中学数学3年 式の計算
式の乗法・除法
[編集]2 年までに式の加減や、単項式の乗除をやってきたわけであるが、3 年では式の乗除を学習する。はじめに、(単項式)×(多項式)や、(多項式)×(単項式)の形の計算をやってみよう。
多項式と単項式の乗除
[編集]このような式は、分配法則を利用して計算することができる。
- (a + b)c = ac + bc
- c(a + b) = ca + cb
また、多項式 ÷ 単項式の計算も、多項式 ÷ 数の場合と同じように計算することができる。
多項式の乗法
[編集]次に、多項式同士の積を考えてみよう。
- (a + b)(c + d)
はどうなるだろうか。仮に、(c + d) = A と置き換えてみると、
- (a + b)A = aA + bA
となるので、A をここで元に戻してみる。すると、
すなわち、(a + b)(c + d) = ac + ad + bc + bd となる。ここで見られるように、「積の形で書かれた式を整理し、式の値を保ったまま、和の形にすること」を、「元の式を多項式に展開(てんかい)する」という。 展開した式が同類項を含むときは、2 年で学習したとおり、まとめて簡単な式に整理することができる。
展開公式
[編集](x + a)(x + b) の展開
[編集]を展開してみよう。
となり、
- x の係数は a と b の和、
- 定数項は a と bの積
になる。
(x+a)(x+b) の展開公式 |
(a + b)², (a - b)² の展開
[編集]同様に、
このような形の展開公式を、とくに平方公式(へいほう こうしき)という場合がある。それは、展開する前の元の式が、一次式の 2 乗の形、すなわち平方の式を展開する公式になっているからである。
平方公式 |
|
(a + b)(a - b) の展開
[編集]このような、同じ数についての和と差との積を求めることができる公式を、和と差の積という。
和と差の積 |
|
因数分解
[編集]素因数分解
[編集](注意 2021年以降に中学3年生になった方は、この内容は中1で学ぶこととなりました。) 最初に、この問題を考えてみよう。
- 例題
- 48 を 1 より大きい 2 つの整数の積であらわしなさい。
これは例えば 48 = 8 × 6 とできるので、これが1つの答えである。
このように、
整数がいくつかの整数の積の形に表すことができるとき、その 1 つ 1 つの数のことを、もとの数の 因数(いんすう)という。
この問題は 8 と 6 が 48 の因数と言うことができる。また、48 はほかにも 4 × 12 とか、3 × 16 とあらわすことができるため、4 と 12 も 48の因数 といえるし、3 と 16 も 48の因数 といえる。
2 や 3 や 5 や 7は、それより小さい自然数の積であらわすことはできない。このような数を 素数 (そすう)という。 ただし、1は素数にふくめない。
48 =8×6 であったが、8=2×2×2であり6=2×3であるため、48は次のようにも分解することもできる。
- 48 = (2 × 2 × 2) × (2 × 3) = 2 × 2 × 2 × 2 × 3
このように、因数をさらに小さい因数の積に分解していくと、最後には、素数の積だけで表すことができる。
(この計算例の素数である因数の 2 や 3 のように、)
素数である因数のことを素因数(そいんすう)という。
そして、
自然数を素数の積として表すことを素因数分解(そいんすうぶんかい)という。
例題にある 48 を素因数分解したときの結果は、
のように指数で表すと見やすい。
こんどは、さきほどの数 48 を 4 × 12 をもとに素因数分解してみましょう。
- 4×12 = (2×2)×(2×2×3)=
となり、同じく の結果になります。
このように素因数分解はどのような順序で行っても、結果は同じになる。
- 例題
80を素因数分解してみよう。右図のように、小さい素数から始めて、次々に割り算していくと、手間はかかるが、確実に素因数分解を行うことができる。この筆算を「簾算(すだれざん)」とよぶ。
2 | ) | 80 | |
2 | ) | 40 | |
2 | ) | 20 | |
2 | ) | 10 | |
5 | |||
よって、
- 80 = 24 × 5
80の計算では、因数 8 が目立つが、しかし右の計算例のように素数(例の場合は素数 2 )で素因数分解していくことに気をつけよう。
※ 発展: コラム
[編集]コラム・1はなぜ素数でないか
[編集]1が素数でないことについては上でも述べたが、別の説明の仕方をすることもできる。
当たり前のことだと思うかもしれないが、素因数分解は次のような性質を持つ。これを算術の基本定理といい、本当は証明すべき立派な定理なのだが、ここでは証明しない。(中学生向けの書き方はしていないが、w:算術の基本定理に証明があるので気になる読者は参照のこと)
- すべての自然数は素因数分解することができる。
- ある自然数を素因数分解したとき、その分解の仕方は素数の並べ方を除いて一通りしかない。
分解の仕方は一通りというのは、誰が素因数分解しようとも必ず同じ分解になる、ということである。(当たり前すぎて逆にわかりにくいと感じるかもしれない。)
しかし、もし1が素数だとすると、この性質は成り立たなくなる。なぜならば、6=2×3だが、たとえばこれを6=1×1×2×3ともあらわせて、分解の仕方が一通りではなくなるからである。ゆえに、1を素数とは呼ばないのである。
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
まずこの中で、2以外の2の倍数は素数ではないので消してしまおう。
