りの文字 a, b, c にはある一定の数が入るものと考えられ、(-5abc)x3 と分けられるので、この単項式の係数は -5abc、変数は x3 で、次数は3であるといえる(つまり、実際に計算するときに -5abc はある一定の数になる)。

このことを -5abcx3 という単項式は、「x着目すると、係数は -5abc、次数は3である」などという場合がある。

あるいは -5abcx3ab に着目すれば、これは「ただし c, x は定数」という条件と同じであるので、(-5cx3)ab と分けられ、ab に着目したときのこの単項式の係数は -5cx3、変数は ab で、次数は2であるといえる。

慣習的には a, b, c, ... などのアルファベットの最初の方の文字を定数を表すのに使い、..., x, y, z などのアルファベットの最後の方の文字を変数を表すのに用いるが、一般的にはこの限りでない。

多項式の次数とは、多項式の同類項をまとめたときに、もっとも次数の高い項の次数をいう。たとえば では、もっとも次数の高い項は であるので、この多項式の次数は3である。もし x は定数)であれば、すなわち多項式の y について着目すると、もっとも次数の高い項は であるので、この多項式の次数は1である。このとき着目した文字を含まない項 定数項(ていすうこう、constant term)として数と同じように扱われる。

  • 問題

次の多項式の x または y に着目したときの次数と定数項をそれぞれいえ。

  • 解答
  1. x に着目すると6次式、定数項は y に着目すると5次式、定数項は
  2. x に着目すると3次式、定数項は y に着目すると100次式、定数項は
  3. x に着目すると4次式、定数項は y に着目すると4次式。定数項は存在しない。

多項式の計算[編集]

多項式の積は分配法則を使って計算することができる。

このように多項式の積で表された式を一つの多項式に繰り広げることを、多項式を展開(てんかい、expand)するという。

指数法則[編集]

a を n 回掛けたものを と書き、a の n 乗(-じょう、a to the n-th power)という。ただし と定義する。たとえば、

...

である。 を総称して a の累乗(るいじょう、exponentiation、冪乗、べきじょう、冪、べき)という。n指数(しすう、exponent)という(a(てい、base)という)。ここでは自然数、すなわち正の整数の指数を考える。累乗は次のように考えることもできる。

...

累乗どうしを掛けあわせた積は、次のように計算することができる。

累乗どうしを割った商は、次のように計算することができる。

累乗の累乗は、次のように計算することができる。

積の累乗は、次のように計算することができる。

これらをあわせて指数法則(しすうほうそく、exponential law)という。

指数法則

m, n を正の整数とすると、

  • 問題

次の式を計算しなさい。

  • 解答

乗法公式[編集]

  • 問題

次の式を展開せよ。

  • 解答

まとめると、次のようになる。

展開の公式

(発展)

  • 二項定理
  • 問題

次の式を展開しなさい。

  • 解答

乗法公式の利用[編集]

複雑な式の展開は、式の一部分を一つの文字において公式を使うとよい。

  • 問題

次の式を展開しなさい。

  • 解答
  1. とおくと
  1. とおくと
  1. とおくと

因数分解[編集]

因数分解の公式

(発展)

  • 問題

次の式を因数分解しなさい。

  • 解答

いろいろな因数分解[編集]

  • 問題

次の式を因数分解しなさい。

〔x^3+y^3+z^3-3xyz〕

  • 解答
  1.  とおくと
  1.  最も次数の低い に着目して整理すると
  1.   に着目して整理すると

実数[編集]

a=b2が成り立つとき、a=2となるようなb、すなわちの具体的な値がどのようなものか、調べてみよう。

b=1 a=1 b=2 a=4
b=1.4 a=1.96 b=1.5 a=2.25
b=1.41 a=1.9881 b=1.42 a=2.0164
b=1.414 a=1.999396 b=1.415 a=2.002225
b=1.4142 a=1.99996164 b=1.4143 a=2.00024449

このように、bを様々に決めても、aはなかなか2にならない。

実はは、分母分子共に整数の分数で表すことはできない。このように整数を分母分子に持つ分数で表せないような数を無理数という。例えば、円周率πは無理数である。それに対して、整数や循環小数など、分母分子共に整数の分数で表すことのできる数を有理数という。

有理数と無理数を合わせて実数という。どんな実数でも数直線上の点として表せる。また、どんな実数も、有限小数あるいは無限小数として表せる。 (下記の「無限小数」の節を参照)

が無理数であることの証明(発展)

が有理数であると仮定すると、互いに素な(1以外に公約数をもたない)整数 m, n を用いて、

と表わすことができる。このとき、両辺を2乗して分母を払うと、

… (1)

