高等学校数学I/2次関数

二次関数で学習することは以下のようなことである。

二次関数とそのグラフ

二次関数で表されるグラフを書くことができるようにする。

二次関数の値の変化

二次関数のグラフなどを用いて、二次関数の最大・最小を求めることや、二次不等式を解くことができるようにする。

二次関数

定義

二次関数の定義

定数 $a\neq 0$ と、定数 $b$, $c$を用いて $y=ax^{2}+bx+c$ と表す事ができる関数の事を変数$x$ に関する二次関数という。

具体例

以下の関数はいずれも二次関数である。

• $y=3x^{2}+4x+1$　　　　　($a=3$、$b=4$、$c=1$の場合に相当)
• $y=x^{2}-4x$　　　　　($a=1$、$b=-4$、$c=0$の場合に相当)
• $y=-x^{2}$　　　　　($a=-1$、$b=0$、$c=0$の場合に相当)
• $2x+x^{2}+xy=(1+x)y+2(3x-4)x+3$　　　　　($a=-5$、$b=10$、$c=-3$の場合に相当。展開して整理すると$y=-5x^{2}+10x-3$になる為。)

一方以下の関数は二次関数ではない

• $y=4x+1$

上の式は

$y=0x^{2}+4x+1$

と表記できる為、$a=0$、$b=4$、$c=1$の場合に相当するが、 $a\neq 0$でなければならないというルールに違反する為、二次関数ではない。

一般形と標準形

本節では二次関数の一般形と標準形について学ぶ。この知識は後で二次関数をグラフで表す際に役立つ。

$a\neq 0$とするとき、

• $y=ax^{2}+bx+c$

の形の式を二次関数の一般形といい、

• $y=a(x-p)^{2}+q$

の形の表記を二次関数の標準形という。 （上で、$a\neq 0$、$b$、$c$、$p$、$q$は定数で、$x$は変数であるものとする。）

一般形と標準形の関係

定理 一般形で表記できる二次関数は標準形でも表記する事ができ、逆に標準形で表記できる二次関数は一般形でも表記できる。

一般形で表記されている二次関数を標準形で表記する事を平方完成という。 後述するように、標準形は二次関数をグラフで表す際に用いる。

証明

標準形

$y=a(x-p)^{2}+q$

で表記されている二次関数の右辺を展開すると、

$y=ax^{2}-2apx+(ap^{2}+q)$

となるので、

$b=-2ap,\quad c=ap^{2}+q$

とすれば一般形になる。

逆に一般形

$y=ax^{2}+bx+c$

で表記されている二次関数は以下の手順で標準形に変換できる（この変形手法を平方完成という）。

$y=ax^{2}+bx+c$

$=a\left(x^{2}+{\frac {b}{a}}x\right)+c$

$=a\left\{x^{2}+{\frac {b}{a}}x+\left({\frac {b}{2a}}\right)^{2}-\left({\frac {b}{2a}}\right)^{2}\right\}+c$

$=a\left\{x^{2}+{\frac {b}{a}}x+\left({\frac {b}{2a}}\right)^{2}\right\}-{\frac {b^{2}}{4a}}+c$

$=a\left(x+{\frac {b}{2a}}\right)^{2}-{\frac {b^{2}-4ac}{4a}}$

ここで、

$p=-{\frac {b}{2a}},\quad q=-{\frac {b^{2}-4ac}{4a}}$

とおくと、

$y=a(x-p)^{2}+q$

となり標準形で表されたことになる。

例題

例題

次の二次関数が一般形ならば標準形に、標準形ならば一般形にせよ。

1. $y=2(x+4)^{2}+4$
2. $y=4x^{2}+12x+9$
3. $y=x^{2}+5x$

解

1. $y=2x^{2}+16x+36$
2. $y=4\left(x+{\frac {3}{2}}\right)^{2}$
3. $y=\left(x+{\frac {5}{2}}\right)^{2}-{\frac {25}{4}}$

二次関数のグラフ

本節では二次関数 $y=ax^{2}+bx+c$ のグラフの求め方を述べる。

$y=ax^{2}$のグラフ

まずもっとも簡単な$y=ax^{2}$のグラフは$a>0$ のとき図1のようになる。（図では$a=1$の場合を表記）。また、$a<0$ のときは図1 のグラフを上下さかさまにしたものになる。

図1 (y=x²のグラフ)

後述するように一般の$y=ax^{2}+bx+c$ のグラフは$y=ax^{2}$のグラフを上下左右にずらしたものになる。 $a>0$ のとき二次関数 $y$ は下に凸といい、$a<0$ のとき上に凸という。また、二次関数のグラフを放物線という。

