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中学校理科 第2分野/生物と環境

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

食物連鎖

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陸上と海中での食物連鎖のイメージ。

動物性プランクトンは、エサとして、植物性プランクトンを食べている。 具体的に言うと、ミジンコやゾウリムシなどの動物性プランクトンは、ケイソウやアオミドロなどの植物性プランクトンを食べる。

そして、動物性プランクトンも、メダカなどの小さな魚に食べられる。

メダカなどの小さな魚も、さらに大きな魚に、エサとして食べられる。

植物プランクトン(ケイソウなど) → 動物プランクトン(ミジンコなど) → 小型の魚(メダカなど) → 中型の魚 →大型の魚など

というふうに、より大型の生き物などに食べられていく。

生きてるあいだは食べられずに寿命を迎えて死んだ生物も、微生物などにエサとして食べられていく。

このように、生き物どうしが、「食べる・食べられる」 の関係を通じて関わり合っていることを 食物連鎖(しょくもつれんさ) という。

食物連鎖は、なにも水中の生き物だけでなく、陸上の生き物にも当てはまる考え方である。

生物量ピラミッド。このピラミッドは例の一つである。書籍によって、段数は変わる。この左図の場合、消費者は第一次消費者から第三次消費者までの三段階である。
生産量ピラミッドの説明図。植物は生産者となる。草食動物および肉食動物は消費者である。
このピラミッドは例の一つである。書籍によって、段数は変わる。ふつうの書籍では、生産者は植物になる。ふつうの書籍では、一般の動物は、草食動物も肉食動物も消費者となる。
この図の場合、草食動物が第一次消費者であり、肉食動物が第二次消費者である。

ある生物が、別の生物を食べる場合、食べる側の生物を 消費者(しょうひしゃ) という。

動物は、他の動物または植物を食べているので、動物はすべて消費者である。肉食動物も草食動物も、どちらとも消費者である。

植物を 生産者(せいさんしゃ) と言う。食物連鎖の始まりの生物は、植物になる。草食動物は、生産者では無い。


肉食動物の食べられる動物は一種類とは限らず、2種類以上の場合もあるので、よって食物連鎖の図は1本の線にはならず複雑な網のようになる場合もある(むしろ、単純な一本の線になることの方がはるかに少ない)ので、このような網のような食物連鎖のことを食物網(しょくもつもう)という。


(※範囲外)動物の食事に関する、世間のデマ
肉食動物も草を食べる

インターネット上にあるデマで、「肉食動物は草を食べない」というデマがあります。トンデモないデマです。

猫は肉食動物とされますが、猫は草を食べます。「猫草(ねこくさ)」なんてものも販売されているくらいです。 w:猫草

そもそも、市販のキャッチフードの成分に、たとえばトマトやリンゴ、豆、など、猫も食べられる野菜が普通に加えられています


ネコだけでなく、ライオンなどネコ科の動物も、適度に草を食べています。

困ったことに、ネット上では、獣医師などを騙る(かたる)webサイトが、「猫は草を食べない」みたいなデマを広めていたりします。

肉食動物は、単に、ほかの動物の肉も食べる、という意味です。


草食動物も肉を消化できる

草食動物であるウシなどの畜産動物も、ほかの動物の肉を粉にして、穀物などのエサにまぜられた肉骨粉(にくこっぷん)などを食べています。

ただし、ウシやウマなど、「草食動物」とされる一部の動物は、彼らの体内に住み着いている微生物が、草を消化できる酵素をもっています[1]。なので、ウシやウマを「草食動物」と分類する事には、科学的根拠があり、このウシ・ウマの「草食動物」の分類は正しい。

けっしてウシ本体やウマ本体が消化するのではなく、体内に住んでいる微生物が消化をします。

ウシの場合、彼らは胃を複数個もっており、さらに時々、消化中の草を口にもどす「反芻」(はんすう)をして、そのあいだに胃で微生物が消化をします。

ウマの場合、腸が発達しており、そこで消化をします[2]

世間の分類はイイカゲン

ネコやライオンなどは、草を消化できる酵素をもっていませんが、人間もまた、草を消化できる酵素をもっていません。

だからこそ、「野菜を食べると、食物繊維により、ウンチが出やすくなる」とか言われるのです。よく、食事で野菜を残す子供に、そういう説教をされるでしょう。

もし食物繊維を消化できるなら、大便の中には繊維を残らないはずですが、ではなぜ、野菜を食べるとウンチが出やすくなるのか、理屈が通ってません。


なのに、「人間は肉食」とは、あまり言われません。人間は野菜も食べるからです。

なのに、キャッチフードに野菜が含まれていても、「ネコは肉食」と言われています。

ウシやウマなど、「草食動物」とされる一部の動物だけが、草を消化できる酵素をもっているだけです。なので、ウシやウマを「草食動物」と分類する事には、科学的根拠があり、このウシ・ウマの「草食動物」の分類は正しい。

