中学校社会 地理/ロシアと周辺の国

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

ロシア[編集]

肌色に染められた部分がロシアの領土、赤く染められた部分がモスクワ。

首都:モスクワ

ロシアは、ウラル山脈をはさんで、ヨーロッパからアジアにまたがる巨大な国である。ロシアの国土面積は、日本の約45倍もある。 東西に長いため、9個の標準時をもつ。

ウラル山脈から東側をシベリアという。シベリア側がアジア州である。ウラル山脈から西側が、ヨーロッパ州である。

ロシアには多くの民族が暮らしており、スラブ系のロシア人が8割をこえるが、そのほかの少数民族をあわせて100以上の民族がいる。

宗教は、民族が多いため、さまざまな宗教が信仰されているが、スラブ系ロシア人のあいだではキリスト教の正教会が、おもに信仰されている。

ロシアは、国土の大半が亜寒帯である。

南西部の黒海(こっかい)沿岸(えんがん)やシベリア西部は、気候がやや暖かく、ステップ気候にちかく、南西部の農業では小麦などが栽培される。

北部の北極海沿岸は、寒すぎて草木が育たず、コケ類しか育たない、ツンドラとよばれる気候である。

ツンドラ気候の南側の地域に、タイガとよばれる針葉樹林の地帯がある。


ロシア東部は、山地が多い。(「シベリアに、山地が多い」(×)ではなく、ロシア東部に山地が多い。シベリア西部には、平地が広がっている。シベリア東部が、ロシア東部のことであり、このシベリア東部が山地が多い場所である。)

首都のモスクワは、ウラル山脈の西側にあり、つまりヨーロッパに近い側にある。

原油や天然ガスが多く、パイプラインで輸送している。

ソ連時代には、コンビナートと呼ばれる工業地域をつくった。

ソ連に所属していた国々[編集]

ソビエト連邦の地図。細い線は、現在の国境。

かつて、ロシアとその周辺にはソビエト連邦(ソビエト社会主義共和国連邦、ソ連)という国があった。

ソビエト連邦は1922年に誕生し、計画経済(けいかく けいざい)にもとづいた経済政策をしていた社会主義国だったが、1980年ごろには経済が行きづまり、ついに1991年にソビエト連邦は解体され、そしてロシア連邦と14の共和国に分かれた。

ソビエト連邦は、第二次大戦後はしばらく、アメリカ合衆国と対立していた。この、第二次大戦後のアメリカとソ連との対立を 「冷戦」(れいせん) という。(※ 教科書の範囲外。) ソビエト連邦は現在のロシアを含む15の国で構成されていた。ソビエト連邦が崩壊するとそれらの国々は独立した国になった。中央アジアでは、カザフスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンもソビエト連邦に属していたが、今は独立した国々である。宗教について、カザフスタンなどではイスラム教が信仰されている。

東ヨーロッパ側では、ウクライナ、ベラルーシ(白ロシア)、モルドバなどがソビエト連邦に属していたが、現在では独立した国になっている。これらの国々はキリスト教の正教会(せいきょうかい)の信者が多い。

バルト海沿岸にある3つの国、エストニア・ラトビア・リトアニアをバルト三国という。バルト三国もソビエト連邦に属する国々であった。しかし、バルト三国は他の国々と違ってソビエト連邦崩壊の前に独立を果たした。バルト三国の宗教は、キリスト教である。

カフカス地方

ロシアからみて西南方向に、黒海カスピ海がある。この黒海とカスピ海に挟まれた地域を「カフカス地方」という。 カフカス地方では、アルメニア、グルジア、アゼルバイジャンが独立国となっている。

民族紛争[編集]

ロシア西南部のカフカス地方にある「チェチェン共和国」は、「共和国」とはいうものの、ロシアの一部である。

しかし、チェチェンに独立派がいるが、ロシア政府は独立を認めていない。 このため、独立派とロシア政府が対立し、武力衝突がたびたび発生している(チェチェン紛争)。(※ 中学の範囲内。教育出版『中学社会 地理 地域にまなぶ』、平成23年3月30日検定版、平成25年1月20日発行、71ページ)

チェチェンでの宗教は、おもにイスラム教が信仰されている。


農業[編集]

ロシア西部とウクライナの農業[編集]