よって m は2の倍数であり、整数 l を用いて と表すことができる。これを (1) の式に代入して整理すると、

よって n も2の倍数であるが、これは m, n が2を公約数にもつことになり、互いに素と仮定したことに矛盾する。したがって は無理数である(背理法)。

無限小数[編集]

0.1や0.123456789のように、ある位で終わる小数を有限小数という。 一方、のように無限に続く小数を無限小数という。無限小数のうち、ある位より下から、ある配列の数字の繰り返しになっているものを循環小数という。例えばなどである。繰り返しの最小単位を循環節という。循環小数は循環節1つを用いてのように循環節の最初と最後(循環節が一桁の場合はひとつだけ)の上に点をつけて表す。

全ての循環小数は分数に直せる。(1)と置くと、(2)である。(2)-(1)より、よってである。

(例1)
(例2)

絶対値[編集]

実数 a について、a の数直線上での原点との距離を a の絶対値といい、 で表す。

絶対値

のとき  
のとき  

たとえば

である。

定義より がいえる。また、を任意の実数とするとき、それぞれに対応する数直線上の任意の2点 間の距離については、次のことがいえる。

2点間の距離
数直線上の2点の間の距離で表される。
  • 問題例
    • 問題

2点の間の距離を求めよ。

    • 解答


絶対値を含む方程式について考えよう。
絶対値は、数直線上で、原点と点の間の距離を表している。
したがって、のとき  

  • 問題例
    • 問題

次の方程式を解け。
(1)

(2)

    • 解答

(1)

(2)

平方根[編集]

今、2乗してaになる数bを考える。

のとき、として終わりにしてはいけない。 確かにも条件を満たすがも条件を満たす。 よってである。

一般に正の数aについてa=b2となるbは二つあり、その二つは絶対値が等しい。 この二つのbをaの平方根という。aの平方根のうち、正であるものを、負であるものをと書く。は『ルートa』と読む。

一方、負の数aについて考えてみても上手くbを見つけることはできない。実は負の数の平方根は実数で表すことはできない。

  • 正の数aの平方根はである。
  • 負の数aの平方根は実数の範囲では存在しない。


  • 問題例
    • 問題

の平方根を求めよ。

    • 解答

それぞれのルートを計算し、

をつければよい。ただし、平方根のルールに従って、簡単化できるものは簡単化することが 要求される。 例えば、

に対しては、

となる。

答え、

一般に、である。

平方根を含む式の計算[編集]

根号について、次の公式が成り立つ。

平方根の公式

のとき


  • 問題例
    • 問題

(1)

(2)

(3)

を計算せよ。

    • 解答

(1)

(2)

(3)

まず、乗法公式 を利用して展開する。詳細は「乗法公式」のセクションを参照のこと。


分母に根号を含まない式にすることを、分母を有理化するという。

また、について、

のとき、である。

たとえば、とする。

である。
  • 問題例
    • 問題

(1)

(2)

の分母を有理化せよ。

    • 解答

(1)

(2)

二重根号(発展)[編集]

二重根号とは、根号が2重になっている式のことである。二重根号は常に外せるわけではなく、根号の中に含まれる式によって簡単にできるかどうかが決まる。一般に、根号内の式が、の形に変形できる場合には、外側の根号を外すことができる。

  • 問題例
    • 問題
を簡単にせよ。
    • 解答
の形にできるかを考える。仮に、(a,bは正の整数)の形にできるとすると、
となり、

を満たす整数a,bを探せばよい。この関係は、a=1,b=2(a,bを入れ換えても可。)によって満たされるので、

が成り立つ。

よって、

となる。

2重根号

のとき

のとき


  • 問題例
    • 問題

次の式を計算せよ。
(i)

(ii)

    • 解答

(i)

(ii)

一次不等式[編集]

一次不等式[編集]

同じ大きさの量を=で結んだ式を方程式と呼ぶことを既に学習した。ここでは、異なった量の大きさの違いを表す記号を導入し、その性質についてまとめる。

ある数A,Bがあるとき、AよりBが大きいことをと表し、AがBより小さいことをと表す。ここで、<と>のことを不等号と呼び、このような式を不等式と呼ぶ。また、も似た意味の不等式であるが、それぞれAとBが等しい値である場合を含むものである。

という不等式があるとき、xは7より大きい実数である。また、の時には、xは7以上の実数である。

不等式では等式と同じように、両辺に演算をしても不等号の関係が変わらないことがある。例えば、両辺に同じ数を足しても、両辺の大小関係は変化しない。ただし、両辺に負の数をかけたときには、不等号の向きが変化することに注意が必要である。これは、負の数をかけると両辺の値は、0を中心に数直線を折り返した地点に移されることによる。

