高等学校 地学/太陽系の天体

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 太陽を除いて、太陽系を作る惑星などの大きな天体は、全て同じ方向に、ほぼ同一平面上を、ほぼ円軌道で回っています。これは、太陽系の天体が約46億年前に、ゆっくりと回転する星間物質から作られたからだと考えられています。

惑星の誕生[編集]

 星間ガスが自身の重力で収縮し、真ん中に太陽が出来ました。これ以降は、万有引力の力に遠心力を加えたものを重力と呼ぶのではなく、2つの物体が引き合う力を重力とよびます。原始太陽系星雲は、残った星間ガスが円盤状に集まって出来ました。ここで原始惑星が誕生しました。火星の現在の半径と木星の軌道半径の距離から、その外側にある原始惑星は、原始太陽系星雲が尽きる前に周囲のガスを引き寄せ、巨大ガス惑星になりました。原始太陽系星雲は、太陽からの距離が遠いほど、ガスや塵の量が少なくなります。原始惑星は土星の軌道半径よりも太陽から遠いため、ガスはあまり得られませんが、氷を手に入れて巨大氷惑星となりました。

 火星の軌道半径と木星の軌道半径の距離が大きく変わらなければ、その中にある原始惑星はあまり成長しません。そのため、原始太陽系星雲からガスを引き込めません。金星、地球、火星の大気は、小惑星や微惑星が衝突してきた内部から生まれています。生物の働きによって、地球の大気の成り立ちも変わってきます。そのため、地球型惑星とガスやの巨大氷惑星では、大気が大きく違います。

惑星の特徴[編集]

 8個の惑星のうち、水星、金星、地球、火星は、太陽に近く、半径は小さくても平均密度が大きく、岩石の表面を持つため、地球型惑星と呼ばれています。木星、土星、天王星、海王星は、太陽から遠く離れていて、半径は大きいのに平均密度が低く、固体表面が見られないため、木星型惑星と呼ばれています。天王星と海王星は、木星型惑星のうちの1つです。氷が多く、水素やヘリウムが少ないので、巨大氷惑星と呼ばれています。

地球型惑星[編集]

 水星は、地球に次ぐ2番目に平均密度が高く最も小さな惑星です。これは、鉄の核がその大部分を占めているからです。水星には大気や液体の水がないため、太陽系の初期の時代に小惑星が衝突して出来たクレーターがそのまま残っています。また、水星には大気がなく、太陽が北から南へ往復するのに約180日かかるため、太陽光が当たる場所と当たらない場所で大きな温度差があります。

 金星は地球とほぼ同じ大きさで、内部の化学組成も似ていますが、その表面は大きく異なっています。金星は二酸化炭素を主成分とする厚い大気を持ち、大気の圧力は地球の約90倍になります。温室として機能しているため、地表の温度は約460℃にもなります。金星は他の惑星に比べ、自転が遅れています。自転周期は約243日なので、公転周期(約225日)よりも長くなっています。上空約60キロメートルでは、空気が秒速100メートルの速さで動いており、金星を1周するのに約4日かかります。これはスーパーローテーションと呼ばれています。

 地球の内部が高温なのは、地球が出来た時からある熱と放射性同位体が分解する時に出来る熱だからです。そのため、マントルの対流やプレート運動が起こり、地震や火山、造山運動が起こり、地表に変化をもたらしています。また、適温を保つ大気があるおかげで液体の水が存在し、地球上では珍しい海を維持出来ました。海洋は、多くの生物の誕生と発展、そして大気の成り立ちに大きな影響を与えてきました。

 火星の表面環境は、地球と最もよく似ています。自転周期は約24.6時間、自転軸の傾きは公転面に対して約25.2度と地球とほぼ同じです。また、季節の変化も確認されています。季節によって、火星の極付近にある氷やドライアイスで出来た極冠の大きさが変化します。

 火星の大気は薄く、圧力は地球の約です。これは、大きさが小さく、重力が小さいからです。大気のほとんどは二酸化炭素ですが、大気が薄いので温室効果はそれほどありません。場所や時期によって、地表の温度は約-125℃から20℃の幅があります。この温度差が、砂嵐やモンスーン風を引き起こします。地球でいう台風のような大きな大気の渦は、ハッブル宇宙望遠鏡でも確認されています。

