「中学数学1年 正負の数」の版間の差分

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
削除された内容 追加された内容
278 行 278 行
図を見てわかるように、2秒後では−4m東へ、3秒後では-6m東へ行っていることがわかる。
図を見てわかるように、2秒後では−4m東へ、3秒後では-6m東へ行っていることがわかる。
さらに、2秒前は4m東へ、3秒後では6m東へ行っている。だから、正の数と負の数の積は負の数になり、負の数どうしの乗算の積は正の数になる。
さらに、2秒前は4m東へ、3秒後では6m東へ行っている。だから、正の数と負の数の積は負の数になり、負の数どうしの乗算の積は正の数になる。
今は、東(西)に0m進んでいると考えることができる。


{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
{| style="border:2px solid skyblue;width:80%" cellspacing=0
285 行 286 行
* 二つの数が同符号なら、積の符号は正、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
* 二つの数が同符号なら、積の符号は正、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
* 二つの数が異符号なら、積の符号は負、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
* 二つの数が異符号なら、積の符号は負、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
* どんな数に対しても、0をかけると0
|}
|}


326 行 328 行
:#) 2×2×(−1)×(−4)
:#) 2×2×(−1)×(−4)
:#) 5×(−1)×(−2)×(−4)
:#) 5×(−1)×(−2)×(−4)



=== 除法 ===
=== 除法 ===

2019年9月21日 (土) 23:43時点における版

加法・減法

足し算のことを加法(かほう、英:addition アディション)といい、引き算のことは減法(げんぽう、英:subtraction サブトラクション)という。

また、加法した結果を(わ、英:sum サム)、減法した結果を(さ、英:difference ディファレンス)という。


正の数、負の数とは

小学校の理科で、気温で、冬のさむい日などに「気温がマイナス4度」などのような表現を習っている。

マイナス4度とは、ゼロ度の気温よりも4度だけ寒い温度である。

このように、ゼロよりも小さい数の計算をこの単元では考えていく。


小学校段階の数学(算数)では、小さい数から大きい数を引くことは出来ないこととしてきた。

しかし、小さい数から大きい数を引くことをゆるせば、いろいろと便利なことが多い。

そこで、小さい数から大きい数を引くことが出来るような数を新しく学んでいく。

まずは、この単元で習う言葉の説明をする。

正の数(せいのすう)
今までに普通に使ってきた数で、0より大きい数を正の数(せいのかず/すう、英:positive number ポジティブ・ナンバー)という。
例: 1 ,  12 ,  5.5 ,  など
負の数(ふのすう)
それに対して、ここで新しく学ぶ、0より前の小さい数を負の数(ふのかず/すう、英:negative number ネガティブ・ナンバー)という。0より小さい数を表すために、-(マイナス、minus)というものを数の前につける。ここで用いられる数の前のマイナス記号「-」は、小学校の引き算で用いた「-」と、同じ記号である。これから、この本で説明するが、つまり0より小さいことを表す記号と、引き算の記号とは、同じような計算方法をすることになる。そのため、0より小さいことを表す記号と、引き算記号とで、同じ記号を用いている。
例: -1 ,  -12 , -5.5 ,   など
 「-1」は「マイナス1」と読む。 「-12」は「マイナス12」と読む。

ただし「0」は、「正の数」、「負の数」のどちらにも当てはまらない

符号
数の値が、0よりも大きいか、小さいかの区別を、数の符号(ふごう、sign サイン)と呼ぶ。
数の符号を表すために、数字の前に付ける記号もまた符号(ふごう、sign サイン)と呼ばれ、正の符号と負の符号の2種類がある。
正の数を表すには、正の符号(英:plus sign プラス・サイン)として (プラス) を使う。足し算の記号の + と同じ記号である。ただし、この数の前の符号としての+は、必要がないかぎり普通は省略して、書く手間をはぶく。いっぽう、足し算の記号としての、足す数と足される数との間にある + は、けっして省略してはならない。これから、この本で説明するが、つまり0より大きいことを表す記号と、足し算の記号とは、同じような計算方法をすることになる。そのため、0より大きいことを表す記号と、足し算記号とで、同じ記号 + を用いている。

また、負の数を表すには、負の符号(英:minus sign マイナス・サイン)である (マイナス) を使う。 数の大きさを表す 0 には、特別な理由が無いかぎりは正の符号 + も負の符号 - も付けないのが普通である。