生物量ピラミッド

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  • 生物量(せいぶつりょう)
また、ある生物の集まりを、質量や個体数などで表したものを生物量(せいぶつりょう、英:biomass [3] バイオマス) という。
(※ 範囲外 :)中学範囲外ですが「バイオマス」という単語も覚えてください。少なくとも高校英語の参考書著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』で、biomass の和訳として「バイオマス」とそのまま書いてあります[4]
  • 生物量ピラミッド

本ページの図のように、三角形で図示された生産者と消費者の個体数の関係を、生物量ピラミッド または 生体量ピラミッド などという。植物など、ピラミッドの下段ほど個体数が大きいので、ピラミッド状の三角形で図示されている。


生物量ピラミッドでの「消費者」は、書籍での説明の必要に応じて、「第一次消費者」「第二次消費者」、・・・ など、多段階に分類される。

第一次消費者は、第二次消費者に食べられる。
第二次消費者の視点から見れば、第二次消費者は第一次消費者を食べる。
第三次消費者が書かれていれば、第三次消費者は、第二次消費者を食べる。第二次消費者は、第三次消費者に食べられる。

環境によっては、同様に第四次消費者や第五次消費者がいる場合もある(受験研究社)。その場合も、第三次消費者は第四次消費者に食べられる。第四次消費者は第五次消費者に食べられる。

「第」は付けなくても良い(受験研究社、旺文社)。つまり、「一次消費者」「二次消費者」「三次消費者」という言い方でも良い。(旺文社の参考書でも受験研究社の参考書でも、「第」はそもそも付けずに「一次消費者」という用語で紹介している。)


一次消費者とは、草食動物の全般である。ほ乳類やセキツイ動物に限らず、虫なども含めて、草を食べる動物すべてが一次消費者である。

二次消費者とは、一次消費者を食べる動物のこと。具体的には、カエルが、二次消費者の例として説明される場合が多い。カエルは小型の虫を食べるが、その虫が草を食べている場合が多いので。

ヘビはカエルを食べるので、ヘビを三次消費者に分類する場合もある。いっぽう、もしヘビが草を食べている虫を食べれば、その視点ではヘビは二次消費者である。このように、同じ動物が、視点によっては二次消費者になったり、三次消費者になったりする。

受験研究社の参考書ではヘビは二次消費者だが、旺文社の参考書ではヘビは三次消費者である。


ともかく、栄養は、

生産者 → 第一次消費者 → 第二次消費者 → 第三次消費者 → ・・・

というふうに、移動していく。

生産者とは、植物や、ラン藻類などの、光合成によって栄養をつくる生物のことである。また、地上の草だけでなく、植物プランクトンなども、光合成をおこなって栄養を蓄えているので、生産者にふくめる。


どの生物が、二次消費者であるかを覚えることは意味が無い。たとえばカエルはよく二次消費者の例にされるが、しかし、

草 → チョウ(一次消費者) → クモ(二次消費者) → カエル(三次消費者) → ヘビ(四次消費者) → ワシ(五次消費者)

のようにカエルが三次になる場合もある。


  • ピラミッドの上段に置かれる個体ほど、個体数が少なくなる。
  • ピラミッドの下段に置かれる個体ほど、個体数が多い。
ピラミッドの最下段の生物は、かならず、植物やラン藻類などの光合成生物になる。
ピラミッドの最上段の生物は、ふつうの環境では、肉食動物がピラミッドの頂点にくる生物である。

第一次消費者が生きるためには、それに食べられる生産者が必要なので、よって、第一次消費者の数は、生産者よりも少なくなる。 つまり、不等式で書けば

生産者(植物など) > 第一次消費者

である。

同様に、第二次消費者が生きるためには、食料として第一次消費者が必要なので、

第一次消費者 > 第二次消費者

となる。

生産者と第一次消費者との個体数の関係を合わせれば、つまり、

生産者(植物) > 第一次消費者 > 第二次消費者

となる。

第三次消費者が書かれている場合も同様にして、

生産者(植物) > 第一次消費者 > 第二次消費者 > 第三次消費者

となる。

このように、ピラミッドの上に置かれる個体ほど、個体数が少なくなる。
書籍の必要に応じて、第四次消費者や第五次消費者が書かれている場合は、個体数の大小関係は

生産者(植物) > 第一次消費者 > 第二次消費者 > 第三次消費者 >第四次消費者 > 第五次消費者

の関係である。

  • ピラミッドの上の消費者ほど、体が大きい。

たとえば、第二次消費者の体の大きさは、第一次消費者を食べられるので、第二次消費者は第一次消費者よりも体が大きい。

生物どうしのつり合い

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なんらかの理由で、生産量ピラミッド中での、ある生物の個体数の比率が変わっても、時間が経てば、もとどおりに近づいていく。