一般の二次関数のグラフ

一般の二次関数をグラフで表現してみよう。 前述のように二次関数は平方完成の手順を踏む事により必ず標準形で表記可能なので、二次関数$y=ax^{2}+bx+c$を標準形

$y=a(x-p)^{2}+q$

に変換する。ここで、

$p=-{\frac {b}{2a}},\quad q=-{\frac {b^{2}-4ac}{4a}}$

この標準形のグラフは$y=ax^{2}$ のグラフを $x$ 軸方向に　$p$, $y$ 軸方向に $q$ 平行移動させたものと考えることができる。よって以下の事実が結論付けられる。

二次関数のグラフ

定理 二次関数 $y=ax^{2}+bx+c$ のグラフは軸が$x=-{\frac {b}{2a}}$ , 頂点が $\left(-{\frac {b}{2a}},-{\frac {b^{2}-4ac}{4a}}\right)$ であるような放物線である。

例題

例題

二次関数 $y={\frac {1}{2}}x^{2}+3x+{\frac {1}{2}}$ のグラフをかけ。

解

${\begin{matrix}y&=&{\cfrac {1}{2}}x^{2}+3x+{\cfrac {1}{2}}\\[10pt]{}&=&{\cfrac {1}{2}}(x+3)^{2}-4\end{matrix}}$

ゆえに、求めるグラフは軸 $x=-3$、頂点 $(-3,-4)$ の下に凸な放物線である。

例題

二次関数 $y=4x^{2}+20x+4$ のグラフは $y=4x^{2}$ のグラフをどのように平行移動させたものか。

解

${\begin{matrix}y&=&4x^{2}+20x+4\\{}&=&4\left(x+{\frac {5}{2}}\right)^{2}-21\end{matrix}}$

であるので、$y=4x^{2}$ のグラフを $x$ 軸方向に $-{\frac {5}{2}}$、$y$ 軸方向に -21 移動させたものである。

二次関数の値の変化

二次関数の最大・最小

図1 (y=x²のグラフ)

定義域が実数全体である二次関数$y$ の最大値・最小値を考えてみよう。またそのときの$x$ の値を考えてみよう。

もう一度、図1を右に挙げてみた。これは$y=x^{2}$のグラフであったが、すべての$x$ で$y\geq 0$ となっていることがわかる。また、$y=0$ となるのは$x=0$ のときのみである。したがって次の定理が成り立つ。

定理

すべての実数$x$ に対して、$x^{2}\geq 0$。等号成立は$x=0$のときのみ。

また、$a>0$ のときの最大値や$a<0$ のときの最小値は存在しない。 しかし、定義域が実数全体ではなく、ある区間であれば二次関数が最大・最小をともに持つ場合がある。次の例題を解きながら考えてみよう。

例題

例題

二次関数$y=x^{2}+5x+5$の$-3\leq x\leq 0$ の範囲での最大値・最小値を求めよ。

解

図2

$y=\left(x+{\frac {5}{2}}\right)^{2}-{\frac {5}{4}}$

と標準形にし、グラフを書くと右図のようになる。

したがってグラフより答えは最大値は$x=0$ のとき$5$, 最小値は$x=-{\frac {5}{2}}$ のとき$-{\frac {5}{4}}$。

例題

二次関数$y=-{\frac {1}{2}}x^{2}+x+{\frac {3}{2}}$ の$0\leq x<3$ の範囲での最大値・最小値を求めよ。

解

図3

上の例題と同様の問題のように思えるが、定義域が$0\leq x\leq 3$ ではなく、$0\leq x<3$ となっている。とりあえずグラフをかいてみることにする。

$y=-{\frac {1}{2}}(x-1)^{2}+2$.

グラフから、最大値は$x=1$ のとき$2$, 最小値は存在しない。

二次関数のグラフと二次方程式

二次関数$y=ax^{2}+bx+c$のグラフと$x$軸に共有点があるとき、その共有点の$y$座標は0であるから、共有点の$x$座標は、二次方程式$ax^{2}+bx+c=0$の実数解である。

• 問題例

• • 問題

次の二次関数のグラフと$x$軸の共有点の座標を求めよ。
(i)

$y=x^{2}-2x-1$

(ii)

$y=-4x^{2}-4x-1$

• • 解答

(i)　二次方程式$x^{2}-2x-1=0$を解くと

$x={\frac {-(-2)\pm {\sqrt {(-2)^{2}-4\times 1\times (-1)}}}{2\times 1}}={\frac {2\pm {\sqrt {8}}}{2}}={\frac {2\pm 2{\sqrt {2}}}{2}}=1\pm {\sqrt {2}}$