なお実は「±」(プラスマイナス)という記号があるが、中学1年の数学では不要なので、説明しない(※ 中1数学の検定教科書でも±については触れてない)。


数直線(すうちょくせん)

数を直線上の点に対応させた直線を数直線(すうちょくせん、英:number line ナンバー・ライン)という。数直線を使うと、数の大小をわかりやすくすることができる(下図)。 これは、ある直線上に原点(げんてん、英: origin オリジン、意味:0の位置)と単位点をとることで完成する。単位点とは、「ここが1」「ここが-5」というように、原点からの距離をあらわす点である。 数直線では、右に行くほど大きな数になり、逆に左に行くほど小さな数になる。


数直線




読者の中には「面積や体積のように、直線では表しづらい量の正負は、どうやって表すのか?」という疑問をいだく人もいるだろうが、とりあえずは、まず直線上の正負について考えていただきたい。この本の後の節で、面積や体積などのような量の場合の正負についても解説をする。


整数(せいすう)
1 , 2 , 3 , ・・・などといった、1の位よりも小さい位のない数を整数(せいすう、英: integer インテジャー, 独: Ganze Zahl ガンツェ ツァール)という。整数には-1,-2,-3,・・・といった負の数や、0も含まれる。
1 , 2 , 3 , ・・・などのような、正の数の整数を正の整数(せいの せいすう、positive integer)という。
-1 , -2 , -3 , ・・・などの負の数の整数を負の整数(ふの せいすう、negative integer)という。


※ 小数や分数は、普通は整数ではない。たとえば1.3とか は整数ではない。例外的に 1.0 とか など割り切れる数は整数である。


自然数(しぜんすう)
中学校では正の整数のことを 自然数(しぜんすう、英: natural number ナチュラル・ナンバー) という。具体例をあげると、たとえば1や2や3や10や47は、どれも自然数である。

そのため、「0」や、小数・分数は自然数とはいえない。

たとえば 1.3 や は自然数ではない。

※ なお高校や大学では、場合によっては 0 を自然数に含める場合もある。大学でも、マイナスの数は自然数にふくめないのが普通であるし、小数や分数も大学では自然数にふくめないのが普通。 
絶対値(ぜったいち)
数直線上でのある数と原点の距離をその数の絶対値(ぜったいち、英: absolute value アブソリュート・バリュー)という。上の図のように、たとえば5は原点からの距離が5なので、絶対値は5である。また、(−6)は原点からの距離が6なので、絶対値は6である。
簡単にいえば、ある数から符号を取るとその数の絶対値となる。
発展: ある数○の絶対値を、記号を用いて |○| と表す。
例: |-9| = 9 、 |8| = 8 、 |-294| = 294
項(こう)
式を加法(たし算)だけに直したときのまとまりを 項(こう、英:term ターム) という。例えば 6+12-54 という式では、 6+12+(-54) となるので、項は 6、12、-54 の 3つ である。また、項には正の項(せいのこう)と負の項(ふのこう)がある。例えば 6+12-54 という式、または 6+12+(-54) という式では、正の項は 6 と 12 である。負の項は -54 である。

量を表す

正の数や負の数は、互いに逆の性質を持つ事柄(ことがら)を、まとめて示す(しめす)ときに使うことができる。

たとえば、200円の収入を"+200円の収入"としたとき、300円の支出は"-300円の収入"とあらわすことができる。

このように示すときには、どちらを正の数として表すのかはっきりさせる必要がある。

前の例で支出を基準とすると、それぞれ、"-200円の支出"、"300円の支出"といえるからだ。

また、このように基準を決め、その基準からの過不足(どのくらい多い、または少ないか)や増減を、正の数・負の数で表すこともできる。

たとえば、1日に20分走る、という目標を立てた人が30分走ったとすると、目標より10分長いから"+10分"
15分だけ走ったとすると、目標より5分短いから、"-5分"と表せる。

これを利用すると、平均を出すことも簡単にできる。

上の例で、2日間での、1日あたりに走った時間の平均を求めてみよう。
目標を基準としたときの増減はそれぞれ、"+10"、"-5"で、
平均はそれらすべてを足して、個数で割ればいいから、
(+10)+(-5) = +5
で、平均は+2.5となる。これは、基準と比べたときの値だから、答えは22.5分(22分30秒)となるのがわかる。
負の数の計算のしかたは加法・減法のセクションを見てみよう。