不等式の性質
1. ならば、
2. ならば、
3. ならば、


が成り立つときには、も成り立つ。また、が成り立つ。


不等式の性質を使って

の両辺から3を引くと

よって

となる。
このように、不等式でも移項することができる


グラフを用いて考えるとき、不等式はグラフ中の領域を表す。領域の境界は不等号を等号に置き換えた部分が対応する。これは、不等号が成立するかどうかがその線上で入れ替わることによっている。(詳しくは数学II 図形と方程式で学習する。)

  • 問題例
    • 問題

,,のグラフを描け。


  • 問題例
    • 問題

次の不等式を解け。
(i)

(ii)

(iii)

    • 解答

(i)

(ii)

(iii)

連立不等式[編集]

いくつかの不等式を組み合わせたものを連立不等式といい、これらの不等式を同時に満たすの値の範囲を求めることを、連立不等式を解くという。

  • 問題例
    • 問題

次の連立不等式を解け。
(i)

(ii)

    • 解答

(i)
から 

……(1)

から 

……(2)

(1),(2)を同時に満たすの値の範囲は

(ii)
から 

……(1)

から 

……(2)

(1),(2)を同時に満たすの値の範囲は


絶対値を含む不等式[編集]

絶対値を含む不等式について考えよう。
絶対値は、数直線上で、原点と点の間の距離を表している。
したがって、のとき



  • 問題例
    • 問題

次の不等式を解け。
(i)

(ii)

(iii)

(iv)

    • 解答

(i)

(ii)

(iii)

(iv)

二次方程式[編集]

解の公式[編集]

一般の二次方程式 a, b, c は定数、a ≠ 0)の解 x を求める公式について考える。

… (1)

ここで恒等式 と (1) の左辺を係数比較すると、

であるから、(1) の式は次のように変形できる(平方完成)。

のとき両辺の平方根をとると、

これが二次方程式の解の公式(にじほうていしきのかいのこうしき、quadratic formula; 二次公式)である。解の公式を二次方程式の一般形に代入すると、右辺は0になるはずである。

であることを用いると、

となり、確かに正しいことがわかる。

  • 問題
(i)
(ii)
(iii)
(iv)
(v)

をそれぞれ解の公式か因数分解を用いて解きなさい。

  • 解答

結果の式に根号が現れない場合には、何らかの仕方で因数分解ができる。しかし、いずれの方法を使うにせよ、根号はできる限りの仕方で簡単化することが重要である。

(i)は簡単に因数分解できるので、解の公式を用いる必要はない。

より、

が答えとなる。(ii)では、因数分解が出来ないので、解の公式を用いる。因数分解ができるかどうかは実際に試行錯誤して見分けるしかない。

に、解の公式を用いると、a=5, b= 2, c=-1より、

となる。(iii),(iv)でも、因数分解は出来ないので、解の公式を用いる。答えは、 (iii)

(iv)

(v)では、因数分解が可能であるが、発展的な内容なので、解の公式を用いてもよい。答えは、

となる。

  • 発展

(5)

は因数分解が出来る式である。実際にはこの式の因数分解は、高等学校数学II因数定理を使うのが簡単である。この定理を用いると、

を代入すると、

から、この式が(x+1)を因数として持つことがわかる。を(x+1)で割り算することで、(2x+1)が得られ、

が得られる。よってまたは、より、答えは、

となる。


の解の公式[編集]

二次方程式について考える。 解の公式に b= 2b' を代入すると

よって、二次方程式 の解は

となる。

  • 問題例
    • 問題

を上の解の公式を用いて解きなさい。

    • 解答

上の解の公式を用いると、a=3, b'= 3, c=-2より、

となる。


2次方程式の解の個数[編集]

2次方程式 の解は である。
この式の根号の中身だけ取り出したものを判別式と呼び、2次方程式の解の個数を簡単に判別できる。

の値によって次のようになる。

(1) のとき、異なる2つの解 を持つ。
(2) のとき、 であるので、2つの解は一致して、ただ1つの解を持つ。これは2つの解が重なったものと考えて、重解という。
(3) のとき、実数の範囲では解はない。

2次方程式 の解の個数はの値で判定できる。

2次方程式の解の個数

2次方程式 の解は とするとき

  • 異なる2つの実数の解をもつ
  • 重解をもつ
  • 解はない
  • 問題

次の2次方程式の解の個数を求めよ。

(I)

(II)

(III)


  • 解答

(I)

だから、解はない。
(II)

だから、重解をもつ。
(III)

だから、異なる2つの実数の解をもつ。