「竹取物語 かぐや姫のおひたち」の版間の差分
すでに終了している |
編集の要約なし |
||
22 行 | 22 行 | ||
|valign=top style="width:50%;background:#fcc;text-indent:1em"| |
|valign=top style="width:50%;background:#fcc;text-indent:1em"| |
||
今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた。 |
今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた。 |
||
野 |
野山に分け入って竹をとっては、様々なことに使っていた。 |
||
名 |
名をさぬきのみやつこまろと言った。 |
||
その竹の中に根元が光 |
その竹の中に、根元が光るものが一本あった。 |
||
不思議がって近づいて |
不思議がって近づいて見ると、竹の筒の中が光っていた。 |
||
それを見ると、三寸ほどの人がたいそう |
それを見ると、三寸ほどの人がたいそう美しく座っていた。 |
||
翁が言うこと |
翁が言うことは、<br/> |
||
「私が毎朝毎晩見ている竹の中にいらっしゃるために分かった。子供になってくださる人であるようだ。」<br/> |
「私が毎朝毎晩見ている竹の中にいらっしゃるために分かった。子供になってくださる人であるようだ。」<br/> |
||
と、手に入れて家に持って |
と、手に入れて家に持って来た。 |
||
妻の嫗にあずけて育てさせる。 |
妻の嫗にあずけて育てさせる。 |
||
美しいこと |
美しいこと限りがない。 |
||
たいそう幼いので、籠に入れて育てる。 |
たいそう幼いので、籠に入れて育てる。 |
||
|} |
|} |
||
37 行 | 37 行 | ||
#: 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。 |
#: 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。 |
||
# <span id="1_2">[[wikt:けり|けり]] |
# <span id="1_2">[[wikt:けり|けり]] |
||
#: 過去の助動詞。助動詞「[[wikt:き|き]]」との違いは、「き」が直接経験し |
#: 過去の助動詞。助動詞「[[wikt:き|き]]」との違いの一つは、「き」が直接経験し記憶にある過去の意味をあらわすのに対し、「けり」は人から伝え聞いたことの回想をあらわすことである。 |
||
# <span id="1_3">[[wikt:つつ|つつ]] |
# <span id="1_3">[[wikt:つつ|つつ]] |
||
#: 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。 |
#: 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。 |
||
66 行 | 66 行 | ||
腹だたしきことも慰みけり。 |
腹だたしきことも慰みけり。 |
||
|valign=top style="width:50%;background:#fcc;text-indent:1em"| |
|valign=top style="width:50%;background:#fcc;text-indent:1em"| |
||
竹取の翁はこの子を見つけて以後、竹を取ると、節を隔てて空洞ごとに |
竹取の翁はこの子を見つけて以後に、竹を取ると、節を隔てて空洞(よ)ごとに金が入っている竹を見つけることが重なった。 |
||
このようにして、翁はだんだん豊かになっていく。 |
このようにして、翁はだんだん豊かになっていく。 |
||
この子を育てると、すくすくと大きくなっていく。 |
この子を育てると、すくすくと大きくなっていく。 |
||
109 行 | 109 行 | ||
|} |
|} |
||
# <span id="3_1">[[wikt:ひさし|久しく]] |
# <span id="3_1">[[wikt:ひさし|久しく]] |
||
#: |
#: 時間の経過が長い、の意。 |
||
# <span id="3_2">勢猛 |
# <span id="3_2">勢猛 |
||
#: 大きな財力や権力がある様。 |
#: 大きな財力や権力がある様。 |
||
# <span id="3_3">なよ竹 |
# <span id="3_3">なよ竹 |
||
#: |
#: ほそくしなやかな竹。しなやかな女性に対しても用いる。 |
||
# <span id="3_4">[[wikt:あそぶ|遊ぶ]] |
# <span id="3_4">[[wikt:あそぶ|遊ぶ]] |
||
#: |
#: 歌舞や管弦をして楽しむ。 |
||
---- |
---- |
||
{| style="width:100%" |
{| style="width:100%" |
2007年2月1日 (木) 04:38時点における版
目次 | つまどひ >> |
かぐや姫のおひたち
1今は昔、竹取の |
今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた。
野山に分け入って竹をとっては、様々なことに使っていた。
名をさぬきのみやつこまろと言った。
その竹の中に、根元が光るものが一本あった。
不思議がって近づいて見ると、竹の筒の中が光っていた。
それを見ると、三寸ほどの人がたいそう美しく座っていた。
翁が言うことは、 |
- 今は昔
- 物語のはじめの決まり文句。この場合は現代で言うところの「むかしむかし」にあたる部分で、読者をこの世界に引き込ませる言葉の一つ。
- けり
- 過去の助動詞。助動詞「き」との違いの一つは、「き」が直接経験し記憶にある過去の意味をあらわすのに対し、「けり」は人から伝え聞いたことの回想をあらわすことである。
- つつ
- 反復・継続の意味の接続助詞。ここでは、「竹をとる」という動作と「よろづのことにつかふ」という動作が同時に行われていることをあらわす。
- をば
- 格助詞「を」に係助詞「は」が付き、「は」が連濁を起こしたもの。「を」を強調する。係助詞「は」の結びで文末の「けり」が連体形の「ける」になっている。
- 讃岐造麿(さぬきのみやつこまろ)
- 竹取の翁の名前である。讃岐氏は朝廷に竹細工を献上していたとされる。
- なむ
- 係助詞。係り結びで文末「ける」は連体形で結ばれている。
- 美しう
- にて
- 理由や原因をあらわす接続助詞。
- なめり
- ば
- 順接の接続助詞。ここでは、前の語「幼けれ」は已然形であるので確定条件である。
竹取の |
竹取の翁はこの子を見つけて以後に、竹を取ると、節を隔てて空洞(よ)ごとに金が入っている竹を見つけることが重なった。 このようにして、翁はだんだん豊かになっていく。 この子を育てると、すくすくと大きくなっていく。 三か月ほどたった頃に、成人したので、髪上げなどをあれこれ手配して、髪上げし裳着を行った。 帳台の中からも出さず、心をこめて大切に育てる。 この子の顔だちの美しいことは世に類がなく、家の中は暗いところなど無いほど光に満ち溢れていた。 翁は気分が悪く苦しいときでも、この子を見ると苦しいこともなくなった。 腹立たしいことも気が晴れた。 |
- よ
- 竹の節と節の間の空洞のこと。
- かくて
- このようにして、の意。
- ほどに
- 理由や原因をあらわす。
- よき程
- かぐや姫は、三か月で十二、三歳のように育ち、成人した。
- 髪上げ
- 平安時代、女性は成人(十二、三歳ごろ)すると、髪を結い上げた。これを「髪上げ」という。
- 裳着
- 「裳」は女性が腰から下にまとう衣。女性が成人すると、髪上げと同時に、裳着の式が行われた。
- 世になし
- 世の中に比類がない、の意。
|
翁は竹を取ることが長くなった。 財力の大きい者になった。 この子の背丈がたいそう大きくなったので、三室戸斎部秋田を呼んで名前をつけさせた。 秋田は、なよ竹のかぐや姫、と名づけた。 この三日間は酒盛りをして楽しむ。 管弦や歌舞などありとあらゆる遊びをした。 男も女も分け隔てなく呼び集めて、たいそう盛大に楽しんだ。 |
目次 | つまどひ >> |