「古典力学」の版間の差分

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
削除された内容 追加された内容
70 行 70 行
力には様々な種類が存在するが、遠隔力(場の力)と直接働く力の2つに大きく分けられる。
力には様々な種類が存在するが、遠隔力(場の力)と直接働く力の2つに大きく分けられる。
:万有引力 質量を持つ物体同士が引き合う力である。万有引力は万有引力の法則<math>F=G\frac{mM}{r^2}</math>によって表される。Gは万有引力定数と呼ばれる物理定数で、約<math>6.67\times 10^{-11} \frac{\rm{m}^3}{\rm{sec}^{2} \rm{kg}}</math>。距離の二乗に反比例することが重要な特徴である。これを逆二乗の法則と呼ぶ。
:万有引力 質量を持つ物体同士が引き合う力である。万有引力は万有引力の法則<math>F=G\frac{mM}{r^2}</math>によって表される。Gは万有引力定数と呼ばれる物理定数で、約<math>6.67\times 10^{-11} \frac{\rm{m}^3}{\rm{sec}^{2} \rm{kg}}</math>。距離の二乗に反比例することが重要な特徴である。これを逆二乗の法則と呼ぶ。
:重力 万有引力と自転の遠心力の合力である。重力はW=mgによって表される。gは重力加速度と呼ばれる物理定数である。
:重力 万有引力と自転の遠心力の合力である。重力は<math>W=mg</math>によって表される。gは重力加速度と呼ばれる物理定数である。
:クーロン力 電荷を持つ物体同士が引き合ったり押し合ったりする力である。クーロン力はクーロンの法則<math>F=\frac{qQ}{r^2}=qE</math>によって表される。ただし用いる単位系によっては<math>F=k\frac{qQ}{r^2}</math>となり、kの値に用いた単位系の性質が反映される。上のようにk=1となるのはガウス単位系と呼ばれるもの。とはいえ、力学ではkの値にはあまりこだわらない。それよりクーロン力もやはり逆二乗の法則が成り立つことが重要である。万有引力には引力しかないが、クーロン力には引力も斥力もあることも忘れてはならない。
:クーロン力 電荷を持つ物体同士が引き合ったり押し合ったりする力である。クーロン力はクーロンの法則<math>F=\frac{qQ}{r^2}=qE</math>によって表される。ただし用いる単位系によっては<math>F=k\frac{qQ}{r^2}</math>となり、kの値に用いた単位系の性質が反映される。上のようにk=1となるのはガウス単位系と呼ばれるもの。とはいえ、力学ではkの値にはあまりこだわらない。それよりクーロン力もやはり逆二乗の法則が成り立つことが重要である。万有引力には引力しかないが、クーロン力には引力も斥力もあることも忘れてはならない。
:ローレンツ力 <math>F=q(v \times B)</math>
:ローレンツ力 <math>F=q(v \times B)</math>
76 行 76 行
:弾性力 ばねから受ける力である。弾性力はフックの法則<math>F=-kx</math>によって表される。
:弾性力 ばねから受ける力である。弾性力はフックの法則<math>F=-kx</math>によって表される。
:張力 ひもや糸から受ける力である。通常でTで表される。大きさは未知である。
:張力 ひもや糸から受ける力である。通常でTで表される。大きさは未知である。
:垂直抗力 物体を置いたり、壁を押したときに受ける面に垂直な力である。通常Nで表される。大きさは未知である。
:抗力 接している面から受ける力である。垂直抗力と摩擦力がある。
::垂直抗力 物体を置いたり、壁を押したときに受ける面に垂直な力である。通常Nで表される。大きさは未知である。
::摩擦力 接している面から水平に受ける力である。静止摩擦力と動摩擦力がある。
:摩擦力
:静止摩擦力 静止している物体が滑ろうとしている向きと反対方向に受ける力である。
:::静止摩擦力 静止している物体が滑ろうとしている向きと反対方向に受ける力である。
:動摩擦力 運動している物体が滑っている向きと反対方向に受ける力である。
:::動摩擦力 運動している物体が滑っている向きと反対方向に受ける力である。


:力 流体から受ける力である。鉛直上向である。圧力の合力である。浮力アルキメデスの原理F=Vdgによって表される。
:抵抗力 流体から受ける力である。速度が大きくないときは<math>F=-kv</math>によって表される。速度が大きいときは

:浮力 流体から受ける力である。鉛直上向きである。圧力の合力である。浮力はアルキメデスの原理<math>F=Vdg</math>によって表される。


==運動の保存量の例:エネルギー==
==運動の保存量の例:エネルギー==

2005年3月19日 (土) 06:30時点における版

古典力学とは、一般的に、相対性理論量子論が登場する以前の物理学を指す。
狭義にはニュートン力学を指すことが多い。ケプラーやガルレオの研究をニュートンがまとめあげて完成させた。

物体

大きさを持たない物体を質点という。質量を持つ点の意味である。実際の物体は大きさを持つが、運動の大きさに対して物体の大きさが無視できるほど小さければ質点と見なしてよい。