2 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99
3は2では割り切れないので素数です。しかし、3以外の3の倍数は素数ではないから消してしまおう。
2 3 5 7 11 13 17 19 23 25 29 31 35 37 41 43 47 49 53 55 59 61 65 67 71 73 77 79 83 85 89 91 95 97
5は2でも3でも割り切れなかったので残っています。だから、5は素数です。しかし、5以外の5の倍数は素数ではないから消してしまおう。
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 49 53 59 61 67 71 73 77 79 83 89 91 97
同じ考え方で、7以外の7の倍数を消してしまうとこうなります。
2 3 5 7 11 13 17 19 23 29 31 37 41 43 47 53 59 61 67 71 73 79 83 89 97
残った数の中には、2と3と5と7で割り切れるものはありません。そして、11, 13, 17・・・で割り切れる数も、残っていません。なぜなら、この時点でもし11で割り切れる数が残っているとしたら、その数は11×11=121より大きいものでなくてはなりません。しかし、今は100以下の自然数で考えているので、11で割り切れる数は残っていません。だから、ここに残っている数は全部素数であり、また、100以下の素数はこれで全部です。
このようにして素数を見つける方法を、発見したギリシャの学者の名前を取って「エラトステネスの
- なぜ11で割り切れる数は残っていないか
注意:ここでは「平方根」・「二次方程式」を既知であることを前提としています。
nが素数でないものとするとnはpとq(どちらも自然数であり1<p≦q<n)という約数を持ち、
と表されます。p≦qより
なので、
となります。
つまり、nが素数でないならば、その約数のうちの小さいほうはより小さい、ということです。よって、2以上以下の約数がないことがわかれば、nは素数とわかります。
先ほどの例でいえば、なので、11について調べる必要はもうないのです。
素数は無限個存在することが知られており、エラトステネスの
因数分解
[編集]たとえば、(x + 2)(x - 2) を展開すると x2 - 4 となる。このことから、x2 - 4 は、このように積の形に表すことができる。
このような文字の式の場合も、整数の場合と同じように、x + 2 や x - 2 を x2 - 4 の因数(いんすう)という。
一般に、「多項式をいくつかの因数の積の形に表すこと」を因数分解(いんすうぶんかい、英: factorization)という。上の例から、因数分解は展開の逆の操作と言える。
それで、因数分解の仕方を学習しよう。
共通因数を取り出す
[編集]次の数の因数分解を考えてみよう。
- An + Am
この多項式には、どの項にも A という共通な因数がある。その共通な因数のことを共通因数(きょうつういんすう)という。その共通因数 A を取り出すことで、次のように因数分解をすることができる。
この式の右辺は分配法則を用いて展開すると元の式に戻るため、正しく因数分解されていることがわかる。
このように共通因数を取り出して因数分解することを「共通因数のくくりだし」という。因数分解をするときには、まず手始めに共通因数のくくりだしができないか考えるとよい。
乗法公式を利用する
[編集]それでは、共通因数がなかったらどうすればよいのだろうか。
ここで、因数分解とは何だったかを思い出してみよう。因数分解とは展開の逆の操作だったはずである。だから、乗法公式を逆に利用して、因数分解ができないか考えればよい。展開公式も乗法公式の一部である。
乗法公式 |
|
それぞれの乗法公式の行頭に示してある番号は、あくまで説明用に書いているだけなので、覚える必要はありません。これらを使って、できるだけ細かく因数分解をする。
- 例
- 2x2-4xy+2y2
これは、まず共通因数の2でくくりだし、その後乗法公式の3.を利用して因数分解すればよい。
- 正解は
- 演習問題
次の式を、因数分解しなさい。
- x 2 - 4x + 3
- x 2 - 12x + 35
- x 2 + 3x - 10
- x 2 + 6x + 5
- x 2 + 11x + 18
- x 2 - 3x - 108
- x 2 - x - 12
- x 2 - 2x - 24
- x 2 - x - 72
(答えはこのページのいちばん下にあります)
利用
[編集]展開や因数分解は非常に重要で、これから高校、大学と使用することになる。また、高校に入れば新たに習う乗法公式もある。しかし基本となるのは今までに学習した公式や、その考え方である。ここでは、ここまでの公式や考え方を用いて、ある形の計算を簡単に行う方法を学ぶ。
数式の計算
[編集]- 例題
- を計算しなさい。
このような計算は、普段は筆算で行うことが多いだろう。しかし、展開や因数分解を使うと、もっと簡単に速く正確に解ける。
この式を次のように変形すると、
となり、
と同じ形になるので、答えは以下のようになる。
電卓で計算してみても同じ結果になる。確かめてみよう。
演習問題の解答
[編集]- (x - 1)(x - 3)
- (x - 5)(x - 7)
- (x - 2)(x + 5)
- (x + 1)(x + 5)
- (x + 2)(x + 9)
- (x + 9)(x - 12)
- (x + 3)(x - 4)
- (x + 4)(x - 6)
- (x + 8)(x - 9)