なぜならば、たとえばある草食動物が増えても、植物は増えないので、そのうち食料としての植物が不足していく。また、その草食動物を食料として食べる別の肉食動物も、そのうち増えてしまう。
そうすると、草食動物の食料としての植物不足と、草食動物を食べる肉食動物の増加により、つぎは、草食動物が食べられて減ってしまう。

そのため、しだいに、もとどおりに近づいていく。


他の場合も考えてみよう。 つりあいの状態から、なんらかの理由で、肉食動物が増えた場合も考えよう。仮に、この状態を「(肉食動物=増)」と書くとしよう。

  1. 肉食動物が増えると、草食動物は食べられるので、草食動物は減っていく。(草食動物=減) そして肉食動物は、植物を食べないので、まだ個体数は変わらない。
  2. 次に、草食動物が減ったぶん、植物が増える。(植物=増) また、草食動物が減ったぶん、肉食動物が減ってしまう。(肉食動物=もとどおり)
  3. 次に、植物が増えたぶん、草食動物が増える。(草食動物=もとどおり)
  4. 草食動物が元通りになったので、その分、食べられる植物の量が増えるので、植物の量が雄どおりになる。(植物=もとどおり)

このように、食物連鎖を通じて、個体数の比率は調節されている。


  • 食べられる生物の増減にともない、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて増減する。
もし、食べられる生物が増えると、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて増える。
もし、食べられる生物が減ると、食べる側の動物の個体数は、少し遅れて減る。

(※ 画像を募集中。カナダでの、オオヤマネコ(捕食者)とカンジキウサギ(被食者)の個体数のグラフなどを作成してください。)


  • 環境によるピラミッドの変化

環境破壊や森林伐採などで、ある地域で、大規模に森林が破壊されてしまうと、生産量ピラミッドの最下段の生産者が減ってしまうので、上の段の消費者の動物も、その地域では生きられなくなってしまう。

人工的な環境破壊のほかにも、火山の噴火、山くずれ、洪水などの自然災害で、生物の量が大幅に減る場合もある。

分解者

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アオカビの構造。

落ち葉や、枯れ木、動物の死がい や ふん などの有機物を分解して無機物にする生物を分解者(ぶんかいしゃ)と言う。 おもに、菌類(きんるい)や細菌類(さいきんるい)が、分解者である。

菌類とは、いわゆるカビやキノコのことである。シイタケやマツタケは菌類である。アオカビやクロカビは菌類である。

細菌類とは、たとえば、大腸菌(だいちょうきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)、納豆菌(なっとうきん)などが、菌類である。

分解者の分解によって、有機物は、二酸化炭素や水や窒素化合物などに分解される。

この分解者の分解によって生じた無機物は、生産者である植物がまた栄養分として利用できる。その植物を上述のようにまた消費者が食べるので、こうして栄養はまた植物から消費者へと回っていく。

栄養素には色々とあるが、炭水化物等に含まれている原子である炭素 C について考えると、炭素は、生産者と消費者と分解者の中を、上記の食事を通して、(炭素が)生態系のなかを循環していく。

さらっと「生態系」と言ったが、ある地域に住んでいる動物すべてと、水、土壌、光、空気などの環境すべてをまとめて「生態系」という。


さて、いま話している分解者である菌類や細菌類は、葉緑体を持っていないので、光合成によって栄養を作ることができない。

菌類は葉緑体を持っていないため、菌類は植物には、ふくめない。細菌類も、同様に、植物にふくめない。

菌類の栄養の取り方は、カビ・キノコともに、菌糸をのばして、落ち葉や動物の死がいなどから、養分を吸収している。

  • 菌類
  • 細菌類

発展: 生物濃縮

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食物連鎖で生物間を移動する物質は栄養素だけではなく、生命には望ましくない有害物も、食物連鎖を移動していく。 たとえば、かつて農薬として使用されていたDDT(「ディーディーティ」と読む)は、自然界では分解されにくく、脂肪に蓄積しやすく、そのため食物連鎖を通じて高次の消費者へも取り込まれ、動物に害をおよばした。