 火星には、太陽系で最も荒れた地形と大きな火山があります。これまで複数の探査機が火星に着陸し、極付近を除く表面の砂の下に氷のような白い物質や液体の水が作ったような地形が見つかっています。かつて、火星にも液体の水が大量に存在したかもしれません。

木星型惑星[編集]

 木星は、太陽系最大の惑星です。その平均密度や組成は、太陽と似ています。中心に近いほど圧力が高いので、表面付近の気体は水素とヘリウムですが、それ以下は液体水素で、中心では金属水素に変わります。ここで、金属元素とは、陽子と電子に分解された液体水素をいいます。科学者達は、その中心には岩石と氷で出来た核があり、その重さは地球全体の約10倍にもなると考えています。太陽系の始まり、原始太陽系星雲中では、重い鉄は太陽の方に引っ張られました。そのため、木星には地球型惑星のような鉄の核がありません。

 木星の大気は通常東西に動いていて、赤茶色と白の帯状になっています。上昇気流によって、明るい白い部分にアンモニアの雲が発生すると、太陽の光を強く反射します。暗い部分は下降気流です。南半球で見られる大赤斑の大きさは、地球の約3倍あります。

 木星の表面は、太陽から受けるエネルギーのほぼ2倍のエネルギーを放出しています。これは、木星が形成される時に自己重力によって収縮した時に出来た熱をゆっくりと放出するためだと考えられています。

 土星は、太陽系の惑星の中で最も平均密度が低い惑星です。水よりもさらに小さい密度です。また、土星の表面には縞模様や白斑がありますが、これは大気の動き方が原因です。地球から見ると、土星の環は円盤のように見えますが、実は無数の小さな氷と珪酸塩からなる岩石の集まりです。

 土星は磁場が強く、緯度の高い場所ではオーロラが見られる現象がハッブル宇宙望遠鏡で確認されています。また、他の木星型惑星にも磁場があります。木星も土星も自転が速く、大きな偏平率を持っています。

 天王星の大気に含まれるメタンが赤色光を吸収するため、地表が青く見えます。天王星は、自転軸が公転面から約98度、横に傾いており、これが他の惑星と違っています。そのため、天王星の衛星軌道も、天王星の公転面に対して同じように傾いた軌道を描いています。

 海王星の大気にはメタンが含まれているため、天王星と同じように表面が青い色をしています。また、内部には水、アンモニア、メタンからなる氷が多くあると考えられています。他の木星型惑星と同じように、赤道と同じ方向に風が吹いているため、表面に黒い斑点や縞模様が見られます。

太陽系のいろいろな天体[編集]

 近年の観測技術の向上により、太陽系の惑星以外の天体がより詳しく見えたり、初めて発見されたりするようになりました。

太陽系外縁天体[編集]

冥王星

 1930年に発見された冥王星は、2006年まで第9惑星と考えられていました。1990年代には海王星以外の小天体が多数発見され、21世紀には冥王星より大きな天体(エリス)が発見されました。2006年に太陽系の惑星の定義が定められ、冥王星を含むこれらの天体は惑星ではなく太陽系外縁天体と呼ばれるようになりました。冥王星型天体は、冥王星や大きな天体のように太陽系外縁天体の中でも、かなり大きい天体を指します。

 太陽系外縁天体には、今後も多くの天体が発見される可能性があり、太陽系に関する考え方はどんどん広がっていくでしょう。

小惑星[編集]

小惑星イトカワ

 小惑星の多くは、火星と木星の間にある小惑星帯と呼ばれる領域にあります。最も大きなセレスは、幅が480キロメートルほどしかありません。科学者達は、小惑星帯について、原始太陽系の微惑星がそのまま残っている場合や原始惑星に成長した後、衝突によって壊れた場合が混じっていると考えています。地球に落ちてくる隕石の多くは小惑星から飛来しています。

隕石[編集]

