Zlib

zlib は、データ圧縮と展開のためのオープンソースのライブラリであり、特に 汎用性 と 互換性 に優れています。zlib は、Deflate アルゴリズムをベースにしており、さまざまなアプリケーションで広く使用されています。

主な特徴

Deflate アルゴリズムの実装
- zlib は、Deflate アルゴリズム（LZ77 圧縮と Huffman 符号化の組み合わせ）を実装しています。
- gzip や PNG などの形式で使用される圧縮アルゴリズムです。
オープンソース
- zlib は、zlibライセンス の下で提供されており、商用・非商用のどちらでも自由に使用できます。
軽量な設計
- zlib は非常に軽量で、リソースの少ない環境でも適しています。
クロスプラットフォーム
- zlib は、UNIX、Windows、macOS、Linuxのディストリビューションなど、ほぼすべての主要なプラットフォームで動作します。
エラー処理とストリームサポート
- 圧縮や展開中のエラー処理が可能で、データストリーム（リアルタイムデータ）の処理をサポートしています。
広範な互換性
- gzip や PNG など、広く使用されているフォーマットに直接対応しています。

主な利用用途

ファイル圧縮と展開
- gzip や zlib フォーマットのファイルを操作。
画像フォーマット
- PNG 画像の圧縮・展開に使用されるライブラリ。
ネットワーク通信
- HTTP リクエスト/レスポンスの圧縮（Content-Encoding: gzip）で使用。
ゲームやデータベース
- データの保存や転送時の効率化。
ライブラリやアプリケーション
- 多くのソフトウェアで zlib は内部的に使用されています（例: Python、Node.js、MySQL など）。

zlib の主な関数

zlib の主な関数は以下の通りです。

圧縮
- compress()
  与えられたデータを zlib フォーマットで圧縮します。
- compress2()
  圧縮レベルを指定してデータを圧縮します。
展開
- uncompress()
  zlib 圧縮されたデータを展開します。
ストリーム処理
- inflate()
  圧縮データをストリーム形式で展開します。
- deflate()
  ストリーム形式でデータを圧縮します。
圧縮バッファサイズの計算
- compressBound()
  圧縮後の最大サイズを予測します。

使用例 (C言語)

以下は zlib を使用してデータを圧縮・展開するシンプルな例です。

#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <zlib.h>

int main() {
    const char *input = "Hello, zlib! This is a test for compression and decompression.";
    size_t input_len = strlen(input);
    unsigned char compressed[100];
    unsigned char decompressed[100];
    uLong compressed_len = sizeof(compressed);
    uLong decompressed_len = sizeof(decompressed);

    // データの圧縮
    if (compress(compressed, &compressed_len, (const Bytef *)input, input_len) != Z_OK) {
        printf("Compression failed.\n");
        return 1;
    }
    printf("Compressed size: %lu bytes\n", compressed_len);

    // データの展開
    if (uncompress(decompressed, &decompressed_len, compressed, compressed_len) != Z_OK) {
        printf("Decompression failed.\n");
        return 1;
    }
    printf("Decompressed: %s\n", decompressed);

    return 0;
}

zlib のメリットと制限

メリット

軽量で効率的。
広範なプラットフォームで利用可能。
他の多くのライブラリやアプリケーションでサポートされている。

制限

圧縮速度や圧縮率では、専用の高速ライブラリ（例: libdeflate, zstd）に劣る場合がある。
API がやや低レベルであるため、高度な操作には知識が必要。

インストール方法

Linux

sudo apt install zlib1g zlib1g-dev   # Debian系
sudo yum install zlib zlib-devel     # Red Hat系

FreeBSD
```
doas pkg install zlib
```
Windows
- MinGW や MSYS2 環境でインストール可能。

ソースコードからビルド

wget http://zlib.net/zlib-1.2.13.tar.gz
tar -xvzf zlib-1.2.13.tar.gz
cd zlib-1.2.13
./configure
make
sudo make install

zlib と他のライブラリとの比較

ライブラリ	特徴	圧縮速度	圧縮率	主な用途
zlib	標準的で広く使われている	中程度	中程度	一般的な用途
libdeflate	高速かつ高圧縮	非常に高速	高い	高性能用途
zstd	次世代高速圧縮	高速	高い	モダンな圧縮システム
bzip2	高い圧縮率だが速度は遅い	遅い	非常に高い	ファイル圧縮 (例: tar)
gzip	zlib を基にしたファイル形式	中程度	中程度	ファイル圧縮

結論

zlib は、信頼性が高く、幅広い用途で使用されている圧縮ライブラリです。PNG 画像や gzip 圧縮など、日常的なソフトウェアでも頻繁に使われており、現在でもその重要性は高いです。他の高速ライブラリと比較してやや速度が劣る場合がありますが、汎用性と互換性において非常に優れています。