ハムスターの飼育

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頬袋に餌を詰めるハムスター

ハムスターを飼ってみましょう。ハムスターは飼育も簡単で、人にもよくなつく、かわいらしいキヌゲネズミ科の動物です。

用意するもの[編集]

ケージ[編集]

種類 長所 短所
金網タイプ
  • 市販のものが豊富にある。
  • 軽量である。
  • 風通しがよい。
  • 冬期間は寒い。
  • 組み立てが複雑な場合がある。
  • 金網をハムスターが齧って歯をダメにしたり、よじのぼって落下したり、脱走される可能性がある。
  • 床材が外に飛び出る。
  • 壊れやすい。
  • 窓が狭い。
  • 手や足が挟まってしまう可能性がある。
水槽タイプ
  • ケージの外に床材があふれない。
  • 冬期間は比較的暖かい。
  • 観察が容易である。
  • 湿気がこもりやすい。
  • 風通しが悪い。
  • 上部からしか世話が出来ない。
  • 掃除がしにくく、汚れが溜まりやすい。
  • 重いので移動が困難。特に小さい子供など力の弱い人には向かない。
  • 湿気がこもると思いフタを開けておくと巣材を集めて脱走する。
爬虫類用ケージ
  • 風通しがよい。
  • 壊れにくい。
  • 比較的、他の種類のケージより広い
  • 掃除が楽
  • 高価である。
  • 入手しにくい。
ハムスターにもよく、飼い主にとっても使い勝手のよいケージとして、爬虫類用のものがある。少々値が張るが、ハムスターの安全と保温、広さ、掃除のしやすさを考えるとハムスターを最初に貰い受けるときにこの爬虫類用のケージを導入することを考えるのも良い。
金網ケージはハムスターが上ったあと、力尽きて落下し骨折することがある(ハムスターはネズミと異なり、高い所への昇り降りは得意ではない)。特に歳をとったハムスターには水槽ケージや爬虫類ケージが薦められている。金網ケージの四方をクリアファイルや下敷きなどで「目張り」することで、安全に飼育している飼い主もいる。
なお、日本の多くのハムスター愛好家が使用している住居として、スーパー、ホームセンター等で衣類をしまう目的で販売されている、「衣装ケース」がある。安く入手しやすく、軽い、保温性がよい、サイズが広いなどの利点がある。キャスター付のものは不意に移動してしまうため、キャスターをはずして使用したほうが安全である。

エサ入れ[編集]

陶器製、プラスティック製など様々なものがある。ペットショップ市販されているが、人間が使用している深さのある小さめの食器でも代用できる。また、野菜などの水分のあるものは別にエサ皿を用意しておくとよい。100円ショップの灰皿を代用する事もできる。

巣箱[編集]

ハムスターが姿を隠せるような大きさのものを用意する。市販の巣箱でもよいし、ティッシュ箱などを使って作ってもよい。牛乳パックなら防水性があって尿の汚れに対処できる。

回し車(ホイール)[編集]

回し車を回すパールホワイトハムスター
広いサイズのケージでない場合は運動不足解消の為に設置する事が望ましい。特にドワーフハムスターでは野生の状態では1日に数10kmも走るので設置した方がよい。回し車がはしご状になっているものはハムスターが足を踏み外して骨折をする場合があるので対策をする必要がある。体の大きさに対して大き目のものを選ぶ。走っている時に背中がえびぞりになったり、外に落っこちてしまうものは小さすぎるので使用しない(市販で売られているドワーフ用はドワーフハムスターには小さく、ゴールデンハムスター用はゴールデンハムスターには小さい事が多い)。市販の回し車は直径はドワーフ用で12cm、ゴールデンで16cmが多いが、個体によって大きさを選ぶのがよいされるが、アメリカ獣医師会では運動量の多いゴールデンハムスターは最低20cm以上で推奨サイズは30cmとしている。また、回し車の芯にベアリングを使ったものは回す際に出る音が小さくなっている。

給水器[編集]

ボトル型の給水器を設置し、毎日新鮮な水を与える。先端に水漏れ防止玉が付いていないものは水漏れに注意する。稀に給水器から水を飲むことを覚えない個体もおり、その場合は深さのある皿に水を入れて飲ませる。ただし、皿がひっくりかえりやすく、水も汚れやすい。水は水道水でよい。ペットの水も市販されているが、それを買うお金で新鮮な野菜を与えたほうがよいという意見もある。

床材[編集]