大きさを持ち、力を加えても変形しない物体を剛体という。実際の物体は力を加えると多少なりとも変形するが、力を加えても変形が無視できるほど硬ければ剛体と見なしてよい。

大きさを持ち、力を加えると変形するが、力を加えるのを止めると元の状態に戻る物体を弾性体という。

気体や液体のように決まった形を持たず、流れる物体を流体という。流体については古典力学ではなく流体力学で扱う。

力学における物理量

力学における基本的な物理量は変位r、時間t、質量mの3つであり、他の物理量はこの3つから導くことができる。

力学のうち運動学は三次元のユークリッド幾何学に時間tを加えたものと考えることができる。

質量は物体が持つ正の定数であり、慣性質量と重力質量に分けられる。慣性質量は運動方程式における質量であり、力に対する速度の変化のしにくさを表す。重力質量は万有引力の法則における質量であり、力を発生させる能力の大きさを表す。つまりクーロンの法則における電荷qと同様の働きを持つ。

変位rを時間tで微分したものを速度vという。

速度vを時間tで微分したものを加速度aという。

加速度aを時間tで微分したものをジャークjという。

運動量、角運動量、エネルギーについては保存則のところで扱う。

運動の三法則

運動の第一法則(慣性の法則) 物体に力が働かないとき、物体は静止状態か等速度運動を続ける。 第一法則は第二法則の特殊な場合というよりも、第二法則が成り立つための前提条件と考えたほうが良い。

運動の第二法則(運動の法則) 加速度の大きさは力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する。 運動の第二法則を式で表すと、運動方程式となる。もっとも簡単な直線上の運動の場合にはともに符号付きの実数だが、より自由度が高い平面上や空間内の運動の場合には加速度、力ともにベクトルで表される。従って運動方程式はベクトル式 となる。力の源として典型的なのは万有引力、電磁気力、及び接触しているほかの物体から受ける力である。 数学的には加速度は速度の時間微分 、速度は位置ベクトルの時間微分なので、第2法則を位置ベクトルで書くと

という形になる。


運動の第三法則(作用反作用の法則) ある物体が他の物体に力を与えるとき、ある物体は他の物体から大きさが等しく、逆向きの力を受ける。

運動の三法則をどう使うか

力学の主要な目的は法則を使って物体の運動を定量的あるいは定性的に予測すること。「運動」は物体の位置ベクトルが時間とともにどう変化するか、言い換えるとが時間のどのような関数になるかで表される。それで作業はが満たす「運動方程式」を求め、次にそれを解くという二段階に分けられる:

1.(運動方程式の導出)問題とする状況において物体が受ける力を求める。重力や電磁気力の法則を使うが、複数の物体がからむ問題では第3法則も重要な働きをする。物体が受ける力は一般にはその位置および時刻に依存するのでとなるが、特に位置への依存性が重要な問題が多い。その結果を第2法則に代入すると

となる。これが運動方程式。数学的にはが満たす2階微分方程式に他ならない。

2.(運動方程式を解く)運動方程式を解いて運動を求める。原理的には適切な初期条件を与えた上でそれを解けばよい。2階なので初期条件は初期時刻での位置と速度が必要。物理的にはある時刻の位置と速度を決めると、それ以降の運動が完全に決まることを意味する(ボールを投げる場合を思いおこせばよい。ボールが手から離れる瞬間の位置と速度でその後のコースが決まるわけである)。

とはいえ、二階微分方程式は二次方程式のように一般的な解の公式があるわけではない。それどころか力が少々複雑になると、解が既知の関数の組合せで表せないことも普通。そこをどうするかが力学の問題となる。幸い"good news"がある:

(1)物理として重要な基本的な問題には、厳密に解けるものが多い。代表的な例は地球表面近く(つまり重力が一様一定)でのボールの運動、太陽の周りの惑星の問題、バネにつながれた物の運動など。解けないものも、これら厳密に解けるものが「いくらか複雑化」したものとみなすことである程度理解できる。

(2)厳密な解が得られなくても、重要な定性的性質が得られることもある。例えばいつまでも動きつづけるのか否か、有限な範囲を動き回るのか、どこまでも遠くに去ってしまうのか、など。

上のどちらの場合も、「保存量」がキーになる。保存量とは位置と速度をある形で組み合わせた式で、その値が運動の初めから終わりまで変わらない一定値をとるもの。力がある条件を満たす場合に存在する。これがあると運動の自由度が減るので解きやすくなる(保存量の個数が十分なら、2階の方程式を一階に直して積分で解くことが可能になる)し、また大きな制限となるので定性的性質も分かりやすくなる。代表的な保存量の候補はエネルギー、運動量、角運動量。

一方、保存量が存在しない運動、あるいは自由度に比べ保存量の数が少ない運動はたいてい複雑で、解くことも定性的性質を捉えることも難しい。そのような運動を調べるには計算機上の数値計算などが必要となる。実はこのような運動も独自の興味と重要性を持つことがある。代表的なのはカオス的な運動と呼ばれるもので、多くの研究がされてきている。