生物内で分解・排出できない物質は、体内に蓄積しやすいという特徴がある。さらに、その生物を食べる消費者の体には、もっと多く蓄積しやすい。このため、生態ピラミッドで上位の生物ほど、高濃度で、その物質が存在しているという現象が起き、この現象を生物濃縮(せいぶつ のうしゅく、biological concentration)という。

毒性のある物質で、生物濃縮を起こす物質によって、高次の消費者を死亡させたり、高次の消費者の生命が脅かされた事例が過去に起きた。 生物濃縮を起こす、危険物質は、DDTやPCB(「ピーシービー」と読む)といった人工合成物や、有機水銀や鉛(なまり)といった重金属(じゅうきんぞく)などがある。

現在、アメリカおよび日本などでは、DDTの使用は禁止されている。

日本で起きた水俣病は、おもに有機水銀の生物濃縮による。


(※ 範囲外: )「無機水銀」は無機の水銀ではない

なお、水銀で毒性のあるのは、けっして有機水銀だけではない。無機水銀(硫化水銀[5] )や通常の金属水銀も猛毒である[6]。なお、有機水銀のことを「メチル水銀」ともいう。「メチル」とは化学の用語のひとつで、詳しくは高校の有機化学で習う。

通常の金属水銀も無機物である、しかし「無機水銀」と言った場合、まぎらわしいが、けっして通常の金属水銀のことではなく、硫化水銀の事を「無機水銀」と言う。当然、こんな、まぎらわしすぎる用語を若者の中学生・高校生に引きおこす用語「無機水銀」は、中学高校の理科では習わない。

正直、水俣病の水銀の種類をわざわざ「有機水銀」と強調する必要は、教育的には乏しいだろう。おそらく、硫化水銀などとの区別のため、わざわざ、水俣病の水の種類を「有機水銀」と強調しているのだろうか。しかし、「無機水銀」という用語を中学高校では教えられない一方で「有機水銀」と言う用語だけを教えるので、いまいち教育的な効果が不明瞭な状態になっている。

土壌動物

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ツルグレン装置

土壌のなかにいる生物で、落ち葉を食べて栄養を得られる動物がいて、ダンゴムシやミミズなどが、そうである。

これは、分解者なのか、それとも消費者なのか、判断になやむ。

とりあえず、あまり深入りしない事にしよう。

ともかく、生きている草による栄養吸収を経由しなくても、落ち葉から直接的に栄養を得られる動物もいる。


  • 落ち葉を食べる動物・・・ダンゴムシ、ミミズ、センチュウ、トビムシ、ヤスデ、など


カニムシは、トビムシを食べる。カニムジ自体は、落ち葉を食べない。


カニムシは大きなハサミをもっている。ハサミは、ほかの虫をしとめるために有用である。

※ 入試で、カニムシが肉食動物かどうかを問う出題がある。ハサミに注目して考えると良い。


ほか、ムカデもトビムシを食べる。カニムシは、ムカデに食べられる(旺文社)。

なお、モグラは、トビムシ、ミミズ、ダンゴムシなどを食べる。


土壌動物を採集する方法として直接採集するほかにも、ツルグレン装置やベールマン装置をつかう方法がある。

ツルグレン装置で光を当てるのは、土壌動物は乾燥をきらうため、光を上から当てると、光から逃げるように、下方に移動するので、ついには、下方にある ろうと から落下する、という原理の装置である。

落下先のビーカーには 70%エタノールを入れる場合もあるが、しかしその環境では生物は死んでしまうので、生きたまま観察したい場合にはエタノールを入れない(旺文社)。

※発展: その他の用語

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受験研究社にある用語

天敵、群れ、縄張り、順位制、リーダー制、競争、すみわけ、食いわけ、共生、寄生、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


旺文社では習わない。

なお、高校で習う用語である。

脚注

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  1. ^ 『馬と牛…同じ草食動物でも全然違う消化吸収の仕組み 獣医師記者がやさしく“噛み砕いて”説明します』, 中日スポーツ・東京中日スポーツ, 2021年1月8日 06時00分,
  2. ^ [ ]
  3. ^ 小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.210
  4. ^ 小森清久 ほか編著『新版完全征服 データベース5500 合格英単語・熟語』、桐原書店、2019年2月10日 第41刷発行、P.210
  5. ^ 環境省 国立水俣病総合研究センター『水銀と健康』、著作日は不明 2020年12月9日に閲覧して確認
  6. ^ 文部科学省『高等学校用 疾病と看護』、平成25年1月20日発行、P415