針葉樹チップ
比較的安価で売られていて購入しやすい。針葉樹チップはハムスターがアレルギーを起こして、皮膚疾患や呼吸器疾患を起こす場合もある。
広葉樹チップ
ポプラユーカリなどの広葉樹のチップ。針葉樹チップに比べると割高で購入しにくい。アレルギーを起こす心配のない安全な床材である。
牧草
吸水性が低く、頻繁に交換する必要があり、やや割高である。あまり長すぎないものを用意する。ハムスターが自分で齧って長さを調節できる。草食動物用のエサなので安全な床材でもある。
小動物用のピートモスが売られている。糞尿を分解してくれる作用があるので掃除は楽になるが、ハムスターの健康状態を把握しにくくなる。ハムスターが土に潜ったりするので汚れやすい。また、湿気が篭りやすく、プラスチックのトイレ等の下にカビが生えることもある。ストレスが解消されるためか、毛づやがよくなることもある。ただし、保温性が低いため冬の使用は控えたほうがよい。
紙製床材
吸水性もよく安全性の高い床材。秋冬向きな床材で、チップや牧草に比べ匂いが少なく、アレルギー反応もでないため安全である。他の床材に比べて割高であるが、お勧めの素材とされる。
新聞紙
簡単に手に入り安全性も高い床材。インクがハムスターについて汚れてしまう事がある。インク自体は大豆由来の成分であるため誤って口にしても害はない。シュレッダーなどで細かくするか手でちぎって細かくしたものを敷き詰めて使用する。ただし湿りやすいので、特に梅雨場は注意する。
コーン
入手が比較的難しく、価格も高い。さらっとした感触が特徴で春~秋向き。冬は使用を控えた方がよい(他に気温が15℃を下回るような環境)。個体によっては食べることがあり、その場合は通常の食事に差し障るので使用しない。商品によってはハムスターの体毛の油分をとり、毛並みが良くなるものもある。また、土のように(土ほどではないにせよ)掘って遊ぶことが出来る。給水器の水が垂れる部位にカビが生えるので小まめに掃除する必要がある。

巣材[編集]

キッチンペーパー・タオルペーパー
シュレッダーにかけるか細かくちぎって与える。
新聞紙
シュレッダーにかけるか細かくちぎって与える。
ティッシュペーパー

湿気を吸いやすく、爪が引っかかりやすい。 頬袋にくっついてしまう危険もあるので避けたほうが良い

綿
爪がひっかかりやすく、口にすると腸閉塞を引き起こすので危険である。また繊維が手足に絡みついて血行障害を起こし、最悪の場合は壊死、切断に至ったケースもある。使用しない方が望ましい。
トイレ
トイレ砂
基本は固まらない砂を使う。遊び場の砂として売られているものの使用も可能。市販で売られている固まるトイレ砂は尿をした後が固まるので掃除がしやすい。しかし、ハムスターが口にすると腸閉塞を引き起こすので、なんでも口にしてしまう個体には使用しない。
紙製トイレ砂
紙製のトイレ砂。尿をした部分が濡れてわかる。比較的掃除もしやすい。
砂場
焼砂
公園の砂などはダニなど異物が混入している場合が多いので、砂浴び用の消毒してある砂を購入することが望ましい。ハムスターは水浴びをしない代わりに砂浴びをする事で体を清潔に保つので、ケージの中に砂場を設置できない場合は定期的に砂浴びをさせるとよい。

キャリー[編集]

ケージ掃除中の待機場所や、通院時などの移動用に用意しておく。ケージと同じように、床材を敷き詰めて飲み水も用意する。あくまでも移動用なので、この中で飼育はしない。
温度計湿度計
温度管理、湿度管理の為に用意しておく。通常の温度計と湿度計がついたものでよい。園芸用などで、最高値・最低値の記録できる最高最低温室時計があると1日の中の温度変化、湿度変化がわかり便利である。

遊具[編集]

ハムスター用にパイプなどが売られている。パイプの中で寝てしまったりする場合がある。また、分解掃除できないものは不衛生なので使用しない。トイレットペーパーの芯でも可。
ハムスターボール
ハムスターが中に入って遊ぶボール型の遊具。ハムスター自身で速度調整をしたり曲がったりする事が困難なので、壁にぶつかったり、落下したりして骨折するおそれもある。使用中にハムスターボールの蓋が開き、脱走することもある。

かじり木[編集]

歯の伸びすぎによる噛み合わせの悪くなることを予防したり、ストレス解消にもなる。市販されているが、かまぼこの板や割り箸などでも代用可能。ただし、かじり木を齧ることによって壊すことに楽しさを覚えてしまったり、歯を痛めてしまうなどの説もある。

エサ[編集]

主食[編集]