隕石

 隕石は、橄欖岩のような石質隕石、鉄やニッケルからなる鉄隕石、その中間の石質隕石の3つに分けられます。コンドライトとは、石質隕石の一部に含まれる球状の珪酸塩鉱物(コンドリュール)をいいます。コンドリュールとは、高温で溶けた珪酸塩が急速に冷えて、無重力状態で球状に固まった物質です。コンドリュールは、惑星形成時期の状態を保存していると考えられています。地球に落ちてくる隕石の約8割はコンドライト隕石です。鉄隕石は、太陽系が誕生したばかりの頃、原始惑星の中心部で出来た鉄とニッケルの合金が、原始惑星同士の衝突で破壊された破片と考えられています。このような理由から、隕石は地球や太陽系の歴史、そして地球の内部を知るために有効な手段です。

彗星[編集]

彗星

 直径数kmから数十kmの氷や塵で出来た天体が太陽に近づくと、コマや尾を作ります。これが彗星です。彗星の核と呼ばれる本体は、太陽系が若かった頃、太陽系外縁部で形成された物質で出来ていると考えられています。彗星の核が太陽に近づくと、揮発性成分(氷やドライアイス)が蒸発し、核の周りに雲をつくります。この雲をコマといいます。揮発性成分の一部は太陽風に吹き飛ばされたり、小さな固体粒子が太陽の光圧で吹き飛ばされたりして太陽の反対側へ移動します。これが尾になります。

 ほとんどの彗星は、離心率をもつ大きな楕円軌道で太陽の周りを回っています。しかし、中には太陽に戻らない放物線軌道や双曲線軌道の彗星もあり、さらに惑星の重力が全てに影響するため、途中で軌道を変える彗星もあります。

 彗星がどこから来るかはまだはっきりしませんが、一説には、海王星が太陽の周りを回る距離の1000倍以上(太陽から約30天文単位)の距離からやってくると言われています。そこで、太陽系の周りには雲のような形をした天体が数多くあると考えられています。この雲は、オールトの雲と呼ばれています。しかし、この雲を作っている天体は、まだ科学者達でも見つかっていません。

 彗星の塵は軌道上に広がり、地球が公転してその軌道を横切ると、塵は地球の大気圏にぶつかり、流星として見られます。地球の軌道と彗星の軌道が交わると、毎年ある時期に彗星軌道の塵が大量に地球の大気に入り込み、多くの流星が見られるようになります。これを流星群といいます。

衛星[編集]

 衛星とは、宇宙空間で惑星や他の天体の周りを回っている天体をいいます。

 月は地球の衛星です。表面は岩石から出来ていますが、平均密度は地球よりそれほど大きくありません。これは、月の中心部に地球ほど多くの鉄がないためだと考えられます。この理由として最も有力なのは、初期地球の核とマントルが分裂した頃に、火星ほどの大きさの原始惑星が衝突して、その破片が月となったというジャイアント・インパクト説です。

ガリレオ衛星

 木星には、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストの4つの大きなガリレオ衛星があります。月とほぼ同じ大きさのイオには、太陽系で最も活発な火山活動が見られます。木星探査機ガリレオは、現在も噴火を続けている18の火山を発見しています。これは、木星の起潮力によってイオの形が頻繁に変わり、内部が高温になるためと考えられます。また、木星の衛星エウロパの表面には、厚い氷で覆われているのがガリレオの観測で分かっています。地下には液体の水があり、生命が存在するかもしれないと考えられています。


 タイタンは土星最大の衛星です。その厚い大気中は、メタン、水蒸気、窒素で成り立っています。その中のメタンは、地球の水のように動き回り、気体から液体、固体に変化しているという説もあります。タイタンの大気には、タンパク質の元になる物質があります。タンパク質が出来るかもしれないので、タイタンには生命が存在するかもしれないと考えられています。

太陽系以外にある惑星(系外惑星)
 近年では、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などの大型望遠鏡を使って、肉眼で見える太陽系外惑星を見つけられるようになってきました。一方、恒星の周りを回る惑星の重力によって恒星の位置が変化する様子や惑星が恒星の前を通過する時に恒星が周期的に暗くなる様子を見ながら、間接的に太陽系外惑星を探せます。NASAのケプラー探査機は、この方法で太陽系外惑星を探すため、2009年に宇宙へ送り出されました。2015年現在、1800個以上の太陽系外惑星が見つかっています。その中には、地球の何倍もの質量を持ち、ほとんどが地球と同じ岩石や金属で出来ている巨大な地球型惑星(スーパー・アース)もあります。