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CP/M

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

はじめに

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CP/M(Control Program for Microcomputers)は、1974年にGary Kildallによって開発された8ビットコンピュータ向けの初期オペレーティングシステムです。本ハンドブックでは、CP/Mの基本的な使用方法から高度な機能まで、実践的な例を交えて解説します。

第1章:基本コマンド

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1.1 ファイルシステム操作

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CP/Mのファイルシステムは、8文字のファイル名と3文字の拡張子で構成されています。

ディレクトリの表示 (DIR)

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現在のディスクのファイル一覧を表示します:

A>DIR
A: BASIC    COM : PIP      COM : STAT     COM
A: TEST     TXT : LETTER   DOC

ワイルドカードを使用した検索:

A>DIR *.COM
A: BASIC    COM : PIP      COM : STAT     COM

ファイルのコピー (PIP)

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Peripheral Interchange Program (PIP) を使用してファイルをコピーします:

A>PIP B:=A:LETTER.DOC
A>PIP B:=A:*.COM

ファイルの名前変更 (REN)

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A>REN NEWNAME.TXT=OLDNAME.TXT

1.2 システム操作

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ディスク変更

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A>B:
B>

システム状態の表示 (STAT)

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A>STAT
A: R/W, Space: 23K

第2章:テキストエディタ(ED)の使用

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2.1 基本的な編集操作

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EDエディタの基本コマンド:
A>ED DOCUMENT.TXT
*I
This is new text.
^Z
*W
*E
主なコマンド:
  • I: 挿入モード
  • W: 変更を書き込む
  • E: エディタを終了
  • H: ヘルプ表示

2.2 高度な編集機能

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検索と置換:
*S/old/new/

第3章:CP/Mのプログラミング

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3.1 アセンブリ言語プログラミング

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基本的なアセンブリプログラム例:

        ORG     100H
START:  MVI     C,9            ;PRINT文字列機能
        LXI     D,MESSAGE      ;メッセージのアドレス
        CALL    5              ;BDOSコール
        RET                    ;終了

MESSAGE:DB      'Hello, CP/M!$'
        END     START

3.2 BDOS関数の利用

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主なBDOS関数:
CONIN   EQU     1      ;コンソール入力
CONOUT  EQU     2      ;コンソール出力
PRINT   EQU     9      ;文字列出力

第4章:システム構成

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4.1 メモリ構成

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CP/Mのメモリマップ:
HIGH MEMORY
+----------------+
|    BIOS
+----------------+
|    BDOS
+----------------+
|    CCP
+----------------+
|    TPA
+----------------+
LOW MEMORY (0000H)

4.2 BIOSカスタマイズ

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基本的なBIOS関数:
BOOT:   ;システム起動
WBOOT:  ;ウォームブート
CONST:  ;コンソール状態確認
CONIN:  ;コンソール入力
CONOUT: ;コンソール出力

第5章:CP/Mの歴史

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5.1 開発の経緯(1974年)

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Gary Kildallは、Intel Intellec-8開発システム用のオペレーティングシステムとしてCP/Mを開発しました。

主な開発段階:
  1. 1974年: 最初のバージョン開発
  2. 1976年: CP/M 1.3リリース
  3. 1978年: CP/M 1.4リリース(大きな成功)

5.2 成長期(1978-1983)

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CP/M 2.2の主な特徴

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  • ファイルシステムの改善
  • 複数ディスクドライブのサポート
  • 豊富なアプリケーションの登場

5.3 最盛期と影響

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CP/M 3.0(CP/M Plus)の革新

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  • バンク切り替えによるメモリ管理
  • パスワード保護
  • 日付・時刻管理

他のOSへの影響

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  1. MS-DOSのコマンド体系
  2. ファイルシステムの概念
  3. アプリケーション開発の標準化

5.4 遺産と教訓

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CP/Mが残した重要な概念:
  1. ポータブルなOS設計
  2. ハードウェア抽象化層(BIOS)
  3. 標準化されたシステムコール

まとめ

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CP/Mは、パーソナルコンピュータの初期における標準的なオペレーティングシステムとして、現代のコンピューティングの基礎を築きました。その設計思想や機能の多くは、現代のオペレーティングシステムにも影響を与えています。

附録:よく使用するコマンド一覧

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  • DIR: ディレクトリ表示
  • PIP: ファイルコピー
  • ERA: ファイル削除
  • REN: ファイル名変更
  • STAT: システム状態表示
  • ED: テキストエディタ
  • ASM: アセンブラ
  • LOAD: HEXファイルローダー