複素数平面とは[編集]
虚数単位 を を満たす数とする。2つの実数 によって と表される数を複素数という。
座標平面上の点 と複素数 を同一視することで、複素数を座標平面上の点と考えることができる。この平面を複素数平面(complex plane)という。[1]
複素数平面において、 軸を実軸(real part)、 軸を虚軸(imaginary part)という。
複素数平面上で複素数 に対応する点 のことを と表現することもある。
複素数 について複素数 を の共役複素数といい、 で表す。
複素数 と複素数 は原点に対して対称であり、複素数 と複素数 は実軸に対して対称である。
複素数平面において、複素数 から原点までの距離を絶対値といい で表す。三平方の定理より である。
である。
極形式[編集]
上記のように、複素数平面では、複素数の実部と虚部をそれぞれ平面上の点の直交座標に対応させている。ところで、平面上の点の位置の表し方として、直交座標の他に極座標があった。点の位置を極座標で表すことに対応する複素数の表し方を、極形式という。直交座標と極座標は
で変換することができるのであった。つまり、極形式とは次のような形の複素数の表現である。
ここで、rを複素数a+biの絶対値、θを複素数a+biの偏角といい、で表す。である。θは原点と 、 を頂点とする三角形の原点の角度を表している。
複素数の積・商[編集]
極形式で複素数を表すと、複素数の積が次のように簡単に計算できる。
, とすると、
- ただし、三行目から四行目への式変形は三角形の加法定理を使った。
- 次に複素数の商を計算してみよう。
- とすると、
- なので、
- である。
- これから、複素数 に複素数 をかける操作は、複素数 の原点からの距離を 倍し、原点周りに だけ回転した点に移す操作であると、複素数 を複素数 で割る操作は、複素数 の原点からの距離を 倍し、原点周りに だけ回転した点に移す操作であると、幾何学的に理解できる。
- また、この性質から以下の性質が直ちに導かれる。
-
ド・モアブルの定理[編集]
整数 に対し、複素数 の 乗は、
となることが知られている。これを ド・モアブルの定理 という。
これを証明しよう。
まず、 の場合を数学的帰納法で証明する。
のとき、
- (左辺)
- (右辺)
である。
とし、
のとき
が成り立つと仮定すると
- となり、 の場合も証明できた。
のとき、
したがって、 が整数のときド・モアブルの定理が成り立つことが証明できた。
ド・モアブルの定理を用いて、についての次方程式
の複素数解をすべて求めてみよう。まず、aが正の実数のときを考える。と極形式で表すとき、ド・モアブルの定理よりである。正の実数aの絶対値はa、偏角は0であることに注意すると、を満たすとき、
でなければならないことがわかる。ただし は整数である。rが正の実数であることに注意してこの式を解くと、
であるから、整数kを用いて
と表される数が複素数解のすべてである。
一般の複素数に対して、zについてのn次方程式
を考えると、まったく同様の計算により解は整数kを用いて
と表される。
偏角が の整数倍ずれるだけの複素数は同じ複素数であることに注意すると、いずれの場合も異なる解はちょうどn個存在することがわかる。そのn個の解を複素数平面上で考えると、原点を中心とする正n角形を描くことが確かめられる。
複素数平面の応用[編集]
方程式の表す図形[編集]
を複素数、 を正の実数とする。 方程式 を満たす複素数 の軌跡は、 を中心とし、 を半径とする円である。[2]
を複素数とする、方程式 を満たす複素数 の軌跡は、 を通る線分の二等分線である。
複素数平面上の点 に対し、 はベクトル とベクトル のなす角である。特に、 が実数のときベクトル とベクトル は平行。 が純虚数のときはベクトル とベクトル は垂直である。
回転移動[編集]
複素数 に複素数 をかけた複素数 は、複素数 を原点を中心に だけ回転した点を表す。
一般に、複素数 を複素数 を中心に だけ回転した点 は、 である。
- ^ 複素平面やガウス平面と呼ばれることもある。
- ^ は の距離を示す