正の数と負の数との大小

正の数と負の数とを転換させることについて考えてみよう。

たとえば、ある地点から東に 3km のところにいるとする。そのとき、"西に−3km"といえる、ということは学習した。 このように、正の数を負の数へ、また、負の数を正の数にすることを符号を変えるという。 符号を変えた数は、数直線上では原点についてちょうど反対側にある。符号を変えても、0からの距離、つまり絶対値は等しいままである。つまり、符号が逆の数字どうしは絶対値が等しい。

数を数直線上に表すとき、必ず右に行くほど大きくなるように並べる。

数の大小をまとめてみると、

 ---------負の数-------->|0|<----------正の数-------
 <----|----|----|----|----|----|----|----|----|---->
     -4   -3   -2   -1    0    1    2    3    4

この数直線では右へ行くほど大きいので

* 正の数は負の数よりも大きい
* 正の数は0よりも大きい。また、絶対値が大きくなるほど、数も大きくなる
* 負の数は0よりも小さい。また、絶対値が大きくなるほど、数は小さくなる

ということがいえる。

< と > の記号は、2つの数の大小について表す記号で不等号(ふとうごう英:unstrict inequality sign)という。 これは、開いているほうが閉じているほうよりも大きい数であることを表す。 対して、2つの数について、大小の差がなく同じであることを表す記号 = は等号(とうごう、英:equals sign)という。

例: 5 は 3 より大きい・・・・・・ 5 > 3
-3 は 0 より小さい・・・・・・ -3 < 0

ここで、例えば「0は1より小さい」というのは 0<1 と書けるが、 1>0 と書くこともできる。また、これを「0は1より小さい」または「0は1未満(みまん)である」いうこともある。

負の数の加法と減法

加法

いままでは、正の数に正の数を足すことはしてきたが、負の数に正の数を足すことはしてこなかったことだろう。では、負の数に正の数を足す計算はどのようにすればよいか。やり方を考えてみよう。

そのための準備として、まず、正の数に正の数を足すことを数直線で表してみよう。

例: 2+3 = 5
                     3大きい
                o------------->|
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
      0         2              5

このように、2+3というのは数直線上で2から3だけ右に動いた数ということになる。同じようにして負の数に正の数を足してみよう。

例: (4)+3 = ?
          3大きい
      o------------->|
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
     -4             -1    0

(−4)から3だけ右に動いた数は-1ということがわかる。つまり、(-4)より3大きい数は(−1)ということになる。

⇒ (−4)+3 = (−1)

これで、正の数に負の数を足すことができるようになった。 これは、0をまたいでも同じようにできる。

例: (−1)+3 = 2
              3大きい
           o------------->|
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
          -1    0         2
つぎに、負の数を足すことを考えてみよう。
例: 3+(−1) = ?

#正の数と負の数との大小で学んだことを用いてみよう。
3+(-1)は「3よりも(-1)大きい数」だから、符号を変えると「3よりも(+1)小さい数」となる。よって、3より1小さい数を求めればよい。

例: 3+(−1) = ?
          3+(−1) = 3−(+1)
                 =   2
例: 36+(−11) = ?

#正の数と負の数との大小で学んだことを用いてみよう。
36+(-11)は「36よりも(-11)大きい数」だから、符号を変えると「36よりも(+11)小さい数」となる。よって、36より11小さい数を求めればよい。

例: 36+(−11) = ?
          36+(−11) = 36−11
                 =   25

このようにすれば、分かりやすい減法として計算することができる。では、負の数から引くことや、小さい数から大きい数を引くのはどうすればいいのだろうか。それは、次の「減法」で学んでいこう。

減法

いままでは、大きい正の数から小さい正の数を引くことはしてきたが、小さい数から大きい数を引いたり、負の数から正の数を引いたりすることはしてこなかったことだろう。

まず、加法の時と同じように、大きい正の数から小さい正の数を引くのを数直線で表してみよう。

例: 36−5 = 31  (31+5=36)
                     5小さい
      |<-----------------------o
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
      31                       36

このようになる。同様にして負の数から正の数を引いてみよう。

例: (−1)−3 = ?
          3小さい
      |<-------------o
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
     -4             -1    0

つまり、(−1)より3小さい数は(−4)ということになる。

⇒(−1)−3 = (−4)

これで、負の数から正の数を引くことができるようになった。 また、小さい数から大きい数を引くのも同じようにできる。

例: 2−3 = (−1)
              3小さい
           |<-------------o
 <----|----|----|----|----|----|----|---->
          -1    0         2


次は、負の数を引くことを考えてみよう。
例: 3−(−1) = ?