ロシア西部とウクライナ周辺で、小麦、大麦、ジャガイモなどの生産が盛んである。

ロシアで農業の盛んな地域は、気候の温暖なロシア西部のため、そのためロシアの農業は、ウクライナの農業に近い。

いっぽう、北極海沿岸や、シベリア東部では、気候が寒冷すぎてツンドラ気候なので、農業がほぼ不可能なので、漁労などで食料を得たりしている。

  • ソ連時代の農業

かつてソ連の時代には、「コルホーズ」(集団農場)や「ソフホーズ」(国営農場)といった、農場の国有的な統制(とうせい)があった。だが現在では、ロシアおよび旧ソ連からの独立国の農業は、民営化(みんえいか)しており、企業的な農業になっている。


中央アジアの農業[編集]

カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメンスタンなどを中央アジアという。 中央アジアは乾燥気候である。

中央アジアの農業では、かんがい(灌漑)による綿花(めんか)や小麦の栽培がさかんである。とくにウズベキスタンが、綿花の世界的な生産国になっている。

過剰な かんがい により、アラル海の水位が低下しており、湖面の面積が減少し、アラル海は消滅の危機にある。(※ 中学の範囲内。日本文教出版『中学社会 地理的分野』、平成23年3月30日検定版、平成25年2月8日発行、116ページ)

なお、アラル海やカスピ海は、内陸部にある湖(みずうみ)であり、周辺が乾燥地域なため、蒸発により塩分濃度が高い 塩湖(えんこ) になっている。(※ 中学の範囲内。出典は同上。『中学社会 地理的分野』)

このため、アラル海の湖面が減少すると、塩が出てきて、周辺の農地などに塩をまきちらし、塩害(えんがい)を起こすので、さまざまな問題を起こす。(※ 中学の範囲内。出典は同上。『中学社会 地理的分野』)

中央アジアでは、(ひつじ)の遊牧もしている。

参考: カフカス地方の農業[編集]

黒海とカスピ海のあいだの地域を「カフカス地方」という。 カフカス地方の農業では、茶の栽培が盛ん。

また、ブドウやオレンジなどの果樹栽培も、カフカス地方では盛ん。

ウクライナ[編集]

ウクライナの首都はキーウ

(※ 範囲外 :)ウクライナ語では「キーウ」。ロシア語では「キエフ」。2022年、ロシアとウクライナが戦争したので、従来、日本のメディアなどではロシア語の「キエフ」で呼んできたがロシア語で呼び続けるべきかどうか議論になり、最終的にウクライナ語に合わせることになった。

ウクライナでは工業が発達している。

1986年の「チェルノブイリ原発事故」で有名になったチョルノービリ原子力発電所[1]は、ウクライナにある。(※ 中学の範囲内。日本文教出版『中学社会 地理的分野』、平成23年3月30日検定版、平成25年2月8日発行、116ページ)

(※ 教育者注・編集者注)ロシア語の発音に近い「チェルノブイリ」から、将来的にウクライナ語の発音に近い「チョルノービリ」に変わった。すでに2022年現在、中学・高校の教科書は表記がウクライナ語に準じて変更されている[2][3]。また、すでに日本政府はウクライナ地域の行政文書についてはウクライナ語の発音に近い表記にするように変更している。ただし、古い文献を読む場合もあるため、旧表記も併記しておく。

ロシアの工業[編集]

原油や天然ガスの輸出で、ロシアは世界でも上位の有数の国である。

旧ソ連では、資源産地が離れていたので、それらを鉄道や水運などで結びつける「コンビナート」と呼ばれる方式の工業地域を各地につくった。シベリア鉄道などを輸送(ゆそう)に利用している。

脚注[編集]

  1. ^ 日本文教出版株式会社 編集部『令和4年度用中学校教科書「中学社会公民的分野」の訂正に関するお知らせ』令和4年 11 月
  2. ^ 第一学習社編集部 『令和4年度用 高等学校教科書「高等学校 改訂版 現代社会」(現社 321)資料更新・記述変更のお知らせ』令和5年1月 実教出版
  3. ^ 日本文教出版株式会社 編集部『令和4年度用中学校教科書「中学社会公民的分野」の訂正に関するお知らせ』令和4年 11 月