以上のような事情から、力学ではまず保存量のような基本的な概念と厳密に解ける基本的な運動を扱い、その中で多くの運動に通じる正しい直観を身に付ける。基本的な運動には等加速度運動、放物運動、円運動、楕円運動、単振動などがあり、多くの現象をこれらの運動が「複雑化」したものとして理解できる。その範疇から外れたカオス的な運動のようなものはこれらの基礎を十分身に付けた後で、いわば特論として取り組むのがよい。また運動の法則をより数学的に整理した解析力学といわれるものがある。これは保存量を系統的に求める方法や座標系を換える方法など各種の高級な技術を提供し、さらに量子力学などより進んだ物理に進むには必要不可欠なのだが、抽象的でわかりずらい面もある。やはりある程度直観を身に付けてから学ぶのがよい。

力には様々な種類が存在するが、遠隔力(場の力)と直接働く力の2つに大きく分けられる。

万有引力 質量を持つ物体同士が引き合う力である。万有引力は万有引力の法則によって表される。Gは万有引力定数と呼ばれる物理定数で、約。距離の二乗に反比例することが重要な特徴である。これを逆二乗の法則と呼ぶ。
重力 万有引力と自転の遠心力の合力である。重力はによって表される。gは重力加速度と呼ばれる物理定数である。
クーロン力 電荷を持つ物体同士が引き合ったり押し合ったりする力である。クーロン力はクーロンの法則によって表される。ただし用いる単位系によってはとなり、kの値に用いた単位系の性質が反映される。上のようにk=1となるのはガウス単位系と呼ばれるもの。とはいえ、力学ではkの値にはあまりこだわらない。それよりクーロン力もやはり逆二乗の法則が成り立つことが重要である。万有引力には引力しかないが、クーロン力には引力も斥力もあることも忘れてはならない。
ローレンツ力 
弾性力 ばねから受ける力である。弾性力はフックの法則によって表される。
張力 ひもや糸から受ける力である。通常でTで表される。大きさは未知である。
抗力 接している面から受ける力である。垂直抗力と摩擦力がある。
垂直抗力 物体を置いたり、壁を押したときに受ける面に垂直な力である。通常Nで表される。大きさは未知である。
摩擦力 接している面から水平に受ける力である。静止摩擦力と動摩擦力がある。
静止摩擦力 静止している物体が滑ろうとしている向きと反対方向に受ける力である。
動摩擦力 運動している物体が滑っている向きと反対方向に受ける力である。
抵抗力 流体から受ける力である。速度が大きくないときはによって表される。速度が大きいときは。
浮力 流体から受ける力である。鉛直上向きである。圧力の合力である。浮力はアルキメデスの原理によって表される。

運動の保存量の例:エネルギー

物理ではエネルギーや運動量などの保存量が重要な働きをする。力学においてもそれは同様であるが、特に自由度の小さい系での運動を扱う場合には、保存量の利用により運動がほとんど決定されてしまう。 もっとも簡単(でしかも重要)な例は直線上の粒子の運動で、エネルギーが保存される場合。粒子の座標をとし、それがだけに依存した力を受けるとする。例えばバネにつながれた粒子では、になる。このとき運動方程式は これをについての微分方程式とみて初期条件 「」で解けばよい。しかし二階だと面倒なので、両辺にを掛けてみる。すると

ここで合成関数の微分側を使うと、左辺、右辺はそれぞれ 但しの原始関数(になる関数。例えばなら)。 よって

左辺、右辺両方ともある関数の微分なので、右辺を左辺に移行してまとめると

よって、の中身は時間に依存しない定数、即ち保存量になる。その値は$t=t_i$の時の値と同じなので、

を求める立場から見ると、が従う一階の微分方程式を見つけたことになる。これは(後で示すが)二階に比べはるかに容易に解ける。

改めて強調するが、それぞれは運動の間様々に変化する。しかしこれらを次の形に組み合わせた式

の値は初期での値のまま、ずっと変化しないのである。これが保存量。特に今の例で挙げたという組合せはエネルギーと呼ばれる。

等加速度直線運動

  • 速さの公式
  • 変位の公式


以上は容易に導かれる。以下ではその数学的演算(数学Ⅱまたは数学Ⅲの初歩程度)を詳しく述べる。

  • 運動方程式: (ただし、…(1))
  • 式(1)を時間で積分すれば、左辺はであり、右辺は(は積分定数)より、。いま、を代入すればであるから、のときの速度である。従って、…(2)が導かれる。
  • 式(2)を時間で積分すれば、左辺はであり、右辺は(は積分定数)より、。いま、を代入すればであるから、のときの変位である。従って、…(3)が導かれる。
  • 式(2)をと変形し、式(3)に代入すると、。この式において、を左辺に移項し、右辺を展開し、両辺にを乗じると、を得る。

放物運動

放物運動は等速度運動と等加速度運動を合成したものと考えることができる。

初速度

初速度の水平成分

初速度の鉛直成分

最高点に到達するまでの時間

最高点の高さ

円運動

単振動

強制振動

このページ「古典力学」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。