これもまた、#正の数と負の数との大小で学んだ事を用いてみよう。
3−(−1)は『3よりも(−1)小さい数』なので、符号を変えると『3よりも(+1)大きい数』となる。だから、3より1大きい数を求めればよい。

例: 3−(−1)=?
          3−(−1) = 3+(+1)
                 =   4

このようにすれば、分かりやすい加法として計算することができる。これらの方法を用いれば、負の数を含む加減、小さい数から大きい数を引く、といったことができる。

このように、数の前についた符号としてのマイナス − は、引き算の − 記号と同じように扱って良い。というより、そもそも、このような、「数の前の不足・減少を表すための符号と、引き算の記号とを、同じと見なして良い。」という理論があるからこそ、数の前の不足・減少を表すための符号と、引き算の記号とを、同じ記号 − を用いているのである。

二つの数の和の符号と絶対値の関係
  • 二つが同符号ならば、和の符号は共通の符号、和の絶対値は絶対値の和
  • 二つが異符号ならば、和の符号は絶対値の大きい方の符号、和の絶対値は絶対値の差
練習問題
次の計算をせよ。

1) 3+ (−2) 2) 4 + 3 − 2 3) (−4) + 6 4) 5 + 1 − 3 + 3 − 8 5) (−2) + 1 − 7

乗法・除法

掛け算のことを乗法(じょうほう、英:multiplication マルティプリケイション)、割り算のことを除法(じょほう、英:division ディビジョン)という。

また、乗法した結果を(せき、英:product プロダクト)と言い、除法した結果を(しょう、英:quotientクォウシェント)という。

乗法

今までには正の数と正の数の掛け算、つまり、正の数どうしの乗法をしてきたが、負の数と正の数の乗法、負の数どうしの乗法はどうなるのだろうか。

まず、正の数どうしの乗法について調べてみよう。

例: 2×3 = 6
     「絶対値2」が3つ分右へ
      o-------->|-------->|-------->|
 <----|----|----|----|----|----|----|----|---->
      0         2         4         6

このように、「かけられる数」の絶対値をひとつの単位として「かける数」の個数だけ右に進めていったものが「積」として得られることになる。

正の数どうしの乗法は、正の数が正の数だけあるということだから、数直線ではどんな正の数を掛け合わせても正の方向になる。よって、正の数どうしの積は正の数となる。

次は、正の数と負の数の乗法について調べてみよう。

例: いま、ある地点で人が歩いています。その人は、西へ秒速2mで進んでいる。 3秒後には、どうなっているだろうか。 また、3秒前はどうなっていただろうか。

これも、数直線で表してみよう。 東を正の方向とすると、西へ秒速2mとは、東へ秒速-2mということだから、この問題の式は、-2×3となる。

例: (−2)×3 = ?
3秒後 2秒後 1秒後  今 1秒前 2秒前 3秒前
    <----<----<----<----<----<----
 西<|----|----|----|----|----|----|>東
   -6   -4   -2    0    2    4    6

図を見てわかるように、2秒後では−4m東へ、3秒後では-6m東へ行っていることがわかる。 さらに、2秒前は4m東へ、3秒後では6m東へ行っている。だから、正の数と負の数の積は負の数になり、負の数どうしの乗算の積は正の数になる。 今は、東(西)に0m進んでいると考えることができる。

二つの数の積の符号と絶対値
  • 二つの数が同符号なら、積の符号は正、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
  • 二つの数が異符号なら、積の符号は負、積の絶対値は二つの数の絶対値の積
  • どんな数に対しても、0をかけると0
2つ以上の数の掛け算

以上のことを組み合わせ、次の計算をしてみよう。

  • (−2)×(5)×(−3)

上記の問題と同じように計算し、答えは30 。


  • (+1)×(+2)×(−3)×(−4)

(※ ひとつ目と2つ目がプラスになってる。)実際に計算してみて、答えは24とわかる。


  • (+1)×(−2)×(−3)×(−4)

(※ ひとつ目がプラスになってる。)上記の問題と同じように計算し、答えは-24。


  • (−1)×(−2)×(−3)×(−4)

(※ 四個ともマイナス。)上記の問題と同じように計算し、答えは24 。


読者は、上記のいくつかの計算例での積の符号について、何か気づいたことは無いだろうか?