よって、共有点の座標は

$\left(1+{\sqrt {2}}\ ,\ 0\right)\ ,\ \left(1-{\sqrt {2}}\ ,\ 0\right)$

(ii)　二次方程式$-4x^{2}-4x-1=0$を解くと

$4x^{2}+4x+1=0$

$(2x+1)^{2}=0$

$x=-{\frac {1}{2}}$

よって、共有点の座標は

$\left(-{\frac {1}{2}}\ ,\ 0\right)$

(ii)のグラフはただ1点$\left(-{\frac {1}{2}}\ ,\ 0\right)$で共有し、共有点の$x$座標は二次方程式$-4x^{2}-4x-1=0$の重解である。このようなとき、二次関数のグラフは$x$軸に接するといい、その共有点を接点という。

二次関数$y=ax^{2}+bx+c$のグラフと$x$軸との共有点の$x$座標は、二次方程式$ax^{2}+bx+c=0$の実数解で、実数解の個数は$D=b^{2}-4ac$の符号によって決まる。

二次関数のグラフと$x$軸の位置関係

二次関数$y=ax^{2}+bx+c$のグラフと$x$軸の位置関係について、$D=b^{2}-4ac$とするとき $D>0\Leftrightarrow$ 異なる2点で交わる $D=0\Leftrightarrow$ 1点で接する $D<0\Leftrightarrow$ 共有点をもたない

例題

• • 問題

次の二次関数のグラフと$x$軸との共有点の個数を求めよ。

(I)

$y=3x^{2}-x+3$

(II)

$y=-2x^{2}-3x+5$

(III)

$y=x^{2}-2{\sqrt {3}}x+3$

• • 解答

(I)

$D=(-1)^{2}-4\times 3\times 3=-35<0$

だから、$x$軸との共有点はなし。
(II)

$D=(-3)^{2}-4\times (-2)\times 5=49>0$

だから、$x$軸との共有点は2個。
(III)

$D=(2{\sqrt {3}})^{2}-4\times 1\times 3=0$

だから、$x$軸との共有点は1個。

二次不等式

二次不等式とは、$x$ の二次式と不等号で表される式のことをいい、

$ax^{2}+bx+c>0$, $ax^{2}+bx+c\geq 0$

のような形をしている。グラフを利用して二次不等式の解を考えてみよう。

例題

図4

二次不等式 $x^{2}+4x>0$ を解け。

二次関数 $y=x^{2}+4x=x(x+4)$ のグラフは右図のようになる。

$x^{2}+4x>0$ となる$x$ の値の範囲は右のグラフの$x$ 軸より上側にある部分に対する$x$ の値の範囲であるから、

$x<-4,0<x$.

この問題をより一般化してみよう。 二次不等式$ax^{2}+bx+c>0$ を解くには$y=ax^{2}+bx+c$ のグラフをかけば一目瞭然である。しかし、グラフをかいた場合にも我々が注目するのは$x$ 軸より上か下かということと、$x$ 軸との共有点である。$x$ 軸との共有点は二次方程式$ax^{2}+bx+c=0$ の解であるが、二次方程式の解の公式を思い出してほしい。それは次のようなものであった。

二次方程式$ax^{2}+bx+c=0$が解を持つとき、その解$x$ は、

$x={\frac {-b\pm {\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}$

これを用いると、二次方程式$ax^{2}+bx+c=0$が解を持つとき、

$ax^{2}+bx+c=a\left(x-{\frac {-b+{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}\right)\left(x-{\frac {-b-{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}\right)$

と因数分解形で表すことができる。（右辺を展開して左辺と一致することを確かめてみよ。） ここで、

$\alpha ={\frac {-b-{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}},\beta ={\frac {-b+{\sqrt {b^{2}-4ac}}}{2a}}$

とおくと、

$ax^{2}+bx+c>0\Longleftrightarrow a(x-\alpha )(x-\beta )>0$

となる。$a>0$ のとき$y=ax^{2}+bx+c$ のグラフは下に凸であるからこの不等式の解は、

$x<\alpha ,\beta <x$

となる。$a<0$ のときは両辺を$-1$ で割ってから考えると、

$\alpha <x<\beta$

となる。

二次関数のグラフが$x$軸と異なる2点で交わる場合

• 例題

• • 問題

次の二次不等式を解け。
(i)

$12x^{2}+17x-7<0$

(ii)

$2x^{2}+6x+1\geq 0$

• • 解答

(i)　二次方程式$12x^{2}+17x-7=0$を解くと

$(4x+7)(3x-1)=0$

$x=-{\frac {7}{4}}\ ,\ {\frac {1}{3}}$

よって、この二次不等式の解は

$-{\frac {7}{4}}<x<{\frac {1}{3}}$

(ii)　二次方程式$2x^{2}+6x+1=0$を解くと

$x={\frac {-6\pm {\sqrt {6^{2}-4\times 2\times 1}}}{2\times 2}}={\frac {-6\pm {\sqrt {28}}}{4}}={\frac {-6\pm 2{\sqrt {7}}}{4}}={\frac {-3\pm {\sqrt {7}}}{2}}$

