Tripwire
はじめに
[編集]Tripwireは、システムの整合性を監視し、ファイルやディレクトリの不正な変更を検知するためのオープンソースのセキュリティツールです。本ハンドブックでは、Tripwireの導入から運用まで、システム管理者が必要とする情報を包括的に解説します。
基本概念
[編集]Tripwireは、ファイルシステムのベースラインスナップショットを作成し、定期的なチェックを通じて変更を検知します。これは、暗号学的ハッシュ関数を使用して各ファイルの特徴を記録し、後続のスキャンで変更を特定する仕組みです。
システムファイルの
インストールと初期設定
[編集]Tripwireのインストールは、多くのLinuxディストリビューションでパッケージマネージャーを通じて行えます。Debian系システムでは以下のコマンドでインストールできます:
doas apt-get update doas apt-get install tripwire
インストール時に、2つの重要な暗号鍵が生成されます:サイト鍵とローカル鍵です。サイト鍵はポリシーファイルの保護に使用され、ローカル鍵はデータベースファイルとレポートの保護に使用されます。これらの鍵は安全に保管する必要があります。
ポリシーファイルの設定
[編集]ポリシーファイルは、監視対象とするファイルやディレクトリ、およびそれらの属性を定義します。標準のポリシーファイルは以下のような重要なシステムファイルとディレクトリを含みます:
- システムバイナリ(/bin、/sbin)
- 設定ファイル(/etc)
- システムライブラリ(/lib)
- ユーザーホームディレクトリ
- ログファイル
各エントリには、監視する属性(パーミッション、所有者、サイズ、ハッシュ値など)を指定できます。
データベースの初期化と更新
[編集]ポリシーファイルを設定した後、初期データベースを作成します:
doas tripwire --init
システムに正当な変更を加えた場合は、データベースを更新する必要があります:
doas tripwire --update
定期的な整合性チェック
[編集]Tripwireによる整合性チェックは、cronジョブとして設定することで自動化できます。チェックの実行時には、詳細なレポートが生成され、検出された変更が報告されます。
以下のようなcrontabエントリで、毎日午前4時にチェックを実行できます:
0 4 * * * /usr/sbin/tripwire --check
アラート設定
[編集]変更が検出された場合、システム管理者に通知することが重要です。Tripwireのレポートは、電子メールで送信するように設定できます。これにより、迅速な対応が可能になります。
インシデント対応
[編集]変更が検出された場合の対応手順を以下に示します:
- レポートを詳細に分析し、変更の性質を特定する
- 正当な変更である場合は、データベースを更新する
- 不正な変更の場合は、システムの調査を開始し、必要に応じてバックアップからの復元を検討する
- インシデントの記録を保管し、再発防止策を検討する
セキュリティ上の考慮事項
[編集]Tripwireの効果的な運用には、以下の点に注意が必要です:
- 暗号鍵の安全な管理
- ポリシーファイルの定期的な見直しと更新
- データベースファイルのバックアップ
- レポートの安全な保管
- 誤検知の最小化
結論
[編集]Tripwireは、システムの整合性監視において強力なツールですが、その効果は適切な設定と運用に大きく依存します。本ハンドブックで解説した方針に従い、組織のセキュリティ要件に合わせて適切にカスタマイズすることで、効果的なファイル改竄検知システムを構築できます。