三つ以上の数の積の符号

上記の計算例により、負の数をふくむ積の答えの符号について、次の事が分かる。

積の符号は、掛け合わせる負の数の個数によって決まる。

  • 奇数個の-をかけあわせるなら、積の符号は負
  • 偶数個の-をかけあわせるなら、積の符号は正
練習問題
次の計算をせよ。
  1. )  (−1)×4
  2. ) (−3)×(-4)
  3. ) (−2)×3×(−2)
  4. ) 2×2×(−1)×(−4)
  5. ) 5×(−1)×(−2)×(−4)

除法

具体例で考えてみよう

(-6)÷3=

答えは いくらだろうか?


まず、(-2)×3= -6 なので、おそらく

(-6)÷3= -2

となりそうだと思うだろう。


では、-2 のほかには答えは無いだろうか?

まず、3に、+2を掛けても、答えはプラスの数になってしまう。なので、 (-6)÷3の答えは、どうやら負の数のようであるので、負の数だけを探せばいい。

-2でない数を3に掛けてみても、6以外の数になることを確かめてみる。 たとえば -2.1 を 3 に掛けてみても -2.1×3 = -6.3 であり、6ではない数になる。

よって、

(-6)÷3 = -2

である。


まとめ

上述の例のように、負の数をふくむ割り算でも、小学校で割り算を習ったときのように、掛け算にもどって答えを探せばいい。

また、負の数を正で割った結果は、負の数になる。


なお、正の数を負の数で割った場合は、負の数になる。

負の数を負の数で割った場合は、正の数になる。、

数の集合と四則計算の可能性

加法、減法、乗法、除法をまとめて 四則(しそく) という。


次の式の にどんな自然数を入れても、計算の結果がいつでも自然数になるだろうか。

(1) 

(2) 

(3) 

(4) 

(1)と(3)はいつでも自然数になる。しかし、 のように、(2)と(4)は自然数にならない場合がある。 つまり、自然数の範囲では、加法と乗法はいつでもできるが、減法と除法は、いつでもできるとは限らない。

では、上の にどんな整数を入れても、計算の結果がいつでも整数になるだろうか。

(1)、(2)、(3)はいつでも整数になる。しかし、 のように、(4)は整数にならない場合がある。 つまり、整数の範囲では、加法、減法、乗法はいつでもできるが、除法は、いつでもできるとは限らない。

分数(ぶんすう、英:fraction フラクション)では、どうだろうか。分数どうしの計算では、値が整数になることもある。しかし、整数も分母が1の分数だとみなすことにすれば、上の にどんな分数を入れても、計算の結果がいつでも分数になる。つまり、分数の範囲では、加法、減法、乗法、除法はいつでもできる。

今までの結果を表にまとめると次のようになる。 はその範囲でいつでも可能な場合、 はいつでも可能と限らない場合である。ただし、除法では、0でわる場合は除いて考える。

 加法減法乗法除法
自然数
整数
分数


集合

数のあつまりのことを集合(しゅうごう、英:set セット)という。 自然数全体の集まりを、自然数の集合という。

自然数の集合にふくまれる数どうしでは、加法と乗法がいつでもできる。


整数の集合は、自然数(正の整数)の他、0や負の整数を合わせたものになる。


整数の集合にふくまれる数どうしでは、加法と減法と乗法とがいつでもできる。


整数の集合は、そのなかに自然数の集合をふくんでいる。

また、自然数から見れば、自然数の集合は整数の集合に含まれている。


数全体の集合には、整数の他に、小数や分数も含むこととなる。

数全体の集合のなかの数どうしでは、加法・減法・乗法・除法がいつでもできる。

つまり、

数全体の集合のなかの数どうしでは、四則計算がいつでもできる。


このように、数の範囲を、自然数の集合から整数の集合へ、さらに数全体の集合へと広げていくことで、それまでできなかった計算ができるようになる。

面積や体積でのマイナスの量

(-1)×(-1)=(+1)の幾何学的な説明図。


今までの説明では、説明の簡単化のため、マイナスの計算例や応用例では、数直線、または数直線上に表しやすい左右や東西などの方向とか、あるいは金額や時間などのように 直線の「長さ」 で対応させやすい量を例にして説明してきた。だが、なにもマイナスの利用法は直線・数直線ぽい量だけで無くても良い。

