刑法第254条
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条文
[編集](遺失物等横領)
- 第254条
- 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
[編集]- 本条で定める遺失物物等横領(占有離脱物横領)は、いわゆる横領罪の類型とは異なり、所有者との間に委託信任関係、すなわち、物の占有の権能を行為者は有しておらず、占有を離れた物をたまたま取得し、本来であれば、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還又は警察署長に提出しなければならない義務がある(遺失物法第4条)ところ、そのまま、取得してしまうことにより成立する。
- 本法においては、「占有を離脱したか否か」が問題となり、占有を離脱していないと判断される場合、本条ではなく窃盗罪等が問われる。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 占有離脱物横領(最高裁判決昭和23年12月24日)刑法第256条
- 盗品たる占有離脱物の横領と賍物収受罪の成否
- 被告人は、判示の米五俵が占有を離れた他人の物であることを認識しながら、不法にこれを領得しようと決意して、自宅の蔵の内に匿い込んだというのであるから、これはまさしく刑法第254条の横領罪に該当する。仮に所論のように、被告人が右の米の盗品であることを認識していたとしても、不法領得の意思を以て之れを拾得した以上、同条所定の横領罪が成立するのであつて所論のように賍物収受罪が成立するのではない。
- 窃盗(最高裁決定昭和32年1月24日)
- 海中に取り落した物件について所持の認められる一事例
- 海中に取り落した物件については、落主の意にもとづきこれを引き揚げようとする者が、その落下場所の大体の位置を指示し、その引揚方を人に依頼した結果、その人が該物件をその附近で発見したときは、依頼者がその発見された事実を知らなくても、依頼者はその物件に対し所持即ち事実上の支配管理を有するものと解すべきである。
- 窃盜、同未遂(最高裁判決昭和32年11月8日)
- 刑法上の占有の意義
- 刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であつて、その支配の態様は物の形状その他の具体的事情によつて一様ではないが、必ずしも物の現実の所持または監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以つて足りる。
- 占有離脱物と認められない一事例
- 被害者がバスを待つ間に写真機を身辺約30cmの個所に置き、行列の移動に連れて改札口の方に進んだが、改札口の手前約3.66mの所に来たとき、写真機を置き忘れたことに気づき直ちに引き返したところ、既にその場から持ち去られていたもので行列が動き始めてからその場所に引き返すまでの時間は約5分、写真機を置いた場所と引き返した点との距離は約19.58mに過ぎないような場合は、未だ被害者の占有を離れたものとはいえない。
- 刑法上の占有の意義
- 強姦致傷、強姦、殺人、死体遺棄、窃盗(最高裁判決昭和41年4月8日)
- 人を殺害した後被害者が身につけていた財物を奪取した行為が窃盗罪にあたるとされた事例
- 野外において人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後その現場で、被害者が身につけていた腕時計を奪取する行為は、窃盗罪を構成する。
- 披告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかつたが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであつて、このような場合には、被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなうものというべきである。そうすると、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきであるから、右奪取行為は、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成するものと解するのが相当である
- 窃盗(最高裁判決 昭和62年4月10日)
- ゴルフ場内のいわゆるロストボールが窃盗罪の客体になるとされた事例
- ゴルフアーが誤つてゴルフ場内の人工池に打ち込み放置したいわゆるロストボールも、ゴルフ場側が早晩その回収、再利用を予定しているときは、ゴルフ場側の所有及び占有に係るものとして窃盗罪の客体になる。
- 窃盗被告事件(最高裁決定 平成16年8月25日)
- 公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為が窃盗罪に当たるとされた事例
- 公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為は,被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で行われたことなど判示の事実関係の下では,窃盗罪に当たる。
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