よって、この二次不等式の解は

${\frac {-3-{\sqrt {7}}}{2}}\leq x\ ,\ x\leq {\frac {-3+{\sqrt {7}}}{2}}$

二次関数のグラフが$x$軸と接する場合

$y=x^{2}-6x+9$の値の符号について考えよう。
平方完成をすると

$y=(x-3)^{2}$

この関数のグラフは、$x$軸と点$(3\ ,\ 0)$で接する。
$y=x^{2}-6x+9$の値の符号について、下の表のようになる。

$x$	$x<3$	$3$	$3<x$
$y=x^{2}-6x+9$	$+$	$0$	$+$

よって

$x^{2}-6x+9>0$の解は　3以外のすべての実数

$x^{2}-6x+9<0$の解は　ない

$x^{2}-6x+9\geq 0$の解は　すべての実数

$x^{2}-6x+9\leq 0$の解は　$x=3$

例題

• • 問題

次の二次不等式を解け。
(i)

$x^{2}+2x+1>0$

(ii)

$9x^{2}+12x+4\leq 0$

(iii)

$4x^{2}-4x+1<0$

(iv)

$x^{2}-10x+25\geq 0$

• • 解答

(i)

$x^{2}+2x+1>0$

$(x+1)^{2}>0$

よって、-1以外のすべての実数
(ii)

$9x^{2}+12x+4\leq 0$

$(3x+2)^{2}\leq 0$

よって、$x=-{\frac {2}{3}}$
(iii)

$4x^{2}-4x+1<0$

$(2x-1)^{2}<0$

よって、解はない
(iv)

$x^{2}-10x+25\geq 0$

$(x-5)^{2}\geq 0$

よって、すべての実数

二次関数のグラフが$x$軸と共有点をもたない場合

二次関数$y=ax^{2}+bx+c$のグラフと$x$軸の位置関係について、$D=b^{2}-4ac<0$のとき、$x$軸と共有点をもたなかった。
さらに$a>0$という条件を加えると、$y=ax^{2}+bx+c$のグラフは$x$軸より上側にある。

$a>0\ ,\ D=b^{2}-4ac<0$のとき

$ax^{2}+bx+c>0$の解は　すべての実数

$ax^{2}+bx+c<0$の解は　ない

例題

• • 問題

次の二次不等式を解け。
(i)

$x^{2}+2x+3<0$

(ii)

$2x^{2}-6x+5\geq 0$

(iii)

$-x^{2}+x-1\geq 0$

• • 解答

(i)

$x^{2}+2x+3<0$

$D=2^{2}-4\times 1\times 3=-8<0$

よって、解はない
(ii)

$2x^{2}-6x+5\geq 0$

$D=(-6)^{2}-4\times 2\times 5=-4<0$

よって、すべての実数
(iii)

$-x^{2}+x-1\geq 0$

$x^{2}-x+1\leq 0$

$D=(-1)^{2}-4\times 1\times 1=-3<0$

よって、解はない

（発展）放物線と直線

放物線と直線の共有点について考えよう。

• 問題例

• • 問題

放物線 $y=x^{2}-4x+5$ と次の直線の共有点の座標を求めよ。
(i)

$y=x+1$

(ii)

$y=2x-4$

• • 解答

(i)　求める共有点の座標は、連立方程式

${\begin{cases}y=x^{2}-4x+5\\y=x+1\end{cases}}$

の実数の解である。$y=x+1$ を $y=x^{2}-4x+5$ に代入すると

$x^{2}-4x+5=x+1$

すなわち

$x^{2}-5x+4=0$

これを解いて

$x=1\ ,\ 4$

$x=1$ のとき $y=2$
$x=4$ のとき $y=5$
よって、共有点の座標は

$\left(1\ ,\ 2\right)\ ,\ \left(4\ ,\ 5\right)$

である。
(ii)　求める共有点の座標は、連立方程式

${\begin{cases}y=x^{2}-4x+5\\y=2x-4\end{cases}}$

の実数の解である。$y=2x-4$ を $y=x^{2}-4x+5$ に代入すると

$x^{2}-4x+5=2x-4$

すなわち

$x^{2}-6x+9=0$

これを解いて

$x=3$

このとき $y=2$
よって、共有点の座標は

$\left(3\ ,\ 2\right)$

である。

例題の(ii)のように、放物線とその軸に平行でない直線がただ1点を共有するとき、放物線は直線に接するといい、共有点を接点という。

演習問題

• 演習問題A
• 演習問題B