たとえば、長方体の面積や立方体の体積を計算するのに、マイナス符号を用いてみても良い。というより、そもそもマイナスは、けっして、たったの数直線や「長さ」などの線で表せる量だけに限らず、もし数で表せる量ならば、面積や体積などもまた、マイナス符号 − の数を計算に用いることができるからこそ、マイナスの数が「数」として数学では認められ、マイナスの数の理論が作られているのである。

マイナスの面積・体積の説明を学ぶ前に、ひとまずプラス符号の面積や体積について復習しよう。プラス符号は省略できるから、つまり小学校の算数で計算練習した普通の面積や体積は、プラス符号を省略した面積・体積などとみなせるので、小学校で習った面積・体積はプラス符号の面積や体積として見なして良い。


では、これから、マイナスの数の面積や体積などの理論が成り立つことを、とりあえず面積の場合で、確認してみよう。

たとえば長方形の面積なら、長方形の縦の長さを正の ○ cm として、横の長さを △ cm として、面積 ○×△ cm2 を面積の基準にしたとすれば、マイナスの計算例として、この四角形から横の長さを −3cmだけ変化させた時は、つまり横を3cm減らした時は、面積は ○×(−3) cm2 だけ変化する。つまり面積は ○×(3) cm2 減る。横の長さを3cm減らした後の面積は、 ○×(△−3) cm2 である。逆に横の長さを4cm増やした場合は、面積の変化は ○×(+4) であり、変化後の面積は ○×(△+4) である。

まとめて表すと、四角形の縦の長さを ○ cm として、横の長さを △ cm として、横の長さを □ cm だけ変化させると、面積の変化分は ○×□ であり、変化後の面積は、 ○×(△+□) である。横の長さを増やした場合は、□に正の数が入り、横の長さを減らした場合は、□に負の数が入る。

また、面積で考えても、加法・減法や乗法・除法の交換法則、結合法則・分配法則などの法則は成り立つ。 読者は、自分で長方形の図を書いてみて、面積などを計算してみて、確かめてみよ。


説明の簡単化のため、縦の長さ ○ を正としておいて、負数どうしの掛け算を考えなくても済むように説明したが、負数どうしの掛け算も次のようにして面積で作図できる。たとえば、縦の長さ ○ cm から、変化分として B cm だけ長さを減らしたとして、 面積 (○−B)×(△−3) cm2 を持つ長方形の図を作図すれば、負数どうしの掛け算も作図できる。この場合は(−B)×(−3)を作図したことになる。

読者は、自分で、負数どうしの掛け算を表した長方形の図を書いてみて、面積などを計算してみて、負数どうしの掛け算でも、交換法則、結合法則・分配法則が成り立つことを確かめてみよ。


読者は、小学校の時に算数で、「大小」や「多少」など大きさをもった、さまざまな量(たとえば、長さ、面積、体積、重さ、時間、個数、人数、金額、・・・・・・)の計算例を、習ってきたと思う。そのような大きさを持った様々な量で、必要に応じてプラスやマイナスの符号を用いて良い。