市販の固形ペレットを与える。 粗たんぱく質が16.0%以上のものが好ましく、個体にあわせ、適切な粗脂肪の量のペレットを与える。ネット通販で実験動物用のペレットが手に入り、栄養価も高く、人気がある。 また、ミックスフード類はいろいろ入っており便利だが、主食としてはあまり向かない。(ペレット入りのミックスフードもあるが、ペレットの量が少ない場合が多い。また、ミックスフードは小型用もあり、ジャンガリアンやドワーフにはOK)。時折、”ハムスターの主食”と題した商品の中でお菓子としかいえないものもある。成分をよくチェックすること。

あまり多く与えてはいけないので注意すること。

副食・おやつ[編集]

  • 穀類
    蕎麦の実などを副食として与える。比較的低カロリーなのでダイエット用にもなる。
  • 野菜
    副食として与える。キャベツニンジンブロッコリー小松菜青梗菜モロヘイヤなど。生で与える場合は水分の多いものは下痢・軟便になる場合があるので与えすぎには注意する。
  • 果物
    副食として与える。リンゴ、乾燥パパイヤなど。生で与える場合は水分の多いものは下痢・軟便になる場合があるので与えすぎには注意する。
  • 動物性たんぱく質
    副食として与える。ゆで卵の白身や、蒸したのささみ、煮干しミルワームゴミムシダマシ科の幼虫)など。
    ミルワームを与える場合は買ってきてすぐに与えてはいけない。カルシウムとリンのバランスが悪いため骨折しやすい体になる。したがって、ミルワームを育ててから、ハムスターに与える。
  • 種子類
    おやつとして与える。ヒマワリ種、ピーナッツなど。脂肪分が多いので主食として与えてはいけない。
  • その他
    市販のビタミン剤や乳酸菌錠剤。ハムスターの健康状態によって必要ならば与える。

与えてはいけない食べ物[編集]

餌として適していないもの(トイレ砂やその他食用してはいけないもの)

保温と保冷[編集]

ハムスターにとっての適温は20℃から25℃くらいとされている。室温が30℃を超えたり、15℃を下回ったりしないようにする。また、1日の気温差が10℃以上にならないようにする。

エアコンが使用できる場合はエアコンを使って温度調整をする事が望ましい。ただし、エアコンの風がケージに直接当たらないようにする。エアコンが使用できない場合は、保温、保冷が必要である。

特に日本では容易に15℃を下回るため、寒い時期はペット用のヒーターを使用したり、ケージをダンボール箱で囲むなどして保温する。ヒーターを使う場合は暑くなりすぎないようにし、逃げ場となる場所が出来るように設置する。手軽な保温として、いらなくなった靴下を与えることも有効である。このとき入り口となるところのゴムを切っておくとよい。使い捨てカイロを使う方法もあるが、袋を破られる可能性があるためメーカーから販売されているカバーに入れて使うとよい。冬場の保温にはペットヒーターやエアコンが必要不可欠であるという意見もある。

暑い時期は、保冷剤等をケージの上に置く事で保冷する事ができる。この際、ケージ内に水が滴り落ちたり湿気が篭ったりしないようにする。ただし、ペットボトルに水を入れて凍らせたものは避けた方がよい。ペットボトルは冷凍させると破裂することがあり、破裂に気付かず使用すると溶けた氷でゲージ内が水浸しになる恐れがある。

繁殖[編集]

ゴールデンハムスターは齧歯類の中でも特に性周期が安定しており、メスは4日の周期で発情を繰り返す。 発情したメスは、背中側のお尻周辺を触ったり、甘噛みされると、尾を上げ交尾姿勢を取る。 その時に交尾に成功すれば17日後に2-8匹程度の仔が産まれる。 出産後のメスは過敏になり、構い過ぎると仔を食殺してしまうので、出産後10日間はケージに布をかぶせてそっとしておく。

一度に大量の仔が生まれるため、飼い主は事前に子供の里親や自分で飼う準備などをしておく必要がある。兄弟であってもケンカをするため、ハムスターの数だけケージが必要になる場合も多く、無責任に生ませてはいけない。

また、種の違うもの(ゴールデンハムスター×ジャンガリアンハムスター、ジャンガリアンハムスター×キャンベルハムスター等)の交雑は、基本的に不可能であり、妊娠したとしても母体・子供に危険が及ぶ確率が高いので危険であるが、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターを交雑させたものは一般のペットショップにも出回っていることがある。

ハムスターの病気[編集]

ハムスターの病気が発覚したときは、すでに症状が進行してしまっている事が多く、ハムスターが健康なときから係り付け医を見つけておいて、すぐに対処できるようにすることが大切であり、生き物を飼う上での責任でもある。 病気対策は予防が基本である。ちゃんとした食事を与え、水も毎日取り替え、ケージ内も清潔に保っておく。特に肥満は体の小さいハムスターにとって心臓への負担が大きい。肥満の程度は個体によっても異なる。