累乗と逆数

累乗

同じ数を何度も掛け合わせることを累乗(るいじょう)という。たとえば4を 3回 かけあわせた場合(つまり 4×4×4 )、
43

のように書く。 また、43 は「4の3じょう」と読み、 4×4×4 を意味する。

43 = 4×4×4 = 64
例: 53 は「5の3じょう」と読み、 5×5×5 を意味する(なお 53 = 125 )。

このように、かけあわせる回数がn回なら、「n乗」と読む。

また、累乗において、かけあわせる回数のことを指数(しすう、英:exponent イクスポウネント)という。 たとえば、

43

の指数は 3 である。

同じ数を2回かけあわせることを2乗(にじょう)という。つまり、指数が2の累乗のことが2乗である。


同じ数を3回かけあわせることを3乗(さんじょう)という。つまり、指数が3の累乗のことが3乗である。

※ 検定教科書では4乗以上は説明を省略しているが、同様に4回かけあわせたら「4乗」である。

2乗のことを平方(へいほう、英:square スクウェア)とも言う。3乗のことを立方(りっぽう、英:cube キューブ)ともいう。


いろいろな計算例
22 = 2×2 = 4 

43 = 4×4×4 = 64
(-3)2 =(-1)×3 × (-1)×3 = (-1) × (-1)×3×3 =9

-32 =(-1)×3 ×3 = -9

上記のように (-a)2 と -a2 は違うので、気をつけよう。

(-2)3 =-8

下記のように分数や小数も、累乗してよい。



 1.12 = 1.21


指数の計算は、中学1年の段階では、当面は、正の指数のみを扱うことにする。

※ 実は、ゼロやマイナスの指数も、高学年で扱う。ゼロやマイナスの指数について、結果だけ話すと、
のように、マイナスの指数は、分数として扱えば良い。このことから、
というように、ある数にゼロの指数乗をした数は、かならず1になる。
ゼロのゼロ乗 00 については、中学では考えない。

ただし、学校図書出版の「中学校数学1」のp,71に発展として簡単に説明が掲載されている。


逆数

に対するのように、積が1になる2個の数について、一方の数をもう一方の数の 逆数 (ぎゃくすう)であるという。つまり、文字式で表せば a×b=1 となるときの a に対する b のことを 逆数 (ぎゃくすう)という。かけて1になるということは、分母と分子がひっくり返れば約分されて1になるので、ある数の逆数を作るためには、分母と分子をひっくり返せばよい。例えば2に対する逆数とは、この数を分母にして、分子を1にした である。また、分数の逆数は、この分母と分子をひっくり返した、である。


例: 負の数の逆数

 の逆数をもとめよ。

をかけると1になる。

よって逆数は である。


なお、この例からも分かるように、負の数についても逆数を決めることができる。

また、負の数の逆数は、負のままである。

また、0 の逆数は存在しない。なぜなら 分数の分母を0にすることはできないからである。また、0と掛けて答えが1になる数は存在しない。 どちらの考えにせよ、0の逆数は存在しないことが分かります。

正負の数の活用

たとえば、次のような問題をとくとき、正負の数を活用すると手計算がラクになる場合が多い。

タカシくんの学校では、ある週の図書室で貸し出した本の冊数の結果が、次のようになりました。

月曜: 73冊
火曜: 68冊 
水曜: 65冊
木曜: 79冊
金曜: 81冊

  この週では、月曜から金曜までの5日間に、平均として1日あたり何冊、本が借りられたでしょうか?


解法

まず、目分量で、たとえば、おおよそ70冊あたりを基準として、

月曜: 70+3冊
火曜: 70-2冊 
水曜: 70-5冊
木曜: 70+9冊
金曜: 70+11冊

のように考える。すると、あとは、

月曜: +3冊
火曜: -2冊 
水曜: -5冊
木曜: +9冊
金曜: +11冊

の平均だけを求めればいい。

なので、70+3.2=73.2より、73.2冊が1日あたりの平均である。

(答え)1日あたり平均は73.2冊 .


(※ 本問題で負数をつかう意義の解説)

の計算中、3-2-5 の時点で、計算結果は -4 になる。中学の数学では、負数の存在を認めていることにより、計算をこのあとも続行でき、

-5の次の +9 +11 をそのまま続行できる。


もし、小学校算数のように負数を認めない場合、目分量として70ではなく、60や50など、もっと小さい数を基準にとらなければならなくなってしまう。


仮にだが、もし、水曜日の冊数が、65冊でなくて13冊のように、水曜日だけ極端に冊数が少なかったとしたら、負数を認めない小学算数では、基準の数を10冊など、大幅に下げる必要が生じてしまうので、そのせいで、ほかの曜日の冊数の基準からのズレの計算も大きくなってしまい、あまり計算がラクにならなくなってしまう。


※ 備考 (範囲外)

この問題では、たまたま、この週の日ごとの貸し出し状況のバラツキが小さく、一目で見ても70あたりが基準だと分かりやすそうな貸し出し状況だったが、しかし、一般の平均の計算では、日ごとのバラツキが大きい場合もあるので、上記のように負数を応用しても平均計算があまりラクにならない場合もある。

なので、平均の計算では、あまり負数を使う方法にばかりコダわる必要は無い。

また、実務的には、現代では統計的な計算をする場合、パソコンの表計算ソフトなどを活用するのが通常である。(もっと日数が多くなったりした場合、手計算では手間が掛かる。)